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リース業者(レッサー)が破産するとリース契約はどうなるのか?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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リース業者(レッサー)について破産手続が開始された場合でも、リース契約は当然には終了しません。したがって、破産管財人は、当該リース契約を清算させる必要があります。

どのような処理を行うのかは、リース物件が引き渡し済みか否か、ファイナンス・リースなのかオペレーティング・リースなのか、ファイナンス・リースであったとして、フルペイアウト方式か否かなどによって異なってきます。

リース業者(レッサー)が破産した場合

リース契約におけるリース業者(レッサー)について破産手続が開始された場合でも、当該リース契約は当然には終了しません。

したがって、破産管財人は、破産手続開始後、そのリース契約を清算する処理を行わなければなりません。

もっとも、リース契約と言っても、さまざまな形態のリース契約があります。大きく分ければ、リースの形態には、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースがあります。

しかし、この区分は流動的な区分に過ぎません。ファイナンス・リースやオペレーティング・リースにも様々な形態があります。

そのため、破産手続においてリース契約をどのように取り扱うべきかは、それぞれのリース契約の実体に即して個々の事案ごとに個別に判断する必要があります。

ファイナンス・リース契約の場合

ファイナンス・リース契約とは、「リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引」に係るリース契約のことを言います(リース取引に関する会計基準5条)。

※なお、2027年4月から適用される新リース取引に関する会計基準11条では、「『ファイナンス・リース』とは、契約に定められた期間(以下「契約期間」という。)の中途において当該契約を解除することができないリース又はこれに準ずるリースで、借手が、原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリースをいう」と定義されています。

このファイナンス・リースにはフルペイアウト方式のファイナンス・リースがあります。

フルペイアウト方式のファイナンス・リースとは、リース期間満了時にリース物件に残存価値はないものとみて、リース業者がリース物件の取得費用等の投下資本を全額回収できるようにリース料が算定される形態のファイナンス・リースのことです。

ファイナンス・リース契約のユーザー(レッシー)が破産した場合のリース契約の処理については、リース物件がユーザーに引き渡されているかどうか、または、形態がフルペイアウト方式のものか否かなどによって異なってきます。

リース物件が引き渡されていない場合

リース契約締結後、リース物件の引渡し前にリース業者について破産手続が開始された場合、いまだ、リース業者物件の引渡債務も、ユーザーによるリース料の支払債務も未履行です。

したがって、双方未履行双務契約として処理されることになります。

具体的には、破産管財人が、当該リース契約を解除するか、または、リース物件を引き渡してリース料の履行請求するかを選択します(破産法53条1項)。

破産管財人が契約解除を選択した場合

破産管財人がリース契約を解除した場合、ユーザーに対してリース物件の返還を求めることになります。

ユーザーから返還を受けたリース物件は、それが破産者の所有物であれば、破産管財人によって換価処分され、それによって得られた金銭は破産財団に組み入れられます。

破産管財人が履行を選択した場合

リース業者の破産において、破産管財人が履行を選択する場面は多くないと思われますが、破産管財人が履行を選択した場合には、リース契約は存続することになります。

この場合、破産管財人は、ユーザーに対してリース物件を引き渡す代わりに、ユーザーからリース料を回収し、それを破産財団に組み入れることになります。

ただし、履行を選択した場合でも、破産手続が終了するまでにはリース契約を解消する必要があります。

リース物件が引き渡されている場合

リース契約締結後、リース物件の引渡後に、リース業者について破産手続が開始された場合については、双方未履行双務契約として破産法53条1項の適用があるか否かを検討する必要があります。

フルペイアウト方式のファイナンス・リースの場合

この点、ファイナンス・リース契約の法的性質について、最高裁判所は、「ファイナンス・リース契約は、物件の購入を希望するユーザーに代わって、リース業者が販売業者から物件を購入のうえ、ユーザーに長期間これを使用させ、右購入代金に金利等の諸経費を加えたものをリース料として回収する制度であり、その実体はユーザーに対する金融上の便宜を付与するものであるから、リース料の支払債務は契約の締結と同時にその全額について発生し、ユーザーに対して月々のリース料の支払という方式による期限の利益を与えるものにすぎず、また、リース物件の使用とリース料の支払とは対価関係に立つものではない」と解しています(最一小判平成5年11月25日)。

