この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

片務契約とは、契約当事者が相互に対価としての意義を有する債務を負担しない契約のことをいいます。要するに、当事者の一方のみが債務を負う契約が片務契約です。
片務契約の債務者が破産すると、相手方である債権者が有する債権は破産債権として扱われることになります。
他方、片務契約の債権者が破産すると、相手方である債務者に対して有する債権は、破産財団に属する財産として扱われ、破産管財人が、その債権の回収を図ることになります。
片務契約とは
片務契約とは、契約当事者が相互に対価としての意義を有する債務を負担しない契約のことです。要するに、当事者の一方のみが債務を負う契約が片務契約です。
片務契約としては、例えば、贈与・消費貸借・使用貸借などが挙げられます。これらは常に片務契約となります。
委任契約も、原則としては、片務契約です。ただし、受任者が、委任事務処理に対して報酬の支払いを受ける旨の特約がされている場合には、双務契約となります。
片務契約は、当事者の一方について破産手続が開始した場合でも当然に終了するとは限りません。破産手続開始によっても片務契約が終了しない場合、破産手続において清算する必要があります。
片務契約の債務者が破産した場合
片務契約における債務者について破産手続が開始された場合、その相手方である債権者が有する債権は破産債権として扱われることになります。
例えば、金銭消費貸借契約の場合、金銭の支払いをする債務者が破産すると、金銭の支払いを受けるはずだった債権者が有する金銭債権は、破産債権として扱われることになります。
破産債権となるので、債権者は、破産手続開始後、債務者に対して個別の取立てを禁止され、破産手続における破産財団からの配当によってしか債権を回収できなくなります。
他方、債務者も、弁済が禁止されるので、債権者に対して支払いをすることはできません。
債務者が弁済してしまった場合、破産管財人による否認権行使の対象になります。個人破産の場合には、免責不許可事由にも該当します。
片務契約の債権者が破産した場合
片務契約における債権者が破産した場合、その相手方である債務者に対して有していた債権は、破産財団に属する財産として扱われます。
例えば、金銭の贈与契約の場合、金銭の支払いを受けるはずだった債権者が破産すると、その金銭支払いを求める請求権は、破産財団に属する財産となります。
破産財団に属する財産になりますから、破産手続開始後、破産管財人が、その債務者に対して金銭の支払いを請求し、回収した金銭を破産財団に組み入れることになります。
そして、破産管財人が回収した金銭・財産は、破産管財業務を遂行するための費用に充てられ、余剰があれば、各債権者に対する弁済または配当に充てられることになります。
委任契約の処理
破産法 第57条
- 委任者について破産手続が開始された場合において、受任者は、民法第655条の規定による破産手続開始の通知を受けず、かつ、破産手続開始の事実を知らないで委任事務を処理したときは、これによって生じた債権について、破産債権者としてその権利を行使することができる。
委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し,相手方がこれを承諾することによって効力を生じる契約のことです。
この委任契約は、当事者の一方について破産手続が開始されると、当然に終了します。したがって、破産手続において契約を清算する必要はないのが原則です。
もっとも、前記のとおり、委任契約は原則として片務契約ですが、受任者が、委任事務処理に対して報酬の支払いを受ける旨の特約がされている場合には双務契約となります。
そして、双務契約となる有償委任契約における委任者が破産した場合に、受任者が破産手続開始の通知を受けず、破産手続開始の事実を知らないで委任事務を処理したときは、報酬の請求権は破産債権となるとされています(破産法57条)。


