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法律行為とは?定義や分類・事実行為や準法律行為との違いを解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

Q
法律行為とは何?
A

法律行為とは、法律上の効果の発生・変更・消滅を望む内心の意思(効果意思)に基づいてする意思表示を基礎として、法律上の効果を生じさせる行為のことです。

このページでは、法律行為とは何かについて、わかりやすく説明します。

このページで説明していること
  • 法律行為の定義・具体例、事実行為との違い
  • 法律行為自由の原則と例外
  • 法律行為の要素:意思表示
  • 法律行為の分類
  • 法律行為の無効・取消し
  • 準法律行為との違い
  1. 法律行為とは
    1. 法律行為の具体例
    2. 法律行為と事実行為
  2. 法律行為自由の原則
    1. 法律行為自由の例外
  3. 法律行為の要素:意思表示
  4. 法律行為の分類
    1. 分類1:契約・単独行為・合同行為
    2. 分類2:物権行為と債権行為
    3. 分類3:財産行為と身分行為
    4. 分類4:要式行為と不要式行為
    5. その他の分類
  5. 法律行為1:契約
    1. 民法上の契約(典型契約)
    2. 典型契約以外の契約(非典型契約)
    3. 契約の成立要件
  6. 法律行為2:単独行為
  7. 法律行為3:合同行為
  8. 法律行為が無効となるケース
    1. 意思無能力者がした法律行為
    2. 強行法規に違反する意思表示
    3. 公序良俗に違反する意思表示・法律行為
    4. 不法・不能・随意条件を付けた意思表示・法律行為
    5. 無効な心裡留保による意思表示に基づく法律行為
    6. 虚偽表示に基づく法律行為
  9. 法律行為の取消しができるケース
    1. 未成年者の意思表示・法律行為が取り消されるケース
    2. 成年被後見人の意思表示が取り消されるケース
    3. 被保佐人の意思表示が取り消されるケース
    4. 被補助人の意思表示が取り消されるケース
    5. 錯誤による意思表示に基づく法律行為
    6. 詐欺による意思表示に基づく法律行為
    7. 強迫による意思表示に基づく法律行為
    8. 特別法における取消し
  10. 準法律行為
    1. 準法律行為の種類
    2. 準法律行為の効果
    3. 補足:非表現行為・混合事実行為
  11. 法律行為・準法律行為・事実行為のまとめ
  12. 民法と資格試験
  13. 参考書籍
  14. 関連する資格試験の過去問

法律行為とは

われわれの生活におけるさまざまな経済的活動や取引の基本となるのが、「法律行為」です。

法律行為とは、法律上の効果の発生・変更・消滅を望む内心の意思(効果意思)に基づいてする意思表示を基礎として、法律上の効果を生じさせる行為のことです。

法律行為の具体例

法律行為の典型は、契約です。

例えば売買契約の場合、買主が「売主が所有する不動産を1000万円で買いたい」とする内心の意思に基づいて、売主に申込みの意思表示をします。

これに対して、売主が「所有する不動産を1000万円で売却したい」とする内心の意思に基づいて、買主の申込みに承諾する意思表示をすれば、売買契約という法律行為が成立します。

