この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
- Q保証債務とは何?
- A
保証債務とは、特定の債務(主たる債務)が履行されない場合に、主たる債務者に代わって債権者に履行しなければならない責任のことです。保証債務を負う人のことを、保証人といいます。
このページでは、保証債務について、わかりやすく説明します。
- 民法における保証の意味
- 保証債務の法的性質・要件・範囲
- 保証人の権利(催告の抗弁・検索の抗弁・求償権・情報提供請求権)
- 主たる債務者・保証人に生じた事由の影響
- 共同保証・連帯保証・根保証
- 保証債務の消滅時効

民法における保証とは
民法 第446条
- 第1項 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
引用元:e-Gov法令検索
民法では、「保証債務」について定められています。
保証とは、特定の債務(主たる債務)が債務者によって履行されない場合に、代わりに履行しなければならない責任を負うことです(民法446条1項)。
保証する責任(義務)を「保証債務」といい、保証債務を負う人を「保証人」といいます。この保証債務は、主たる債務とは別個独立の債務です。
例えば、BがAから借金する際にCが保証人となった場合、Bが借金を約束どおりに返さなかったときは、CがBに代わって支払いをしなければいけません。
保証はかなり一般的な用語であるため、イメージはしやすいでしょう。
保証債務の性質
保証債務は、あくまで保証人が主たる債務を代わりに支払う責任(債務)です。主たる債務とは別個独立の債務として存在します。
そのため、主たる債務そのものとは異なる性質を持っています。具体的に言うと、保証債務には、「付従性」「随伴性」「補充性」の3つの性質があります。
性質1:付従性
保証債務の付従性とは、主たる債務の成立・存続・消滅が保証債務に連動する性質のことです。
保証債務は、主たる債務が支払われない場合に主たる債務者に代わって負う責任です。そのため、保証債務の運命は、主たる債務の運命に従うことになります。
この主たる債務に連動することになる性質が、保証債務の付従性と呼ばれる性質です。
主たる債務が成立しなければ保証債務も成立しない
保証債務は、付従性により、保証債務の成立に従います。主たる債務が成立していなければ、保証債務も成立しません。
そのため、たとえ債権者と保証人が保証契約を締結したとしても、主たる債務なしに、保証債務だけが成立することはありません。
主たる債務を超える保証債務は成立しない
民法 第448条
- 第1項 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
引用元:e-Gov法令検索
保証債務の範囲は、付従性により、主たる債務の範囲内に留められます。
そのため、保証契約で保証債務の負担を主たる債務より重くしたとしても、主たる債務の範囲に減縮されます(民法448条1項)。
例えば、主たる債務が100万円なのに、保証債務を200万円に設定したとしても、保証人が負う債務は100万円だけです。
ただし、保証契約で、主たる債務の違約金や遅延損害金とは別に、保証債務独自の違約金や遅延損害金を定めることは可能です(民法447条2項)。
主たる債務が加重しても保証債務は加重されない
民法 第448条
- 第2項 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。
引用元:e-Gov法令検索
保証契約をした後に主たる債務が加重されたとしても、保証債務まで加重されることはありません(民法448条2項)。
保証人は保証契約で定められた範囲内で責任を負うと考えて契約をしている以上、保証人の意思を無視して負担を大きくすることは保証人の意思に反します。
そのため、付従性は、保証債務を加重する方向には働かないのです。
例えば、100万円の主たる債務について保証契約が成立した後、主たる債務の金額が200万円に変更されたとしても、保証人が負う債務額は100万円のままです。
一方、主たる債務が軽減された場合は、付従性によって保証債務も軽減されます。責任を軽減する方向の場合は、保証人に不利益がないからです。
主たる債務が消滅すると保証債務も消滅する
主たる債務が消滅すると、付従性により、保証債務も消滅します。例えば、主たる債務者が全額弁済して主たる債務が消滅すると、保証債務も消滅します。
ただし、保証人が全額弁済した場合は主たる債務は消滅せず、主たる債務者に請求(求償)する権利が保証人に移転します。そして、保証人が主たる債務者に支払った分の求償を請求できるようになります。
なお、行為能力の制限によって取り消される可能性があることを知りながら、制限行為能力者の債務を保証した保証人は、主たる債務が取り消されたとしても、主たる債務を保証するのと同じ内容の独立の債務を負担したものと推定されます(民法449条)。
性質2:随伴性
保証債務の随伴性とは、主たる債権が移転した場合、保証債務も一緒に移転する性質のことです。
例えば、主たる債務の債権が譲渡された場合、保証債務も一緒に移転し、保証人は新たな債権者に対して保証債務の履行義務を負うことになります。
性質3:補充性
保証債務の補充性とは、主たる債務が履行されない場合にはじめて保証債務の履行義務が生じるとする性質のことです。
保証債務は、あくまで主たる債務が履行されない場合に生じる二次的な責任であることから、補充性が認められているのです。
補充性を具体的に示す制度として、債権者から履行請求された場合、保証人は「まず主たる債務者に請求してくれ」といえる権利(催告の抗弁権)があります(民法452条)。
また、債権者が主たる債務者に請求した後に保証人に履行請求した場合でも、主たる債務者に資力があり、した場合には「まず主たる債務者の財産を強制執行してくれ」といえる権利(検索の抗弁権)もあります(民法453条)。
保証債務の成立要件:保証契約
保証人に保証債務が成立するのは、保証人と債権者の間で「保証契約」を締結したときです。
保証契約とは
保証契約とは、保証人が主たる債務者が債務を履行しないときに履行すべき保証債務を負うことを約束する契約のことです(民法446条1項)。
この保証契約は、「債権者」と「保証人」の間で締結する契約です。保証人と主たる債務者で締結する契約ではありません。
