任意整理できるかどうかの選択の判断基準とは?

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債務整理の手続のうちで「任意整理」をどのような場合に選択すればよいかについては、ある程度の専門的な判断が必要となってきます。返済総額の見通しを立て、自身の返済能力を見極め、客観的にみて返済が可能かどうかを判断する必要があるからです。

任意整理の選択のポイント

債務整理には,基本的に3つの方法があります。任意整理自己破産および個人再生の3つです。では,どのような場合に任意整理という方法を選べばよいのでしょうか?

選択の基準はいろいろありますが,任意整理の大前提は,「支払えるのか支払えないのか」ということに尽きるでしょう。

つまり,借金などの債務総額を基準として,それが仮に分割払いになったとして,月々支払っていけるのかどうかをまず考えなければいけないということです。

そもそも分割払いになっても支払えないのであれば,他の手続を選択するほかないからです。

任意整理の返済原資の予測

前記のとおり,任意整理できるかどうかの選択の判断基準は「返済できるのか返済できないのか」ということです。

そこで,任意整理できるかどうかは,あらかじめ,任意整理をした結果をある程度予測した上で,その分割払い金を毎月支払っていくだけの返済原資が用意できるのか,ということをシミュレーションしておかなければなりません。

返済総額の予測

返済原資が足りるのかということをシミュレーションするためには,まずそもそも,任意整理後の債務総額はいくらくらいになるのかということの見通しを立てなければなりません。

ただし,ここでいう基準となる債務総額は,債権者から請求されているそのままの金額ではなく,引き直し計算をした上での債務総額です。

引き直し計算をした上での金額は,当たり前ですが,引き直し計算をしてみないと正確な金額は分かりません。

もっとも、借入れを始めた時期、借入れの期間、途中完済の経験の有無、借入限度額などから、だいたいの見込額くらいは見当をつけなければなりません。そのため、任意整理の経験が必要となってくるのです。

毎月の返済金額の予測

上記のような債務全部の予測金額を分割払いとした場合,月々だいたいいくらくらいの返済金額となるのかを計算します。

任意整理で分割払いにする場合,分割の回数は,原則として36回となるのが通常ですから,上記予測金額を36で割った金額が月々の返済予定金額となります。

したがって,任意整理が可能かどうかは,この毎月の返済予定金額を支払っていくだけの返済原資を毎月用意できるかどうかということになってきます。

なお、36回を超える分割払いでの和解が可能な貸金業者もいますが、それは交渉をしてみなければ分からない部分もあります。任意整理できるかどうかを判断する段階では、やはりまずは36回で返済可能かどうかを検討すべきでしょう。

支払能力の予測

上記のような方法によって月々の予想返済金額を算定します。そして,その上で,本当にこの金額を毎月,しかも3年間支払っていけるのかを考えます。

仮に,さほど問題なく支払えるというのであれば,任意整理を選択できます。

そのままだと返済はちょっと厳しいということならば,もう少し返済金額が少なくなる可能性のある個人再生を選択できます。とても返済は無理そうだということになれば,自己破産を選択することになるでしょう。

支払能力の検討方法

具体的に検討するためには,月々の家計を作成してみるのが良いと思います。そこから月々返済できる金額を考えていくのです。

月々の借金返済に充てることができる余剰金の金額を検討するわけですから,家計はできる限り正確に作る必要があります。

とくに支出です。家賃,食費,光熱費,通信費の他にも,年金,税金などの公租公課,保険料などもあります。

子どもがいれば,その教育費や学費などが必要となりますし,車が有れば駐車場代もかかります。生活状況によって支出は異なります。

自分の生活状況をよく考えて,できる限り正確に余剰金を検討する必要があります。もしこの余剰金をあまりに過大に見積もってしまうと,いざ任意整理を始めたとしても支払えなくなってしまうおそれがあります。

任意整理が上手くいき和解が成立した後に支払えなくなってしまうと,再度の和解は難しいという場合もありますから,自己破産を考えなければならなくなる可能性もあります。

月々の余剰金を検討するだけでは,まだ足りません。

任意整理は,原則として,3年間にわたって支払いを続けていくという和解をするわけですから,3年間その金額を本当に支払っていけるのかどうかも考える必要があります。

たとえば,今は月々5万円以上返済に充てられるお金があるとしても,1年後には子どもが進学するため,学費が必要となる可能性があるという場合もあります。

また,3年以内に定年になり,月々の収入がなくなるということもあるかもしれません。3年以内に何か収入や支出について変化があるかどうかなどもよく考えておく必要があります。

返済原資がギリギリであるという場合

家計の状況からして,月々の返済が可能ではあるものの,かなり厳しいという場合には,仮に和解が成立しても,その後の支払いができなくなってしまうという危険性があります。

こういう場合には,後述する債権者の対応を考えて、36回を超える分割払いでの和解が可能かどうか、可能であるとして何回の分割払いならば可能なのかを考える必要があります。

また、任意整理ではなく、個人再生を使うことができないかどうかを検討しておくのがよいでしょう。場合によっては,自己破産も検討しておいた方がいいかもしれません。

債権者の対応の予測

任意整理を検討する場合には,まず第一に,前記のとおり返済原資を確保できるのかどうかということが重要となりますが,仮に返済原資は問題ないということでもあって,債権者との間で話し合いがつかなければ,そもそも任意整理はできません。

そのため,任意整理できるかどうかの選択の判断基準として,返済原資のほかに,債権者がどのような対応をしてくるのかということを予測しておく必要があります。

仮に,債権者のうちに,和解が困難な貸金業者が含まれているというような場合は,たとえ分割返済が可能であっても,任意整理できないということになってしまいますので,他の債務整理を考えるほかありません。

もっとも,まったく和解に応じないという債権者はあまりいません。和解が困難であるというのは,条件次第ということです。

そのため,一括で支払うことが可能であったり,頭金を多く入れることが可能であったり,あるいは,分割の回数を減らして月々の支払額を増額することが可能であるという場合には,和解ができるということもあります。

したがって,これらのことも考えた上で,他の債務整理手続,特に個人再生をとるべきかどうかを検討した方がよいでしょう。

他の債務整理手続との比較・検討

仮に,返済原資も用意でき,債権者も話し合いに応じてくれる業者等であるという場合であっても,本当に任意整理がよいのかということは,自己破産や個人再生などと比較しつつ検討しておくべきでしょう。

たしかに,自己破産や個人再生には,法律上の要件や手続,また任意整理にはないデメリットも存在します。

しかし,個々のご事情によっては,それらのデメリットが生じないという場合もあります(たとえば,自己破産では一定の財産の処分が必要ですが,処分すべき財産がないのであれば,その点のデメリットはないということになります。)。

そのような場合には,任意整理をするよりも,自己破産や個人再生を選択した方がメリットが大きいということも少なくありません。

特に,前記のとおり,仮に返済原資が予定返済金額ギリギリであるというような場合には,本当に任意整理でよいのかということを考えておく必要があります。

また,債権者数が少ない場合には,各業者への返済金額の割り振りを細かく検討する必要がないということがあります。

こういう場合であれば,特定調停を使ってみるのもいいかもしれません。特に過払い金が発生する可能性がない場合には,特定調停だけで解決することが可能です。

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