この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

破産手続における破産債権調査手続とは、裁判所に届け出られた債権について、破産債権としての適格性・債権の存否・債権額・優先劣後の順位・別除権者の届け出た予定不足額の当否を調査する手続のことをいいます。
債権調査には、債権届出期間内に届出された債権を調査する一般調査と、債権届出期間の経過後一般調査期間の満了前または一般調査期日の終了前にその届出がありまたは届出事項の変更があった債権を調査する特別調査とがあります。
破産債権の調査手続とは
破産手続は、破産財団に属する財産を換価処分して、それによって得た金銭を破産債権者に公平・平等に配当する手続です。
この公平・平等な配当を実現するためには、その前提として、どのような破産債権があるのか、その破産債権の金額はいくらなのかを正確に調査しておく必要があります。
そこで、破産手続においては、「破産債権の調査手続」が設けられています。
破産債権の調査手続とは、裁判所に届け出られた債権について、破産債権としての適格性・債権の存否・債権額・優先劣後の順位・別除権者の届け出た予定不足額の当否を調査する手続のことをいいます。
破産債権の調査手続の種類:一般調査と特別調査
破産手続における債権調査には、一般調査と特別調査があります。
一般調査とは、債権届出期間内に届出がされた債権について調査する債権調査手続のことです。通常の債権調査手続を意味します。
これに対して、特別調査とは、債権届出期間が経過した後から一般調査期間の満了までの間、または、一般調査期日の終了前に債権届出や届出事項の変更があった破産債権について調査するための債権調査手続のことをいいます。
破産債権調査手続の方法
破産手続における債権調査の方法としては、期間を定めて行う調査期間方式と期日を定めて行う調査期日方式があります。
また、債権の調査を書面をもとに行う書面方式と口頭の報告で行う口頭方式があります。
調査期間方式で行う場合は書面方式を採用し、調査期日方式で行う場合は口頭方式を採用して調査手続が進められます。
調査期間方式
調査期間方式は、裁判所が定めた一定期間内に債権の認否や確定手続などを行う方式です。
破産手続開始決定と同時に、破産債権を調査するための期間(一般調査期間)が設定されます(破産法31条1項3号)。破産債権調査は、原則として、この期間内に行われます。
債権届出期間が過ぎた後に債権届出がされた場合や届出事項の変更がされた場合は、その債権を調査するための期間(特別調査期間)が設定されるケースもあります(破産法119条1項本文)。
調査期間方式の場合、債権調査手続は書面に基づいて行われる書面方式が採用されます。
具体的には、設定された債権調査期間において、破産管財人が作成した認否書・破産債権者および破産者の書面による異議に基づいて行われます(破産法116条1項)。
調査期日方式
調査期日方式とは、期間ではなく、裁判所が定めた特定の期日に債権の認否や確定手続などを行う方式です。
裁判所において必要があると認める場合、破産手続開始決定と同時に破産債権を調査するための期日(一般調査期日)が指定されます(破産法31条1項3号、116条2項)。
この期日において、破産管財人の認否や破産債権者および破産者の異議が行われます(破産法121条1項、2項)。
債権届出期間が過ぎた後に債権届出がされた場合や届出事項の変更がされた場合は、その債権を調査するための期日(特別調査期日)が設定されるケースもあります(破産法122条2項本文)。
特別調査の場合については、調査期間・書面方式が原則とはされておらず、特別な必要性がなくても調査期日・口頭方式をとることもできるとされています(破産法116条3項)。
実務の運用
破産法上は調査期日方式が原則とされていますが、期日方式の方が期日延期などにより柔軟な対応が可能になるため、実務では、調査期日方式が採用されるのが一般的です。
東京地方裁判所や大阪地方裁判所でも、期日方式が原則的に採用されています。この場合、一般調査期日は、債権者集会と一緒に行われるのが通常です。
破産債権の調査手続の流れ
破産債権の調査手続は、一般的には以下の流れで進められます(なお、実務では調査期日方式が採用されることが多いため、以下の流れも調査期日方式に従ったものとなっています。)。
- 破産手続開始決定と同時に、債権のと届出期間・一般調査期日が設定される
- 各債権者から破産債権が届け出られる
- 破産管財人が破産債権の認否を行う
- 破産債権が確定する
以下、詳しく説明します。
破産債権の届出期間・一般調査期日の決定
前記のとおり、破産手続が開始されるのと同時に、裁判所によって債権の届出期間や一般調査期日が指定されます。
- 債権届出期間(破産規則20条1項1号)
原則として、破産手続開始決定から2週間以上4か月以下の期間 - 債権調査期日(破産規則20条1項4号)
債権届出期間の末日から1週間2か月以内の日
この届出期間や一般調査期日などは、官報で公告され、破産手続開始の申立てにおいて提出された債権者一覧表に記載されている債権者(知れている債権者)には直接通知されます(破産法32条1項2号)。
知れている債権者に対しては、裁判所または破産管財人が、破産手続開始の通知および破産債権届出書の提出を求める書類を発送する形で通知されます。
なお、債権者一覧表に記載されていない債権者が後から発覚した場合も、その債権者に破産管財人が破産手続開始の通知および破産債権届出書の提出を求める書類を発送します。
各債権者による破産債権の届出
各債権者は、指定された届出期間内に自分の債権を裁判所(または破産管財人)に届け出る必要があります。この届出をしないと、配当を受けることができません。
具体的には、裁判所・破産管財人から送付された破産債権届出書(法定の形式が整っていれば、裁判所から送付されたものでなくても可)に必要事項を記載し、債権に関する証拠資料(契約書や請求書のコピーなど)を添付して、裁判所または破産管財人に送付します。
破産管財人による破産債権の認否
