この記事にはPR広告が含まれています。

破産財団とは?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

破産法の画像
answer

破産財団とは、「破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもの」のことをいいます(破産法2条14号)。

破産管財人によって換価処分され、各債権者に対する弁済または配当の原資等になる破産者の財産の集合体のことを、破産財団と呼んでいるのです。

破産者が破産手続開始決定時において有していた一切の財産が、破産財団に属することになります(破産法34条1項)。破産財団に属する財産の管理処分権は、破産者から剥奪され、破産管財人に専属することになります(破産法78条1項)。

破産財団とは

破産法 第2条

  • 第14項 この法律において「破産財団」とは、破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するものをいう。

破産法 第78条

  • 第1項 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。

破産手続は、裁判所から選任された破産管財人が、破産者の財産を換価処分して、それによって得た金銭を各債権者に弁済または配当するという手続です。

この破産手続において換価処分すべき破産者の財産の管理処分権は破産者から剥奪され、破産管財人にその管理処分権が専属することになります(破産法78条1項)。

この破産管財人によって管理処分されるべき財産のことを「破産財団」といいます。

すなわち、破産財団とは「破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもの」のことをいいます(破産法2条14項)。

「財団」というと、何らかの組織のようなイメージがあるかもしれませんが、破産財団はそういうものではなく、あくまで、換価処分すべき財産の集合体を意味するにすぎません。

破産手続の最大の目的は、いかに多くの金銭を債権者に弁済または配当できるのかということにあります。

したがって、破産管財人の職務において最も重要なことは、この破産財団をいかに増殖させることができるのかという点にあるといえます。

破産財団の内容

前記のとおり、破産財団とは、破産管財人が管理処分権を有する財産のことをいいます。

この破産財団には、以下の3つの内容が含まれています。

破産財団の内容
  • 法定財団
  • 現有財団
  • 配当財団

「法定財団」とは、破産法が予定する破産財団のことをいいます。言ってみれば、破産財団のあるべき形を意味する概念です。

したがって、破産管財人は、この法定財団にできる限り近づくように破産財団の形成を図っていくことになります。

もっとも、法律上・形式上は破産財団に組み入れられるべき財産であるものの、回収や管理などに大きなコストや時間がかかるなどの理由から、破産財団に組み入れることが現実的に難しい財産もあります。

そのような場合には、法定財団と現実に破産管財人が管理している破産財団とにギャップが生じます。破産管財人が現実に占有・管理している破産財団のことを、法定財団と区別して「現有財団」といいます。

そして、この現有財団を換価処分して金銭に換え、それを破産債権者に対して配当することになります。この配当に充てられる金銭のことを「配当財団」といいます。

破産財団の法的性質

破産財団の法的性質をどのように捉えるかについては、破産管財人の地位をどのように捉えるのかと関連して、以下のような見解があります。

破産財団の法的性質論
  • 破産財団代表説:破産財団それ自体に法人格を認める見解。これによると、破産管財人は、法人格の認められる破産財団の代表機関と捉えることになります。
  • 管理機構人格説:破産財団それ自体には法人格を認めず、財産の管理機構である破産管財人に法人格を認める見解。現在の通説的見解といわれています。

破産財団に属する財産の範囲を画する基準時

破産法 第34条

  • 第1項 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
  • 第2項 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
  • 第3項 第1項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
  • 第1号 民事執行法(昭和54年法律第4号)第131条第3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭
  • 第2号 差し押さえることができない財産(民事執行法第131条第3号に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第132条第1項(同法第192条において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
  • 第4項 裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後1月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。
  • 第5項 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、破産管財人の意見を聴かなければならない。
  • 第6項 第4項の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる。
  • 第7項 第4項の決定又は前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を破産者及び破産管財人に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。

