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破産手続開始の実体的要件とは?

破産法の画像
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裁判所によって破産手続を開始してもらうためには、破産手続開始の実体的要件を満たしていなければなりません。破産手続開始の実体的要件としては、①破産手続開始原因があること、②破産障害事由が無いことが必要となります。

破産手続開始の実体的要件

破産手続は、裁判所による破産手続開始の決定によって開始されます。

破産手続を開始してもらうためには、まず、裁判所に対して破産手続開始の申立てをする必要があります。とはいえ、申立てをすれば当然に破産手続開始の決定がされるわけではありません。

破産手続開始決定も裁判ですから、破産法で定める破産手続開始の要件を満たしていなければ決定を出してもらうことはできません。

破産手続開始の要件としては、形式的(手続的)な要件実体的な要件とがあります。

破産手続開始の実体的要件としては、以下のものがあります。

破産手続開始の実体的要件
  • 債務者に破産手続開始原因があること
  • 債務者に破産障害事由がないこと

この実体的要件を満たしていなければ、その時点で破産手続開始の申立てまたは申立書は却下され、破産手続開始決定がされることはありません。

破産手続開始原因があること

破産手続を開始してもらうための実体的要件として、破産手続開始原因があることが必要です。

破産手続開始原因とは、文字どおり、破産手続を開始すべき原因のことをいいます。この破産手続開始原因には、「支払不能」と「債務超過」があります。

破産手続開始原因が無い場合、破産手続開始の申立ては却下されます。

支払不能

破産手続開始原因の1つである支払不能とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済をすることができない客観的状態にあることをいいます(破産法2条11号)。

支払不能であるというためには、以下の要件を満たしている必要があります。

支払不能の要件
  • 支払能力を欠いていること
  • 弁済期にある債務を弁済できないこと
  • 一般的かつ継続的に債務を弁済することができないこと
  • 客観的にみて上記の状態であること

なお、債務者について支払停止があった場合には、その債務者は支払不能であることが推定されます(破産法15条2項)。

債務超過

破産手続開始原因の1つである債務超過とは、債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態、すなわち、債務額の総計が資産額の総計を超過している客観的状態にあることをいいます(破産法16条1項、15条1項)。

債務超過であることは、個人破産の場合には破産手続開始原因とされていません。債務超過であることが破産手続開始原因となるのは、債務者が法人の場合に限られます。

ただし、法人であっても、合名会社・合資会社の場合には、その社員が無限責任を負っているため、債務超過は破産手続開始原因とはならないものとされています。

破産障害事由が無いこと

破産手続を開始してもらうための実体的要件として、破産障害事由がないことが必要です。

破産障害事由とは、それがあると破産手続を開始することができない事由のことです。破産障害事由には以下のものがあります。

破産障害事由
  • 破産手続の費用の予納がないこと
  • 不当目的・不誠実な破産手続開始申立てがされたこと
  • 民事再生・会社更生・特別清算手続が開始等されていること

破産障害事由がある場合には、破産手続開始の申立ては却下されることになります。

破産手続の費用の予納が無いこと

破産手続を遂行していくためには、各種決定等の送付や破産管財業務の遂行のために、各種の費用が必要となってきます。

そのため、裁判所は、破産手続に必要となる費用を定めることができるとされており、申立人はその裁判所が定めた破産手続の費用を予納しなければならないとされています(破産法22条1項)。

この裁判所が定めた破産手続の費用を納付しなかった場合、破産障害事由があるものとして、破産手続開始の申立ては却下されます(破産法30条1項1号)。

ただし、国庫からの手続費用の仮支弁が認められた場合(破産法23条)には、手続費用の納付がなくても、破産手続開始の申立ては却下されません。

不当目的・不誠実な破産手続開始申立てがされたこと

法人破産の場合、破産手続によって破産者である法人・会社が負っていた債務は消滅します。個人破産の場合には、破産手続に付随する免責手続によって免責が許可されれば、債務の支払義務を免れることができます。

それを利用して不当に債務を免れようとする目的で破産手続開始を申し立てる場合がないわけではありません。

また、破産手続によって債権者や関係者などは大きな損失を被ることになる可能性があります。それだけに、破産者は債権者等に必要以上の損失を被らせないように誠実な申立てすることが求められます。

そのため、不当な目的で破産手続開始の申立てがされたときや申立てが誠実にされたものでないときは、破産障害事由があるものとして、破産手続開始の申立ては却下されます(破産法30条1項2号)。

民事再生・会社更生・特別清算手続が開始されていること

破産手続は、強制的に債務者を清算させる倒産手続ですから、倒産手続のうちでも最終的手段といえます。

そのため、再建型の倒産手続である再生手続や更生手続、または、清算型の倒産手続であっても破産手続よりも簡易型とされている特別清算手続の方が、破産手続よりも優先されるべきです。

そこで、すでに再生手続・更生手続・特別清算手続開始が開始されている場合には、すでに係属している破産手続開始の手続は当然に中止されるとともに、破産手続開始の申立てをすることも禁止されます(民事再生法39条1項、会社更生法50条1項、会社法515条1項)。

この破産手続開始の申立ての禁止がなされている場合には、破産障害事由があるものとして、破産手続開始の申立ては却下されます。

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