この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

個人再生をしたからといって、裁判所・個人再生委員・依頼した弁護士があえて家族や勤務先などに連絡をすることはありません。
もっとも、家族や勤務先から借入をしている場合などには、個人再生したことを家族や勤務先などに知られる可能性はあります。同居の家族などにはあらかじめ話をして協力を求めるべきでしょう。
個人再生したことを家族や勤務先などに知られる場合
個人再生を弁護士に依頼した場合、その弁護士から各債権者に受任通知が送付されます。その後の債権者からの督促や請求その他の連絡は、基本的にすべて弁護士に届けられます。
また、個人再生を申し立てた後の裁判所や個人再生委員からの通知や連絡も、すべて弁護士に届けられます。弁護士自身も、家族や勤務先などにわざわざ連絡をすることはありません。
そのため、個人再生をしたからといって、ただちに家族・勤務先・その他第三者に知られる可能性は低いでしょう。
ただし、まったく誰にも知られずにできるとは限りません。個人再生をしたことを知られる可能性が無いとは言い切れません。以下では、家族・勤務先等に知られる可能性がある場合について説明します。
同居の家族の協力は必須
まず、前提として、同居または生計を1つにしている家族の協力は、個人再生において必須です。
したがって、同居の家族には、知られないようにするのではなく、むしろ個人再生をすることを事前に話しておくべきです。
個人再生においては、返済を継続していけるだけの資力が必要です。その資力があるかどうかは、債務者本人だけでなく、同居の家族全体の収支をみて判断されます。
実際、個人再生の申立てにおいては、単に債務者本人の収支や財産だけでなく、同居の家族の収支や財産を明らかにする書類や、家族全体での家計簿を提出することが求められるのが通常です。
これらの書類を用意してもらったり、家計簿作成に協力してもらう必要がある以上、同居の家族には個人再生に協力してもらえるよう、あらかじめ説明をしておくべきなのです。
家族や勤務先などから借入れをしている場合
前記のとおり、弁護士・裁判所・個人再生委員が、家族や勤務先などに連絡することはありませんが、例外があります。それは、その家族や勤務先が債権者の場合です。
個人再生においては、債権者の平等が強く求められます。したがって、一部の債権者だけ除外することはできません。
そのため、家族や勤務先等から借入れをしていた場合、その家族や勤務先も債権者ということになりますから、他の貸金業者等の債権者と同様、その家族や勤務先宛てにも通知をすることになります。
それによって、その家族や勤務先等に個人再生をしていることを知られることになります。
家族や第三者が連帯保証人等になっている場合
個人再生を含め債務整理を弁護士に依頼した場合、弁護士が各債権者に受任通知を送付して返済・支払いを停止します。
支払いが停止されると、期限の利益が失われて分割払いの約定の効力がなくなり、債権者は一括で返済を求めることができるようになります。
さらに、債権者は、その債務についての保証人・連帯保証人・連帯債務者に対しても一括で支払いを求めることになります(ただし、保証人など自身で分割払いの話し合いができないわけではありません。)。
また、個人再生をして再生計画が認可されたことにより債務者本人の債務は減額されたとしても、その債務の保証人・連帯保証人・連帯債務者に減額の効果は及びません。
そのため、債権者は、連帯保証人等に対して、債務者に代わって約定金額の支払いをするよう請求することになります。
家族などが連帯保証人等になっている場合、債権者からその家族などに対して保証債務等を支払うよう請求がいくことになります。
それによって、その家族等に個人再生をしていることを知られる可能性があります。
財産が引き揚げられる場合
個人再生では、自己破産と異なり、必ずしも財産を処分しなければならないわけではありません。
しかし、ローンで商品を購入し、そのローン残高が残っている場合に個人再生をすると、その商品はローン会社によって引き揚げられか、または競売等にかけられることになります。
例えば、自動車ローンが残っている場合には、その自動車は引き揚げられてしまいます。
また、住宅ローンが残っている場合には、住宅が競売にかけられることになります(ただし、住宅資金特別条項を利用できる場合は、住宅を失わずに済みます。)。
突然財産が引き揚げられたり、競売にかけられたりすることになれば、その財産を利用していたご家族等に、債務の返済が滞っていること、さらには、個人再生をしていることを知られる可能性があります。
債権者から裁判を提起された場合
個人再生を含め債務整理を弁護士に依頼し、弁護士が各債権者に受任通知を送付すると、債務者本人に対する債権者からの電話・手紙・FAX等による請求や督促は停止されます。
しかし、本人宛ての電話等ができなくなるからといって、裁判を提起することまで禁止されるわけではありません。
貸金返還の訴訟が提起されると、債務者の自宅宛てに、裁判所から訴状や呼出状が届きます。
それによって、同居の家族に、債務の返済が滞っていること、さらには、個人再生をしていることを知られる可能性があります。
クレジットカード等の利用が停止された場合
個人再生を含め債務整理を弁護士に依頼し、弁護士が各債権者に受任通知を送付して返済・支払いを停止した場合、クレジットカードの利用が停止され、最終的にカード契約は解約になります。
もし家族がそのカードや家族カードを利用していた場合、突然、カードが使えなくなってしまうので、そのことにより個人再生をしていることを知られる可能性はあります。
官報公告により知られる場合
裁判所に個人再生を申し立て、再生手続が開始されると、そのことが官報に公告されます。個人再生では、手続の終了まで手続の各段階ごとに3回は官報に公告されます。
官報を常日頃から確認するような人は少ないでしょうが、とはいえ、誰でも閲覧は可能です。誰も見ないとは言えません。
したがって、この官報から、ご家族や勤務先等に個人再生をしていることを知られる可能性があります。
その他の可能性
家族や勤務先に個人再生をしていることを知られる可能性があるものとして代表的なものは、上記までに述べてきたとおりです。
とはいえ、上記の場合以外にも知られてしまう可能性が無いとまではいえません。何がきっかけで知られてしまうかは分からないからです。
特に、同居のご家族等には何かの拍子で知られてしまう可能性があるでしょう。
前記のとおり、同居の家族には、むしろあらかじめ個人再生のことを話し合って協力を求めるべきです。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
弁護士の探し方
「個人再生をしたいけどどの弁護士に頼めばいいのか分からない」
という人は多いのではないでしょうか。
現在では、多くの法律事務所が個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
弁護士法人東京ロータス法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・休日対応・メール相談可
・所在地:東京都台東区
弁護士法人ひばり法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・依頼後の出張可
・所在地:東京都墨田区
レ・ナシオン法律事務所
・相談無料
・全国対応・メール相談可・LINE相談可
・所在地:東京都渋谷区
参考書籍
本サイトでも個人再生について解説していますが、より深く知りたい方のために、個人再生の参考書籍を紹介します。
個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。
個人再生の手引(第2版)
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。
はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。
書式 個人再生の実務(全訂6版)申立てから手続終了までの書式と理論
編集:個人再生実務研究会 出版:民事法研究会
東京地裁・大阪地裁の運用を中心に、個人再生の手続に必要となる各種書式を掲載しています。書式を通じて個人再生手続をイメージしやすくなります。