記事内にPR広告が含まれます。

破産手続において別除権はどのように行使されるか?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

answer

別除権は、破産手続によらずに行使できます。具体的には、破産管財人を相手方として、別除権の基礎となる担保物権の本来の行使方法によって実行することができます。

破産手続における別除権の行使方法

破産法 第65条

  • 第1項 別除権は、破産手続によらないで、行使することができる。
  • 第2項 担保権(特別の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この項において同じ。)の目的である財産が破産管財人による任意売却その他の事由により破産財団に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。

引用元:e-Gov法令検索

担保権が設定されている債権(被担保債権)は、その担保目的物から、他の債権者に優先して弁済などを受けて債権回収できる優先的な地位を与えられています。

破産手続においても担保権の優先的地位を認め、一定の担保権は「別除権」として扱われています。この別除権は、破産手続によらずに権利行使ができます破産法65条1項)。

「破産手続によらずに行使できる」とは、破産管財人を相手方として、別除権の基礎となる担保物権の本来の行使方法によって実行できることを意味します。

別除権行使の具体例

例えば、破産財団に属する不動産に抵当権を設定している抵当権者は、破産手続において別除権者となります。

この抵当権者である別除権者は、破産手続とは関係なく、抵当権を実行して不動産の競売を申立てることができ、その競売による落札代金を優先的に回収して債権に充当することができます。

また、破産財団に属する債権に債権質を設定している質権者も、破産手続において別除権者となります。

この質権者である別除権者は、破産手続と関係なく、質権を実行して、民事執行法193条に基づき、当該債権の債務者から直接取立てをして、それを債権に充当できます。

破産法上の別除権行使の制限

前記のとおり、別除権者は、破産手続によらずに別除権を行使して、優先的な弁済を受けることが可能です。

もっとも、別除権の対象である財産は破産財団に属する財産です。そのため、別除権が行使されれば、破産債権の総額に影響を及ぼし、破産財団を引き当てとする他の債権者にも大きな影響を及ぼします。

そこで、別除権の行使については、破産手続によらずに行使できるものの、破産法上、一定の制限が加えられています。

破産管財人に対抗できることが必要

別除権を行使するためには、その別除権の基礎となる担保権が破産管財人に対抗できるものであることが必要となります。

破産管財人は、裁判所から選任される中立的な立場にある者であるため、破産者と一体ではなく、債権者や破産者からみれば、あくまで第三者的な立場を有しています。

したがって、別除権を行使するためには、その別除権の基礎となる担保権が、破産財団の管理者であり、第三者的立場にある破産管財人に権利を対抗できるものでなければならないのです。

例えば、別除権者が抵当権を実行するには、破産管財人に対抗するため、対抗要件として抵当権設定登記を備えていることが必要です。

適正な換価処分が行われているかどうかの監視

別除権者は、破産手続によらずに別除権を行使できます。

その別除権行使による換価処分が適正な換価処分であれば問題ありませんが、不適正な換価処分であると、剰余金が発生せず、他の債権者に不利益を与えるおそれがあります。

そこで、適正な別除権行使による換価処分がなされているかどうかを監視するため、破産管財人は、別除権者に対して別除権目的物の提示を求めることができ(破産法154条1項)、また、自らその目的物の評価をすることもできるとされています(同条2項)。

さらに、破産管財人は、別除権者から目的物を受け戻して(同法78条2項14号)、それを自ら強制執行の方法によって換価処分することもできるとされています(同法184条2項)

別除権者の任意処分権の制限

別除権者が対象となる財産について任意処分権を有している場合、別除権者はその財産を売却するなどして任意に処分し、それによって得た金銭を優先的に弁済に充てることができます。

ただし、この別除権者の任意処分権も制限される場合があります

もっとも、別除権者が任意処分権を有している場合でも、破産管財人は、裁判所に対して任意処分の期間を定めることを裁判所に申し立てることができ(破産法185条1項)、その期間が経過すると、別除権者の任意処分権は失われることになります(同条2項)。

担保権消滅請求制度

別除権となる担保権が設定されている財産については、別除権者は、破産手続によらずに担保権を実行することができます。

たとえば、抵当権が設定されている不動産がある場合、その抵当権者である別除権者は、抵当権を実行してその不動産を競売にかけることができます。

もっとも、破産管財人は、別除権者の同意を得て、その不動産について抹消登記手続をした上で任意売却することは可能です。

また、仮に別除権者から同意を得られない場合でも、担保権消滅請求制度を利用して、担保権を消滅させた上で任意売却することも可能です(破産法186条以下)。

ただし、担保権消滅請求制度は、担保権者に与える損失があまりに大きいため、積極的に用いられてはいません。

なお、担保権消滅制度と類似する制度として、制度目的は異なりますが、商事留置権の消滅制度も用意されています(破産法192条)。

別除権者による破産債権の行使

前記のとおり、別除権者は、破産手続によらずに、別除権の基礎となる担保権を実行して、優先的に被担保債権の満足を図ることができます。

もっとも、別除権を行使しても、被担保債権の全額については満足を得られないケースもあるでしょう。

その場合、別除権者は、その別除権付債権について、別除権行使によっても満足を得られない不足額についてのみ、破産債権者として権利を行使することができるとされています。

この不足額についてのみ破産債権として権利行使ができるとする考え方のことを不足額責任主義といいます(破産法108条1項本文)。

具体的に言うと、別除権行使によっても不足する金額について、破産債権者の一人として配当を受けることができます。

タイトルとURLをコピーしました