この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

借金問題における多重債務とは,複数の債権者から借入れをしている状態のことをいいます。一度多重債務の状況に陥ると,自力で解消するのは困難である場合が少なくありません。
多重債務とは
債務とは,特定の人に対して何らかの行為をしなければならない法的義務のことをいいます。このうち、金銭の支払いをしなければならない債務のことを金銭債務と呼んでいます。
借金をした場合,その借金を返す行為をしなければならなくなります。したがって,借金をすることは,借金を返済する金銭債務を負うことです。
「多重債務」とは,債務のうちの金銭債務が,「多重」になってしまっている状態のことです。つまり,多重債務とは,複数の債権者に対して金銭債務を負担している状態のことをいいます。
この多重債務という用語は,特に,借金問題の場合に用いられます。いろいろなところから借金をしている状態が多重債務です。
多重債務に陥る悪循環
例えば,ある貸金業者(仮にA社とします。)に対する借金の返済が苦しくなってきた場合,そのA社に返済するために,他の貸金業者(B社)から借金をして,その借りたお金でA社に対して返済をするということがあります。A社に返済するためにB社から借入れをするわけです。
ところが,そもそもA社への借金の返済すら苦しい状態だったのです。ということは,例えばB社の利息が非常に少なく返済条件も有利なものであるというようなことであればともかく,そうでなければ,当然B社への返済も厳しくなるはずです。
特に貸金業者からの借入れは利息の利率が高く設定されています。したがって,A社の返済のためにB社から借入れをするとなると,A社への返済分にB社の利息が付けられるということになります。つまり,借金の金額はどんどんと大きくなっていくわけです。
具体的に言うと,A社からの借金が100万円であったとします。これを返済するため,B社から100万円を借りることになりますが,当然B社からの借入れには利息が付きます。
B社からの借入れの利率が年利10パーセントだとすると,1年後には借金が110万円に膨れ上がっていることになります。
したがって,A社からの100万円の借金はなくなったとしても,全体として見ると,借金は増えているのです。
さらに,A社やB社に返済するために,今度はC社から,さらにこのC社に返済するためにD社から・・・というように延々といろいろなところから借入れをしていってしまうと,それに伴って新たな利息が付されるため,借入額は次々に増えていきます。
こうなると、もはや新たな借入れをしなければ返済ができない自転車操業になってしまうのです。
この自転車操業状態こそ多重債務です。多重債務状態になると、もはや通常の方法では返済をすることができなくなります。
多重債務問題の現状
かつては,多くのサラ金が利息制限法の制限利率を超える高利で貸付を行っており,それによって,社会問題になるほどに多くの人が多重債務に苦しんでいました。
貸金業法や出資法等の改正により,高利での貸付は減少し,それに伴って,多重債務問題もやや沈静化しました。
しかし,近時は,貸金業法の直接の規制を受けない銀行系カードローンの過剰な貸し付けによって,再び多重債務問題が再燃し始めてきています。
実際,信用情報機関の統計情報によると,2社以上の貸金業者等から借金をしている人は,全国で約400万人とされています。多重債務の問題は,現在でも続いているのです。
多重債務の解決方法
前記のような多重債務の状態になると,例えば返済ができる程度にまとまった金銭が入金される予定であるなどよほどの特別な事情でもない限り,自力でもとの状態に戻すということはかなり難しくなります。
しかも,自転車操業のような悪循環が続いてしまい,時間が経過すれば経過するほど債務が大きくなっていってしまいます。
そのため,すでに返済のために借入れをしているというような多重債務の状態にある場合には、債務整理することも考えてみるべきでしょう。