なお、主たる債務者が保証人になることを依頼する場合に、主たる債務者と保証人が取り交わす契約は「保証委託契約」と呼ばれています。
この保証契約が締結されない限り、保証債務は発生しません。
保証契約は口頭で締結できない
民法 第446条
- 第2項 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
- 第3項 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
引用元:e-Gov法令検索
保証契約は、必ず書面または電磁的記録で締結しなければいけません(民法446条2項、3項)。要するに、保証契約を締結するには、紙の契約書(または電磁的記録の契約書)を作成しておかなければいけません。
通常の保証であろうと、連帯保証や根保証であろうと、口頭で(口約束だけで)保証契約を締結しても効力を生じません。
電磁的記録とは「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもの」のことです(民法151条4項参照)。
最近では、電子契約書も一般的になってきていますが、このような電子契約書でも保証契約を締結可能です。電磁的記録で保証契約を締結した場合、紙の書面で締結したものとみなされます(民法446条3項)。
主たる債務者に保証人を立てる義務がある場合
民法 第450条
- 第1項 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
- 第1号 行為能力者であること。
- 第2号 弁済をする資力を有すること。
- 第2項 保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。
- 第3項 前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。
引用元:e-Gov法令検索
取引によっては、主たる債務者が保証人を立てることが契約条件になっている場合もあります。このように主たる債務者に保証人を立てる義務がある場合、保証人は以下の要件を充たす人でなければいけません(民法450条1項)。
- 行為能力者であること
未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人を保証人に立てることはできない - 弁済する資力があること
この要件を欠く場合、債権者は別の人を保証人に立てるよう主たる債務者に請求できます(民法450条2項)。要件を充たす保証人を立てられない場合、主たる債務者は、他の担保を提供して保証人に代えることができます(民法451条)。
なお、保証人に上記の要件が必要となるのは、主たる債務者に保証人を立てる義務がある場合です。債権者が保証人を立てる場合には、上記の要件は必要ありません(民法450条3項)。
保証人の義務:保証債務の範囲
民法 第447条
- 第1項 保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
- 第2項 保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。
引用元:e-Gov法令検索
前記のとおり、保証人は、主たる債務者に代わって履行する債務(保証債務)を負います。
保証人が負う保証債務は、付従性によって主たる債務の範囲に限られます。ただし、主たる債務の範囲に限られるとはいっても、元本のみしか保証の責任を負わないわけではありません。
主たる債務の元本だけに限られない
保証債務は、主たる債務の元本に限らず、その主たる債務から生じる従たるすべてのものについても責任が及びます(民法447条1項)。
具体的には、以下のものも保証債務に含まれます。
- 利息
- 違約金
- 遅延損害金
- 売主の債務不履行によって売買契約が解除された場合の売主の原状回復義務(最大判昭和40年6月30日)
保証債務に独自の違約金・遅延損害金を設定できる
保証契約で、主たる債務の違約金や遅延損害金とは別に、保証債務独自の違約金や遅延損害金を定めることは可能です(民法447条2項)。
この場合、保証人が保証債務を約定どおりに履行しないと、主たる債務の違約金や遅延損害金だけでなく、保証債務独自の違約金や遅延損害金も履行しなければいけません。
保証人の権利
前記のとおり、保証人は主たる債務者に代わって履行する義務がありますが、一方で主たる債務者にはない権利も認められています。
具体的には、以下のような権利が認められています。
- 催告の抗弁権・検索の抗弁権
- 債権者に対する情報提供請求権
- 主たる債務者に対する求償権
以下、それぞれについて説明します。
権利1:保証人の催告の抗弁・検索の抗弁
具体的には、催告の抗弁権・検索の抗弁権と呼ばれる権利です。これらは、保証債務の補充性から保証人に認められる権利です。
催告の抗弁権
民法 第452条
- 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
引用元:e-Gov法令検索
催告の抗弁とは、債権者から保証債務の履行を請求された場合に、まず主たる債務者に催告するよう請求できる保証人の権利のことです(民法452条)。
要は、債権者から履行請求された場合に「先に主たる債務者に請求してくれ」といえる権利です。
この催告の抗弁は、保証債務があくまで主たる債務を補充するものであるとの性質(補充性)から認められています。
そのため、補充性のない連帯保証人の場合には、催告の抗弁は認められません(民法454条)。
検索の抗弁権
民法 第453条
- 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
引用元:e-Gov法令検索
検索の抗弁とは、催告の抗弁に従って債権者が主たる債務者に催告をした後に再度保証人に履行を請求してきた場合であっても、主たる債務者に弁済する資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、まず主たる債務者の財産に執行するよう請求できる保証人の権利です(民法453条)。
保証人の催告の抗弁により、債権者が主たる債務者に履行請求したものの履行されなかったため、再度保証人に請求した場合でも、検索の抗弁によって履行を拒絶できます。