また、破産手続の事案ではありませんが、会社更生手続におけるフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約については、「その実質はユーザーに対して金融上の便宜を付与するものであるから、右リース契約においては、リース料債務は契約の成立と同時にその全額について発生し、リース料の支払が毎月一定額によることと約定されていても、それはユーザーに対して期限の利益を与えるものにすぎず、各月のリース物件の使用と各月のリース料の支払とは対価関係に立つものではない」ため、「リース業者は、ユーザーに対してリース料の支払債務とけん連関係に立つ未履行債務を負担していない」と解しています(最二小判平成7年4月14日)。

これらの考え方によると、フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約は、リース物件の引渡し完了によってリース業者側に債務はなくなったことになるため、賃貸借契約のような双務契約ではないと考えることになるでしょう。

したがって、すでにリース物件が引き渡されている場合には双方未履行双務契約とはならず、破産法53条1項の適用はないことになります。

破産法53条の適用がない以上、破産管財人は、リース契約を解除することはできません(ただし、ユーザーにリース料滞納などがあれば、債務不履行に基づく解除は可能です。)。

したがって、破産管財人は、ユーザーに対してリース物件の返還を求めることはできず、リース料を回収して、それを破産財団に組み入れることになります。

もっとも、破産手続が終了するまでにはリース契約を解消する必要があります。

そこで、破産管財人としては、ユーザーとの間で契約を合意解除するか、または、リース物件に関する権利とリース料債権を他のリース業者等に譲渡するなどして、契約関係の解消を図ることになります。

なお、ユーザーとの間で合意解除をした場合、破産管財人は、ユーザーからリース物件の返還を受けて、それを換価処分し、破産財団に組み入れることになります。

フルペイアウト方式でないファイナンス・リースの場合

他方、フルペイアウト方式でないファイナンス・リース契約の場合、フルペイアウト方式の場合と異なり、リース会社が、リース物件引渡義務以外に何らかの債務を負担している形態のものもあります。

したがって、必ずしも、破産法53条1項の適用は無いとは言いきれません。契約内容によっては、双方未履行双務契約として取り扱われることもあり得るでしょう。

双方未履行双務契約として扱われた場合には、前記リース物件引渡未了の場合と同様、破産管財人が契約解除または履行請求を選択し、それぞれの処理がなされることになります。

破産管財人またはユーザーによって契約が解除された場合、破産管財人はユーザーからリース物件の返還を受けて、それを換価処分し、破産財団に組み入れることになります。

オペレーティング・リース契約の場合

オペレーティング・リース契約とは、「ファイナンス・リース取引以外のリース取引」に係るリース契約のことを言います(リース取引に関する会計基準6条)。

※なお、新リース取引に関する会計基準14条では、「『オペレーティング・リース』とは、ファイナンス・リース以外のリースをいう」と定義されています。

このオペレーティング・リースは、非常に多種多様です。ファイナンス・リースに近いものもあれば、それとは異なり、むしろ賃貸借契約に近い形態のものもあります。

したがって、結局は、個々の契約内容・取引形態に応じて、個別的に判断しなければならないということです。

リース契約締結後、リース物件引渡未了の段階でリース業者について破産手続が開始された場合は、ファイナンス・リースの場合と同様、双方未履行双務契約として処理されます。

また、リース物件引渡がすでに完了している場合でも、契約内容や取引形態によっては、双方未履行双務契約として処理されることもあり得るでしょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第5版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産実務Q&A220問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
破産実務を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、破産実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産処理法入門(第6版)
著者:山本和彦  出版:有斐閣
倒産法の入門書。「入門」ではありますが、ボリュームはそれなりにあります。倒産法全体を把握するために利用する本です。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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