そして、売買契約が成立すると、売主には不動産を買主に引き渡して所有権を移転させるなどの義務、買主には代金を売主に支払うなどの義務といった法律効果が発生します。

法律行為と事実行為

事実行為とは、意思表示を要素とせず、物理的行動や何らかの事実を発生させること自体を意味します。意思表示を要素としないため、法律行為と区別されます。

この事実行為によって法律効果が発生することもあります。法律効果を発生させる事実行為のことを混合事実行為と呼ぶことがあります。

例えば、以下のような事実行為があると法律効果が発生します。これらは、法律行為にも後述する準法律行為にも当たらない事実行為(混合事実行為)と考えられています。

事実行為の例
  • 無主物先占(民法239条)
    所有者のない動産を所有の意思をもって取得すること。所有権取得の効果が生じる。
  • 遺失物拾得(民法240条)
    遺失物法による公告後3か月経過しても所有者が現れないこと。拾得者に遺失物の所有権取得の効果が生じる。
  • 埋蔵物発見(民法241条)
    遺失物法による公告後6か月経過しても所有者が現れないこと。発見者に埋蔵物の所有権取得の効果が生じる。
  • 不動産の付合(民法242条)
    不動産に他の物が結合して分離不可能になること。不動産の所有者が、付合した物の所有権を取得する。
  • 動産の付合(民法243条)
    所有者の違う数個の動産が結合して、損傷しなければ分離不可能または分離するのに過分の費用を要する状態になること。主たる動産の所有者が、合成物の所有権を取得する。
  • 混和(民法245条)
    所有者の違う数個の動産が混ざり合って、識別できない状態になること。主たる動産の所有者が、混和物の所有権を取得する。
  • 加工(民法246条)
    他人の動産に工作を加えること。材料の所有者が加工物の所有権を取得する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。

法律行為自由の原則

法律行為自由の原則とは、国家権力によって不当に制限されることなく、個人は自由に法律行為をすることができるとする民法の大原則です。

私人間の法律関係は、国家権力の制約に服さず、各私人が自らの意思に基づいて形成・規律できるとする「私的自治の原則」から派生するのが、法律行為自由の原則です。

そのため、各個人は、自由に契約などの法律行為をすることが可能です。

法律行為自由の例外

法律行為は自由であるのが原則ですが、常に自由なわけではありません。憲法で定められているように、公共の福祉による制限を受けることもあります。

具体的には、以下のような場合、法律行為が一定限度で制限されることもあります。

法律行為の自由が制限される場合
  • 強行法規に違反する場合(民法91条反対解釈)
    例えば、利息制限法所定の制限利率を超える利息の契約は、無効となります。
  • 公序良俗に違反する場合(民法90条)
    例えば、犯罪行為を依頼するような契約は、無効となります。
  • 意思表示の欠缺
    心裡留保において相手方が悪意または有過失の場合、法律行為が無効になります(民法93条ただし書き)。また、虚偽表示に基づく法律行為は、無効となります(94条)。錯誤による意思表示は、取消しが可能です(民法95条)。
  • 意思表示の瑕疵
    詐欺・強迫による法律行為は、取り消しができます(民法96条)

法律行為の要素:意思表示

前記のとおり、法律行為は、個人の意思に基づくものでなければなりません(私的自治の原則)。そのため、法律行為の最も重要な要素は「意思表示」です。

意思表示とは、法律上の効果の発生・変更・消滅を望む内心の意思(効果意思)を外部に表示する行為です。

意思表示は、以下の4段階で構成されます。

意思表示の4段階
  1. 動機
    まず、法律効果の発生を望む意思を生み出すきっかけとなる動機が形成されます。
  2. 内心的効果意思
    動機から、特定の法律効果の発生を望む意思(内心的効果意思)が形成されます。
  3. 表示意思
    法律効果を発生させるため、効果意思を外部に表示させることを望む意思が生まれます。
  4. 表示行為
    表示意思に従って、効果意思を外部に表示する行為をすることになります。

法律行為の分類

法律行為には、以下のような分類があります。

分類1:契約・単独行為・合同行為

法律行為の分類でまず知っておくべきものは、「契約」「単独行為」「合同行為」の分類です。

契約・単独行為・合同行為の分類
  • 契約
    一方当事者の申込みの意思表示に対し、他方当事者の承諾の意思表示によって成立する法律行為(民法522条)。
  • 単独行為
    単独行為とは、単独の意思表示によって行う法律行為。契約と違い、2人以上の当事者で行うものではありません。
  • 合同行為
    合同行為とは、複数人が共同して、同一の目的に向かって意思表示をすることにより成立する法律行為。

契約・単独行為・合同行為の詳細については、後述します。

分類2:物権行為と債権行為

法律行為は、「物権行為」と「債権行為」に分類することもできます。

物権行為と債権行為
  • 物権行為
    物権の変動を直接の目的とする法律行為。所有権を移転する行為や抵当権を設定する行為が物権行為です。
  • 債権行為
    債権債務関係の発生を目的とする法律行為。典型例は、契約。

売買契約の場合、特約などがない限り、債権債務関係の発生を目的とする意思表示のみによって所有権移転の物権変動が生じ、売買とは別個の物権行為をする必要はないと考えられています(大審院大正2年10月25日判決)。

