
債務整理を弁護士や司法書士に依頼する場合には、手続の実費のほかに、弁護士や司法書士に対する報酬も費用として必要となってきます。
債務整理とは
借金返済の問題は法的な解決が可能です。借金問題解決の法的手段のことをまとめて「債務整理(さいむせいり)」と呼んでいます。
債務整理には,任意整理,自己破産,個人再生,過払金返還請求,消滅時効の援用,相続放棄などの方法があります。
これら債務整理の手続を弁護士や司法書士に依頼する場合、手続の実費以外に、弁護士や司法書士に対する報酬も費用として必要となってきます。
弁護士や司法書士の報酬は、それぞれの事務所によって異なります。もっとも、おおまかな費用の相場はあります。以下では,債務整理についての費用の相場について説明します。
債務整理の法律相談料の相場
弁護士や司法書士に債務整理を依頼する場合には、まず依頼の前に法律相談を行うのが通常です。現在では、債務整理の法律相談は、大半の事務所で無料相談となっています。むしろ、有料相談を探す方が難しいくらいです。
したがって、債務整理の法律相談料の相場は「無料」です。
任意整理の費用の相場
債務整理には「任意整理」という方法があります。任意整理とは,弁護士が各債権者と交渉し,日常生活を維持できるような返済条件に変更してもらう裁判外の手続です。
弁護士や司法書士に依頼をする場合は、着手金と成功報酬金が必要です。着手金とは、依頼をした時に発生する報酬です。成功報酬金は、文字どおり、依頼した事件が成功した場合に支払う報酬です。
任意整理の場合、全部をまとめてではなくて、債権者1社ごとに報酬を決めるという形になっているのが一般的です。
また、任意整理の場合は、成功報酬にも種類があります。1つは、債権者との和解が成立した場合の通常の成功報酬金、もう1つは、最初の債務額から減額できた場合に、その減額分に応じて算出される減額報酬です。
加えて、手続の実費も必要です。ただし、任意整理の場合には、高額の実費は発生しないでしょう。
任意整理の費用の相場は、以下のとおりです。弁護士も司法書士も、費用的にはあまり変わりはありません。なお、以下の金額はいずれも消費税を抜いています。
着手金 | 債権者1社につき、15,000円~40,000円 |
和解が成立したときの報酬金 | 債権者1社につき、15,000円~40,000円 |
減額報酬金 | 減額報酬なし~減額した金額の10%相当額 |
実費 | 1,000円~5,000円 |
上記のほか、債権者から訴えられて訴訟対応が必要な場合には、訴訟出頭のための日当や追加の実費などがかかります。また、債権者への支払いを弁護士や司法書士に代行してもらう場合には、振込手数料や代行手数料などがかかることもあります。
いずれにしても、任意整理の場合は、債権者が何社あるのかによって、費用が変わってきます。
任意整理の費用は、着手金・報酬金(減額報酬は除く。)あわせて、概ね1社4万~6万円くらいが平均的な金額ではないでしょうか。
自己破産の弁護士費用
債務整理には「自己破産」という方法があります。自己破産とは,裁判所に対して破産手続を申し立て,一定の財産を処分する代わりに,支払いきれない借金の支払義務を,破産手続と並行して行われる免責手続において免除してもらう裁判手続です。
自己破産の場合も、弁護士や司法書士に依頼する場合には、着手金や成功報酬金が必要となります。自己破産の場合の成功報酬は、裁判所から免責許可決定を得られた場合に発生します。
また、自己破産の場合は、任意整理と異なり、裁判所に支払う予納金も必要です。予納金の額は、管財手続になるか同時廃止手続になるかで、大きく変わってきます。
以下の自己破産の費用の相場は、個人消費者の場合を想定しています。個人事業者や法人の場合には、より高額になります。なお、以下の金額はいずれも消費税を抜いています。
弁護士も司法書士も、報酬にあまり変わりはありませんが、予納金の額が、弁護士に依頼した場合よりも、司法書士に依頼した場合の方が高額になるため、全体としては、弁護士の方が費用が安くなることもあります。
着手金 | 150,000~400,000円 |
成功報酬金 | 0~200,000円 |
裁判費用(管財手続) | 裁判所により異なります。 東京地裁や大阪地裁では、約230,000円~ 司法書士の場合は、弁護士代理の場合よりも10万円ほど高額になることがあります。 |
裁判費用(同時廃止) | 30,000円前後 |
その他の実費 | 5,000円~10,000円 |
上記のほか、債権者から訴えられて訴訟対応が必要な場合には、訴訟出頭のための日当や追加の実費などがかかります。
自己破産の費用(個人消費者の場合)は、弁護士・司法書士の報酬が、着手金・報酬金あわせて概ね30万~40万円が平均的です。これに裁判費用を足した金額が合計の費用ですので、管財事件の場合は、おおよそ60万円前後となるでしょう。着手金は高いが成功報酬がない、というような場合もあるので、合計額で見積もっておいた方がよいでしょう。
個人再生の費用の相場
