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保証会社に代位弁済された後でも住宅資金特別条項を利用できるか?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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住宅ローンを滞納すると、住宅ローンの保証会社が借主に代わって住宅ローン債権者に代位弁済をし、それによって、その住宅ローン債権は保証会社に移ります。

しかし、この保証会社に移った債権は「民法第499条の規定により住宅資金貸付債権を有する者に代位した再生債権者(弁済をするについて正当な利益を有していた者に限る。)が当該代位により有するもの」(民事再生法198条1項)に該当するので、住宅ローン保証会社が代位弁済した後は、住宅資金特別条項を利用できなくなるのが原則です

ただし、例外的に、代位弁済日から6か月を経過するまでに再生手続開始の申立てをした場合に限り、保証会社の代位弁済が無かったことになり、それによって、住宅資金特別条項を利用できるようになるとされています(住宅ローンの「巻戻し」。同条2項)。

住宅ローン保証会社による代位弁済

民法 第499条

  • 債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。

銀行や住宅金融支援機構などの住宅ローン会社から住宅ローンを借りる際、住宅抵当権を設定されるだけでなく、連帯保証人として、親族等のほかに「保証会社」が付けられます。

住宅ローンの借主が返済しなかった場合、保証会社が代わりに住宅ローンを支払って(代位弁済)、今度はその保証会社が借主に対して支払った分を返すよう請求することになります。

具体的には、以下の仕組みです。

保証会社による代位弁済の仕組み
  1. 借主が、住宅ローン会社との間で、住宅ローンを借りる契約(金銭消費貸借契約)を締結する。
  2. 借主が、保証会社との間で、保証会社に住宅ローンの保証人になってもらうことを委託する契約(保証委託契約)を締結する。
  3. 住宅ローン会社が、保証会社との間で、保証会社が住宅ローンの連帯保証人になる契約(連帯保証契約)を締結する。
  4. 上記各契約によって、借主が住宅ローンを支払わなかった場合、住宅ローンの期限の利益が失われて分割払いの定めはなくなり、住宅ローン会社は、借主および連帯保証人に対して住宅ローン残高を一括で支払うよう請求できるようになる。
  5. 実際に借主が住宅ローン残高を支払わなかった場合、住宅ローン会社は、連帯保証人である保証会社に対して、保証契約に基づき、借主の代わりに連帯保証債務(住宅ローン残高)を支払うよう請求する。
  6. 保証会社は、この請求に応じて、住宅ローン会社に対し、連帯保証債務(住宅ローン残高)を弁済(代位弁済)する。
  7. 代位弁済によって「弁済による代位」の効力が発生し(民法499条)、住宅ローン債権は保証会社に移り、保証会社が借主に対して求償権を取得する。
  8. 保証会社が、借主に対し、求償権に基づいて、借主の代わりに弁済した住宅ローン残高を支払うよう請求する。

弁済による代位・代位弁済とは

弁済による代位とは、第三者が、債務者のために弁済をすることによって、債権者が有していた債権などの権利を行使できるようになる制度です。この場合における第三者が債務者のためにする弁済のことを「代位弁済」といいます。

この弁済による代位には、「弁済をするについて正当な利益を有する者」による代位(法定代位)とそうでない者による代位(任意代位)があります。

前記の住宅ローンの保証会社は保証人または連帯保証人であるため、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に該当します(大判昭和9年11月24日等)。

個人再生の住宅資金特別条項の対象となる住宅資金貸付債権とは

民事再生法 第198条

  • 第1項 住宅資金貸付債権(民法第499条の規定により住宅資金貸付債権を有する者に代位した再生債権者(弁済をするについて正当な利益を有していた者に限る。)が当該代位により有するものを除く。)については、再生計画において、住宅資金特別条項を定めることができる。ただし、住宅の上に第53条第1項に規定する担保権(第196条第3号に規定する抵当権を除く。)が存するとき、又は住宅以外の不動産にも同号に規定する抵当権が設定されている場合において当該不動産の上に同項に規定する担保権で当該抵当権に後れるものが存するときは、この限りでない。

個人再生において住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の対象となるのは「住宅資金貸付債権」です。

住宅資金貸付債権とは、住宅の建設・購入・改良に必要な資金の貸付の再生債権で、分割払いの定めがあり、その債権またはその債権の保証会社の求償権を担保するために住宅に抵当権が設定されているもののことをいいます(民事再生法196条3号)。