分類3:財産行為と身分行為

法律行為には、「財産行為」と「身分行為」の分割もあります。

財産行為と身分行為
  • 財産行為
    財産上の法律効果を生じる法律行為。契約の多くは財産行為です。
  • 身分行為
    身分上の法律効果を生じる法律行為。婚姻・協議離婚・養子縁組・離縁などは身分行為に該当します。

分類4:要式行為と不要式行為

法律行為は、一定の要式を備える必要がある場合もあります。そのため、「要式行為」と「不要式行為」に分類することも可能です。

要式行為と不要式行為
  • 要式行為
    特別な方式を備えなければ成立しない法律行為。保証契約(書面または電磁的記録が必要)や遺言(法定の方式に従った遺言書が必要)などは要式行為です。
  • 不要式行為
    特別な方式を備える必要がない法律行為。契約は、一定のものを除いて原則として不要式とされています(民法522条2項)。

その他の分類

前記までのほか、法律行為には以下のような分類もあります。

法律行為のその他の分類
  • 有因・無因の分類
    原因行為がないまたは無効である場合は法律行為も無効になる(有因行為)か、原因行為がないまたは無効であっても法律行為は無効にならない(無因行為)かの分類
  • 生前・死後の分類
    行為者の生前に法律効果を発生する(生前行為)か、行為者の死後に法律効果を発生する(死後行為)かの分類。死後行為としては、例えば、遺言や死因贈与契約があります。

法律行為1:契約

われわれの生活で最も身近な法律行為は、契約でしょう。

契約とは、一方当事者の申込みの意思表示に対し、他方当事者の承諾の意思表示によって成立する法律行為のことです(民法522条1項)。最も典型的な法律行為です。

契約によってどのような法律効果が生じるかは、個々の契約の内容によって異なります。民法では、13種類の契約(典型契約)が定められています。

もちろん、当事者の合意によって上記と異なる契約をすることも可能です。

民法上の契約(典型契約)

民法で定められている13種類の契約を「典型契約」といいます。具体的には、以下の13種類の契約が典型契約です。

民法で定める契約(典型契約)
  • 贈与
    当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって効力を生じる契約(民法549条)
  • 売買
    当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約束し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約束することによって効力を生じる契約(民法555条)
  • 交換
    当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約束することによって効力を生じる契約(民法586条)
  • 消費貸借
    当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約束して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって効力を生じる契約(民法587条)
  • 使用貸借
    当事者の一方がある物を引き渡すことを約束し、相手方がその受け取った物について無償で使用および収益をして契約が終了したときに返還をすることを約束することによって効力を生じる契約(民法593条)
  • 賃貸借
    当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約束し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことおよび引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約束することによって効力を生じる契約(民法601条)
  • 雇用
    当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約束し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約束することによって効力を生じる契約(民法623条)
  • 請負
    当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約束することによって効力を生じる契約(民法632条)
  • 委任
    当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生じる契約(民法643条)
  • 寄託
    当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生じる契約(民法657条)
  • 組合
    各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約束することによって効力を生じる契約(民法667条)
  • 終身定期金
    当事者の一方が、自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭その他の物を相手方または第三者に給付することを約することによって効力を生じる契約(民法689条)
  • 和解
    当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約束することによって効力を生じる契約(民法695条)

典型契約以外の契約(非典型契約)

契約は、民法で定められている典型契約だけに限られません。法律行為は自由である以上、典型契約以外にも、さまざまな契約が存在します(契約自由の原則)。

典型契約以外の契約を「非典型契約」と呼びます。例えば、以下のような非典型契約があります。

非典型契約の具体例
  • 携帯電話やスマートフォンの利用契約
    利用者が通信費を支払う代わりに、携帯電話会社の通信設備を利用して携帯電話やスマートフォンの通話等を可能にさせる契約
  • リース契約
    リース会社(レッサー)が購入した商品をユーザーに一定期間貸し出す代わりに、ユーザー(レッシー)が利用料(リース料)を支払う契約
  • 保険契約
    保険契約者が保険料を支払う代わりに、一定の事由が発生した場合に保険会社が保険契約者等に保険金を支払う契約
  • フランチャイズ契約
    フランチャイズ本部(フランチャイザー)が商標やブランド・ノウハウなどを提供する代わりに、加盟店(フランチャイジー)が加盟料やロイヤリティなどを支払う契約
  • 秘密保持契約
    保有する情報を第三者に公開しないことを約束する契約