債権の認否とは、届け出られた債権を破産債権として認めるか否かを決めることです。
各債権者から債権が届け出られた後、破産管財人は、破産債権届出書および証拠資料、または申立人や破産者から提出された資料をもとに、その届出債権の存否・内容・金額等を調査し、債権の認否を行います。
調査の結果、破産債権届出書の内容に間違いがない場合、破産管財人は、一般調査期日において、当該届出債権を認めることになります(破産法121条1項)。
他方、破産債権届出書の内容に誤りがあると判断した場合には、破産管財人は、一般調査期日において、当該届出債権を認めない(否認する)ことになります。
また、破産管財人だけでなく、届出破産債権者も他の債権に異議を述べることができ、破産者も破産債権の額についてのみ異議を述べることができます(121条2項、4項)。
なお、実務では、配当できるほどの破産財団が集まらないことが明白な場合には、債権認否を留保したまま破産手続が終了することもあります。
破産債権の確定
債権の認否において誰からも異議が出されなかった届出債権は、破産債権として確定します(破産法124条1項)。確定した破産債権は破産債権者表に記載され、破産債権者全員に対して確定判決と同一の効力を持ちます(破産法124条3項)。
他方、破産管財人や他の届出破産債権者から異議を述べられた届出債権者は、裁判所に破産債権査定を申し立てることができます(破産法125条1項)。
この破産債権査定の申立ては、一般調査期日から1か月以内に行わなければいけません。この破産債権査定の手続において、異議を述べられた債権の存否や額が決定されます。
なお、破産債権査定決定に不服がある破産管財人や届出破産債権者は、破産裁判所に対して破産債権査定異議の訴えを提起できます(破産法126条)。
これらの手続を経て、破産債権が確定されます。異議が出されなかった破産債権査定決定や査定異議訴訟の判決も、破産債権者全員に対して確定判決と同一の効力を持ちます(破産法131条)。
確定した破産債権への配当
破産管財人の報酬や財団債権への弁済をしてもなお破産財団に余剰がある場合、破産債権の調査手続によって確定した破産債権に対して配当が行われます。
債権調査期日への出頭は配当の条件ではないので、債権調査期日や債権者集会に出頭しなかった破産債権者も、配当を受けられます。
なお、破産債権者は、破産管財人から債権認否書(債権認否一覧表)をもらえるので、自分の債権がどのように評価されどの程度配当を受けられるのかを確認できます。
破産債権調査手続の対象にならない破産債権
基本的にすべての破産債権が調査手続の対象になりますが、例外的に、破産債権に属する場合であっても、租税等の請求権や罰金等の請求権については、債権調査手続の対象にはならないとされています(破産法134条1項)。
租税等の請求権とは、国税徴収法または国税徴収の例によって徴収することのできる請求権のことです(破産法97条参照)。国税や地方税、国民健康保険料などの公租公課の債権です。
また、罰金等の請求権とは、罰金・科料・刑事訴訟費用・追徴金・過料の請求権のことです。
とはいえ、これら租税等の請求権や罰金等の請求権も破産債権に該当すれば配当の対象となる以上、調査不要なわけではありません。
他の債権と同じ破産債権の調査手続によって調査されないだけで、適宜の方法で調査自体は行われます。
同時廃止事件の場合
同時廃止は、「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」に、破産手続きの開始と同時に破産手続が廃止(打ち切り)になることを意味します(同時廃止事件、同時廃止手続と呼ばれることもあります。)。
同時廃止では、実質的に破産手続が行われないので、債権調査も行われません。
財団債権の調査との関係
破産手続における債権調査手続は、あくまで破産債権を調査するための手続ですので、財団債権を調査するための手続ではありません。
もっとも、破産債権の調査手続では、破産債権としての適格性を調査します。その過程で、実は破産債権ではなく財団債権であると判明することもあります。
破産債権調査は、財団債権の調査を兼ねることになるケースもあるのです。
なお、破産手続においては、財産債権の弁済を行ってから破産債権への配当を実施します。財団債権が不明なままでは、手続を進められません。そのため、財団債権も調査はされます。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
破産法と資格試験
倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。
この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。
ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
- 司法試験・予備試験も対応
- スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
- 有料受講者数20万人以上・低価格を実現
参考書籍
破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。
破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。
条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。
破産管財人の債権調査・配当(第2版)
著者:岡伸浩ほか 出版:商事法務
破産管財人が行う債権調査手続や配当手続に関する実務書。かなり実務的な内容なので専門家向けです。
司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。
倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。
倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。


