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事実上の倒産とは?

倒産法の画像
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事実上の倒産とは、法人または個人が、法的倒産手続をとっていないものの、現実的には、支払不能・債務超過またはそれらに陥るおそれのある財務的破たんの状態のことをいいます。

例えば、手形不渡りによる銀行等取引停止処分を受けた場合、弁護士介入による支払停止や私的整理がなされた場合などが挙げられます。

法律上の倒産と事実上の倒産

倒産」という用語は、法律上、統一的な定義が規定されていませんが、一般的には、法人・個人が経済的に破たんし、債務を一般的・継続的に弁済することができなくなることを意味するとされています。

この倒産という概念には、「法律上の倒産」と「事実上の倒産」という区別があります。

法律上の倒産とは、破産手続・特別清算手続・民事再生手続・会社更生手続などの法的手続において、倒産状態にあると認められた場合のことを意味します。

具体的に言うと、裁判所によって、破産手続・特別清算手続・民事再生手続・会社更生手続の開始決定を受けた状態のことを指して法律上の倒産と呼んでいます。

これに対して、事実上の倒産とは、上記のような法的手続における倒産の認定を受けていないものの、現実的には、それらと同等の状態にあると言える場合のことを意味します

事実上の倒産の意味

前記のとおり、事実上の倒産とは、法的手続における倒産の認定を受けていないものの、現実的には、それらと同等の状態にあると言える状態にある場合のことをいいますが、具体的にはどのような状態なのかが問題となってきます。

この点については、法的倒産手続がどのような場合に開始されるのかを考える必要があるでしょう。

法的倒産手続の基本類型は破産手続ですが、この破産手続は、債務者が「支払不能」または「債務超過」の場合に開始されます。「支払停止」があった場合には、支払不能が推定されます。

支払不能とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済をすることができない客観的状態にあることをいいます(破産法2条11号)。

支払不能を推定させる支払停止とは、債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為のことをいいます(最一小判昭和60年2月14日集民144号109頁)。

また、債務超過とは、債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態、すなわち、債務額の総計が資産額の総計を超過している客観的状態にあることをいいます。

民事再生手続など再建型の法的倒産手続の場合は、支払不能または債務超過になるおそれがある場合に、手続が開始されます。

つまり、法的倒産手続においては、支払不能・債務超過またはそれらに陥るおそれのある財務的破たん状態にあることが、手続開始の原因、つまりは「倒産」であると考えられているということです。

そうすると、事実上の倒産とは、法的倒産手続をとっていないものの、現実的には、支払不能・債務超過またはそれらに陥るおそれのある財務的破たん状態にある状態のことを意味するといえるでしょう。

事実上の倒産といえる場合

事実上の倒産状態にあると言える場合として、最も典型的なものとして、手形不渡りによる銀行等取引停止処分を受けた場合が挙げられます。

中小企業倒産防止共済法2条2項2号や、企業信用を調査する会社においても、手形不渡りによる銀行等取引停止処分を受けたことが、事実上の倒産の類型に挙げられています。

手形の不渡りによって銀行等における手形取引が停止されると、資金繰りが破たんするのが通常です。そうなると、支払不能またはそれに近い状態に陥りますから、事実上の倒産の例として挙げられるのです。

また、手形の不渡りでなくても、弁護士の介入によって支払いを停止した場合なども、支払停止によって支払不能が推定できますので、やはり事実上の倒産に当たるといえます。

その他、事業を停止して夜逃げをしてしまった場合なども、事実上の倒産といえるでしょう。

未払い賃金立替払い制度における事実上の倒産

会社などの法人が倒産した場合、従業員に対する賃金の支払いもなされないことが少なくありません。

しかし、従業員にとっては賃金の支払いがなされないことは死活問題になります。そこで、公的な福祉制度として、独立行政法人労働者健康安全機構による未払賃金立替払制度が用意されています。

未払賃金立替払制度とは、使用者である会社などの法人が倒産した場合に、労働者健康安全機構が、労働者の賃金の一部を、使用者に代わって立替払いしてくれるという制度です。

この未払賃金立替払制度は、使用者である会社などの法人が法的倒産手続を開始した場合だけでなく、事実上の倒産をした場合にも利用できるものとされています。

ただし、事実上の倒産を理由に未払い賃金立替払い制度を利用する場合には、労働基準監督署長によって事実上の倒産の認定を受けなければならないとされています。

未払賃金立替払制度における事実上の倒産とは、「事業主が事業活動に著しい支障を生じたことにより労働者に賃金を支払うことができない状態として、事業活動が停止し、再開する見込みがなく、かつ、賃金支払能力がない状態になったこと」を言うものとされています(賃金の支払の確保等に関する法律7条、賃金の支払の確保等に関する法律施行令2条1項4号、賃金の支払の確保等に関する法律施行規則8条)。

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