記事内にPR広告が含まれます。

共同抵当とは?基本や配当方法などをわかりやすく解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

answer

共同抵当とは,1個の被担保債権を担保するために,複数の不動産等に抵当権を設定することをいいます。共同抵当の実行方法には,同時配当と異時配当の方法があります。

共同抵当とは

債権の支払いを担保するため,債権者が,債務者が所有する不動産などに「抵当権」を設定することがあります。

抵当権とは,債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産等について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利のことをいいます(民法369条)。

抵当権によって担保される債権のことを「被担保債権」といいます。

債権者としては,複数の不動産等を担保としておいた方がより被担保債権の回収が確実になることは間違いありません。

そこで,1個の被担保債権の担保として,複数の不動産等に抵当権を設定することができます。これを「共同抵当」といいます。

共同抵当の実行

民法 第392条

  • 第1項 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。
  • 第2項 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。

共同抵当を実行するのは,通常の抵当権の場合と同様,担保不動産競売によって行います(任意売却によって債権回収が行われることもあります。)。

この共同抵当の実行の方法には,同時配当と異時配当があります。

ただし,同時配当により実行しても,異時配当により実行しても,抵当権者が回収できる金額に違いはありません。実行の方法が違うというだけです。

同時配当

同時配当とは,共同抵当が設定されている複数の不動産等を同時に売却する実行方法です(民法392条1項)。

例えば,債権者Xは,債務者Yに対し,5000万円の債権を有しており,その債権を担保するために,Yが所有する甲不動産(換価価値8000万円)と乙不動産(換価価値2000万円)に共同抵当を設定していたとします。

この事例において,Yからの弁済がないため,Xが甲不動産と乙不動産の共同抵当を同時配当の方法で実行すると,甲不動産と乙不動産の価額に応じて,その債権の負担を按分することになります。

具体的には,5000万円の被担保債権について,換価価値8000万円の甲不動産と換価価値2000万円の乙不動産とで負担を按分することなるので,甲不動産からは4000万円,乙不動産からは1000万円の配当を受けることになります。

異時配当

異時配当とは,共同抵当が設定されている不動産のうちの一部のみ売却して配当を受け,不足がある場合に,別の不動産を売却して配当を受けるという方法です(民法392条2項)。

前記の事例において,甲不動産・乙不動産の順で異時配当を選択した場合には,Xは,甲不動産から5000万円全額を回収し,乙不動産は実行しないで終了することになります。

共同抵当目的物に後順位抵当権者がいる場合

共同抵当が設定されている不動産等に,後順位抵当権者がいる場合には,その後順位抵当権者の利益も考慮しなければなりません。

共同抵当が設定されている不動産のどれかに共同抵当権者に劣後する後順位抵当権者がいる場合,共同抵当権者が同時配当を選ぶのか異時配当を選ぶのかによって後順位抵当権者の受けられる利益が変わってしまうとすると,後順位抵当権者に不測の不利益を与えてしまいます。

例えば,債権者Xは,債務者Yに対し,5000万円の債権を有しており,その債権を担保するために,Yが所有する甲不動産(換価価値8000万円)と乙不動産(換価価値2000万円)に共同抵当を設定しています。

この乙不動産には,Xに劣後して,債権者Zが,Yに対する3000万円の債権を担保するための二番抵当権を設定されていた場合に,Xが共同抵当を同時配当の方法により実行したとします。

この場合,Xは,甲不動産から4000万円,乙不動産から1000万円の配当を受け,Zは,乙不動産から残余の1000万円の配当を受けることになります。

しかし,Xが,異時配当を選択し,まず乙不動産から抵当権を実行した場合,Xが乙不動産から2000万円の配当を受けます。

この場合,乙不動産には残余の価値がないので,Zは,乙不動産からまったく配当を受けることができません。

Xが同時配当を選択していれば,Zは,乙不動産から1000万円を回収できたはずであるのに,Xが異時配当を選択したためにまったく債権を回収できなくなるのでは,Zに不利益です。

そこで,共同抵当権者が異時配当の方法を選択して特定の不動産のみ売却した場合,その不動産の後順位抵当権者は,共同抵当権者が同時配当の場合に受けたであろう金額に達するまで,共同抵当権者が他の不動産について有している抵当権に代位することができるものとされています(民法392条2項後段)。

上記事例であれば,Zは,同時配当によって乙不動産から回収できなくなった1000万円について,Xの有する甲不動産の抵当権に代位して,甲不動産から1000万円を回収できます。

共同抵当目的物のうちに物上保証人がいる場合

共同抵当の目的物のうちに,債務者でない者(物上保証人)が所有する不動産等が含まれていることがあります。この場合には,物上保証人の利益も考慮する必要が生じます。

例えば,債権者Xは,債務者Yに対し,5000万円の債権を有しており,その債権を担保するために,Yが所有する甲不動産(換価価値8000万円)と物上保証人Aが所有する乙不動産(換価価値2000万円)に共同抵当を設定していたとします。

この場合,Xが異時配当を選択し,甲不動産から共同抵当を実行したとすれば,Xは甲不動産から5000万円全額を回収できるので,乙不動産は売却されず,Aは不利益を被らずに済みます。

しかし,Xが同時配当を選択すると,Xは,甲不動産から4000万円,乙不動産から1000万円の配当を受けることになり,Aは1000万円の財産を失うという不利益を被ります(乙不動産の売却代金残額1000万円はAに支払われます。)。

また,Xが異時配当を選択し,乙不動産から共同抵当を実行すると,Xは,乙不動産から2000万円,甲不動産から3000万円を回収することになり,Aは2000万円の財産全部を失うという不利益を被ります。

