この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

破産管財人には、破産裁判所または債権者に対して、各種の報告をしなければならない報告義務が課されています。
破産管財人の報告義務
破産法 第75条
- 第1項 破産管財人は、裁判所が監督する。
- 第2項 裁判所は、破産管財人が破産財団に属する財産の管理及び処分を適切に行っていないとき、その他重要な事由があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産管財人を解任することができる。この場合においては、その破産管財人を審尋しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索
破産手続は、破産財団に属する破産者の財産を換価処分し、それによって得た金銭を債権者に対して適正・公平に弁済または配当する手続です。この破産手続を実際に遂行していくのが破産管財人です。
そのため、破産管財人には、破産管財業務の遂行について広汎な裁量権が認められています。
もっとも、破産管財人に裁量権が与えられているとはいえ、違法・不当な行為まで許されるわけではありません。破産法の規定に従って、公正中立に業務を遂行していく必要があります。
そのため、破産管財人の業務遂行は、破産裁判所によって監督されることになります(破産法75条1項)。
その監督の実効性を担保するために、破産管財人は、破産裁判所に対して、破産管財業務の遂行について様々な場面で報告をしなければならない報告義務を負っています。
また、破産手続は、債権者に不利益を被らせることになる手続ですから、債権者の理解を得ることは非常に重要な問題です。
そして、債権者から理解を得るためには、情報の配当、すなわち、破産手続の進行状況についての情報を随時提供していくことが大事になります。
そこで、破産管財人は、破産裁判所に対して報告をしなければならないだけでなく、債権者に対しても各種の報告をしなればならないものとされています。
裁判所に対する報告義務
前記のとおり、破産管財人は、様々な場面で破産裁判所に対して破産管財業務について報告をしなければならない義務を負っています。
破産手続開始における報告
破産法 第157条
- 第1項 破産管財人は、破産手続開始後遅滞なく、次に掲げる事項を記載した報告書を、裁判所に提出しなければならない。
- 第1号 破産手続開始に至った事情
- 第2号 破産者及び破産財団に関する経過及び現状
- 第3号 第177条第1項の規定による保全処分又は第178条第1項に規定する役員責任査定決定を必要とする事情の有無
- 第4号 その他破産手続に関し必要な事項
- 第2項 破産管財人は、前項の規定によるもののほか、裁判所の定めるところにより、破産財団に属する財産の管理及び処分の状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人は、破産手続開始決定と同時に裁判所によって選任され(破産法31条1項)、就職の後直ちに破産財団に属する財産の管理に着手しなければならないとされています(破産法79条)。
そして、破産管財人は、破産手続開始後遅滞なく、以下の事項を記載した報告書を裁判所に提出しなければならない報告義務を課されています(破産法157条1項)。
- 破産手続開始に至った事情
- 破産者及び破産財団に関する経過および現状
- 役員の責任基づく損害賠償請求権についての役員財産の保全処分または役員責任査定決定を必要とする事情の有無
- その他破産手続に関し必要な事項
破産手続開始から時間が経過すると、破産財団や役員財産が散逸してしまい、破産財団の収集や損害賠償請求が困難になることがあります。
そのため、破産手続においては、破産手続開始後遅滞なく破産管財業務に着手することが重要です。
この早期着手を促すため、破産管財人は、破産手続開始決定後遅滞なく、上記の事項を裁判所に報告しなければならないとされているのです。
裁判所の定める事項の報告
前記のとおり、破産管財人は、破産手続き開始後に遅滞なく、破産者が破産手続開始に至った事情等を裁判所に報告しなければならないとされています。
また、それだけでなく、裁判所が定めるところにより、破産財団に属する財産の管理・処分の状況等を裁判所に報告しなければならないとされています(破産法157条2項)。
破産管財人は、破産手続開始以降、職務を執行していきます。破産手続開始後遅滞のない期間だけで、その職務が終了するとは限りません。
そこで、破産管財人は、破産手続開始後遅滞のない時期だけでなく、破産手続中は随時、破産管財業務の進捗について裁判所に対して報告しなければならないとされています。
裁判所に対する報告の中心的な事項は、破産財団の収集、管理、処分の進捗状況の報告ですが、それ以外にも、債権者への対応や訴訟対応、契約関係の処理などさまざまな事項を報告することになります。
任務終了時の計算報告
破産法 第88条
- 第1項 破産管財人の任務が終了した場合には、破産管財人は、遅滞なく、計算の報告書を裁判所に提出しなければならない。