保証人が検索の抗弁をするには、以下のことを債権者に証明する必要があります。
- 主たる債務者に弁済をする資力があること
- 主たる債務者の財産を執行するのが容易であること
この検索の抗弁も、保証債務の補充性に基づく権利です。そのため、連帯保証人には検索の抗弁権も認められません(民法454条)。
催告の抗弁・検索の抗弁の効果
民法 第455条
- 第452条又は第453条の規定により保証人の請求又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。
引用元:e-Gov法令検索
保証人が催告の抗弁または検索の抗弁をしたにもかかわらず、債権者が主たる債務者への請求や執行を怠ったため債務者から全額弁済を受けられなかった場合、保証人は「債権者が直ちに主たる債務者に催告または執行すれば弁済を受けられた」限度で責任を免れます(民法455条)。
例えば、BがAから1000万円を借り入れ、Cがその借入金債務を保証した場合
- Bが返済しないので、AがCに保証債務の履行を請求したところ、Cが催告の抗弁を主張した。
- AがすぐにBに履行を請求していれば、少なくとも800万円は回収できたはずであるのに、AはBにすぐには請求しなかった。
- 後にAがBに請求して500万円だけ回収できた。
本来ならAがCに請求できるのは、残りの500万円。
しかし、催告の抗弁後の催告を怠っているため、債権者が直ちに主たる債務者に催告すれば弁済を得ることができる限度で保証人は義務を免れる。
Aが直ちにBに請求していれば800万円回収できたので、AがCに履行請求できるのは200万円になる。
権利2:保証人の債権者に対する情報提供請求権
主たる債務者が現在どのような状況にあるかによって、保証人がどの程度の責任を負担しなければいけないのかが変わってきます。保証人にとって、主たる債務者の状況を知っておくことは非常に重大な問題です。
そこで、保証人が不測の責任を負わされないように、民法改正によって、債権者には、保証人に対して主たる債務者に関する情報を提供しなければならない義務が課されることになりました。
具体的には、以下の2つの情報提供義務が債権者に課されています。
- 主たる債務者の履行状況に関する情報の提供義務(民法458条の2)
- 主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務(民法458条の3)
主たる債務者の履行状況に関する情報提供義務
民法 第458条の2
- 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索
債権者は、委託を受けた保証人から請求があった場合、遅滞なく、主たる債務の履行状況に関する情報を提供しなければいけません(民法458条の2)。
具体的には、主たる債務の元本・利息・違約金・遅延損害金などの損害賠償・その他従たるすべてのものに関する、不履行の有無・残額・残額のうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供する必要があります。
この履行状況の情報提供を求めることができるのは、委託を受けた保証人です。委託を受けない保証人に対する履行状況の情報提供義務はありません。
また、債権者に情報提供義務が課されるのは、委託を受けた保証人から情報提供の請求があった場合です。請求がない場合には、情報提供義務は発生しません。
主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務
民法 第458条の3
- 第1項 主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から2箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
- 第2項 前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
- 第3項 前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。
引用元:e-Gov法令検索
主たる債務者が債務の履行を怠るなどして期限の利益を喪失した場合、保証人の責任が現実化してきます。しかも、遅延損害金の発生によって保証債務が過大になる可能性もあります。
そこで、個人の保証人が期限の利益喪失を知ることにより対処を行えるように、主たる債務者が期限の利益を喪失した場合、債権者は、期限の利益喪失を知った時から2か月以内に、保証人に主たる債務の期限の利益が失われたことを通知しなければいけません(民法458条の3第1項)。
債権者がこの通知を怠った場合、債権者は、個人の保証人に対して、主たる債務の期限の利益喪失時から通知するまでに発生した遅延損害金の履行を請求できなくなります(民法458条の3第2項)。
この通知は、保証人が委託を受けているか否かにかかわらず行わなければいけません。また、保証人側から請求されなくても、通知をする必要があります。
ただし、保証人が個人ではなく法人である場合には、債権者に主たる債務の期限の利益喪失通知をする義務は発生しません(民法458条の3第3項)。
権利3:保証人の求償権
求償権とは、他人の債務を弁済するなど、一定の法律上の理由に基づいて財産を減少させた人が、特定の人に対して財産の返還を求める権利のことです。
保証人が主たる債務者に代わって履行した場合、保証人は求償権を取得します。
例えば、100万円の借入金債務について、保証人が主たる債務者に代わって100万円を支払った場合、保証人は主たる債務者に100万円を返すよう請求できます。
この求償権がどの程度認められるかは、保証人が主たる債務者から委託を受けているか否かなどによって違いがあります。
委託を受けた保証人の求償権
民法 第459条
- 第1項 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。
- 第2項 第442条第2項の規定は、前項の場合について準用する。
引用元:e-Gov法令検索
委託を受けた保証人は、主たる債務者から頼まれて保証人になっている人です。頼まれて保証人になっているのに、主たる債務者への求償が制限されるのでは不合理です。
