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賃借人破産において賃料請求権はどのように取り扱われるのか?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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賃借人について破産手続が開始された場合、破産手続開始前に発生していた賃料請求権は破産債権として(破産法2条5項)、破産手続開始後に発生する賃料請求権は財団債権として扱われます(破産法148条1項2号、4号、7号または8号)。

破産手続開始日をまたがる期間の賃料請求権については、日割り計算をして、破産債権部分と財団債権部分とに分けて取り扱うとする見解と、破産法55条2項かっこ書きを類推適用して、全体を財団債権とする見解とがあります。

賃貸借契約終了から目的物の返還・明渡しまでの間の賃料相当損害金の請求権も、賃料請求権と同様に扱われます。

賃借人が破産した場合の賃料請求権

賃貸借契約においては、賃貸人(貸主)は賃借人(借主)に対して賃料の支払いを請求できる権利を有しています。

賃借人(借主)について破産手続が開始された場合、賃貸人の賃料請求権は、破産者に対する債権であるため、破産手続において清算されます

ただし、賃料請求権は、それがどの時点における賃料請求権なのかによって、破産手続における取扱いが異なってきます。

なお、個人(自然人)破産の場合、住居の賃貸借契約が清算されることはないのが通常です。そのため、賃料は、破産者自身で賃貸人に支払っていくことになります。

以下で説明する賃料請求権の処理は、法人破産および個人破産における住居以外の賃貸借契約に関する処理です。

破産手続開始前の賃料請求権

賃借人の破産において、破産手続開始前に発生した賃料請求権は、「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」であるので、破産債権として扱われます破産法2条5項)。

したがって、賃貸人は、破産手続における配当によってしか、破産手続開始前の賃料請求権の回収を図ることができません。

破産手続開始後の賃料請求権

賃借人について破産手続が開始された場合であっても、賃貸借契約は当然には終了しません。契約解除などによって終了するまで賃貸借契約は存続します。

そのため、賃借人が破産した後も、賃貸借契約が継続し、賃料請求権が発生することもあり得ます。

破産手続開始後(賃貸借契約が終了するまでの間)に発生した賃料請求権は、財団債権となります(破産法148条1項2号、4号、7号または8号)。

財団債権なので、破産財団に支払い可能な程度の財産がある場合には、賃貸人は、配当によらずに、破産手続開始後の賃料の支払いを受けることが可能です。

なお、この点に関連して、破産手続開始時において賃貸借契約が存続している場合で、破産管財人が賃貸借契約の履行請求を選択したときは、破産手続開始後の賃料請求権だけでなく、破産手続開始前の賃料請求権も含めて、すべての賃料請求権を財団債権として扱うべきであるとの見解があります。

しかし、実務上は、破産手続開始時に賃貸借契約が存続しているか解約済みであるかにかかわらず、破産手続開始前の賃料請求権は破産債権として取り扱うのが通常です。

したがって、賃借人の破産においては、破産手続開始前の賃料債権は破産債権、破産手続開始後の賃料債権は財団債権となると考えておけば足りるでしょう。

破産手続開始日にまたがる期間の賃料請求権

賃借人の破産においては、破産手続開始前の賃料債権は破産債権、破産手続開始後の賃料債権は財団債権となると考えると、破産手続開始日にまたがる期間の賃料をどのように考えればよいのかが問題となってきます。

例えば、1月1日から1月31日までの期間の1月分賃料31万円を2月末日に支払う内容の賃貸借契約において、1月分賃料未払いのまま、1月15日付で賃借人について破産手続が開始されたような場合です。

この点については、日割り計算をして、破産債権部分と財団債権部分とに分けて取り扱うとする見解と、破産法55条2項かっこ書きを類推適用して、全体を財団債権とする見解とがあります。

上記事例の場合、日割計算とする見解をとると、1月1日から破産手続開始日の前日である1月14日までの賃料14万円の部分を破産債権とし、1月15日から31日までの賃料17万円の部分を財団債権として扱うことになります。

破産法55条2項かっこ書きを類推適用する見解をとると、1月分賃料31万円全額が財団債権として扱われることになります。

賃貸借契約終了後の賃料相当損害金

賃貸借契約が終了すれば、それ以降、賃料請求権は発生しません。

しかし、賃貸借契約が終了したものの、賃貸借の目的物が賃貸人に対して返還(不動産であれば明渡し)されていない場合、賃貸人は目的物を自ら利用できないのですから、まだ貸し続けているのと変わりません。

そこで、賃貸人は、賃借人に対し、賃貸借契約終了から目的物返還・明渡しまでの間の賃料に相当する額の損害賠償を請求できます。

賃借人について破産手続が開始された場合、この賃料相当損害金の請求権も、賃料請求権と同様に扱われます。

そのため、破産手続開始前の賃料相当損害金請求権は破産債権として取り扱われます。

また、破産手続開始後の賃料相当損害金請求権は、「破産管財人の管理処分権にもとづいてする行為を原因として生ずるもの」(最一小判昭和43年6月13日)といえるので、財団債権として扱われることになります。

個人破産の場合における住居の賃料請求権の処理

前記のとおり、個人破産においては、住居の賃貸借契約は清算されません。賃料は、破産者自身では賃貸人に支払い、賃貸借契約を維持していくことになるのが通常です。

ただし、破産手続開始前に賃料を滞納していた場合、その滞納賃料は破産債権になります。

破産債権になると、賃貸人は満額を回収することはできなくなるのが通常ですから、賃貸借契約の不履行になります。そのため、滞納額が数か月分に及んでいる場合には、賃貸人によって契約を解除される可能性があります。

特に自己破産をする場合には、破産手続開始前に賃料の滞納を解消しておく必要があるでしょう。

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