- 第2項 前項の場合において、破産管財人が欠けたときは、同項の計算の報告書は、同項の規定にかかわらず、後任の破産管財人が提出しなければならない。
- 第3項 第1項又は前項の場合には、第1項の破産管財人又は前項の後任の破産管財人は、破産管財人の任務終了による債権者集会への計算の報告を目的として第135条第1項本文の申立てをしなければならない。
- 第4項 破産者、破産債権者又は後任の破産管財人(第2項の後任の破産管財人を除く。)は、前項の申立てにより招集される債権者集会の期日において、第1項又は第2項の計算について異議を述べることができる。
- 第5項 前項の債権者集会の期日と第1項又は第2項の規定による計算の報告書の提出日との間には、3日以上の期間を置かなければならない。
- 第6項 第4項の債権者集会の期日において同項の異議がなかった場合には、第1項又は第2項の計算は、承認されたものとみなす。
破産法 第89条
- 第1項 前条第1項又は第2項の場合には、同条第1項の破産管財人又は同条第2項の後任の破産管財人は、同条第3項の申立てに代えて、書面による計算の報告をする旨の申立てを裁判所にすることができる。
- 第2項 裁判所は、前項の規定による申立てがあり、かつ、前条第1項又は第2項の規定による計算の報告書の提出があったときは、その提出があった旨及びその計算に異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告しなければならない。この場合においては、その期間は、1月を下ることができない。
- 第3項 破産者、破産債権者又は後任の破産管財人(第1項の後任の破産管財人を除く。)は、前項の期間内に前条第1項又は第2項の計算について異議を述べることができる。
- 第4項 第2項の期間内に前項の異議がなかった場合には、前条第1項又は第2項の計算は、承認されたものとみなす。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人は、その任務が終了した場合、遅滞なく、計算の報告書を裁判所に提出しなければならないとされています(破産法88条1項)。
計算報告とは、どの程度の破産財団を収集することができたのか、そのうちいくらを財団債権者や破産債権者に対して弁済または配当できるのかなどを報告することです。
債権者に対する報告義務
破産法 第158条
- 財産状況報告集会においては、破産管財人は、前条第1項各号に掲げる事項の要旨を報告しなければならない。
破産法 第159条
- 破産管財人は、債権者集会がその決議で定めるところにより、破産財団の状況を債権者集会に報告しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索
前記のとおり、破産管財人は、破産裁判所に対して報告義務を負っているだけでなく、情報の配当として、債権者に対しても破産管財業務の遂行状況等を報告すべき義務を負っています。
破産管財人は、任務を終了した場合、前記のとおり、裁判所に対して任務終了の計算報告書を提出し、任務終了時の計算報告の債権者集会の招集を申し立てなければならないとされています(88条3項)。
ただし、実務では、破産管財人による招集の申立てをしなくても、債権者集会の開催が予定されているのが通常です。
この債権者集会は、財産状況報告集会を兼ねているのが通常です。破産管財人は、債権者も出席する財産状況報告集会において、破産法157条1項各号に定める事項の要旨を、報告しなければなりません(破産法158条)。
また、破産管財人は、債権者集会の決議で定められた場合、破産財団の状況を債権者集会で報告しなければならないとされています(破産法159条)。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
破産法と資格試験
倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。
この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。
ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
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参考書籍
破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。
破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。
条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。
司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。
倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。
倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。