そのため、委託を受けた保証人が、弁済など自己の財産をもって主たる債務を消滅させた場合、主たる債務者に対して支払った金額(支払額が債務消滅額を超えるときは消滅した額)を全額求償できます(民法459条1項)。
この場合、委託を受けた保証人は、支払額や消滅額だけでなく、それに対する法定利息や費用・損賠賠償なども請求できます(民法459条2項、442条2項)。
主たる債務の弁済期前に保証債務を弁済した場合
民法 第459条の2
- 第1項 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有する。この場合において、主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
- 第2項 前項の規定による求償は、主たる債務の弁済期以後の法定利息及びその弁済期以後に債務の消滅行為をしたとしても避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。
- 第3項 第1項の求償権は、主たる債務の弁済期以後でなければ、これを行使することができない。
引用元:e-Gov法令検索
委託を受けた保証人の求償権は原則として制限されませんが、常に無制限というわけではありません。主たる債務の弁済期前に弁済したケースでは、求償権が制限されることもあります。
委託を受けた保証人は、主たる債務の弁済期前に弁済することも可能です。
ただし、主たる債務者には、弁済期になったら債権者の返済を拒めるような特殊事情があったかもしれません。そのため、主たる債務者にとっては、余計なお世話になってしまうおそれもあります。
そこで、委託を受けた保証人が主たる債務の弁済期前に弁済をした場合の求償権は、主たる債務者が保証人による弁済時に利益を受けた範囲に限定されます(民法459条の2第1項前段)。
また、委託を受けた保証人が求償できるのは、主たる債務の弁済期が到来した後です(民法459条の2第3項)。求償権に対する利息や費用なども、弁済期以降のものに限られます(同2項)。
弁済期前の弁済と相殺の抗弁
保証人が弁済期前に保証債務を弁済した場合、主たる債務者が債権者に対して反対債権を有しており、保証人による弁済前に相殺の原因があったときは、主たる債務者は相殺原因があったことを理由に保証人からの求償を拒めます。
ただし、相殺を理由に求償を拒絶された場合、委託を受けた保証人は、求償するのに代えて、債権者に相殺で消滅するはずだった債務の支払いを請求できます(民法459条の2第1項後段)。
事前求償権
民法 第460条
- 第1項 保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。
- 第1号 主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
- 第2号 債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。
- 第3号 保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき。
引用元:e-Gov法令検索
委託を受けた保証人は、以下の場合、自ら保証債務を弁済する前に、主たる債務者に対して求償権を行使できます(事前求償権。民法460条)。「先に自分に払え」と言えるのです。
ただし、事前求償に応じたからといって、保証人が債権者に弁済してくれるとは限りません。
そこで、主たる債務者は、債権者が弁済を受けるまでの間、保証人に担保の提供や弁済などによって自分に免責を得させるよう請求できます(民法461条1項)。
また、主たる債務者は、弁済額の供託、債権者への担保提供または債権者に弁済するなどして保証人に免責を得させることによって、事前求償を拒むことも可能です(民法461条2項)。
保証人が事前の通知を怠った場合
民法 第463条
- 第1項 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその保証人に対抗したときは、その保証人は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
引用元:e-Gov法令検索
委託を受けた保証人は、債権者に弁済をする前にあらかじめ主たる債務者に弁済する旨を通知する必要があります。
委託を受けた保証人が事前通知なしに弁済した場合、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもって保証人からの求償を拒むことができます(民法463条1項前段)。
この債権者に対抗することができた事由には、相殺も含まれます。主たる債務者が債権者に対して反対債権を有していた場合、主たる債務者は相殺を理由に保証人からの求償を拒めます。
ただし、相殺を理由に求償を拒絶された場合、委託を受けた保証人は、求償するのに代えて、債権者に相殺で消滅するはずだった債務の支払いを請求できます(民法463条1項後段)。
保証人が事後の通知を怠った場合
民法 第463条
- 第3項 保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合においては、保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときのほか、保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
引用元:e-Gov法令検索
委託を受けた保証人は、弁済などの債務消滅行為をする場合には主たる債務者への事前通知が必要なだけでなく、事後の通知も必要です。
保証人が事後の通知をしなかったため、主たる債務者が債務が消滅していることを知らずに(善意で)債務消滅行為をした場合、主たる債務者の債務消滅行為は有効なものとみなされます(民法463条)。
主たる債務者の債務消滅行為が有効とみなされるので、事後通知を怠った保証人は、主たる債務者に求償できなくなってしまいます。
なお、この場合、保証人は債権者に弁済した分の返還などを請求することは可能です。
主たる債務者が事後の通知を怠った場合
民法 第463条
- 第2項 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知することを怠ったため、その保証人が善意で債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
