
破産手続開始の申立ては、管轄の地方裁判所に対して法定の記載事項を記載した破産手続開始の申立書を提出する方式によって行います。
この破産手続開始の申立書には、破産規則13条1項に定める必要的記載事項を記載しなければならず、また、場合によっては同条2項に定める訓示的記載事項、その他破産事件に関連する事項を記載しなければならないこともあります。
加えて、破産手続開始の申立書およびその添付書類の内容を疎明するための資料を添付しなけれならないこともあります。
破産手続開始の申立書とは
破産法 第20条
- 第1項 破産手続開始の申立ては、最高裁判所規則で定める事項を記載した書面でしなければならない。
破産手続は、裁判所が破産手続開始決定をしたときから開始されます。
もっとも、破産手続を開始してもらうためには、管轄の裁判所に対して破産手続開始を申し立てる必要があります。
この破産手続開始の申立ては口頭ですることができません。破産手続開始の申立ては、「最高裁判所規則で定める事項を記載した書面」を提出するという方式でしなければなりません(破産法20条1項)。
この「最高裁判所規則で定める事項を記載した書面」のことを「破産手続開始の申立書」と呼んでいます。
破産手続開始の申立書には、上記のとおり、最高裁判所規則で定める事項を記載しておく必要があります。この最高裁判所規則とは「破産規則」のことです。
破産規則において定められている破産手続開始の申立書に記載しなければならない事項には、必ず記載しなければならない必要的記載事項と、記載しておくことが望ましいとされる訓示的記載事項の2種類あります。
破産手続開始申立書の必要的記載事項
破産規則 第13条
- 第1項 法第20条第1項の最高裁判所規則で定める事項は、次に掲げるものとする。
- 第1号 申立人の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所
- 第2号 債務者の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所
- 第3号 申立ての趣旨
- 第4号 破産手続開始の原因となる事実
破産手続開始の申立書には「最高裁判所規則で定める事項」を記載しなければなりません。記載事項のうち、破産手続開始の申立書に必ず記載しなければならない事項のことを「必要的記載事項」といいます。
破産手続開始の申立書の必要的記載事項は、破産規則13条1項に定められています。破産手続開始の申立書の必要的記載事項は、以下の事項です。
申立人・申立人の法定代理人・債務者・債務者の法定代理人については、氏名または名称・住所の記載が必要的記載事項とされています。
また、申立ての趣旨も必要的記載事項です。申立ての趣旨とは、その破産手続開始の申立てをすることによって、どのような裁判を求めているのかを記載するということです。
破産手続開始の申立ての場合、申立ての趣旨は、「債務者(自己破産の場合であれば、申立人)について破産手続を開始する」という記載になります。
さらに、破産手続開始の申立書には、破産手続開始の原因となる事実も記載しなければなりません。
破産手続開始の原因となる事実の記載方法としてはさまざまな形式があります。
一般的には、申立ての理由という表題を付して、「債務者は、添付の債権者一覧表のとおり、債権者●名に対し、金●円の債務を負担しているが、添付の財産目録及び報告書記載のとおり、支払不能又は債務超過の状態(個人破産の場合は、支払不能のみ。)にある。」などと記載することになるでしょう。
これらの必要的記載事項を記載していない場合、裁判所から補正を求められます(破産法21条1号、5号)。その補正に応じなかった場合には、破産手続開始の申立書が却下されることになります(同条6号)。
申立書の訓示的記載事項
破産規則 第13条
- 第2項 破産手続開始の申立書には、前項各号に掲げる事項を記載するほか、次に掲げる事項を記載するものとする。
- 第1号 債務者の収入及び支出の状況並びに資産及び負債(債権者の数を含む。)の状況
- 第2号 破産手続開始の原因となる事実が生ずるに至った事情
- 第3号 債務者の財産に関してされている他の手続又は処分で申立人に知れているもの
- 第4号 債務者について現に係属する破産事件(法第2条第2項に規定する破産事件をいう。以下同じ。)、再生事件又は更生事件(会社更生法(平成14年法律第154号)第2条第3項に規定する更生事件又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成8年法律第95号)第4条第3項若しくは第169条第3項に規定する更生事件をいう。)があるときは、当該事件が係属する裁判所及び当該事件の表示
