
破産手続開始の申立てにおいては、最低限の手続費用として、申立人が「予納金」と呼ばれる一定の金銭を、裁判所または破産管財人に納付する必要があります。予納金には、官報公告費用のための予納金と破産管財人に引き継ぐための引継予納金があります。
官報公告費は、概ね1万5000円から2万0000円ほどです。引継予納金は、少額管財手続の場合には最低20万円ですが、特定管財など規模の大きい法人・会社等の場合には、数百万円という場合もあります。
破産手続の予納金とは
破産法 第22条
- 第1項 破産手続開始の申立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
- 第2項 費用の予納に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
破産手続開始の申立てをした場合、裁判所に対し、裁判手数料のほか「予納金」と呼ばれる金銭を納付する必要があります(破産法22条1項)。
破産手続を進めていくためには、官報公告などの諸手続を行う必要があります。また、管財事件となれば、管財業務を行うための実費や破産管財人報酬も必要となります。
もちろん、破産手続の中で破産者の財産を換価処分して金銭を得ることができれば、それを上記の費用に充てることも可能です。
しかし、そのためには時間がかかりますし、場合によってはまったく破産財団が形成できないということもあり得ます。
そこで、最低限の破産手続費用をあらかじめ確保しておくために、申立人に予納金の支払義務が課されているのです。
この予納金の納付は、破産手続開始の要件とされています。したがって、裁判所によって命じられた予納金を支払わなかった場合には、破産手続開始の申立ては却下されることになります(破産法30条1項1号)。
官報公告費用の予納
破産手続においては、債権者に破産手続が行われていることを広く知らせるために、破産手続の開始および破産手続の終結を「官報」に掲載する方法によって公告されます。
とはいえ、官報公告も無料ではありません。官報に掲載してもらうためには一定の費用が必要です。そのため、この官報公告費用は、予納金として、申立人が納付しなければなりません。
破産申立てにおける官報広告費用は、裁判所によって若干の相違はありますが、概ね、1万5000円前後でしょう。
引継予納金
破産手続には、管財事件と同時廃止事件があります。
管財事件においては、裁判所によって破産管財人が選任され、その破産管財人が、財産等の調査・管理・換価処分などの破産管財業務を遂行していくことになります。
この破産管財業務を進めていくための最低限の実費や破産管財人の最低限の報酬が必要となってきます。
そこで、破産管財業務のための最低限の実費や破産管財人報酬は、予納金として申立人が納付することになっています。
この予納金は、申立人(または申立代理人)から破産管財人に直接引き継がれます。そのため「引継予納金」と呼ばれています。
引継予納金の金額は、事案によっても異なりますが、東京地方裁判所や大阪地方裁判所などの少額管財の場合は20万円からとされています。他方、少額管財でない特定管財事件の場合は、最低でも50万円以上となるのが通常です。
例えば、法人・会社の破産においては、その法人・会社の資産・財産はすべて換価処分の対象となります。もちろん、現金や預金もです。
したがって、引継予納金が最低20万円というのは、20万円の現金や預金さえも法人に残っていない場合に、申立人が最低限負担しなければならない金額が20万円である、という意味です。
法人・会社の財産のうちから20万円だけ納付すればよいという意味ではありません。法人・会社に20万円以上の現金などが残っているのであれば、その全額を破産管財人に引き継ぐ必要があります。
自己破産と債権者破産の違い
前記のとおり、法人・会社の破産手続開始の申立てに際しては、その申立人が予納金を用意しておかなければなりません。
自己破産や準自己破産の場合には、申立人が納付した予納金は、すべて破産手続費用として扱われ、余剰部分はすべて債権者に配当または弁済されます。したがって、返還されることはありません。
債権者破産申立ての場合も、申立人債権者が予納金を納付することになります。
とはいえ、債権を満足に回収できない上に、さらに高額の予納金(債権者破産の場合には特定管財事件となり、予納金も相当高額となります。)まですべて負担しなければならないとすると、その債権者にとってあまりに酷です。
そのため、債権者破産申立ての場合には、その申立人債権者が納付した予納金は財団債権として扱われ、破産財団に余剰があれば、優先して返還されることになっています(ただし、余剰がなければ返還されません。)。
予納金以外の裁判費用
予納金そのものではありませんが、破産手続開始の申立てに当たっては、上記予納金のほかに、裁判手数料(収入印紙代)や郵券(郵便切手)が必要となります。
破産手続の裁判手数料は一律1000円です。収入印紙で納付します。なお、個人の自己破産の場合は、免責許可申立ての手数料として500円が必要です。
また、予納郵券は、裁判所によって異なりますが、概ね4000円分から10000円分ほどを提出する必要があります。