引用元:e-Gov法令検索
主たる債務者が弁済や相殺などの債務消滅行為をする場合、事前の通知は不要ですが、債務消滅行為をした後に、委託を受けた保証人に事後通知をしなければいけません。
主たる債務者が事後通知をしなかったために、委託を受けた保証人が債務が消滅していることを知らずに(善意で)債務消滅行為をした場合、保証人の債務消滅行為は有効なものとみなされます(民法463条2項)。
この場合、善意の保証人は、主たる債務者に対して求償できます。主たる債務者としては、債権者に支払った上に、保証人の求償にも応じなければならなくなるのです。
なお、主たる債務者は、債権者に対して弁済した分の返還を求めることは可能です。
委託を受けない保証人の求償権
民法 第462条
- 第1項 第459条の2第1項の規定は、主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が債務の消滅行為をした場合について準用する。
- 第2項 主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
- 第3項 第459条の2第3項の規定は、前二項に規定する保証人が主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をした場合における求償権の行使について準用する。
引用元:e-Gov法令検索
主たる債務者からの委託を受けていない保証人の求償権は、委託を受けた保証人の求償権よりも制限されています。
具体的には、委託を受けない保証人が弁済など自己の財産をもって主たる債務を消滅させた場合でも、求償できる範囲は、主たる債務者が保証人による弁済時に利益を受けた範囲に限定されます(民法462条1項、459条の2第1項前段)。
また、委託を受けない保証人が求償権を行使できるのは、主たる債務の弁済期以降です(民法462条3項、459条の2第3項)。
なお、主たる債務者が債権者に対して反対債権を有しており、保証人による弁済前に相殺の原因があったときは、主たる債務者は相殺原因があったことを理由に保証人からの求償を拒めます。
ただし、相殺を理由に求償を拒絶された場合、委託を受けない保証人は、求償するのに代えて、債権者に相殺で消滅するはずだった債務の支払いを請求できます(民法462条1項、459条の2第1項後段)。
主たる債務者の意思に反する保証人
委託を受けていないだけでなく、主たる債務者の意思に反して保証した保証人の場合は、ただ委託を受けていないだけの保証人よりも、さらに求償権の範囲が限定されます。
具体的には、主たる債務者の意思に反する保証人が弁済などの債務消滅行為をしても、求償できるのは、主たる債務者が現に利益を受けている範囲に限定されます(民法462条2項前段)。
この意思に反する保証人が求償権を行使できるのも、主たる債務の弁済期以降です(民法462条3項、459条の2第3項)。
また、主たる債務者が求償日以前に相殺原因があったことを理由に求償を拒絶した場合、意思に反する保証人は、債権者に相殺で消滅するはずだった債務の支払いを請求できます(民法462条2項後段)。
なお、意思に反する保証人が債務消滅行為をした後に、善意で主たる債務者が債務消滅行為をした場合、主たる債務者の債務消滅行為が有効なものとして扱われ、保証人は求償できません(民法463条)。
主たる債務者が連帯債務者または不可分債務者の場合
民法 第464条
- 連帯債務者又は不可分債務者の一人のために保証をした者は、他の債務者に対し、その負担部分のみについて求償権を有する。
引用元:e-Gov法令検索
主たる債務者が連帯債務者や不可分債務者である場合、保証債務を履行した保証人は、自分が保証している主たる債務者に対して求償できます。
それだけでなく、自分が保証している主たる債務者だけでなく、他の連帯債務者や不可分債務者に対しても、求償することが可能です。
ただし、他の連帯債務者や不可分債務者に対して求償できるのは、その他の連帯債務者や不可分債務者の負担部分だけに限られます(民法464条)。
例えば、BとCがAから1000万円を連帯して借り入れ(BとCの負担部分はそれぞれ2分の1ずつ)、DがBの委託を受けて保証人となったケース
Dが1000万円をAに支払った場合、DはBに1000万円を求償できる。
DはCに対しても、Cの負担部分である500万円を求償できる。
※なお、Dが請求できるのは合計で1000万円です。BとC両方から1500万円を回収できるわけではありません。
主たる債務者に生じた事由の保証人への影響
民法 第457条
- 第1項 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。
- 第2項 保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。
- 第3項 主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
引用元:e-Gov法令検索
主たる債務者に一定の事由が生じた場合に、その効力が保証人にどの程度及ぶのかは、保証人にとって重大な問題です。
保証人に効力が及ぶ事由
主たる債務者に生じた事由のうちで保証人にも効力が及ぶものとしては、例えば、以下のような事由があります。
- 債務消滅行為(弁済・相殺・更改・混同)
主たる債務者が弁済や相殺などによって債務を消滅させた場合、付従性により、保証人の責任もその分減少します。 - 時効の更新(旧「時効の中断」)
債権者が主たる債務者に裁判上の請求などを行い、または主たる債務者が債務を承認したことにより、主たる債務の消滅時効が更新された場合、その更新の効力は保証債務にも及びます(民法457条1項)。 - 時効の完成猶予(旧「時効の停止」)
債権者が主たる債務者に催告などを行ったことにより、主たる債務の消滅時効の完成が猶予された場合、その完成猶予の効力は保証債務にも及びます(民法457条1項)。 - 時効の完成(時効期間の満了)
主たる債務の消滅時効が完成した場合、保証人は主たる債務の消滅時効を援用できます(民法145条)。 - 期限の利益の喪失
主たる債務者が期限の利益を喪失した場合、保証債務も期限の利益を喪失します。 - 債権譲渡の通知
債権の譲受人は、主たる債務者に債権譲渡を通知すれば、保証人にも債権譲渡を対抗できる。