債務整理には「個人再生」という方法があります。個人再生とは,裁判所に対して個人再生手続を申し立て,借金の減額や分割払いへの変更を定めた再生計画を認可してもらう裁判手続です。認可されれば,その計画に沿って返済していけばよいことになります。
個人再生の場合も、弁護士や司法書士に依頼する場合には、着手金や成功報酬金が必要となります。個人再生の場合の成功報酬は、裁判所から再生計画認可決定を得られた場合に発生します。
個人再生には、住宅資金特別条項という制度があります。この制度を利用する場合は、利用しない場合よりも、着手金などの金額が高額に設定されている事務所もあります。
また、個人再生の場合も、裁判所に支払う予納金も必要です。予納金の額は、裁判所によって異なります。
以下の個人再生の費用の相場は、個人消費者の場合を想定しています。個人事業者の場合には、より高額になります。なお、以下の金額はいずれも消費税を抜いています。
弁護士も司法書士も、報酬にあまり変わりはありませんが、予納金の額が、弁護士に依頼した場合よりも、司法書士に依頼した場合の方が高額になるため、全体としては、弁護士の方が費用が安くなることもあります。
着手金(住宅資金特別条項なし) | 200,000~400,000円 |
着手金(住宅資金特別条項あり) | 300,000~500,000円 |
成功報酬金(住宅資金特別条項なし) | 0~200,000円 |
成功報酬金(住宅資金特別条項あり) | 0~200,000円 |
裁判費用 | 40,000円前後 個人再生委員が選任される場合は、個人再生委員報酬の予納金が、東京地裁や大阪地裁では、150,000円 司法書士の場合は、弁護士代理の場合よりも5~10万円ほど高額になることがあります。 |
その他の実費 | 5,000円~10,000円 |
上記のほか、債権者から訴えられて訴訟対応が必要な場合には、訴訟出頭のための日当や追加の実費などがかかります。また、債権者への支払いを弁護士や司法書士に代行してもらう場合には、振込手数料や代行手数料などがかかることもあります。
個人再生の費用(個人消費者の場合)は、弁護士・司法書士の報酬が、住宅資金特別条項を利用しない場合、着手金・報酬金あわせて概ね40万~50万円、住宅資金特別条項を利用する場合は、概ね50万~60万円が平均的です。これに裁判費用を足した金額が合計の費用です。着手金は高いが成功報酬がない、というような場合もあるので、合計額で見積もっておいた方がよいでしょう。
過払金返還請求の費用の相場
債務整理そのものではありませんが,債務整理に伴う調査により利息の払い過ぎがあった場合には,貸金業者に対して「過払金返還請求」をすることになります。
当初は債務残高があるという場合には、任意整理という形でスタートするので、その場合には任意整理の費用に加えて、過払金を回収したときの成功報酬が発生することになります。
当初からすでに完済している場合には、過払金返還請求だけの依頼ということになります。この場合は、着手金は無料という事務所も多いようです。
過払金返還請求の報酬も、弁護士・司法書士でほとんど違いがありません。
着手金(債務残高がない場合) | 0~20,000円 |
成功報酬金(和解・判決) | 0~20,000円 |
成功報酬金(過払金の回収) | 回収額の10~25パーセント |
実費 | 1,000円~5,000円 裁判で過払金を回収する場合は、裁判費用がかかります。裁判費用は請求金額によって異なります。 |
過払金返還請求の費用は、やはり、過払金を回収した時の成功報酬金が何パーセントかが大きな違いです。回収額の20パーセントが平均的です。ただし、交渉の場合は20パーセント、訴訟の場合は25パーセントというように分けている事務所もあります。
消滅時効の援用の費用の相場
「消滅時効の援用」を債務整理に利用できる場合があります。借金を支払いをしなくなってから5年以上を経過している場合には,消滅時効を援用することができることがあります。消滅時効を援用すれば,借金は消滅します。
この消滅時効の援用の費用も、弁護士と司法書士で大きな違いはありません。
着手金 | 20,000~50,000円 |
成功報酬金 | 0~減額した金額の10% |
実費 | 3,000円前後 |
消滅時効の援用の費用は、任意整理と同程度の4万~6万円前後が平均的でしょう。成功報酬も、ない事務所の方が多いようです。
相続放棄の費用の相場
「相続放棄」を債務整理に利用できる場合があります。亡くなられた方に借金があった場合,家庭裁判所に相続放棄を申述することによって,借金を相続しないようにすることができます。
この相続放棄の費用は、弁護士よりも司法書士の方が安い事務所が多いようです。
着手金(弁護士) | 50,000~100,000円 |
着手金(司法書士) | 30,000~60,000円 |
成功報酬金 | なし |
実費 | 5,000円前後(ただし、相続資料の収集等を依頼した場合は、書類の取り寄せ費用などが加算されます。) |
相続放棄の費用は、弁護士と司法書士で違いがありました。3か月(熟慮期間)内の場合と3か月経過後の場合とで、費用が異なる事務所もあります。