任意整理のメリット・長所とは？

任意整理のメリット

任意整理とは，簡単にいえば，債務者の方に代わって，弁護士等が債権者と交渉し，借金について，債務者の方の生活を崩さない程度の返済条件にしてもらう内容の和解契約を債権者との間で締結する手続のことです。

任意整理は，あくまで交渉です。したがって，裁判手続を利用しません（まれに，特定調停を利用する場合もあります。）。

そのため，自己破産や個人再生のような法律上の制限がほとんどないという点が一番のメリットでしょう。

そして，それは同時に，任意整理には，自己破産や個人再生よりも柔軟な債務整理の解決方法を選択できるメリットがあるということも意味しています。

任意整理の具体的なメリット

任意整理には，具体的にいうと，以下のようなメリットがあります。

借金の返済が軽減される

まず，任意整理をすれば，返済が楽になるということは，いうまでもありません。

長期の分割払いにしてもらうことにより月々の返済が減少したり，返済総額が減少する場合もあります。利息や遅延損害金をカットしてもらえば，それまでのようにいつ返済が終わるのか分からないといったような不安もなくなります。

つまり，生活の再建にめどをつけることができるようになるというわけです。

自己破産や個人再生のような法的制限がない

また，任意整理には，法的な要件はありません。

自己破産のように支払不能等でなければ利用できないとか，個人再生のように支払不能等のおそれがなければ利用できないとかいうことはないということです（ただし，返済が可能であるという事実上の条件はあります。）。

自己破産の場合ですと，財産を処分しなければならず，破産手続中は資格を使った仕事ができなくなり，郵便物が破産管財人にチェックされ，住居を移転する場合も裁判所の許可が必要となり，また，官報にも公告されます。

個人再生の場合も，やはり官報に公告されますし，債務の金額が５０００万円以下でなければならないなどの制限もあります。

しかし，任意整理の場合には，上記のような制限はありません。任意整理はあくまで，裁判外での私的な交渉にすぎないからです。

その他，破産や個人再生のように複雑な手続が必要とならないこと，裁判所等への出頭が必要でないことというメリットもあります。

またこれは倫理的な問題かもしれませんが，債務整理の中では，債権者にもっとも迷惑をかけない方法であること（もちろん，ある程度の迷惑はかかるかもしれませんが…）などもメリットであるといえるでしょう。

デメリットが少ないというメリット

任意整理には，債務を整理して以前よりも生活を安定させられるというメリットがあります。

ただし，それは他の手続でも同様です。任意整理だけのメリットではありません。むしろ，返済の負担の面から見れば，任意整理よりも，自己破産や個人再生の方がはるかに負担は小さくなります。

任意整理の本当のメリットは，他の手続に比べて積極的に何か特別なメリットがあるというよりも，裁判外の交渉であるため自己破産や個人再生よりも利用しやすく，それらの手続と比べて制限やデメリットが少ないという点にあるといえるでしょう。

また，前記のとおり，裁判手続でないため，比較的柔軟な対応や解決が図れるという点もメリットといえます。

したがって，一部の財産を処分して返済原資を用意しつつ，その他の重要財産は残して分割払いの交渉をするなど，いろいろな返済計画のバリエーションを策定することが可能となります。

メリット・デメリットの検討

任意整理には，前記のようなメリットがあるため，おそらく債務整理の中では最も多く利用されている手続でしょう。推計ですが、年間で約１００万人～２００万人が任意整理を利用していると考えられています。

ただし，デメリットもあります。

自己破産や個人再生と同様，任意整理をした場合もブラックリストに登録され，任意整理による完済から５年間ほどは，新たな借り入れやローンを組むことは難しくなります。

また，前記のとおり，返済の負担は，任意整理をする前よりも軽減されるとはいえ，自己破産や個人再生ほどに軽減することはできません。

実際，無理な任意整理をしたとしても，生活が返済で圧迫される状況は変わらないため，自己破産や個人再生で債務整理をやり直すという場合が少なくありません。

したがって，任意整理のデメリット，特に返済の負担の程度をよく考えて，任意整理をするかどうかを検討する必要があります。