破産財団に属する財産の範囲を決める基準時は、破産手続開始決定時です(破産法34条1項)。

つまり、破産手続開始決定時点において破産者が有していた財産が、破産財団に属することになります。

このように、破産手続開始決定時を基準時として破産財団に属する財産の範囲を固定する原則のことを「固定主義」といいます。

なお、法人・会社の破産の場合には、破産手続開始とともに法人は解散するのが通常ですので、破産財団に属する財産の範囲の基準時が問題になることは少ないでしょう。

破産財団に属する財産の範囲

破産財団は、破産管財人によって管理され、換価処分の対象となる財産の集合体を意味しています。したがって、破産管財人による管理処分の対象とならない財産は、破産財団に含まれないということです。

個人(自然人)の破産は、換価処分しなくてもよい自由財産が認められています(破産法34条3項等)。この自由財産は、破産財団に含まれません。

他方、法人・会社の破産手続の場合には、個人の破産と異なり、破産財団から放棄されたものを除いて、換価処分しなくてもよい自由財産は認められません。

したがって、法人破産の場合は、破産者である法人・会社が破産手続開始時において有していた一切の財産が、破産財団に属します(破産法34条1項)。

ここでいう「一切の財産」には、物だけでなく、債権や権利それ自体も含まれます。債権には「破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」も含まれます(破産法34条2項)。

さらに、や法的な権利でなくても、およそ財産的価値があり、換価が可能なものであれば、すべて破産財団に属します。

破産者での事業それ自体も換価可能であれば、破産財団に属する財産として扱われ、事業譲渡によって換価されることもあります。

また、破産者が破産手続開始時において有している財産は、それが日本国外にある財産であっても、破産財団に属する財産となります(破産法34条1項括弧書き)。

破産財団の変動と形成

前記のとおり、破産財団に属する財産は、破産管財業務遂行のための費用に利用されるのみならず、債権者に対する弁済や配当の原資になるものです。

したがって、適正な破産財団を形成することは、破産管財人にとっても最も重要な業務といえます。

とはいえ、破産財団に属する財産が、すべて破産者のもとにあるとは限りません。破産管財人は、そのような財産を調査して取り戻し、破産財団に組み入れなければなりません。

また、外観上は破産者が有しているように見えたとしても、法的にみれば破産者が有しているとはいえない財産や、逆に、外観上は破産者の財産とはいえない状態にあるとしても、法的にみれば破産者が有しているべきものと判断できる財産があります。

このような場合、適正な破産財団を形成するために、取戻権・別除権・否認権などの行使によって、本来あるべき破産財団の姿に戻すことが必要となってきます。

例えば、外観上、破産者が所持・占有してはいるものの、実際にはリース物件であって、真の所有者が別にいるという場合には、その所有者からの取戻権の行使によって、その財産は破産財団から外れることになります。

また、破産者の所有物であっても、抵当権が設定されるなど別除権の対象となっている場合であれば、別除権者の別除権行使によって、その別除権の範囲内において、破産財団から外れることもあります。

逆に、破産手続開始決定時点では破産者が有する財産ではなくなってしまっていたとしても、本来であれば破産財団に含められるべき財産については、破産管財人の否認権行使によって取り戻され、破産財団に組み入れられることもあります。

このように、破産財団は、破産管財人の業務遂行や権利者等の権利行使などによって破産手続開始後も段々と変動していき、最終的に適正な破産財団が形成されることになります。

破産財団からの弁済・配当

破産財団に属する財産は換価処分され、各債権者に分配されます。

破産者に対する債権は財団債権と破産債権とに区別されます。優先されるのは財団債権です。まず、破産財団から財団債権に対して弁済がなされます。

財団債権のうち最優先で弁済されるものは、破産管財業務のための費用と破産管財人報酬です。これらを弁済して余剰があれば、その他の税金や労働債権などの財団債権に弁済されます。

財団債権をすべて弁済してもなお余剰があれば、破産財団から破産債権に対する配当が行われます。

配当は、優先的破産債権、一般の破産債権、劣後的破産債権、約定劣後破産債権の順で行われます。

参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、本記事「破産財団」の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第5版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産・民事再生の実務(第4版)破産編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法 (LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。 

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました