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民法における「物(もの)」とは?意味・要件・分類をわかりやすく解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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民法における「物(もの)」とは有体物です。この民法上の「物」は、動産と不動産に分けられます。また、動産・不動産の別のほかにも、主物と従物、元物と果実などに分類されることもあります。

民法における「物(もの)」とは

民法 第85条

  • この法律において「物」とは、有体物をいう。

法律上の権利や義務を有する存在を権利の主体といいます。民法において、権利の主体となるのは「人(自然人・法人)」です。

これに対し、権利の客体とは、権利を行使する対象のことです。民法において、権利(特に物権)の客体となるのは「物(もの)」です(ただし、物でない権利が、別の権利の客体になることはあります。)。

民法における「物(もの)」とは、有体物を指します(民法85条)。

有体物の意味

前記のとおり、民法において「物」となるのは、「有体物」です。

有体物とは、空間の一部を占め、有形的に存在するものです。具体的にいえば,固体・液体・気体のいずれかに属するものが、基本的な「物」に該当します。

もっとも,上記のもの以外であっても,法律上の管理が可能なものであれば「有体物」に含まれると考えるのが一般的です。判例も同様に解していると考えられています(大判昭和12年6月29日)。

電気・エネルギーなど有体物に該当しないもの(無体物)

電気は、固体・液体・気体のどれにも含まれません。そのため、有体物とはいえず、民法における物には当たりません。

同様に、電気以外の熱やガスなどによって発生するエネルギーも、有体物とはいえず、民法における物ではないと考えられています。

その他、権利そのものや情報・発明・文芸・音楽なども有体物に当たりません。

ただし、物ではないものの、特別法によって、権利の客体として扱われることはあります。また、電気は刑法上は財物として扱われます。

なお、エネルギーを発生させるための燃料(石油や石炭など)や発明された物品などは、有体物として扱われます。

民法上の「物」の要件

民法において権利の客体となる「物」は、有体物であるだけでなく、以下の要件を充たしたものでなければならないと考えられています。

民法上の「物」の要件
  • 有体物であること(管理可能性があること)
  • 支配可能性があること
  • 特定性(単一性)があること
  • 独立性があること

支配可能性があること

民法上の「物」は、人が社会生活において独占的・排他的に支配し利用できるものであることが必要です。そのため、大気、天体、海洋は、排他的に支配できないので、物には該当しません。

ただし、最高裁判所は、「海も、およそ人の支配の及ばない深海を除き、その性質上当然に私法上の所有権の客体となりえないというものではなく、国が行政行為などによつて一定範囲を区画し、他の海面から区別してこれに対する排他的支配を可能にした上で、その公用を廃止して私人の所有に帰属させることが不可能であるということはできず、そうするかどうかは立法政策の問題であつて、かかる措置をとつた場合の当該区画部分は所有権の客体たる土地に当たると解することができる」と判示しています(最三小判昭和61年12月16日)。

したがって、海洋であっても、排他的支配が可能な場合には、支配可能性が認められて民法上の物として扱われる可能性はあります。

特定性(単一性)があること

民法上の「物」は、単一のものとして特定できることが必要です。

ただし、単一でないものであっても、一定範囲を区切ることによって単一のものとして特定できるようにした場合は、特定性が認められ、民法上の「物」として扱われることがあります。

例えば、集合譲渡担保の場合、特定の種類や保管場所に存在する複数の流動する物品をひとつの担保目的物として扱うことができます。

独立性があること

民法上の「物」は、独立性が必要です。そのため、ある独立した物の一部・構成部分にすぎない場合は、民法上の物としては認められません。

ただし、あるものが独立しているかどうかは、単に物理的な意味で独立しているかだけではなく、社会生活上の取引において独立したものとして扱われているかどうかも加味して判断されます。

例えば、土地に生えている樹木は、土地の一部といえますが、木材原料として独立のものとして取引されるものである場合は、ひとつの独立した物として扱われることがあります。

