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準自己破産の手続は自己破産の場合と違うのか?

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債務者である法人・会社自身が申立人となって破産手続開始の申立てをすることを「自己破産申立て」といい、法人・会社の理事や取締役等の個人が申立人となって当該法人・会社について破産手続開始の申立てをすることを「準自己破産申立て」といいます。

両者の差異は、誰が申立人となるのかという点です。基本的な手続に違いはありません。ただし、準自己破産の場合には、破産手続開始の申立てに際して破産手続開始原因事実の疎明が求められるなど、個々の手続や裁判所の運用において違いが生じる点もあります。

自己破産と準自己破産

破産法 第18条

  • 第1項 債権者又は債務者は、破産手続開始の申立てをすることができる。
  • 第2項 債権者が破産手続開始の申立てをするときは、その有する債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。

破産法 第19条

  • 第1項 次の各号に掲げる法人については、それぞれ当該各号に定める者は、破産手続開始の申立てをすることができる。
  • 第1号 一般社団法人又は一般財団法人 理事
  • 第2号 株式会社又は相互会社(保険業法(平成7年法律第105号)第2条第5項に規定する相互会社をいう。第150条第6項第3号において同じ。) 取締役
  • 第3号 合名会社、合資会社又は合同会社 業務を執行する社員
  • 第2項 前項各号に掲げる法人については、清算人も、破産手続開始の申立てをすることができる。
  • 第3項 前2項の規定により第1項各号に掲げる法人について破産手続開始の申立てをする場合には、理事、取締役、業務を執行する社員又は清算人の全員が破産手続開始の申立てをするときを除き、破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。
  • 第4項 前3項の規定は、第1項各号に掲げる法人以外の法人について準用する。
  • 第5項 法人については、その解散後であっても、残余財産の引渡し又は分配が終了するまでの間は、破産手続開始の申立てをすることができる。

破産手続は、破産申立権者が裁判所に対して破産手続開始の申立てをすることによって開始されるのが原則です。

この破産申立権者には、債務者自身も含まれます(破産法18条1項)。債務者自身が自らについて破産手続開始を申し立てることを「自己破産申立て」といいます。

会社などの法人の破産で言うと、債務者である法人自身が申立人となって破産手続開始を申し立てる場合が自己破産に当たります。

また、法人の破産については、その法人の理事や会社の取締役等も破産手続開始を申し立てることができます(破産法19条)。

この法人理事や会社取締役など債務者に準ずる者(準債務者)が破産手続開始を申し立てることを「準自己破産申立て」といいます。

自己破産の場合も準自己破産の場合も、破産するのはあくまで債務者である法人・会社です。

自己破産と準自己破産の相違点は、申立てをしたのが、債務者である法人・会社自身なのか、それとも、その法人・会社の取締役や理事等なのか、という点です。基本的な手続に違いはありません。

ただし、基本的な手続に違いはないとは言っても、申立人が異なるので申立ての手続には相違があります。また、個々の手続や運用面でもいくつかの違いがあります。

破産手続開始の申立てにおける異同

自己破産と準自己破産のいずれも、破産手続開始の申立てであることに変わりはありません。したがって、申立ての方式は基本的に同じです。

ただし、以下の点で違いはあります。

破産手続開始原因事実の疎明

準自己破産の場合は、自己破産の場合と異なり、複数人いる取締役等のうちの一部が申し立てるものです。

場合によっては、支払不能債務超過でないのに、または、債権者に対する公平・平等な分配という目的がないのに、会社内部の紛争などの原因から申立てがなされているおそれがあります。

そこで、準自己破産の場合、その申立てにおいて破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならないとされています(破産法19条3項)。

ただし、申立ての際は破産手続開始原因事実の疎明で足りますが、破産手続開始決定をするかどうかの審査の際には、破産手続開始原因事実の証明が必要であると解されています。

破産手続開始の申立書の記載及び添付資料

破産手続開始の申立ては、裁判所に対して破産手続開始の申立書を提出する方式で行います(破産法20条1項)。

この方式は、自己破産であっても準自己破産であっても同じです。また、申立書の記載事項や添付書類も共通しています。

もっとも、準自己破産の場合、申立人はあくまで取締役等の個人です。したがって、破産手続開始の申立書(および申立書に添付する陳述書等)においても、申立人を個人名義で記載しなければなりません。

また、個人名義での申立てですから、自己破産の場合のように取締役会議事録や取締役全員の同意書などを申立書に添付する必要がありません。

ただし、実務では、準自己破産申立てであっても、破産手続開始申立てに賛成(又は反対)している取締役等が誰なのかを確認するために、賛成している取締役等の同意書を提出するよう求められることはあります。

少額管財と特定管財に関する異同

破産手続には、破産管財人が選任され、その破産管財人が財産の管理処分等の手続を遂行する管財事件と、破産管財人が選任されず破産手続開始と同時に手続が廃止となる同時廃止事件があります。

法人・会社の破産の場合、同時廃止事件とされることはほとんどありません。管財事件として扱われるのが通常です。

この管財事件について、東京地方裁判所大阪地方裁判所など多くの裁判所では、少額管財という運用が行われています。少額管財とは、手続が簡易迅速化された上で予納金が少額で済むという管財事件の運用です。

準自己破産の場合も、実情が自己破産の場合と異ならない事件の場合には、大規模事件等でない限り、少額管財として扱われるのが通常です。

もっとも、会社内部の紛争が生じているためにやむなく準自己破産で申立てをしたというような場合には、破産に反対する取締役等から協力を得られなかったり、場合によっては妨害を受けるなどして、破産手続が円滑に進行できないこともあります。

そこで、会社内部の紛争が生じているためにやむなく準自己破産で申立てをしたというような場合は、少額管財ではなく、特定管財事件として扱われることがあります。

なお、準自己破産申立ての場合であっても、予納金(引継予納金も含む。)を法人・会社の財産から支出することはできます。

破産手続開始後の手続における異同

自己破産であっても準自己破産であっても、破産手続であることに違いはありません。したがって、破産手続開始後の手続に違いはありません。

ただし、準自己破産の場合で、会社内部の紛争があるような場合には、破産に反対する取締役等の抵抗にあい、手続が長期化することはあるでしょう。

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