- 第5号 法第5条第3項から第7項までに規定する破産事件等があるときは、当該破産事件等が係属する裁判所、当該破産事件等の表示及び当該破産事件等における破産者(法第2条第4項に規定する破産者をいう。以下同じ。)若しくは債務者、再生債務者又は更生会社若しくは開始前会社(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第4条第3項に規定する更生事件にあっては、当該更生事件における更生協同組織金融機関又は開始前協同組織金融機関)の氏名又は名称
- 第6号 債務者について外国倒産処理手続(法第245条第1項に規定する外国倒産処理手続をいう。以下同じ。)があるときは、当該外国倒産処理手続の概要
- 第7号 債務者について次のイ又はロに掲げる者があるときは、それぞれ当該イ又はロに定める事項
イ 債務者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合 当該労働組合の名称、主たる事務所の所在地、組合員の数及び代表者の氏名
ロ 債務者の使用人その他の従業者の過半数を代表する者 当該者の氏名及び住所- 第8号 債務者について第9条第1項の規定による通知をすべき機関があるときは、その機関の名称及び所在地
- 第9号 申立人又は代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)
破産手続開始の申立書には、訓示的記載事項を記載することもあります。
訓示的記載事項とは、必要的記載事項と違い、それを記載しなかっただけでは裁判所による補正や申立書却下の対象とはならないものの、申立書またはそれに添付する書類に記載するのが望ましいとされる記載事項のことをいいます。
この訓示的記載事項は、破産規則13条2項に規定されています。破産手続開始申立書の訓示的記載事項は、以下の事項です。
- 債務者の収入・支出の状況、資産および負債(債権者の数を含む。)の状況
- 破産手続開始の原因となる事実が生ずるに至った事情
- 債務者の財産に関してされている強制執行などの他の手続または処分で申立人に知れているもの
- 債務者について現に係属する破産事件・再生事件・更生事件があるときは、その事件が係属する裁判所・その事件の表示
- 親会社・法人、子会社・法人、連結会社・法人、債務者の代表者、債務者と連帯債務関係にある個人の主債務者または個人の連帯債務者、債務者と保証・連帯保証関係にある個人の主債務者または個人の保証人・連帯保証人の破産事件・再生事件・更生事件があるときは、その事件が係属する裁判所・その事件の表示
- 債務者について外国倒産処理手続があるときは、その外国倒産処理手続の概要
- 債務者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合の名称・主たる事務所の所在地・組合員の数・代表者の氏名
- 債務者の使用人その他の従業者の過半数を代表する者がいるときは、その代表者の氏名・住所
- 債務者が官庁その他の機関の許可・免許・登録その他の許可に類する行政処分がなければ開始することができない事業を営む法人であるときは、その機関の名称・所在地
- 申立人または申立人代理人の郵便番号・電話番号・ファクシミリ番号
実務では、破産手続開始の申立書に訓示的記載事項の全部を記載するということはありません。
関連事件の有無、申立代理人の連絡先等は破産手続開始の申立書に記載しますが、それ以外の訓示的記載事項は、別途、債権者一覧表、報告書、財産目録などに記載をして、それらを申立書に添付するという方法をとるのが一般的でしょう。
その他の記載事項
前記のとおり、破産手続開始の申立書には、破産規則で定められた必要的記載事項を記載しなければなりません。訓示的記載事項も、報告書等に記載をし、申立書に添付して提出するのが一般的です。
ただし、破産規則で定められた記載事項以外の事項を破産手続開始の申立書に記載することもあります。
裁判所によっては、破産手続開始の申立書や債権者一覧表・財産目録・報告書等の添付書類について書式を定めているところもあります。
書式が決められている裁判所に破産手続開始の申立てをする場合には、その決められた書式に従って申立書を作成した方がよいでしょう。書式に従って作成すれば記載事項の漏れはないようにできています。
個人の自己破産の場合、ほとんどの裁判所で書式が用意されています。他方、法人・会社の破産手続開始申立書については、多くないようです。申立てをする前に、申立て予定の裁判所に確認した方がよいでしょう。