抵当権者が同時配当を選択するか異時配当を選択するか,またはどの共同抵当目的物のどれから共同抵当を実行するかにより,物上保証人が被る不利益の程度が異なるというのでは,物上保証人に不測の損失を与えてしまいます。

そこで,共同抵当目的物のうちのいずれかに物上保証人所有の不動産等が含まれている場合,抵当権者の選択によって物上保証人の不動産等が売却されたときには,物上保証人は,弁済による代位(民法500条,501条)により,他の共同抵当目的物に代位することができます。

上記同時配当の事例では,Aは,Xを代位して,甲不動産から1000万円の支払いを受けることができ,異時配当の事例では,甲不動産から2000万円の支払いを受けることができます。

共同抵当権者と物上保証人の代位

上記のとおり,物上保証人は,その担保に供している物を失った場合,弁済による代位をすることができます。

とはいえ,物上保証人は,一定の不利益を被る可能性があることを認識しつつ,担保目的物を提供しています。それにもかかわらず,常に物上保証人の利益が最優先されるとしては,担保の意味がありません。

そのため,共同抵当の目的物について,共同抵当権者と物上保証人の利益が衝突する場合には,やはり,債権者・共同抵当権者の利益が優先されると解すべきでしょう。

例えば,債権者Xは,債務者Yに対し,5000万円の債権を有しており,その債権を担保するために,Yが所有する甲不動産(換価価値2000万円)と物上保証人Aが所有する乙不動産(換価価値1000万円)に共同抵当を設定していたとします。

この場合,Xが異時配当の方法により乙不動産を売却して1000万円を回収したとしても,Aは,Xに代位して甲不動産から失った1000万円を回収することはできません。

なぜなら,Xは,まだ債権の全額について満足を得ていませんから,さらに甲不動産を売却して2000万円を回収することができるため,Aの代位を認めると,債権者であるXの利益を害してしまうからです。

この点については,債権の一部につき代位弁済がされた場合,債権を被担保債権とする抵当権の実行による競落代金の配当については,代位弁済者は債権者に劣後するとした最高裁判例があります(最一小判昭和60年5月23日)。

物上保証人の代位と後順位抵当権者の代位

前記のとおり,共同抵当が実行され,所有する不動産が売却された場合,物上保証人は,他の不動産に代位することができます。

もっとも,共同抵当の目的物に後順位抵当権者がいる場合には,その後順位抵当権者の利益も考慮しなければなりません。

そこで,共同抵当において,物上保証人と後順位抵当権者がいる場合に,そのいずれを優先すべきかが問題となることがあります。

この点について,まず,共同抵当として,物上保証人が提供した担保目的物のほか,債務者所有の担保目的物もあり,その債務者所有の担保目的物には共同抵当に劣後する後順位抵当権が設定されている場合において,物上保証人の提供した担保目的物が競売されたときは,物上保証人の代位が後順位抵当権者の利益に優先すると解されています(大判昭和4年1月30日、最一小判昭和44年7月3日等)。

なぜなら,物上保証人は,債務者において他に担保があり,それに代位できる期待を持って担保を提供しているからです。

また,物上保証人の提供した担保目的物に,共同抵当のほか,これに劣後する後順位抵当権が設定されていた場合において,その物上保証人の提供した担保目的物が競売されたときも,物上保証人の代位が後順位抵当権者の代位に優先すると解されています。

この場合も,物上保証人の他の担保があることに対する期待を保護する必要があるからです。

他方,共同抵当として,物上保証人が提供した担保目的物のほか,債務者所有の担保目的物もあり,債務者所有の担保目的物にも,物上保証人が提供した担保目的物にも,それぞれ共同抵当に劣後する後順位抵当権が設定されている場合において,物上保証人の提供した担保目的物が競売されたときは,物上保証人の提供した担保目的物の後順位抵当権者による代位の方が,物上保証人の代位よりも優先されると解されています(前掲最一小判昭和60年5月23日)。

この場合には,物上保証人は自ら,自己の担保目的物に後順位抵当権を設定しているので,その後順位抵当権者よりも保護されるべき理由がないからです。

共同抵当の公示方法

共同抵当も,普通の抵当権と同様,登記によって公示され,それにより対抗要件を取得します(不動産登記法83条1項)。

また,それぞれの不動産等に設定された登記が共同抵当であることについては,共同担保目録によって公示されます(不動産登記法83条1項4号,2項,不動産登記規則166条)。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

民法と資格試験

民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。

そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。

これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。

とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現

参考書籍

本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。

新訂担保物権法(民法講義Ⅲ)
著者:我妻榮 出版:岩波書店
民法の神様が書いた古典的名著。古い本なので、実務や受験にすぐ使えるわけではありませんが、民法を勉強するのであれば、いつかは必ず読んでおいた方がよい本です。ちなみに、我妻先生の著書として、入門書である「民法案内5 担保物権法(上)」「民法案内6 担保物権(下)」や「ダットサン民法総則・物権法(第4版)」などもありますが、いずれも良著です。

我妻・有泉コンメンタール民法(第8版)
著書:我妻榮ほか 出版:日本評論社
財産法についての逐条解説書。現在も改訂されています。家族法がないのが残念ですが、1冊で財産法全体についてかなりカバーできます。辞書代わりに持っていると便利です。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。

担保物権法(現代民法3)第4版
著者:道垣内弘人 出版:有斐閣
担保物権法の概説書。情報量は十分なので、資格試験の基本書としても使えます。ただし、内容は初学者向けではありません。それなりに学習が進んでから利用する本です。

物権法(伊藤真試験対策講座2)第4版
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました