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人が死亡したものとして扱う法制度とは?相続との関係も詳しく解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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相続は、被相続人の死亡によって開始されますが、実際に死亡が未確認であっても死亡したものとして扱われ、それによって相続が開始されることがあります。具体的には、失踪宣告認定死亡の制度があります。

自然人の権利能力の終期

法律上、権利義務の主体となるのは、人(自然人・法人)です。権利義務の主体となる資格を権利能力といいます。

自然人の権利能力は、出生により始まり(民法3条1項)、死亡により終了します。

この自然人の権利能力の終期となる「死亡」とは、基本的に生物学的・医学的な意味での死亡を意味します。

ただし、具体的に、死亡とはどのような状態を意味するのかについては法的な議論があります。

一般的には、心臓の拍動停止、呼吸停止、瞳孔反射の消失(いわゆる「3徴候」)を基準としていますが、たとえば、脳死もここでいう「死亡」に含めるべきかというような議論もあります。

これら生物学的・医学的意味での「死亡」の判断は、やはり専門家の意見を尊重すべきですから、医師の死亡診断書の記載に従うのが一般的でしょう。

被相続人の死亡が証明できない場合

上記のとおり、相続開始原因となる「死亡」とは、生物学的・医学的な意味での死亡を指すと考えるのが原則です。

ところが、事故や災害などの場合、死亡したことはほとんど確実であるけれども、遺体を発見できないので、死亡したことを医学的に証明できない場合があります。

このような場合、遺体が発見されるまで待っていなければならないとすると、いつまでも相続の手続を進めることができません。

そうなると、相続人だけでなく、被相続人に利害関係がある第三者も、不安定な状況に立たせてしまうおそれがあります。

そこで、死亡したことを確実に証明できない場合でも相続を開始できるように、一定の要件を満たす場合には、その被相続人を死亡したものとして取り扱うことができる法制度が用意されています。

被相続人が死亡したものとして扱う法制度

死亡したことを確実に証明できない場合でも、ある人を死亡したものとして取り扱う法制度として、「失踪宣告」と「認定死亡」制度があります

失踪宣告

失踪宣告とは、家庭裁判所によって失踪宣告という決定をしてもらうことにより、その宣告を受けた人を死亡したものとみなす制度です(民法30条)。

失踪宣告の場合には、遺族などの利害関係人が、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることになります。

失踪宣告の種類

失踪宣告には、以下の2つの種類があります。

失踪宣告の種類
  • 普通失踪(民法30条1項)
    事情を問わず、ある人の生死が7年間分からないという場合に認められる場合の失踪宣告
  • 特別失踪(危難失踪)(民法30条2項)
    戦地に臨んだ人、沈没した船舶の中にいた人、戦災や震災など死亡の原因となるといえる危難に遭遇した人について、その戦争が終わった時,船舶が沈没した時,または危難が去った時から1年間が経過しても生死が明らかでない場合に認められる失踪宣告

失踪宣告の効力

家庭裁判所によって失踪宣告が発せられると、対象の不在者は死亡したものとみなされます

「みなす」とは、ある事実が存在していなかったとしても、法律上は、その事実が存在するものとして扱うことを意味します。「擬制」と呼ばれます。

そのため、失踪宣告がされると、実際には不在者が生きていることが判明しても、法律上は死亡したものとして扱われます。

この失踪宣告による死亡擬制を覆すには、家庭裁判所で失踪宣告取消しの審判をしてもらう必要があります。

死亡とみなされる時期

失踪宣告によって死亡したとみなされる時期は、普通失踪と特別失踪では異なります。

死亡とみなされる時期
  • 普通失踪:生死不明になってから7年間が満了した時
  • 特別失踪:危難が去った時

認定死亡

認定死亡とは、死亡した可能性が極めて高いとの推測に基づいて、ある人が死亡したことを推定する戸籍法上の制度です。

遺体の発見ができないため診断書が作成できず死亡届を作成できないような場合に、官公庁の報告によって戸籍に死亡の記載がされます。

そのため、遺族が認定死亡にして欲しいと申請することはできません。

認定死亡の効力

前記のとおり、失踪宣告の場合は死亡と「みなす」ので、仮に宣告を受けた人が生きていたとしても、再度家庭裁判所に失踪宣告を取り消してもらわなければなりません。

他方、認定死亡の場合にはあくまで死亡と「推定する」にすぎませんから、認定死亡とされた人が生きていたならば、そのことを証明すれば覆すことができます。

死亡として扱われる時期

認定死亡の場合、戸籍に記載された死亡日が、死亡として扱われる時期になります。

失踪宣告と認定死亡の違い

失踪宣告と認定死亡には、以下のような違いがあります。

項目失踪宣告認定死亡
根拠法令民法戸籍法
扱う機関家庭裁判所市区町村長
対象(普通失踪)生死が7年間明らかでない不在者死亡の原因となる
(特別失踪)危難が去ってから1年間生死が明らかでない危難の遭遇者
死亡は確実であるものの遺体を確認できない者
効果死亡とみなす(擬制)死亡と推定
死亡として扱われる時期(普通失踪)生死不明になってから7年間が満了した時
(特別失踪)危難が去った時
戸籍に記載された死亡日
生存が判明した場合家庭裁判所より失踪宣告が取り消されるまで、死亡とみなされたまま生存を証明すれば、取り消される

相続の開始と被相続人の死亡

民法 第882条

  • 相続は、死亡によって開始する。

引用元:e-Gov法令検索

人の死亡は権利能力の終期であるため、さまざまな法律関係に大きく影響します。中でも、相続においては、人の死亡がその発生に直接関わります。

なぜなら、遺産相続は、被相続人が死亡した時から開始されるからです(民法882条)。他に相続開始原因はありません。「被相続人の死亡」が唯一の相続開始原因です。

死亡として扱われるか否かによって、相続が開始されるのか、されないのかが決まります。これは、相続を受けることになる相続人はもちろん、被相続人と法律関係を持っている人にとっても重大な問題となります。

死亡と扱われない場合の不都合

失踪者が死亡と扱われない場合、法律関係はそのままです。

相続人になるはずの人は、相続が開始されないので相続人になれません。そのため、被相続人の財産や法律関係を処理できず、不安定な地位に置かれ続けることになってしまいます。

また、失踪者と取引をしていた人は、失踪者と取引を進められない上、相続も発生していないので、相続人と取引関係を進めることもできません。

多方面でさまざまな不都合が起こるのです。

失踪宣告がされた場合の法律関係

家庭裁判所によって失踪宣告がされると、失踪者(不在者)は、死亡したものとみなされます。それにより、死亡とみなされた時から相続が開始されます。

相続の開始によって、失踪者の財産や法律関係は相続人に受け継がれ、法律関係が明確になります。

失踪宣告が取り消された場合の法律関係

失踪宣告後、失踪者が生存していた場合、家庭裁判所によって失踪宣告取消しの審判がされると、失踪宣告の効力は失われます。

この場合、相続もなかったことになるので、財産を受け取った相続人は、失踪者に財産を返還しなければいけません。(民法32条2項本文)。

ただし、全部を返還する必要はなく、現に利益を受けている限度(現存利益)で返還すれば足ります(民法32条2項ただし書き)。

また、失踪宣告から取消しまでの間に善意でした行為は効力を失いません(民法32条1項後段)。

そのため、失踪宣告により相続が開始したと知らずに相続人と取引をして相続財産を取得したような場合、その取引は有効なまま残ります。

認定死亡がされた場合

認定死亡の扱いになった場合、戸籍に記載された死亡日から相続が開始されます。

ただし、行方不明者が生存していることが証明されると死亡の記載は効力を失い、相続もなかったことになります。

この場合、失踪宣告の規定が類推適用され、相続人の返還義務の範囲は現存利益で足りると考えられています。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

民法と資格試験

民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。

そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。

これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。

とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

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参考書籍

本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。

逐条解説 改正相続法
著者:堂薗幹一郎など 出版:商事法務
民法改正に対応した逐条解説書。相続を扱う実務家向けですが、持っていると何かと便利です。立法担当者や現役裁判官による著書であるため、内容に信頼性があります。

資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。

民法VI 親族・相続 (LEGAL QUEST)第8版
著者:前田陽一ほか  出版:有斐閣
家族法全体の概説書。条文・判例から書かれているので、学習の早い段階から利用できます。情報量もあるので、資格試験の基本書として十分でしょう。

親族・相続(伊藤真試験対策講座12)第4版
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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