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約定劣後破産債権とは?意味や目的・劣後的破産債権との違いを解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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約定劣後破産債権とは、破産手続開始前に、当該債務者について破産手続が開始されたとすれば当該破産手続におけるその配当の順位が劣後的破産債権に後れる旨の合意がされた債権のことをいいます(破産法99条2項)。

破産債権の優先順位

破産した債務者(破産者)に対する債権は、財団債権に該当する債権を除いて、「破産債権」として扱われ、破産手続における配当によって支払いを受けることになります。

破産債権とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しないもののことです。

この破産債権には、それぞれの債権の内容に応じて、優先順位が設けられています。優先順位が上のものから順に配当されていきます。具体的に言うと、以下の優先順位になっています。

破産債権の優先順位

優先順位が最も低い破産債権が「約定劣後破産債権」です。約定劣後破産債権は、配当の順位が一番最後になります。

約定劣後破産債権とは

破産法 第99条

  • 第2項 破産債権者と破産者との間において、破産手続開始前に、当該債務者について破産手続が開始されたとすれば当該破産手続におけるその配当の順位が劣後的破産債権に後れる旨の合意がされた債権(以下「約定劣後破産債権」という。)は、劣後的破産債権に後れる。

引用元:e-Gov法令検索

前記のとおり、最も優先順位の低い破産債権が、約定劣後破産債権です。

約定劣後破産債権とは、破産手続開始前に、当該債務者について破産手続が開始されたとすれば当該破産手続におけるその配当の順位が劣後的破産債権に後れる旨の合意がされた債権のことをいいます(破産法99条2項)。

万が一債務者が破産した場合、その債務者に対する債権は劣後的破産債権よりも配当順位を後にしてよい(最も配当の優先順位を低くしてよい)と契約・合意で定めている債権が、約定劣後破産債権になります。

破産するかどうかも不明なうちから破産した場合に備えた合意をするのかと思われるかもしれませんが、劣後ローン・劣後債・資本性ローンなどとして、約定劣後破産債権の合意は実際に多く活用されています。

約定劣後的破産債権と劣後的破産債権の違い

約定劣後破産債権と同じく、一般の破産債権に配当順位で劣後する破産債権として「劣後的破産債権」があります。似たような名称で混同しやすいが別のものです。

どのような債権が劣後的破産債権になるかは、破産法でその種類が明確に規定されています(破産法99条1項)。当事者の合意で劣後的破産債権にすることはできません

これに対し、約定劣後破産債権は、当事者の合意で決めるものです。種類にかかわらず、当事者間で配当順位を劣後的破産債権よりも劣後する(最下位とする)ことを決めることによって、約定劣後破産債権になります。

約定劣後破産債権が利用されるケース

前記のとおり、約定劣後破産債権は「劣後ローン」や「劣後債」として、実際に多く利用されています

例えば、日本政策金融公庫の「資本性ローン」も約定劣後破産債権が利用されています。この資本性ローンの場合、最終回に元本を一括返済し、それまでは利息の支払いだけになります。

詳しくは後述しますが、約定劣後破産債権に該当する劣後ローン・資本性ローンは、借り入れであるものの、一部を自己資本扱いにできるため、株式発行して既存株式が希薄化するのを避けながら自己資本比率を高めて財務体質を強化できるメリットもあります。

また、劣後ローンは、一般的な貸付けよりも高い利率で利息が設定されているのが通常であるため、金融機関側にもメリットがあります。

約定劣後破産債権への配当の実際

前記のとおり、約定劣後破産債権は、配当において、劣後的破産債権よりも後順位(最下位)となります。

具体的に言うと、財団債権への弁済・優先的破産債権への配当・一般の破産債権への配当・劣後的破産債権への配当のすべてを行ってなお余剰があれば、約定劣後破産債権に配当されます。

約定劣後破産債権者が複数人いる場合は、債権額に応じた比例配当になります。

しかし、約定劣後破産債権にまで配当できるほどの財産が残っているとしたら、そもそも破産していないはずです。破産者にそれだけの財産が残っていることはまず考えられません。

そのため、実際に約定劣後破産債権に配当されるケースは、皆無に近いと言ってよいでしょう。

約定劣後破産債権が導入された経緯・目的

この約定劣後破産債権は、もともと国際決済銀行(BIS)の自己資本規制への対策のために導入された制度です。

劣後ローンや劣後債の性質

劣後ローンや劣後債は、平常時は弁済されます(元本の返済が後回しになるものの、利息が一般的な貸付けより高い利率に設定されていることが多い。)。

しかし、破産など債務者が倒産したときは配当の優先順位が最下位にされるので、実際に配当を受けられるケースはまずありません。

劣後ローンや劣後債は、債務者が倒産した場合に貸倒れになる高いリスク(というより、ほぼ間違いなく貸倒れになるリスク)を債権者が負いながら金銭を支出している点で、株式の引き受けなどによる出資と似ている面があります

そのため、劣後ローンや劣後債は、資本性ローンと呼ばれることもあります。

国債決済銀行(BIS)による自己資本比率の規制(BIS規制)

国際決済銀行(BIS)とは、各国の中央銀行(日本であれば日本銀行)が加盟する国際金融組織です。国際的な銀行取引の規制などを行っています。

この国際決済銀行による会社の自己資本比率などの国際統一基準をバーゼル合意といい、一般的にはBIS規制と呼ばれています

このBIS規制を満たさないと、国際的な金融取引を行うことができません。

BIS規制対策としての約定劣後破産債権の導入

上記のとおり、劣後ローン・劣後債は、出資に近い性質を持っています。そのため、一定の条件を満たしている劣後ローン・劣後債は、BIS規制において自己資本として扱うことができるとされています。

劣後ローン・劣後債を利用することにより、自己資本比率を高めることが可能なのです。

日本の銀行などは自己資本比率が諸外国に比べて低いため、BIS規制対策の必要が高い状況にありました。

もともとわが国の金融実務でも、債務者が倒産した場合は他の債権者が配当を受け終わったことを停止条件として支払請求権が効力を生じる停止条件付債権とすることにより劣後化を実現する形で劣後ローンが運用されていましたが、法律で明記されておらず、問題点もありました。

そこで、BIS規制に対応した劣後ローン・劣後債を法制度上も認めることによって明確化するとともに、BIS対策を可能とするために導入されたのが、約定劣後破産債権です。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。

この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。

ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

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参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。

破産管財人の債権調査・配当(第2版)
著者:岡伸浩ほか 出版:商事法務
破産管財人が行う債権調査手続や配当手続に関する実務書。かなり実務的な内容なので専門家向けです。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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