
民事再生手続(再生手続)とは、「経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする」法的整理手続のことをいいます(民事再生法1条)。
民事再生手続(再生手続)とは
倒産手続には「清算型」と「再建型」という区別があります。
このうち、再建型とは、債務者の収益・財産を維持または向上させつつ、負債を圧縮するなどして、債務者の経済的な再建を図っていく類型の倒産手続です。
この再建型倒産手続の1つに、民事再生法に基づく「民事再生手続」があります。民事再生法では、単に「再生手続」と呼ばれています。
民事再生手続とは、「経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする」法的整理手続のことをいいます(民事再生法1条)。
この民事再生手続は、破産手続開始の原因となる事実(支払不能または債務超過)の生ずるおそれがある場合、または、事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができない場合に利用することができます。
そして、裁判所および裁判所によって選任された監督委員の指導・監督の下で、再生債務者が、業務遂行権および財産管理処分権を維持したまま、債権者の同意により可決された再生計画に基づいて経済的再生を図っていくことになります。
他の倒産手続との違い
民事再生手続(再生手続)には、他の倒産手続と比べてみた場合、以下のような特徴があるといえます。
- 個人(自然人)・法人を問わず利用できる。
- 株式会社以外の法人でも利用できる。
- 再生債務者は一定の財産保有を維持でき、業務遂行権を失わない。
- 裁判所等の監督はあるものの、債務者自身が主体となって手続を遂行する必要がある。
- 経営陣の交替が必須とされていない。
- 債権者の同意・意向が非常に重要な意味を持っている。
破産手続など清算型手続との違い
前記のとおり、民事再生手続は再建型の倒産手続です。
倒産手続には、この再建型のほかに清算型の倒産手続もあります。清算型の基本類型は「破産手続」です。破産手続のほか「特別清算手続」も清算型の倒産手続に分類されます。
清算型は、文字どおり、債務者の財産を換価処分するなどして法律関係を清算する類型の倒産手続です。
清算型倒産手続の場合、債務者の財産はすべて換価処分され、法律関係も清算され、その債務者である法人・会社は消滅します。
これに対し、再建型である民事再生手続の場合には、経済的再生・事業継続のために必要となる財産や契約関係は、債務者側で管理しつつ維持することができます。
また、清算型の場合には事業経営は原則として停止されますが、再建型である民事再生の場合には、裁判所および監督委員の監督の下で、事業を継続しながら手続を遂行していくことになります。
さらに、清算型の場合は、裁判所によって選任された破産管財人や特別清算人が手続を遂行していきますが、民事再生手続の場合には、監督委員の指導・監督はあるものの、基本的に再生債務者が自ら手続を遂行していくことになります。
ただし、民事再生は、清算型と異なり一定の財産を維持したまま負債の減額等を行う手続であるため、一定数以上の債権者の同意を得ることが必要となります。
会社更生手続との違い
再建型倒産手続には、民事再生手続のほかに、会社更生法に基づく会社更生手続(更生手続)もあります。再建型の基本類型は民事再生手続です。会社更生手続は、民事再生の特別類型という位置づけになります。
会社更生手続は、大多数の利害関係人がいる大企業を対象とすることを想定した手続です。そのため、法人のみ、しかも、法人のうちでも株式会社だけしか利用できません。
これに対して、民事再生手続は、株式会社だけでなく、他の法人も利用が可能です。加えて、法人だけではなく、個人も利用することができます。
また、会社更生手続の場合は、大企業を想定しているため手続が著しく厳格です。そのため、旧経営陣は退任するのが原則とされ、手続自体も、裁判所の選任した更生管財人が主導していきます。
これに対して、民事再生手続の場合は、原則として経営陣の交替はされません。手続は、裁判所の選任した監督委員の指導・監督はあるものの、経営陣が主体となって進めていくことになります。
同じ再建型倒産手続とはいえ、民事再生の方が、会社更生よりも利用の幅が広い手続であるといえるでしょう。
私的整理手続との違い
私的整理手続</a>とは、裁判外で行われる倒産手続のことです。具体的にいえば、債権者との協議によって清算方法または弁済方法などを決めるということになります。
私的整理は裁判外手続ですから、裁判手続である民事再生手続とは根本的に異なります。
私的整理は裁判外手続ですから、民事再生手続のような強制力はありません。しかし、民事再生手続などの法的整理と異なり決まった手続というものがないため、柔軟な解決が可能であるという違いがあります。
なお、実際の事業再生手法として多く用いられているのは、民事再生よりも私的整理であるのが現状です。大半は私的整理であると言ってもよいかもしれません。
民事再生手続における各手法
民事再生手続においては、債権者に対する一定の返済が必要です。経営を維持しながら、その返済が可能かどうかが最も重要なことです。
再生法人・再生会社が自らの経営によって得た収益で返済をしていく「自主再建型」が基本的な手法といえるでしょう。
しかし、実際には、融資もなく、民事再生の開始によって信用を毀損している企業が、自力で収益をあげて返済に充てるのは困難な場合が少なくありません。
そこで、資金援助をしてくれるスポンサーの助力を得て行う「スポンサー型」の方が、民事再生においては、むしろ主流といえるでしょう。
なお、スポンサーに事業を譲渡して事業そのものは存続させつつ、その売買代金を債権者への弁済にあて、再生法人・再生会社は清算するという「清算型」の民事再生手法もあります。
民事再生手続の基本的な流れ
民事再生手続は、再生手続開始の申立てをしなければ始まりません(なお、申立ての前に、裁判所と事前の協議等を行うのが一般的でしょう。)。
管轄の地方裁判所に、再生手続開始の申立書を提出する方式で再生手続開始の申立てを行います。事案によっては、保全処分の申立ても併せて行います。
申立て後、裁判官や監督委員候補者と進行を協議します。それとともに予納金の納付します。
その後、裁判所により監督委員が選任され、監督命令が発令されます。保全処分申立てがされている場合は、保全処分命令が発令されます。発令後に、第1回目の債権者説明会を開催することもあります。
東京地裁の場合、 申立てから1~2週間ほどで再生手続開始決定がされ、監督委員の監督のもとで債権調査や財産の評定などを行い、再生計画案を立案して裁判所に提出します。
再生計画案に問題がなければ、再生債権者の決議にかけられ、一定数以上の同意を得ることができれば、再生計画は認可されます。認可後は、その再生計画に従って弁済をしていくことになります。
通常再生と個人再生
前記のとおり、民事再生手続は、法人だけでなく、個人も利用可能です。
個人の民事再生手続に関しては、民事再生法第13章で「小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則」が設けられており、個人向けにより簡易化された手続の利用が可能となっています。
この「小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則」に定められている個人向け民事再生手続のことを「個人再生(個人民事再生)」と呼んでいます。
これに対し、個人再生でない通常の民事再生手続のことを、個人再生と区別して、「通常再生」と呼ぶこともあります。法人の民事再生はすべて通常再生で行われることになります。
なお、個人であっても、個人再生ではなく、通常再生を行うことは可能です。