この記事にはPR広告が含まれています。

個人再生(個人民事再生)と自己破産の違いは何か?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

個人再生の画像
point

債務整理の方法として自己破産と個人再生(個人民事再生)があります。自己破産の場合、原則としてすべての借金・債務が免責になりますが、その代わりに、自由財産を除いて、財産の処分が必要です。

他方、個人再生の場合は、全額免除ではなく一部免除(減額)です。免除されない部分は返済を継続していく必要があります。ただし、最大で10分の1まで減額されることがあり、また、財産の処分は必須とされていません。

自己破産の場合は、資格制限や郵便物の転送などがありますが、個人再生にはありません。ギャンブルによる借金増大などの免責不許可事由があると、自己破産の場合、免責されないことがあり得ますが、個人再生では、免責不許可事由があっても、要件さえ充たせば再生計画は認可されます。

個人再生(個人民事再生)と自己破産

借金などの債務の問題を解決するための法的手段のことを「債務整理」と呼んでいます。この債務整理の方法として、「個人再生(個人民事再生)」や「自己破産」があります。

自己破産は、聞いたことがある方も多いかもしれません。破産手続の開始債務者自らが申し立てることを自己破産(申立て)といいます。

破産手続においては、破産管財人によって自由財産を除く債務者の財産が換価処分され、それによって得られた金銭が債権者に弁済または配当されます。

それでも支払いきれない債務は、裁判所の免責許可決定によって支払義務を免除してもらうことができるという手続です。

他方、個人再生(個人民事再生)は、借金の減額分割払いなどを定めた再生計画を裁判所によって認可してもらうという手続です。

いずれの手続も、裁判手続です。そのため、裁判所によって免責許可や再生計画認可をしてもらえれば、借金の減額や免除について法的な効果が発生します。いずれも、債務整理のための強力な手段といえるでしょう。

また、民事再生手続は、破産手続をベースとしてそれを変容させた手続ですから、共通する法的な原理や原則があったり、手続的に似ている部分もあります。

とはいえ、両者は、破産法民事再生法という異なる法律に基づく異なる法的手続です。当然、多くの違いがあります。

以下では、自己破産と個人再生の違いのうち、特徴的な部分についてご説明いたします。

債務の免除に関する違い

自己破産と個人再生(個人民事再生)には、借金など債務が全額免除されるのか、それとも一部だけの免除にとどまるのかという点で違いがあります。

まず、自己破産の場合、裁判所によって免責が許可されると(財団債権や非免責債権を除いて)すべての借金・債務の支払義務が免除されます。

これに対し、個人再生の場合は、すべての借金・債務の支払義務が免除されるわけではありません。一部の免除にとどまります。免除されない部分は返済の継続が必要です。

ただし、返済の継続が必要とは言っても、個人再生では、民事再生法に従って、かなり大幅に債務を減額することができます。

小規模個人再生給与所得者等再生のどちらを選択するか、債務の総額はいくらか、財産はあるのかなどによって異なりますが、最大で10分の1まで減額できる場合もあります。

また、減額された債務は、3年間から5年間の分割払いになります。

財産の処分に関する違い

自己破産と個人再生(個人民事再生)には、財産の処分が必要か否かという点でも違いがあります。

前記のとおり、自己破産の場合には、借金などの債務の支払義務がすべて免除されるのが原則です。しかし、その代わりに、財産を処分しなければなりません。

ただし、すべての財産が処分されてしまうわけではなく、自由財産に該当する財産は処分が不要とされています。

これに対して、個人再生(個人民事再生)の場合は、返済の継続が必要とされていますが、その代わりに、財産の処分は必須とされていません。したがって、財産を処分せずに債務整理することが可能となります。

もっとも、個人再生では、自己破産により財産を処分した場合と同額以上の返済をしなければならないとされています(清算価値保障原則)。

したがって、個人再生では、財産の処分は不要ですが、財産の価額はどのくらい減額されるのかには関わってきます。

住宅ローンの残る自宅の取扱いに関する違い

前記のとおり、自己破産の場合には、財産を処分しなければなりません。自宅不動産も例外ではありません。

まだ住宅ローンが残っている自宅の場合、破産手続において破産管財人が任意売却します。任意売却できなかったとしても、住宅ローン債権者等によって自宅は競売にかけられ、最終的には換価処分されます。

したがって、自己破産の場合には、自宅不動産を残せないと考えておくべきでしょう。

これに対して、個人再生(個人民事再生)の場合には、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という特別な制度が用意されています。

住宅資金特別条項を定めた再生計画が裁判所によって認可されると、住宅ローンだけは従前どおりまたは若干のリスケジュールをして支払いを継続することによって自宅を処分されないようにしつつ、他の借金などを個人再生によって減額してもらうことができるようになります。

