個人再生にはどのようなメリットがあるのか?

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個人再生(個人民事再生)には,任意整理や自己破産にはないメリットがあります。

  • 弁護士等が受任通知を送付することにより,直接の取立てを停止することが可能です。
  • 個人再生手続が開始されると,債権者は強制執行等をすることができなくなり,すでにされている強制執行等を停止させたり,場合によっては取り消すことも可能な場合があります。
  • 個人再生は法的整理手続ですから,任意整理と異なり,法的な拘束力があります。
  • 大幅な借金の減額(最大で10分の1)や3年から5年の長期分割払いへの変更が可能です。
  • 自己破産と異なり,財産処分は必須ではなく,資格制限もありません。免責不許可事由がある場合でも利用可能です。
  • 住宅資金特別条項を利用することによって,住宅ローンの残る自宅を処分せずに,住宅ローン以外の借金を整理できます。

個人再生とは?

債務整理には,個人再生の他にも任意整理自己破産といった方法があります。

このうち「個人再生(個人民事再生)」とは,民事再生法に基づく法的整理手続です。通常の民事再生手続はそれなりの規模の法人を対象としているため,個人には使いにくい面がありました。

そこで,民事再生手続を個人にも利用できるように,手続を簡易化した民事再生手続の特則が,この個人再生(個人民事再生)なのです。

具体的に言うと,個人再生とは,裁判所に再生計画を認可してもらうことにより,債務を減額してもらった上で分割払いにしてもらえるという裁判手続です。

債権者からの直接取立て・請求・督促が停止されること

他の債務整理手続同様,個人再生(個人民事再生)の場合も,弁護士等から各債権者に対して受任通知(介入通知・債務整理開始通知)を送付すると,債権者からの直接の取立て・請求・督促は停止します。

これにより,債権者から直接の取立て等がなくなるため,平穏な生活を取り戻し,経済的な債権を図る準備をすることが可能となります。

債権者による強制執行を停止できること

支払いを滞納していると,債権者によって,預金口座や給料などを強制執行によって差し押さえられることがあります。

個人再生の手続が開始されると,債権者は強制執行等をすることができなくなります(民事再生法39条1項)。

また,個人再生手続開始前にすでに強制執行等がされている場合でも,強制執行の停止を上申することによって,その強制執行等を停止することが可能です。

さらに,強制執行等を停止させるだけでなく,強制執行等の取消しを申し立てることにより,強制執行等を取り消すことも可能な場合があります。

法的な強制力があること

債務整理の方法の1つである任意整理は,裁判所を利用せずに債権者と交渉して,生活を崩さない程度の返済計画を合意するという手続です。

任意整理はあくまで裁判外での示談交渉ですから,法律的な制限が少ないというメリットがあります。

しかし,任意整理は裁判外の交渉であるだけに,法的な強制力がありません。要するに,債権者が納得しなければ合意に至らないということです。

これに対し,個人再生は裁判手続です。したがって,強制力があります。裁判所によって再生計画の認可が決定されれば,法的な強制力が生じるので,債権者もそれに従わざるを得なくなるのです。

つまり,個人再生には,債権者の意向に左右されにくいというメリットがあるといえます(ただし,小規模個人再生の場合には,債権者からの一定の同意が必要となります。)。

大幅な減額・分割払いへの変更が可能であること

個人再生の場合,債務の大幅な減額がなされることもあります。

借金総額,資産・収入の状況,どの手続を選択するのかによっても異なりますが,借金(引き直し計算後)が5分の1(借金が3000万円以上の場合は10分の1)まで減額されることもあります。

また,個人再生の場合,単に減額されるだけではなく,その減額された借金を,3年間(~5年間)の長期返済の計画としてもらえます。

任意整理ですと,引き直し計算以上に減額することは難しく,どの程度の分割にできるのかも相手方によって異なります。また,月々の返済金額も高額となってしまう場合もあります。

したがって,個人再生の方が,任意整理よりも総額・毎月の返済額のいずれにおいても低額にできる可能性があるというメリットがあります。

自己破産のような制限がないこと

自己破産の場合は,任意整理や個人再生と異なり,免責が許可されれば,基本的に借金の全額について支払義務が免除されるというメリットがあります。

しかし,効果が強力な反面,財産を処分しなければならなかったり,破産手続中は資格を使った仕事ができなかったり(資格制限),または,免責不許可事由がある場合は免責が許可されないリスクがあったりなどの制限もあります。

これに対し,個人再生の場合,必ずしも財産の処分は必要ありません。また,破産の場合と異なり,資格制限などの法的な制約もありません。

さらに,免責不許可事由に該当する事情があっても,個人再生は認められますから,その点も大きなメリットでしょう。

財産の処分が必須とされていないこと

自己破産の場合は,自由財産に該当するものを除いて,基本的に財産を処分しなければなりません。

これに対し,個人再生の場合は,財産の処分は必須とされていません。つまり,財産を維持したまま,債務の減額や分割払い化が可能であるということです。

そのため,どうしても処分できない財産があるような場合には,自己破産でなく個人再生を選択することになるでしょう。

ただし,財産を持っていることが個人再生手続に何も関係ないわけではありません。個人再生であっても,少なくとも,財産の価値(清算価値)に相当する金額は返済をしなければならないとされています。

住宅ローンの残る自宅を維持できる場合があること

個人再生には,さらに大きなメリットがあります。それは,住宅資金特別条項という特別の制度が用意されているということです。

不動産を住宅ローンで購入する場合,その購入した不動産に,住宅ローン債権者(銀行など)によって,担保として抵当権が設定されるのが通常です。

つまり,住宅ローンが支払えなくなった場合に,抵当権を持つ債権者(抵当権者)は,その不動産の抵当権を実行して不動産を売却し,その代価を未払いの住宅ローンに充てることができるということです。

住宅ローンの残っている不動産を所有しているが,住宅ローン以外に借金があるという場合,自己破産をすると,その不動産は破産手続(または競売手続)において処分しなければなりません。

しかし,その不動産が自宅であるような場合には,処分したくても容易にできないということもあり得ます。

そこで,住宅ローン以外の借金を任意整理することを検討することになりますが,前記のとおり,任意整理の場合には返済金額が大きくなる場合があるため,住宅ローンの支払いを考えると,任意整理で返済していくことは難しいということもあります。

そこで生み出された制度が,個人再生における住宅資金特別条項という制度です。

これは,自宅の住宅ローンは通常どおり(または通常の返済に若干の変更を加えて)支払いつつ,それ以外の借金だけを個人再生手続によって整理するという制度です。

住宅ローンは当初の約定に近い形で支払っていくため,抵当権が実行されることはなくなり,自宅を残すことができます。しかも,住宅ローン以外の借金については,個人再生によって大幅な減額と長期分割払いが期待できるのです。

個人再生を利用する最大のメリットは,この住宅資金特別条項を利用して自宅を処分しないで済むというところにあると言ってもよいかもしれません。

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