この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
- Q遺産分割調停とは、どのような手続?
- A
遺産分割調停は、家庭裁判所の裁判官や家庭裁判所が選任した調停委員を間に入れて、共同相続人全員(または包括受遺者や相続分の譲受人)で遺産分割について話し合う手続です。調停で遺産分割をすることを「調停分割」といいます。
このページでは、遺産分割調停・調停分割について詳しく説明します。
- 遺産分割調停・調停分割とは何か
- 遺産分割調停のメリット・デメリット
- 遺産分割調停と遺産分割審判の選択
- 遺産分割調停の申立権者・管轄裁判所
- 遺産分割調停の流れ・調停不成立になった場合の手続

- 遺産分割の手続
- 遺産分割調停・調停分割とは
- 遺産分割調停を利用するケース
- 遺産分割調停の4つのメリット
- 遺産分割調停のデメリット
- 調停と審判のどちらを選ぶ?
- 遺産分割調停を申し立てられる人(申立人)
- どの裁判所に遺産分割調停を申し立てる?
- 遺産分割調停の手続の流れ
- 遺産分割調停が不成立に終わった場合
- 遺産分割調停に関するよくある質問
- 民法と資格試験
- 参考書籍
遺産分割の手続
相続人が複数人いる場合(共同相続)、遺産(相続財産)は共同相続人全員による共有または準共有になるのが原則です(遺産共有。民法898条1項)。
この遺産共有を解消するには、共同相続人で「遺産分割」をして、誰にどの財産をどの程度の割合で受け継がせるかを確定する必要があります。
遺産分割の基本的な手続は裁判所を使わずに話し合いをする遺産分割協議ですが、協議が上手くいかない場合には、家庭裁判所の手続を利用できます。
家庭裁判所の手続には、遺産分割調停と遺産分割審判があります。どちらも選択可能ですが、まずは遺産分割調停を行うのが通常です。
遺産分割調停・調停分割とは
民法 第907条
- 第1項 共同相続人は、次条第1項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
- 第2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
引用元:e-Gov法令検索
遺産分割調停とは、家庭裁判所の裁判官や調停委員が間に入り、共同相続人全員の話し合いを取りまとめる手続です。調停によって遺産分割することを調停分割といいます。
裁判手続ではあるものの、基本は「話し合い」です。
ただし、共同相続人だけで話し合う遺産分割協議と違って、法律の専門家である家庭裁判所の裁判官や実務経験豊富な調停委員を交えて話し合う点が、遺産分割調停の特徴です。
遺産分割調停を利用するケース
遺産分割調停を利用できるのは、以下のケースです(民法907条2項本文)。
- 共同相続人間に協議が調わないとき
共同相続人間だけでの話し合いでは話がまとまる見込みがない場合は、遺産分割調停を利用できます。 - 協議をすることができないとき
非協力的な共同相続人がいるため、話し合いすること自体ができない場合も、遺産分割調停を利用できます。
遺産分割調停の4つのメリット
遺産分割調停には、以下のようなメリットがあります
メリット1:柔軟な解決が可能
遺産分割調停は、家庭裁判所の手続とはいえ、話し合いで決める手続です。そのため、柔軟な解決が可能です。
例えば、共同相続人全員が合意すれば、遺言で指定された相続分(指定相続分)や民法で定められた法定相続分と異なる相続分で遺産分割することが可能です。
また、遺言で遺産分割方法が指定されていても、指定と異なる方法で分割することもできます。
メリット2:法的観点から問題点をまとめてもらえる
遺産分割調停では、家庭裁判所の裁判官や裁判所が選任した調停委員が、共同相続人間の話し合いを進行していきます。
裁判官・調停委員は法律の専門家であるため、法的な争点に絞って話し合いを進めることができ、よりスムーズで冷静な話し合いが望めます。
メリット3:冷静に話し合える
遺産分割調停では、家庭裁判所の裁判官や調停委員が間に入るため、共同相続人だけで話し合う協議よりも感情的な対立が起こりにくいメリットがあります。
実際の調停期日でも、最初の手続説明を除いて、基本的に共同相続人同士が直接話し合うのではなく、個別に裁判官や調停委員が話を聞く形で進められます。
直接顔を合わせるわけではないので、過剰に感情的になることを抑えやすくなっています。
遺産分割協議では上手くいかなかったとしても、裁判官や調停委員が入ることで話し合いが成立することも多いです。
メリット4:調停調書を作成してもらえる
遺産分割調停で話がまとまった場合、裁判所で話し合いの結果をまとめた調停調書を作成してくれます。法律の専門家である裁判官が作ってくれるため、書き方を心配する必要がありません。
また、調停調書は家庭裁判所が作成する公的書面であるため、預金の名義変更や不動産の登記など、さまざまな相続手続で使えます(むしろ、ないと相続手続できないことが多いです。)。
遺産分割調停のデメリット
遺産分割調停には、協議や審判にはないメリットもありますが、話し合いを基本とする手続であるため限界もあります。
以下では、遺産分割調停のデメリットについて説明します。
デメリット1:強制力はない
遺産分割調停は家庭裁判所の手続ですが、あくまで話し合いの手続であるため、強制力がありません。
そのため、出席を拒む共同相続人を強制的に連れてきたり、合意しない共同相続人を無視して強制的に調停を成立させたりすることはできません。
とは言え、裁判所から呼び出しを受ければ、話し合いへの参加を拒んでいたとしても、話し合いに応じるようになることはあります。
また、裁判官や調停委員の説明や説得によって、話し合いがまとまるケースも多いです。
デメリット2:裁判所の費用がかかる
遺産分割調停も家庭裁判所の手続であるため、裁判手数料や郵便切手代などの裁判費用がかかります。裁判費用の負担は、遺産分割調停のデメリットと言えます。
とは言え、それほど高額ではありません。大きなデメリットとは言えないでしょう。
| 費用等の項目 | 金額 |
|---|---|
| 裁判手数料(収入印紙代) | 1200円(被相続人1人につき) ※申立書に収入印紙を貼付して支払います。割り印をしてはいけません。 |
| 予納郵券(郵便切手代) | 概ね3000~4000円分 ※裁判所によって、金額や切手の種類の内訳の違いがあります。事前に確認しておきましょう。 |
遠方の人は裁判所への交通費がかかります。ただし、交通費が過大になる場合は、電話で調停に参加することも可能です。
デメリット3:時間や手間がかかる
遺産分割調停では、概ね月に1回程度のペースで話し合いの期日が行われます。
そのため、遺産分割調停の方が、協議よりも時間がかかるケースがあります。実際、1年以上かかることも少なくありません。
また、調停の期日は平日の日中に行われるため、スケジュールの調整も必要です。
調停と審判のどちらを選ぶ?