保証人に効力が及ばない事由
前記のとおり、主たる債務者に生じた事由の多くは、保証人にも影響を及ぼします。もっとも、以下のような事由が主たる債務者に生じたとしても、保証人には及びません。
- 保証契約後の主たる債務の加重
保証契約締結後に債権者と主たる債務者との間で主たる債務の目的や態様が加重されたとしても、保証債務は加重されません(民法448条2項) - 時効の利益の放棄
時効完成後に債務を承認するなどして、主たる債務者が時効の利益を放棄しても、保証人に効力は及びません。保証人は、主たる債務者が時効の利益を放棄した後でも、主たる債務の消滅時効を援用できます(大審院大正5年12月25日判決)。
主たる債務者の抗弁の援用
保証人は、主たる債務者に債権者に対抗できる抗弁権がある場合、その抗弁を債権者に主張して保証債務の履行請求を拒めます(民法457条2項)。
例えば、主たる債務者が債権者に対して同時履行の抗弁権を持っている場合、債権者から保証債務の履行を求められた保証人も、同時履行の抗弁権を主張して保証債務の履行を拒めます。
主たる債務者が相殺権・取消権・解除権を有している場合
主たる債務者が、債権者に対して相殺権・取消権・解除権を行使して主たる債務を消滅・減少させた場合、付従性により、保証債務も消滅・減少します。
しかし、主たる債務者が相殺権・取消権・解除権を行使する前に、債権者が保証人に保証債務の履行を請求してきた場合、実際には主たる債務は消滅・減少していません。
また、主たる債務者の相殺権・取消権・解除権は抗弁ではないので、保証人がこれらの権利を行使することはできません。
とはいえ、主たる債務者が相殺権・取消権・解除権を行使すれば保証債務も消滅・減少するはずであるのに、主たる債務者が権利行使していないために保証債務の消滅・減少を主張できないとするのは、保証人に酷です。
そこで、保証人は、主たる債務者が相殺権・取消権・解除権を行使すれば消滅・減少するであろう限度で、債権者からの履行を拒絶できます(民法457条3項)。
保証人に生じた事由の主たる債務者への影響
前記のとおり、主たる債務者に生じた事由の多くは、保証人にも影響します。他方、保証人に生じた事由は、原則として主たる債務者には影響を及ぼしません。
例えば、保証人について消滅時効が更新されたり完成猶予となったりしても、主たる債務の時効は更新されたり完成猶予となったりすることはありません。
保証人が複数人いる場合(共同保証)
ひとつの主たる債務について保証人が複数人いる場合も、よくあります。債権者にとっては、保証人が複数人いた方が、より確実に主たる債務を担保できます。
このように保証人が複数人いる場合のことを「共同保証」といいます。
共同保証であっても、それぞれの保証人が負うべき保証債務の基本的な性質や範囲などが変わるわけではありません。
ただし、保証人が複数人いる共同保証の場合には、それぞれの保証人がどの程度の割合で責任を負担するのかが変わってきます。
共同保証人の負担割合・分別の利益
民法 第456条
- 数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第427条の規定を適用する。
民法 第427条
- 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
引用元:e-Gov法令検索
保証契約で、各共同保証人の負担割合が決められているのであれば、契約に従って責任を負います。
一方、各保証人が個別に保証契約し、特に各自の負担割合が決められていない場合は、各共同保証人の負担割合は等しくなります。これを「分別の利益」といいます(民法456条、427条)。
つまり、契約で決められていない場合、共同保証人の負担は、頭数に応じた割合になるのです(なお、保証が後述する連帯保証の場合には、複数人いても分別の利益はありません。)。
例えば、AのBに対する300万円の借入金債務をC・D・Eの3人が負担割合を決めずに個別に保証した場合、各人の負担は【300万÷3=100万円】ずつとなります。
そのため、この場合、Aが借入金債務の履行を怠った場合でも、債権者Bは、C・D・Eにそれぞれ100万円ずつしか保証債務の履行を求めることができません。
共同保証人が全額を弁済する旨の特約がある場合(保証連帯)
前記のとおり、共同保証人それぞれの負担割合は、保証契約で決めることができます。この場合、全額を弁済する(負担割合100パーセント)にすることも可能です。
各共同保証人には分別の利益がなく、それぞれが全額を弁済しなければならない旨の特約を付けることを「保証連帯」と呼んでいます。
保証連帯は、あくまで通常の保証人が全額を弁済しなければならないことを意味するだけです。連帯保証のように、保証人が主たる債務者と連帯して責任を負うことになるわけではありません。
保証連帯と連帯保証を混同しないように注意しましょう。
共同保証人相互間の求償権
民法 第465条
- 第1項 第442条から第444条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
- 第2項 第462条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
引用元:e-Gov法令検索
共同保証人が自分の財産で弁済などにより主たる債務を減少・消滅させた場合、主たる債務者に求償できるのは当然です。
さらに、共同保証人が主たる債務の全額または自分の負担部分を超えて保証債務を履行した場合(つまり、他の共同保証人が負担すべき部分も履行した場合)、他の共同保証人に対しても、その共同保証人が利益を受けた限度で求償できます(民法465条2項、462条、459条の2第1項)。
一方、主たる債務が不可分債務である場合や前記の保証連帯または連帯保証人である場合は、それぞれの負担割合(負担割合が決まっていない場合は解釈によって負担割合を決める)を超えて弁済した分を、そのまま(利益を受けた限度に限定されずに)他の共同保証人に求償できます(民法465条1項、442条1項)。
通常保証と連帯保証
保証は、保証人が主たる債務者と連帯して責任を負担するか否かによって、「通常保証」と「連帯保証」に区別されます。
連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯責任を負う保証債務のことです。一方、連帯保証ではない保証は、通常保証または単純保証と呼ばれます。