なお、非典型契約であるからといって、典型契約よりも効力が劣ることはありません。

契約の成立要件

民法 第522条

  • 第1項 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
  • 第2項 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

引用元:e-Gov法令検索

契約は、当事者の申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致したときに成立します(民法522条1項)。原則として、書面の作成や特定の手続の履践などは必要ありません(民法522条2項)。

ただし、契約の種類によっては、意思表示の合致だけではなく、一定の要式や手続履践が必要となるものもあります。

例えば、消費貸借契約であれば、意思表示の合致に加えて、目的物を借主に交付することが契約の成立要件になっています(民法587条)。

また、当事者間の約定で、一定の要式や手続履践をしなければ契約は成立しないと定めることも可能です。

法律行為2:単独行為

法律行為には、単独行為もあります。単独行為とは、当事者の一方の意思表示のみで法律効果を発生させる法律行為です。

単独行為としては、例えば、以下のようなものがあります。

単独行為の具体例
  • 意思表示の取消し(民法123条)
    取消権者が意思表示の相手方に取消しの意思表示をすると、意思表示は遡及的に無効になります。
  • 債務の免除(民法519条)
    債権者が債務者に対して債務を免除する意思表示をすると、債権が消滅します。
  • 契約の解除(民法540条1項等)
    契約の当事者が相手方に契約解除の意思表示をすることにより、契約が消滅します。
  • 遺言(民法960条以下)
    遺言者が法定の方式で遺言書を作成しておくことにより、遺言の内容に応じた法律効果が発生します。

法律行為3:合同行為

合同行為とは、複数人が共同して、同一の目的に向かって意思表示をすることにより成立する法律行為のことです。

例えば、社団法人の設立(会社の設立など)や、社団法人の総会決議(株主総会の決議など)が合同行為に該当します。

法律行為が無効となるケース

法律行為も常に有効とは限りません。前記のとおり、法律行為が無効と評価されることはあります。具体的には、以下のような場合に法律行為が無効となります。

意思表示が無効となるケース
  • 意思能力がない人がした法律行為(民法3条の2)
  • 強行法規に違反する法律行為
  • 公序良俗に違反する法律行為(民法90条)
  • 不法・不能・随意条件をつけた法律行為(民法132条、133条、134条)
  • 心裡留保(意思表示の相手方に悪意または過失がある場合)による意思表示に基づく法律行為(民法93条1項ただし書)
  • 虚偽表示による意思表示に基づく法律行為(民法94条1項)

意思無能力者がした法律行為

民法 第3条の2

  • 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

引用元:e-Gov法令検索

意思能力とは、自分の行為によりどのような結果が発生するのかを認識・判断できる能力のことです。

民法では、個人は自由に法律行為をすることができるのが原則です(私的自治の原則・法律行為自由の原則)。

しかし、この私的自治の原則・法律行為自由の原則は、自らの財産や権利について正しく認識・判断されることが大前提です。自ら正しく判断できない人にまで法的な効果や責任を発生させるのは、公平を欠きます。