典型的なものは住宅ローンです。

保証会社による代位弁済後の住宅資金特別条項の利用の可否

住宅資金貸付債権に該当する住宅ローンを保証会社が代位弁済すると、その住宅ローン債権は保証会社に移ります。

代位弁済後に保証会社に移った債権も住宅ローンであるため、住宅資金特別条項の利用が可能なようにも思えます。

しかし、住宅資金貸付債権は「民法第499条の規定により住宅資金貸付債権を有する者に代位した再生債権者(弁済をするについて正当な利益を有していた者に限る。)が当該代位により有するものを除く。」とされています(民事再生法198条1項)。

つまり、弁済による代位によって住宅資金貸付債権を有する債権者に代位した再生債権者が代位によって取得した債権は、住宅資金貸付債権から除かれるのです。

保証会社が代位弁済により取得した住宅ローン債権は、この「民法第499条の規定により住宅資金貸付債権を有する者に代位した再生債権者(弁済をするについて正当な利益を有していた者に限る。)が当該代位により有するもの」に該当するので、住宅資金貸付債権から除かれます。

したがって、保証会社が代位弁済をした後は、住宅資金特別条項を利用できなくなるのが原則です。

ただし、保証会社の代位弁済に関しては、後述のとおり、「巻戻し」と呼ばれる救済制度が用意されています。

住宅ローンの「巻戻し」の利用

民事再生法 第198条

  • 第2項 保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合において、当該保証債務の全部を履行した日から6月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、第204条第1項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について、住宅資金特別条項を定めることができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

前記のとおり、保証会社が代位弁済をしてしまった後は、住宅資金特別条項を利用できなくなるのが原則です。

しかし、住宅ローンを借りる際に保証会社が付けられ、住宅ローンの滞納が生じると保証会社が代位弁済をするのが通常です。

それにもかかわらず、保証会社が代位弁済をした後はもはや一切住宅資金特別条項を利用できないとしてしまうと、住宅資金特別条項の利用範囲がかなり限定され、債務者の救済を図ろうとした趣旨に反しかねません。

そこで、保証会社が住宅資金貸付債権の保証債務を履行(代位弁済)した場合であっても、その保証債務の全部を履行(代位弁済)した日から6か月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、再生計画に住宅資金特別条項を定めることができるとされています(民事再生法198条2項)。

巻戻し」と呼ばれる制度です。

巻戻しの効果

この巻戻し制度を利用できれば、保証会社が代位弁済をしたとしても、その代位弁済日から6か月以内に個人再生手続開始の申立てをすれば、保証会社の代位弁済は無かったことになります

保証会社の代位弁済が無かったことになる結果、住宅ローン債権はもとの住宅ローン会社に復帰し、住宅資金特別条項を利用できるようになるのです。

とはいえ、猶予は代位弁済日から6か月しかありません。6か月を経過してしまうと、もはや巻戻しはできません。

再生手続開始の申立てをするためにある程度の準備期間も必要となるため、住宅資金特別条項の利用を考えているのであれば、保証会社に代位弁済をされたらすぐに行動を開始した方がよいでしょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

弁護士の探し方

「個人再生をしたいけど、どの弁護士に頼めばいいのか分からない」
という人は多いのではないでしょうか。

現在では、多くの法律事務所が個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。

しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。

債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。

そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。

ちなみに、個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。

弁護士法人東京ロータス法律事務所

  • 相談無料(無料回数制限なし)
  • 全国対応・休日対応・メール相談可
  • 所在地:東京都台東区

弁護士法人ひばり法律事務所

  • 相談無料(無料回数制限なし)
  • 全国対応・依頼後の出張可
  • 所在地:東京都墨田区

弁護士法人ちらいふく

  • 相談無料
  • 24時間対応・秘密厳守・匿名相談可能・メールフォーム・LINE相談可能
  • 所在地:東京都千代田区

参考書籍

本サイトでも個人再生について解説していますが、より深く知りたい方のために、個人再生の参考書籍を紹介します。

個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。

個人再生の手引(第2版)
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。

はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。

書式 個人再生の実務(全訂6版)申立てから手続終了までの書式と理論
編集:個人再生実務研究会 出版:民事法研究会
東京地裁・大阪地裁の運用を中心に、個人再生の手続に必要となる各種書式を掲載しています。書式を通じて個人再生手続をイメージしやすくなります。

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