通常保証と連帯保証の基本的な違い:補充性の有無
通常保証も連帯保証も、主たる債務者に代わって支払いをする責任を負う点では同じです。ただし、主たる債務者と連帯して責任を負うか否かに違いがあります。
連帯責任とは、主たる債務者と同じ責任を負うことです。
主たる債務者と同じ責任を負う以上、主たる債務者が支払えないときにはじめて責任が生じるわけではありません。主たる債務者が支払えるときであっても、連帯保証人は保証債務を履行しなければならない責任があります。
つまり、連帯保証人には、補充性がないのです。これが、通常保証と連帯保証の最も大きな違いです(なお、付従性や随伴性は通常保証も連帯保証も変わりありません。)。
- 通常保証
保証人は、主たる債務者と連帯して責任を負わない。あくまで、主たる債務の補充的な責任を負う - 連帯保証
連帯保証人は、主たる債務者と連帯して責任を負う。補充的な責任ではない
通常保証と連帯保証の具体的な違い
連帯保証には補充性がないことから、通常保証と連帯保証には以下のような違いが生じます。
| 比較項目 | 通常保証 | 連帯保証 |
|---|---|---|
| 主たる債務者との連帯責任 | なし | あり |
| 催告の抗弁権 | あり (民法452条) | なし (民法454条) |
| 検索の抗弁権 | あり (民法453条) | なし (民法454条) |
| 分別の利益 | あり (民法456条) | なし |
主たる債務者に生じた事由の影響
主たる債務者に生じた事由は、通常保証の場合と同様、連帯保証人にも効力を及ぼします(民法457条)。
そのため、主たる債務が弁済・相殺・更改・混同によって減少・消滅すれば、連帯保証債務も減少・消滅します。主たる債務の時効の完成・更新・完成猶予なども連帯保証に効力を及ぼします。
ただし、主たる債務の消滅時効完成後に主たる債務者が債務を承認するなどして時効の利益を放棄しても、その効力は連帯保証人には及ばず、連帯保証人は消滅時効を援用することができます(大審院大正5年12月25日判決)。
連帯保証人に生じた事由の影響
民法 第458条
- 第438条、第439条第1項、第440条及び第441条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。
引用元:e-Gov法令検索
連帯保証人に生じた事由は、原則として主たる債務者には影響を及ぼしません。
ただし、連帯保証人が、相殺・更改・混同によって保証債務を消滅させた場合、その効力は主たる債務にも効力を及ぼします(絶対効。民法458条、438条、439条1項、440条)。
なお、かつては、債権者による連帯保証人への履行の請求も絶対効があるものとされていましたが、民法改正によって削除されました。
また、連帯保証人が複数人いる場合、連帯保証人のひとりに生じた事由は、他の連帯保証人に影響を及ぼさないのが原則です(民法458条、441条本文)。
ただし、連帯保証人のひとりに生じた相殺・更改や、保証契約や他の連帯保証人との合意によって他の連帯保証人にも影響を生じると定めたものについては、他の連帯保証人にも効力を及ぼします(民法458条、441条)。
特定債務保証と根保証
保証には、保証(特定保証)と根保証の区別もあります。この区別は、主たる債務が特定されているものか、不特定なものかの違いです。
根保証とは、一定範囲に属する不特定な債務を主たる債務とする保証債務のことです(民法465条の2第1項参照)。
一方、根保証ではない、特定された債務を主たる債務とする保証は、特定保証(特定債務保証)または個別保証などと呼ばれます。
特定債務保証と根保証の基本的な違い
特定債務保証も根保証も、保証人が主たる債務を代わりに支払う責任を負う点に違いはありません。ただし、責任を負う主たる債務が特定されているか否かに違いがあります。
- 特定債務保証:主たる債務が特定されている
- 根保証:主たる債務が特定されていない
例えば、BがAから不動産を購入する際の売買代金債務をCが保証する場合、売買代金債務という特定された債務が主たる債務であるため、特定債務保証です。
一方、BがAから不動産を賃借する際に、賃貸借契約期間中に発生する一切の債務をCが保証する場合、主たる債務が特定されていないので、根保証です。
保証・連帯保証の区別と保証・根保証の区別の関係
保証(通常保証)と連帯保証の区別は、保証人が主たる債務者と連帯責任を負うか否かの区別です。一方、保証と根保証の区別は、主たる債務が特定されているか否かの区別です。
区別のカテゴリーが異なります。そのため、両者の区別は両立します。根保証である通常保証もありますし、根保証である連帯保証もあります。
個人根保証契約
個人根保証契約とは、保証人が個人である根保証契約のことです(民法465条の2第1項)。
根保証契約は主たる債務が特定されていないため、保証人の責任が過大になりかねません。保証人が一個人であると、予期しない保証債務によって破綻する可能性も大きいです。
例えば、前記の賃貸借契約から生じる一切の債務の根保証の場合、賃借人の賃料滞納が続いて支払額が増えたり、原状回復が過大な費用が必要となったりするなどの事情によって、保証人の責任が予想以上に大きくなるおそれがあります。
そこで、個人根保証契約については、特定債務保証や法人が保証人の根保証とは異なり、必ず極度額(保証債務の上限額)を必ず定めなければならないとされています(民法465条の2第2項)。
個人貸金等根保証契約
個人根保証契約のうちでも、主たる債務の範囲に金銭の貸渡しまたは手形の割引を受けることによって負担する債務が含まれるもののことです(民法465条の3第1項)。
個人根保証でも特にトラブルの多い貸金・借金の根保証である個人貸金等根保証契約については、元本確定期日や元本確定事由について、貸金以外の個人根保証よりも厳しい規制が設けられています(民法465条の3、465条の4第2項)。
事業に関する貸金債務の保証・根保証の特則
事業に関わる債務は、非事業の債務よりも高額である場合が多いため、保証人を保護する必要性が高くなります。
