この記事にはPR広告が含まれています。

相続の限定承認とは?

相続の承認・放棄の画像
point

相続の限定承認とは,「相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して」相続の承認をすることをいいます。つまり,相続財産の範囲内で相続負債を支払い,なお余剰があれば,それを承継することができるという制度です。

相続財産の範囲内で相続債務を支払えばよいので,プラスの相続財産よりも相続債務の方が大きい場合,支払いきれない部分について相続人が責任を負うことは無くなります。

限定承認とは?

民法 第922条
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

相続人は,相続をするかしないかの選択権を有しています。相続人が,相続をするとの意思表示をすることを,相続の承認といいます。この相続の承認には,単純承認限定承認があります。

このうち,相続の限定承認とは,「相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して」相続の承認をすることをいいます(民法922条)。

簡単にいえば,相続財産で負債や遺贈を弁済して,それでもなお余りがあった場合にだけ相続財産を承継する,という留保を付けて相続を承認するということです。

限定承認をすると,上記のとおり,まず,相続財産から,被相続人の債権者に対して負債(相続債務)の弁済が行われ,また,受贈者に対して遺贈が弁済されます。

相続財産で相続債務や遺贈を支払い切れなかった場合,その支払い切れなかった部分について,相続人は責任を負いません。

他方,相続債務や遺贈をすべて弁済しても,まだプラスの相続財産が残っていれば,それを相続人が承継することになります。

限定承認は,プラスがあった場合だけ相続をすることができるという制度なのです。

そのため,相続財産のうちで,プラスの財産が多いのかマイナスの財産が多いのかが分からないという場合に有効な手段といえます。

限定承認の方法

限定承認は,単純承認の場合と異なり,一定の手続を踏んでいなければなりません。

具体的には,相続開始を知った時から3か月以内に,家庭裁判所に対して,限定承認の申述をして,審判をしてもらわなければなりません(民法915条1項本文)。

相続開始を知った時から3か月以内に限定承認の申述をしないと,法定単純承認が成立してしまい,その後に限定承認をすることはできなくなります(民法921条2号)。

この相続開始を知った時から3か月の期間のことを「熟慮期間」といいますが,この熟慮期間は伸長することが可能な場合があります。ただし,熟慮期間を伸長する場合にも,家庭裁判所に熟慮期間伸長の申述をしておく必要があります(民法915条1項ただし書き)。

また,限定承認の場合,相続放棄の場合と異なり,共同相続人全員で限定承認の申述をする必要があります(民法923条)。つまり,共同相続人がいる場合,自分1人だけ限定承認の申述をすることはできないということです。

さらに,共同相続人全員で申述しなければならないということは,そのうちの1人が単純承認をしたり,法定単純承認が成立してしまったりしても,もはや限定承認できなくなるということでもあります。

ただし,共同相続人の1人が相続放棄をしたとしても,その共同相続人ははじめから相続人ではなかったものとして扱われることになるため,それ以外の共同相続人全員で限定承認をすることは可能です。

限定承認のメリット・デメリット

前記のとおり,限定承認は,相続財産のうちで,プラスの財産が多いのかマイナスの財産が多いのかが不明である場合に,マイナスの財産を負わずに相続財産を清算できるというメリットがあります。

しかし,限定承認の手続は,相続放棄に比べて,かなり複雑で手間や費用もかかります。

また,限定承認を行う場合には,相続財産について準確定申告をしなければならない場合もありますし,限定承認において資産を売却した場合にはみなし譲渡所得税を負担しなければならなくなることもあります。

マイナスの財産を受け継がずにプラスの財産だけ承継できるという点だけを考えて安易に限定承認を選択すると,思わぬ負担を背負う可能性があります。

限定承認を選択するかどうかは,できる限り相続財産を調査した上で,上記のような手間や費用の負担を考慮しつつ検討する必要があるでしょう。

限定承認の利用の現状

限定承認は,相続財産のうちで,プラスの財産が多いのかマイナスの財産が多いのかが不明である場合に有効な手段です。もっとも,相続放棄に比べ,この限定承認が用いられる場合は,多くありません。

それは,相続放棄に比べて手続が複雑であること,共同相続人全員で申述をしなければならないため,例えば,共同相続人の1人にでも単純承認や法定単純承認が成立してしまうと利用できなくなるため,共同相続人の足並みが完全にそろわなければならないことなどが原因であるといわれています。

タイトルとURLをコピーしました