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破産手続開始前の保全管理命令とは?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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破産手続開始申立てから破産手続開始決定までの間における債務者(法人)による財産処分行為を制限するため、裁判所は、利害関係人の申立てによりまたは職権で、破産手続開始の申立て後破産手続開始前に、債務者の財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分(保全管理命令)をすることができます(破産法91条1項)。

破産手続開始前の保全管理命令

破産法 第91条

  • 第1項 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、債務者(法人である場合に限る。以下この節、第148条第4項及び第152条第2項において同じ。)の財産の管理及び処分が失当であるとき、その他債務者の財産の確保のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができる。
  • 第2項 裁判所は、前項の規定による処分(以下「保全管理命令」という。)をする場合には、当該保全管理命令において、一人又は数人の保全管理人を選任しなければならない。
  • 第3項 前二項の規定は、破産手続開始の申立てを棄却する決定に対して第33条第1項の即時抗告があった場合について準用する。
  • 第4項 裁判所は、保全管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
  • 第5項 保全管理命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
  • 第6項 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

引用元:e-Gov法令検索

破産手続を開始してもらうためには、破産手続開始の申立てをする必要がありますが、申立てをしたからといって、すぐに破産手続開始決定(旧破産宣告)が発令されるとは限りません。

そのため、破産手続開始の申立てから破産手続開始までの間には、債務者が財産を処分または散逸させ、あるいは事業価値を毀損するような行為をしてしまう可能性があります。

債務者の財産は、破産手続開始後、破産財団に組み入れられて換価処分され、最終的には債権者に対する弁済や配当の原資となるものです。

これが正当な理由もなく処分されると、債権者に対する弁済または配当のための原資が減少してしまい、債権者に不利益を与えることになってしまいます。

また、事業譲渡による破産財団の回収を予定している場合には、個々の財産だけでなく、事業価値そのものを保存しておく必要もあります。

そこで、会社などの法人が債務者である場合には、裁判所は、利害関係人の申立てによりまたは職権で、破産手続開始の申立て後破産手続開始前に、債務者の財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができます(破産法91条1項)。

※上記のとおり、保全管理命令がされるのは法人が債務者の場合に限られます。債務者が個人(自然人)である場合には、保全管理命令はされません。

保全管理命令の効力

前記のとおり、法人・会社が債務者である場合、裁判所は、利害関係人の申立てによりまたは職権で、破産手続開始の申立て後破産手続開始前に、債務者の財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができます(破産法91条1項)。

この保全管理命令が発令されるのと同時に、裁判所により保全管理人が選任されます(破産法91条2項)。

保全管理命令が発令されると、破産手続はまだ開始していないものの、債務者から財産の管理処分権が剥奪され、その財産の管理処分権は保全管理人に専属することになります(破産法93条1項本文)。

債務者の財産に関する保全処分(破産法28条)と異なり、保全管理命令の場合は、債務者から財産全部について管理処分権を剥奪するものです。

保全管理命令発令後は、債務者は自分の財産であっても自由に管理・処分することができなくなるのです。

保全管理人

破産法 第93条

  • 第1項 保全管理命令が発せられたときは、債務者の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)の管理及び処分をする権利は、保全管理人に専属する。ただし、保全管理人が債務者の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
  • 第2項 前項ただし書の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
  • 第3項 第78条第2項から第6項までの規定は、保全管理人について準用する。

引用元:e-Gov法令検索

前記のとおり、保全管理命令が発令されると、裁判所により保全管理人が選任され、債務者の財産の管理処分権は、その保全管理人に専属することになります(破産法93条1項本文)。

保全管理人には、その職務を行うに適した者が選任されます(破産規則29条、23条1項)。実務では、弁護士が選任され、その弁護士が破産手続開始後もそのまま破産管財人に選任されるのが通常です。

保全管理人の職務は、債務者である法人・会社の財産を管理し、場合によっては処分することにあります。そのため、保全管理人は、その法人・会社の常務を自由に行うことができます。

裁判所の許可が必要となる行為

保全管理人が債務者の常務に属しない行為をする場合には、裁判所の許可を得なければなりません(破産法93条1項ただし書き)。

保全管理人が裁判所の許可を得ないでした債務者の常務に属しない行為は、無効になります(破産法93条2項)。

また、常務に属する行為であっても、保全管理人が以下の行為をする場合には、裁判所の許可を要するものとされています(破産法93条3項、78条2項、3項、破産規則25条)。

裁判所の許可を要する行為
  • 不動産に関する物権、登記すべき日本船舶または外国船舶の任意売却
  • 鉱業権、漁業権、公共施設等運営権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、育成者権、著作権または著作隣接権の任意売却
  • 営業譲渡・事業譲渡
  • 商品の一括売却
  • 借財
  • 破産手続開始決定前に開始した相続について、破産者である相続人がした相続放棄を承認すること
  • 破産手続開始決定前に開始した相続について、破産者である包括受贈者がした包括遺贈の放棄を承認すること
  • 破産手続開始決定前にされた特定遺贈について、破産者である特定受贈者がした特定遺贈の放棄を承認すること
  • 100万円を超える動産の任意売却
  • 100万円を超える債権譲渡または有価証券の譲渡
  • 100万円を超える双方未履行双務契約の履行の請求

保全管理命令の発令要件

保全管理命令は、裁判所が職権で(裁判所が自ら判断して)行うか、利害関係人の申立てによって発令されます。

もっとも、以下の要件を充たしていなければ、申立てがあっても、保全管理命令は発令されません(破産法91条1項)。

保全管理命令の発令要件
  • 債務者が法人であること
  • 債務者の財産の管理および処分が失当であるとき、または、その他債務者の財産の確保のために特に必要があると認めるとき

上記のとおり、保全管理命令が発令されるのは、債務者が法人の場合だけです。個人が債務者の場合には、保全管理命令は発令できません。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。

この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。

ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

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・司法試験・予備試験も対応
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参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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