そこで、意思能力を欠く人がした法律行為は無効とされています(民法3条の2)。

強行法規に違反する意思表示

強行法規とは、法令における公の秩序に関する規定のことです(民法91条参照)。強行法規は、当事者の意思や合意にかかわらず適用されます。

この強行法規に違反する法律行為は、絶対的に無効となります。

例えば、利息制限法で定める制限利率を超える利息の契約(および意思表示)は、無効です。

公序良俗に違反する意思表示・法律行為

民法 第90条

  • 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

引用元:e-Gov法令検索

公序良俗とは、公の秩序または善良の風俗のことです。強行法規として明確に規定されていないものであっても、公序良俗に違反する法律行為は無効となります(民法90条)。

例えば、殺人を依頼する契約や売春をする契約は、公序良俗違反として無効になります。

不法・不能・随意条件を付けた意思表示・法律行為

法律行為には、一定の条件をつけることが可能です。民法上の条件とは、法律行為の効力の発生・変更・消滅を将来の不確定な事実に係らせる付款や特約のことです。

例えば、相当期間を経過するまでに債務を履行しなければ、契約を解除するとの意思表示をするような場合です。

ただし、不法な条件(不法条件)や達成不可能な条件(不能条件)をつけた場合、その法律行為は無効になります(民法132条、133条)。

また、停止条件の達成が、単に債務者の意思のみにかかっている法律行為も、無効です(随意条件。民法134条)。

債務者の意思だけで結論が左右されるため、債権者の地位が不安定になる上、法的な拘束力を欠くと言えるからです。

無効な心裡留保による意思表示に基づく法律行為

民法 第93条

  • 第1項 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
  • 第2項 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

引用元:e-Gov法令検索

心裡留保とは、表意者が、真意ではないと知りつつ真意でない意思表示をすることです。

心裡留保による意思表示は原則有効ですが、相手方に悪意または過失がある場合は無効になります(民法93条1項ただし書)。

心裡留保により意思表示が無効となる場合、その意思表示に基づく法律行為も無効になります。

ただし、善意の第三者には、心裡留保や虚偽表示の無効を主張(対抗)できません(民法93条2項、94条2項)。そのため、法律行為は有効なものとして扱われます。

虚偽表示に基づく法律行為

民法 第94条

  • 第1項 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
  • 第2項 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

引用元:e-Gov法令検索

虚偽表示とは、表意者が相手方と通謀して、真実でない虚偽の意思表示をすることです。虚偽表示による意思表示は、原則として無効です(民法94条1項)。

虚偽表示により意思表示が無効となる場合、その意思表示に基づく法律行為も無効になります。

ただし、善意の第三者には、心裡留保や虚偽表示の無効を主張(対抗)できません(民法93条2項、94条2項)。そのため、法律行為は有効なものとして扱われます。

法律行為の取消しができるケース

当然には無効とならない場合でも、法律行為の取消しができることもあります。取り消されると、法律行為は、法律行為をした時に遡って無効となります(民法121条)。

具体的には、以下のような法律行為は、取り消すことができます。

意思表示が取消しできるケース
  • 未成年者が、法定代理人の同意を得ずにした法律行為
  • 成年被後見人が単独でした法律行為
  • 被保佐人が、保佐人の同意を得ずにした一定の財産に関する法律行為
  • 被補助人が、補助人の同意が必要と定められた法律行為を、補助人の同意を得ずにした場合
  • 錯誤による意思表示に基づく法律行為
  • 詐欺による意思表示に基づく法律行為
  • 強迫による意思表示に基づく法律行為

未成年者の意思表示・法律行為が取り消されるケース

行為能力とは、単独で確定的に有効な法律行為を行える能力のことです。18歳未満の未成年者は、法律上、行為能力を認められない制限行為能力者として扱われます。

そのため、未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は取り消すことができます(民法5条1項本文、2項)。

ただし、以下の場合は、法定代理人の同意を得なくても、未成年者が単独で法律行為をすることができます。

未成年者が単独で法律行為を行えるケース
  • 単に権利を得る行為(民法5条1項ただし書)
  • 義務を免れるだけの行為(民法5条1項ただし書)
  • 法定代理人が目的を定めて処分を許した財産を、目的の範囲内で処分する行為(民法5条3項前段)
  • 法定代理人が目的を定めずに処分を許した財産を処分する行為(民法5条3項後段)
  • 営業を許された場合の、その営業に関する行為(民法6条1項)
  • 法定代理人の同意を得ずにした法律行為を取り消す行為(民法120条1項)
  • 子の認知(民法780条)
  • 氏の変更(ただし、15歳以上。民法791条)
  • 養子縁組の承諾(ただし、15歳以上。民法797条1項)
  • 遺言(ただし、15歳以上。民法961条)