そのため、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約または主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約を締結する場合は、契約締結日前1か月以内に、保証人となろうとする者が、公正証書によって保証債務を履行する意思を表示することが必要とされています(民法465条の6第1項)。
ただし、主たる債務者が法人である場合、その法人の取締役や理事、総株主の議決権の過半数を有する者などの関係者が保証人となるときには、公正証書による意思の表示は不要です(民法465条の9第1項、第2項)。
また、主たる債務者が個人事業者である場合は、共同事業者や事業に従事している配偶者が保証人となるときには、公正証書による意思の表示は不要です(民法465条の9第3項)。
保証債務の消滅時効
保証債務には、2つの意味で消滅時効があります。
ひとつは、保証債務自体の消滅時効です。保証債務も単独で時効消滅することはあります。もうひとつは、主たる債務の消滅時効です。主たる債務が時効により消滅すれば、付従性により、保証債務も消滅します。
保証債務自体か主たる債務かいずれかが時効消滅すれば、保証人は責任を免れることになります。
主たる債務の時効消滅による保証債務の消滅
主たる債務の消滅時効が完成した場合、付従性により、保証債務も消滅します。
この主たる債務の消滅時効は、保証人や連帯保証人も援用できます(民法145条)。保証人は自ら主たる債務の消滅時効を援用して、自身の保証債務を消すことが可能です。
主たる債務の消滅時効期間は、以下のいずれか早い方です(民法166条1項)。
- 債権者が主たる債務の履行を請求できることを知った時から5年
- 債権者が主たる債務の履行を請求できる時から20年
保証債務自体の消滅時効
保証債務は、主たる債務とは別個独立の債務です。そのため、主たる債務とは別に、保証債務自体が時効消滅することもあります。
保証債務の消滅時効期間は、以下のいずれか早い方です(民法166条1項)。
- 債権者が保証債務の履行を請求できることを知った時から5年
- 債権者が保証債務の履行を請求できる時から10年
主たる債務者に生じた時効に関する事由
前記のとおり、主たる債務について、時効に関する事由が発生した場合、保証債務に影響が及ぶことがあります。
| 主たる債務者に生じた事由 | 保証人への効力 |
|---|---|
| 時効の完成(時効期間の満了) | 効力が及ぶ |
| 時効の更新 | 効力が及ぶ |
| 時効の完成猶予 | 効力が及ぶ |
| 時効の利益の放棄 | 効力は及ばない |
保証人に生じる時効に関する事由
上記とは逆に、保証債務について時効に関する事由が発生した場合、主たる債務に影響を与えません。
補足:保証と物上保証
保証と類似する用語として「物上保証」があります。物上保証とは、自分の財産を他人の債務の担保として提供することです。物上保証として担保を提供する人のことを「物上保証人」といいます。
例えば、BがAから借入れをする際に、Bの借入金の担保として、Cが自分の所有する不動産にAのために抵当権を設定するようなケースです。
この物上保証も、保証と同じように他人の債務の履行を担保するための機能があります。
ただし、物上保証人は、保証債務を負うわけではありません。あくまで、財産を担保に提供するだけです。そのため、主たる債務者が履行しなかったとしても、財産を失うだけで、債務を履行する義務は負いません。
「保証」と付いていますが、このページで説明してきた保証債務そのものと物上保証は異なる者であることには注意しておきましょう。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
民法と資格試験
民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。
そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。
これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。
とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現
参考書籍
本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。
本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。
新訂債権総論(民法講義Ⅳ)
著者:我妻榮 出版:岩波書店
民法の神様が書いた古典的名著。古い本なので、実務や受験にすぐ使えるわけではありませんが、民法を勉強するのであれば、いつかは必ず読んでおいた方がよい本です。ちなみに、我妻先生の著書として、入門書である「民法案内7 債権総論(上)」や「ダットサン民法2 債権法(第4版)」などもありますが、いずれも良著です。
我妻・有泉コンメンタール民法(第8版)
著書:我妻榮ほか 出版:日本評論社
財産法についての逐条解説書。現在も改訂されています。家族法がないのが残念ですが、1冊で財産法全体についてかなりカバーできます。辞書代わりに持っていると便利です。
司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。
債権総論(第五版)
著者:中田裕康 出版:岩波書店
債権総論の概説書。情報量は十分です。説明も分かりやすく整理されているため、資格試験の基本書としても辞書としても使えます。
債権総論(伊藤真試験対策講座3)第4版
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。伊藤塾の試験対策講座シリーズの債権総論。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。
関連する資格試験の過去問
保証債務は、各種の法律系資格試験でもよく出題される分野です。この機会に、資格試験の過去問も解いてみましょう。
- 宅建試験令和2年度(10月)問2
書面の要否・極度額の定めの要否・催告の抗弁・公正証書による保証の意思表示 - 宅建試験令和2年度(10月)問7
原状回復の保証・主債務に生じた影響・保証人の求償権の制限 - 宅建試験令和7年度問2
書面の要否・催告の抗弁・極度額の定めの要否・債権者の情報提供義務 - 行政書士試験令和6年度問31
保証人の要件・主債務に生じた影響・保証債務の範囲


