相続の承認とは?

相続の承認・放棄の画像

相続人が相続をする旨の意思表示をすることを,相続の承認といいます。この相続の承認には、単純承認と限定承認があります。

相続の承認とは?

相続が開始されると,プラスの財産(資産)だけでなく,マイナスの財産(負債)も含め,被相続人が有していた一切の権利義務(相続財産)が相続人包括承継されることになります。

しかし,無条件に負債を受け継がなければならないということになると,相続をするかどうかという相続人の意思を無視することになり,相続人の権利を侵害するおそれがあります。

そこで,法は,相続人に,相続をするかしないかの選択権を与えています。

そして,このうちの,相続をする旨の意思表示のことを「相続の承認」といいます。他方,相続をしない旨の意思表示を「相続放棄」といいます。

単純承認と限定承認

この相続の承認には,単純承認と限定承認とがあります。

単純承認

民法 第920条
相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

単純承認とは,何らの留保もなく相続をするということです(民法920条)。

単純承認をすると,その相続人は,民法の原則に従って,被相続人の一切の権利義務を包括的に承継することになります。

単純承認については,特に特別な手続はありません。後述するとおり,相続開始を知った時から3か月が経過すれば,法定単純承認の成立によって,自動的に単純承認したことになります(民法921条2号、915条1項本文)。

したがって,単純承認をしようという場合には,特に何もする必要がないということになります。もちろん,あえて単純承認の意思表示をすることも可能です。

限定承認

民法 第922条
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

限定承認とは,「相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して」相続の承認をすることをいいます(民法922条)。

要するに,相続財産のうちの借金などの負債を支払ってもなお余りがあれば,それを受け取るということです。

限定承認は,相続財産のうちでプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いのか不明であるという場合に有効な手続です。

ただし,限定承認は,相続開始を知った時から3か月以内に,家庭裁判所に限定承認の申述をしなければなりません(915条1項本文)。また,限定承認は,相続人全員で申述をすることが必要となります(民法923条)。

法定単純承認

民法 第921条
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
第1号 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
第2号 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
第3号 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

民法 915条 第1項
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

前記のとおり,相続人は,選択権に基づいて,限定承認をすることができます。もっとも,承認するのか放棄するのかをいつまでも決めないでいると法律関係が不安定になってしまいます。

そこで,一定の事由がある場合,相続人は単純承認をしたものとみなされて,それ以降,限定承認や相続放棄をすることができなくなる場合があります。これを「法定単純承認」といいます(民法921条)。

法定単純承認の原因となる事由は,以下のとおりです。

  • 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき(保存行為・短期賃貸借を除く)
  • 相続人が相続開始を知った時から3か月以内に限定承認・相続放棄をしなかったとき
  • 相続人が,相続財産の全部若しくは一部を隠匿・消費・悪意の相続財産目録不記載したとき

上記の事由がある場合には,法定単純承認が成立します。これが成立すれば,上記のとおり,限定承認すらできなくなってしまいますので,注意が必要です。

タイトルとURLをコピーしました