したがって、住宅ローンの残っている自宅を処分したくない場合には、自己破産ではなく、個人再生を使えるかどうかを検討することになるでしょう。

資格制限に関する違い

自己破産と個人再生(個人民事再生)には、資格制限があるか否かにおいても違いがあります。

自己破産の場合、一定の公的な資格を利用することができなくなります(資格制限)。例えば、警備員、保険外交員、宅建などの仕事ができなくなります。

ただし、資格制限は、裁判所によって免責を許可してもらえれば解除(復権)されます。とはいえ、破産の開始から免責許可による復権までの間は資格制限の状態は続きます。

これに対して、個人再生(個人民事再生)には、資格制限がありません。したがって、個人再生手続中であっても、資格を使って仕事をすることが可能です。

郵便物の転送に関する違い

自己破産と個人再生(個人民事再生)には、郵便物の転送嘱託が行われるのか否かにおいても違いがあります。

自己破産の場合、破産手続の間、破産者本人宛の郵便物が、破産管財人のところに転送されることになるのが通常です。

転送郵便物を受け取った破産管財人は、それを開披して内容物を調査できます。調査が終わると、破産者のもとに返還されます。

これに対して、個人再生(個人民事再生)の場合は、郵便物の転送はされません。個人再生手続中であっても、郵便物は再生債務者ご本人に郵送されます。

借金をした理由などによる影響に関する違い

自己破産を申し立てる目的は、裁判所によって免責を許可してもらうところにあります。

しかし、自己破産を申し立てれば、必ず免責が許可されるわけではありません。「免責不許可事由」に該当する事由がある場合には、免責が許可されない(不許可になる)ことがあります。

免責不許可事由としては、例えば、パチンコや競馬などのギャンブル・FXや仮想通貨取引などの投資で借金を増やしてしまったこと、ぜいたくな飲食・買い物・遊興費などの浪費行為で借金を増やしてしまったことなどが挙げられます。

これに対し、個人再生には免責不許可事由がありません。したがって、上記のような免責不許可事由に該当する行為をしていた場合でも、要件さえ充たしていれば、再生計画は認可してもらえます。

なお、自己破産において免責不許可事由がある場合でも、裁判所の裁量によって免責(裁量免責)が許可されることは少なくありません。

したがって、裁量免責さえも認められないような免責不許可事由がある場合に、個人再生の利用を検討することになるでしょう。

利用の条件(要件)に関する違い

個人再生と自己破産とでは、利用の条件(要件)にも違いがあります。

自己破産は、個人(自然人)でも法人でも利用でき、債務額に上限はありません。支払不能(法人の場合は、支払不能か債務超過のいずれか)になっていれば、利用が可能です。

これに対し、個人再生は、個人しか利用できず、しかも、債務額が5000万円を超えると利用できません。

また、個人再生は、継続的・反復的で、かつ、再生計画を遂行できるだけの収入がなければ利用できません(給与所得者等再生の場合は、さらに定期的で変動の少ない収入でなければなりません。)。

そのため、利用要件としては、個人再生の方が自己破産よりも厳格と言えるでしょう。

手続の遂行に関する違い

個人再生と自己破産とでは、手続の遂行面でも違いがあります。

自己破産の場合、破産手続は、裁判所が選任した破産管財人が遂行していきます。財産の処分や契約関係の清算処理、債権調査や配当手続も、破産管財人が遂行します。

これに対し、個人再生の場合は、再生債務者が自分で手続きを遂行していかなければなりません。

個人再生においては個人再生委員が裁判所により選任される場合もありますが、個人再生委員はあくまで監督役です。破産管財人のように手続を進めていってくれるわけではありません。

なお、債務者に代理人弁護士が就いている場合には、その弁護士が代理人として手続を進めていくことになります。

弁護士の探し方

「個人再生と自己破産のどちらを選べばいいのか分からない」

このような場合、自分で調べて判断するのは、得策ではありません。弁護士に相談した方がよいことは間違いないでしょう。

現在では、多くの法律事務所が自己破産・個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、自己破産と個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。

しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。

債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。

そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。

ちなみに、個人の自己破産や個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。

弁護士法人ひばり法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・依頼後の出張可
・所在地:東京都墨田区

レ・ナシオン法律事務所
・相談無料
・全国対応・メール相談可・LINE相談可
・所在地:東京都渋谷区

弁護士法人東京ロータス法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・休日対応・メール相談可
・所在地:東京都台東区

参考書籍

本サイトでも個人再生について解説していますが、個人再生をより深く知りたい方のために、参考書籍を紹介します。

個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。

破産実務Q&A220問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
破産実務を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、破産実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか

個人再生の手引(第2版)
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。

はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。

タイトルとURLをコピーしました