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貸金業者が取引履歴を開示してこない場合はどうすればよいのか?

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一部ではありますが、取引履歴を開示してこない貸金業者もいます。取引履歴が開示されなかった場合には、再開示請求を行い、行政処分を求める申告を行うことになります。それでも開示されない場合には、資料等をもとに取引経過を推定して取引履歴を作成した上で、引き直し計算(推定計算)をすることになるでしょう。

取引履歴の不開示

債務整理をする場合には、まず、それまでの貸金業者との取引をすべて利息制限法所定の制限利率に直して正確な債務額を算出するため、引き直し計算を行います。

その引き直し計算をするための前提として、貸金業者から取引履歴を開示してもらう必要性があります。記憶や他の書類によって取引の経過を推定によって再現する方法もありますが,これには限界があるからです。

貸金業者には、取引履歴を開示する義務が課されています。そのため、大半の貸金業者は、取引履歴を開示してくれます。

ところが、一部の貸金業者等は、取引履歴の一部を開示してこなかったり,ひどいところになると,まったく取引履歴を開示してこないという場合もあります。この取引履歴不開示の問題は,債務整理における大きな問題の1つです。

とはいえ、取引履歴が開示されないのに、開示されるまで待つというわけにはいきません。そこで、取引履歴不開示の場合の対処法を考える必要があります。

再開示請求

取引履歴が開示されない場合のオーソドックスな対応方法としては,完全な取引履歴を開示するまで,根気よく再開示を請求する方法があります。これによって,完全な履歴を提出してくるという場合もなくはありません。

しかし,最初から全開示をしてこない業者の場合,そのまま再開示を請求しても効果がないという場合が多いと思います。そこで,再開示を促すように,何らかの手を打つ必要があります。

行政処分を求める申告

取引履歴不開示の場合の対応の1つとして,監督官庁に対して開示してこない業者に行政指導を求める申告書を提出するという方法があります。

つまり,貸金業者を監督する官庁から,その貸金業者に対して,取引履歴を開示するように指導してもらうのです。

申告する監督官庁とは,都道府県知事による登録業者については都道府県知事,財務局による登録業者については財務局長ということになります。

あるいは,さらに進んで,行政指導にとどまらず,もっと強制力の強い行政処分を求めるように申告をするということもありうるでしょう。

行政処分ということになれば,貸金業の登録を取り消されたり,業務停止命令が下されたりするなど,貸金業者にとっても相当の痛手となりますから,威嚇力も強くなります。

貸金業法では,取引履歴の開示義務が明文化され(貸金業法19条の2)、この開示義務に違反した場合には、業務改善命令がされ(貸金業法24条の6の3)、さらに虚偽の開示をした場合には,登録取り消し又は1年以内の業務停止命令を受けることが規定されています(貸金業法24条の6の4)。

行政処分の申告等によっても開示がない場合の対応方法

行政処分を求める申告を行ってもなお,取引履歴が開示されないという場合には,特定調停を行い,取引履歴を開示させるという方法も考えられます。もっとも,強制力があるわけではないので,そもそも開示に非協力的な業者が応じる可能性は小さいかもしれません。

そうすると,やはり記憶や取引履歴以外の書類に基づいて取引の経過を再現し,推定計算を行うという方法を取らざるを得ないでしょう。

推定計算により過払い金が発生した場合

推定計算の結果,過払金が発生した場合には,推定計算に基づいて過払金返還請求訴訟を提起し,その裁判上で,裁判所を通じて取引履歴の開示を求めるという方法が考えられます。

裁判上で取引履歴の開示を求める方法としては,文書送付嘱託や調査嘱託という方法,あるいは,もっと強力な文書提出命令という制度を利用する方法があります。

また、取引履歴開示義務違反は、不法行為となります(最三小判平成17年7月19日)。過払金返還請求をする場合には、併せて、取引履歴不開示に基づく慰謝料等の請求も行います。

推定計算をしても残債務がある場合

なお,推定計算の結果,残債務が残ってしまいそうだという場合,普通は業者の方もすべての取引履歴を開示をしてきます。

もしそれでも全開示をしてこないならば,しばらく放っておいて,相手方が裁判を提起してくるまで待ち,全開示して請求の根拠を示さなければ払わないと言って全開示を促すという方法もあるでしょう。

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