
倒産法とは講学上の名称で、倒産法という名称の法律はありません。倒産法とは、破産法・民事再生法・会社更生法・会社法など倒産処理に関連する諸法令の総称です。
倒産法とは
倒産とは、一般的に、法人または個人が経済的に破綻し、弁済期にある債務を一般的継続的に弁済できない状態に陥ることをいいますが、この倒産に関し、「倒産法」と呼ばれる用語があります。
実際には、倒産法という名称の法律はありません。倒産法という用語は講学上の用語で、破産法・民事再生法・会社更生法など倒産処理に関連する諸法令をまとめて倒産法と呼んでいるのです。
倒産法に含まれる法律
前記のとおり、倒産法には倒産処理に関する各種の法令が含まれます。代表的な倒産法に属する法律は、破産法・民事再生法・会社更生法・会社法でしょう。
この倒産法は、その最終的な目的によって「清算型」と「再建型」に区別することができます。
清算型の倒産法
各種倒産法のうちでも、最も基本的な法律は「破産法」です。破産法では、法人・個人の破産手続について定めています。
破産手続とは、破産者の財産を換価処分して、それによって得た金銭を債権者に弁済または配当するという裁判手続です。
会社法には、特別清算という手続が定められています。そのため、この会社法(の特別清算に関する規定の部分)も倒産法の1つに含まれます。
特別清算手続は、株式会社に特化した破産法の特別類型ともいえる手続で、やはり債務者の財産を換価処分して債権者に弁済または配当するという手続です。
破産法や会社法(特別清算の規定)では、最終的に法人・会社が清算されて消滅することになるため、清算型倒産法と呼ばれることがあります。
再建型の倒産法
倒産法の分類としては、清算型のほかに、再建型と呼ばれるタイプもあります。法人を消滅させずに再建させることを目的とする倒産法です。
再建型の倒産法の基本法は「民事再生法」ですが、株式会社にだけ認められる特別類型として「会社更生法」があります。いずれも、債務を減額して経営再建を目指すという制度です。
その他の倒産法
上記の破産法・民事再生法・会社更生法・会社法の他にも、倒産法に含めることができる法律はあります。
たとえば、特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(特定調停法)なども倒産法に含めることができるでしょう。
また、上記のような裁判手続による倒産処理を「法的整理」といい、裁判外で行われる倒産処理を「私的整理」と呼ぶことがあります。
この私的整理であっても、法律に基づく交渉等が行われるため、倒産法体系に含めて考えられています。
私的整理における代表的な制度として事業再生ADRがありますが、これも裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律や産業活力再生特別措置法などに基づいて行われることから、これらの法律も倒産法に含まれるといってよいでしょう。
倒産法の基本的な目的・理念
倒産法というと、債務者のための制度というイメージが強いでしょう。実際には、その面が強いのですが、倒産法の制度目的はあくまで、第一次的には債権者の利益の確保にあるとされます。
債務者が多くの負債を抱えて倒産状態になった場合、もし倒産法による規律が無かったとすると、各債権者は個別に債権回収を行うことになりますが、そうなると早い者勝ちということになり、混乱を生じるばかりか不公平となる場合もあります。
そこで、債権者に対して平等・公平に債務者の財産を分配することによって、総債権者の利益を図ろうというのが倒産法の制度目的とされているのです。
もちろん、債務者自身のためという意味もあります。特に個人の倒産や、再建型倒産の場合にはその意味合いが強いでしょう。
さらに、破綻してしまった債務者の資産・財産を平等・公平に債権者等に分配することによって、再度その財産の有効利用を促進するという社会経済的な目的もあるとされています。