法律上の物の分類

民法における物については、以下のような区別・分類がなされることがあります。

不動産・動産

民法 第86条

  • 第1項 土地及びその定着物は、不動産とする。
  • 第2項 不動産以外の物は、すべて動産とする。

法律上の物には,不動産と動産の区別があります。

「不動産」とは土地とその定着物です。土地の定着物として代表的なものは、建物です。また、立木法における対抗要件を備えた立木も、土地の定着物である不動産として扱われます。

他方、「動産」とは不動産以外の物です(民法86条)。不動産でない有体物は、原則として、すべて動産として扱われます。

主物・従物

民法 第87条

  • 第1項 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
  • 第2項 従物は、主物の処分に従う。

法律上の物には、主物従物という区別もあります。

民法87条1項は、「物の所有者が,その物の常用に供するため,自己の所有する他の物をこれに附属させたときは,その附属させた物を従物とする」と規定しています。この規定の場合に,「従物」を附属させられた方の物を「主物」といいます。

例えば,建物の中に畳を取り付けた場合,建物が主物となり,畳は従物となります。

元物・果実(かじつ)

法律上の物には、元物と果実という区別もあります。

ある物から産出または発生する物があった場合,その産出・発生の元となる物を「元物」といい,元物から産出・発生した物を「果実」といいます。

果実は、物の用法に従い収取する産出物である「天然果実」物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物である「法定果実」があります(民法88条)。

例えば,リンゴの木からリンゴの実が取れた場合には,そのリンゴの木は元物であり,リンゴの実は法律上の天然果実です。

また,自分の所有する家を他人に貸し,家賃の支払いを受けた場合,家は元物であり,その家賃は法定果実となります。

学説上の分類

上記の3つの分類は民法に規定がありますが,学説上は,さらに以下のように分類されることもあります。

  • 私法上取引できる物を融通物といい,取引できない物を不融通物といいます。
  • 性質や価値を減ずることなく分割できる物を可分物といい,そうでない物を不可分物といいます。
  • 物の用法に従って利用すると繰り返し利用できない物を消費物といい,繰り返し利用できる物を非消費物といいます。
  • 一般の取引上,個性に着目して取引される物を不代替物といい,そうでない物を代替物といいます。
  • 一般的にではなく個別具体的な取引において個性に着目して取引される物を特定物といい,そうでない物を不特定物といいます。

民法以外の法律における「物」

前記のとおり、民法における「物」は、有体物です。無体物は含まれません。ただし、民法以外の法律では、無体物が「物」として扱われることがあります。

例えば、特許法では、「物」にはプログラムが含まれると規定されています(特許法2条3項1号)。また、刑法では、「財物」に有体物だけでなく、電気も含まれると考えられています。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

民法と資格試験

民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。

そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。

これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。

とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

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参考書籍

本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。

新訂民法総則(民法講義Ⅰ)
著者:我妻榮 出版:岩波書店
民法の神様が書いた古典的名著。古い本なので、実務や受験にすぐ使えるわけではありませんが、民法を勉強するのであれば、いつかは必ず読んでおいた方がよい本です。ちなみに、我妻先生の著書として、入門書である「民法案内1(第二版)」や「ダットサン民法総則・物権法(第4版)」などもありますが、いずれも良著です。

我妻・有泉コンメンタール民法(第8版)
著書:我妻榮ほか 出版:日本評論社
財産法についての逐条解説書。現在も改訂されています。家族法がないのが残念ですが、1冊で財産法全体についてかなりカバーできます。辞書代わりに持っていると便利です。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。

民法の基礎1(総則)第5版
著者:佐久間毅  出版:有斐閣
民法総則の基本書。基礎的なところから書かれており、読みやすく情報量も多いので、資格試験の基本書として使うには十分でしょう。

スタートアップ民法・民法総則(伊藤真試験対策講座1)
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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