成年被後見人の意思表示が取り消されるケース

家庭裁判所で成年後見人をつけることになった成年被後見人も、制限行為能力者です。

成年被後見人の場合は、同意があっても単独で意思表示や法律行為をすることはできません。成年後見人が代理する必要があります。

そのため、成年被後見人が単独でした法律行為は、日常生活に関するものを除いて、取り消すことが可能です(民法9条)。

被保佐人の意思表示が取り消されるケース

家庭裁判所で保佐開始の審判を受けた被保佐人も制限行為能力者ですが、未成年者や成年被後見人と違い、原則として単独で法律行為ができます。

保佐人の同意を得なければいけないのは、民法で定められている一定の重要な財産に関するものや、家庭裁判所の審判で保佐人の同意を要するとされたものに限られます。

これら保佐人の同意を要する法律行為を、被保佐人が同意を得ずに行った場合に、その法律行為は取り消すことが可能です(民法13条4項)。

被補助人の意思表示が取り消されるケース

家庭裁判所により補助開始の審判を受けた被補助人は、原則として単独で法律行為ができます。

被補助人が補助人の同意を得なければいけないのは、家庭裁判所の審判で同意が必要と決定された事項に限られます。

この同意を要する事項について、被補助人が同意を得ずに法律行為をした場合は、その法律行為は取消しができるものとなります(民法17条4項)。

錯誤による意思表示に基づく法律行為

民法 第95条

  • 第1項 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
  • 第1号 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
  • 第2号 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
  • 第2項 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
  • 第3項 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
  • 第1号 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
  • 第2号 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
  • 第4項 第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

引用元:e-Gov法令検索

錯誤とは、以下の2つの場合を意味します。

錯誤の種類
  • 表示行為の錯誤
    表意者の真意と表示行為に齟齬がある場合。言い間違いや書き間違いのようなケース。
  • 動機の錯誤
    法律行為の基礎とした事情(動機)の認識が真実に反している場合。

意思表示に錯誤がある場合、以下の要件を充たせば意思表示を取り消すことができます。

錯誤取消しの要件
  • 法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること(民法95条1項柱書)
  • 動機の錯誤の場合は、法律行為の基礎とした事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたこと(民法95条2項)
  • 錯誤が表意者の重大な過失に基づくものでないこと(民法95条3項)

意思表示が錯誤により取り消された場合、その意思表示に基づく法律行為も取り消されることになります。

ただし、錯誤取消し前に法律関係を持つに至った善意無過失の第三者に対しては、錯誤取消しを主張(対抗)できません(民法95条4項)。

詐欺による意思表示に基づく法律行為

民法 第96条

  • 第1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
  • 第2項 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
  • 第3項 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

引用元:e-Gov法令検索

詐欺とは、他人を欺罔して錯誤に陥らせて意思表示をさせることです。この詐欺による意思表示は、取り消すことができます(民法96条1項)。

意思表示が詐欺により取り消された場合、その意思表示に基づく法律行為も取り消されることになります。

ただし、詐欺取消し前に法律関係を持つに至った善意無過失の第三者に対しては、詐欺取消しを主張(対抗)できません(民法96条3項)。

強迫による意思表示に基づく法律行為

強迫とは、害悪の告知や暴行によって、他人に真意でない意思表示をさせることです。この強迫による意思表示も、取り消すことが可能です(民法96条1項)。

意思表示が強迫により取り消された場合、その意思表示に基づく法律行為も取り消されることになります。

なお、強迫の場合には、取消し前の第三者が善意無過失であっても、取消しを主張できます。

特別法における取消し

民法以外の法律で、意思表示や法律行為の取消しが規定されている場合もあります。

例えば、消費者契約法では、事業者の不当な勧誘によって消費者が意思表示や法律行為をさせられた場合に、民法よりも緩やかな要件で意思表示や法律行為を取り消せるとする規定が設けられています。

準法律行為

法律行為ではないものの、一定の法律効果を発生させる「準法律行為」と呼ばれるものもあります。

準法律行為とは、内心の意思に基づく意思表示を要素としないものの、一定の法律効果が発生する行為のことです。意思表示を要素としない点が、法律行為と準法律行為の大きな違いです。

法律行為は意思表示に基づく法律効果が発生します。一方、準法律行為の場合は、意思表示を要素としないため、内心の意思や表示どおりの効果が生じるわけではありません。

準法律行為の種類

準法律行為には「観念の通知」「意思の通知」「感情の通知」の3種類があります。意思表示ではないとしても、何らかの精神作用が外部に表示されていることから、表現行為と呼ばれることもあります。

準法律行為の種類
  • 観念の通知
    単に特定の事実を伝える行為。
    例)代理権授与の通知(民法109条)、債務の承認(民法152条)、債権譲渡の通知(民法467条)、社員総会の通知など
  • 意思の通知
    法律効果の発生を望むものではなく、特定の意思を伝える行為。
    例)時効完成猶予となる催告(民法150条)、無権代理人の相手方の催告(民法114条)、契約解除の前の催告(民法541条)、弁済の受領の拒絶(民法413条)など
  • 感情の通知
    感情を表現する行為。
    例)旧民法の離婚宥恕

準法律行為の効果

準法律行為は、法律行為と違って意思表示を要素としません。そのため、意思表示の欠缺・錯誤(心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫)の規定は適用されないと考えられています。

ただし、準法律行為も、意思表示ではないものの、何らかの精神作用に基づき一定の法律効果を生じさせます。そのため、法律行為の規定が類推適用されることがあります。

補足:非表現行為・混合事実行為

事実行為には、上記観念の通知や意思の通知などの表現行為のほか、これらに該当しないものの一定の法的効果を生じる行為(非表現行為・混合事実行為)もあります。

例えば、前記の無主物先占や埋蔵金発見です。

これらは、人の精神作用ではなく、もっぱら行為の結果生じた外形に着目して法が効果を与えたものであるため、法律行為にも準法律行為にも該当しません(なお、広義の準法律行為に含むとする学説もあります。)。

法律行為・準法律行為・事実行為のまとめ

法律行為・準法律行為・事実行為の関係性は、わかりにくい部分があります。民法における「行為」を整理すると、以下のようになります。

民法における行為の整理
  • 法律行為
    法律効果の発生を望む意思(効果意思)に基づく意思表示を要素として、その意思表示どおりの法律効果を発生させる行為
    例)契約、契約の解除・取消し、債務の免除、遺言、会社の設立など
  • 事実行為
    意思表示を要素とせず、物理的な行動や事実を発生させること
    • 法律効果が発生する事実行為
      • 準法律行為
        意思表示ではないが何らかの精神作用に基づき、法律効果を発生させる行為
        例)観念の通知、意思の通知、感情の通知
      • 混合事実行為(広義の準法律行為)
        もっぱら行為の結果生じた外形に着目して法が法律効果を付与する行為
        例)無主物先占、埋蔵物発見など
    • 法律効果が発生しない事実行為
行為意思表示法律効果具体例
法律行為あり意思表示どおりの法律効果が発生・契約
・契約の解除・取消し
・債務の免除
・遺言
・会社の設立
準法律行為なし
一定の精神作用はある
法律の定めによる効果が発生・債務の承認
・債権譲渡の通知
・催告
・弁済の受領拒絶
混合事実行為なし法律の定めによる効果が発生・無主物先占
・埋蔵物発見
単なる事実行為なし法律効果はない・掃除や洗濯など日常的な行為

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

民法と資格試験

民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。

そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。

これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。

とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現

参考書籍

本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。

新訂民法総則(民法講義Ⅰ)
著者:我妻榮 出版:岩波書店
民法の神様が書いた古典的名著。古い本なので、実務や受験にすぐ使えるわけではありませんが、民法を勉強するのであれば、いつかは必ず読んでおいた方がよい本です。ちなみに、我妻先生の著書として、入門書である「民法案内1(第二版)」や「ダットサン民法総則・物権法(第4版)」などもありますが、いずれも良著です。

我妻・有泉コンメンタール民法(第8版)
著者:我妻榮ほか 出版:日本評論社
財産法についての逐条解説書。現在も改訂されています。家族法がないのが残念ですが、1冊で財産法全体についてかなりカバーできます。辞書代わりに持っていると便利です。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。

民法の基礎1(総則)第5版
著者:佐久間毅  出版:有斐閣
民法総則の基本書。基礎的なところから書かれており、読みやすく情報量も多いので、資格試験の基本書として使うには十分でしょう。

スタートアップ民法・民法総則(伊藤真試験対策講座1)
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

関連する資格試験の過去問

「法律行為」に関連する資格試験の過去問を解いてみましょう。

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