前記のとおり、遺産分割の裁判手続には、遺産分割調停と遺産分割審判があります。
家庭に関する事件(家事事件)には、審判を申し立てる前に調停を行わなければならないとするルール(調停前置主義)が適用されることが多いですが、遺産分割の場合には適用されません。
協議が整わなかったら、いきなり審判を申し立てることも可能ではあります。
しかし、遺産分割も家族・親族の問題であり、話し合いに馴染む事件類型です。そのため、いきなり遺産分割審判を申し立てても、家庭裁判所の判断で調停に移される(調停に付される)のが通常です。
特別な事情のない限り、協議が整わなかった場合は、まず遺産分割調停を申し立てた方がよいでしょう。
遺産分割調停を申し立てられる人(申立人)
遺産分割調停を申し立てられるのは、以下の人に限られます。
- 共同相続人
- 遺言で包括遺贈を受けた人(包括受遺者)
- 共同相続人から相続分を譲り受けた人(相続分譲受人)
共同相続人
遺産分割調停を申し立てられるのは、もちろん共同相続人です。
ただし、未成年者や判断能力を欠く人が相続人である場合は、法定代理人(未成年者の父母・親権者、成年被後見人の成年後見人)が代わりに申立てを行う必要があります。
包括受遺者
遺産を遺す人は、遺言で相続財産を特定の人に贈与できます。これを遺贈といいます。相続人だけでなく、第三者にする遺贈することも可能です。
遺贈には、特定の財産を贈与する特定遺贈と、財産を特定せず、相続人のように相続財産を取得できる割合を与える包括遺贈があります。
遺言で包括遺贈がされている場合、包括遺贈をうけた人(包括受遺者)は、相続人ではなくても遺産分割調停を申し立てることができます。
なお、申立人であるだけでなく、包括受遺者は遺産分割に必ず参加しなければいけません。包括受遺者が参加していない遺産分割は無効になるので、注意を要します。
相続分譲受人
共同相続人は、遺産分割が完了する前でも、自分の相続分を他の共同相続人または第三者に譲り渡すことが可能です(相続分の譲渡)。
相続分を譲り受けた人(譲受人)も、遺産分割調停を申し立てることができます。なお、この相続分譲受人が参加しない遺産分割も無効です。
どの裁判所に遺産分割調停を申し立てる?
遺産分割調停はどこの裁判所に申し立ててよいわけではありません。遺産分割調停を取り扱える裁判所の管轄は法律で決められています。
裁判所の種類(職分管轄):家庭裁判所
遺産分割調停を取り扱っているのは「家庭裁判所」です。簡易裁判所や地方裁判所ではありません。
裁判所の土地管轄の原則:相手方の住所地を管轄する家庭裁判所
遺産分割調停を申し立てるのは家庭裁判所ですが、どこの家庭裁判所でもよいわけではありません。どこに所在する家庭裁判所に申し立てるべきか(土地管轄)も決まっています。
遺産分割調停を申し立てる家庭裁判所は「相手方(自分以外の共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人)の住所地を管轄する家庭裁判所」です。
相手方が複数人いる場合は、その複数人の住所地を管轄する家庭裁判所であれば、どこでも申し立て先を選べます。複数の候補の中から、自分に都合のよい裁判所を選んでも問題ありません。
例えば、相手方Aの住所地は東京都千代田区、相手方Bの住所地は香川県高松市であった場合、東京家庭裁判所と高松家庭裁判所のどちらに遺産分割調停を申し立ててもよいことになります。
裁判所の土地管轄の例外:全員で合意した家庭裁判所(合意管轄)
上記のとおり、遺産分割調停を申し立てる裁判所は決まっていますが、共同相続人全員(または包括受遺者・相続分譲受人)で合意すれば、どこの家庭裁判所でも申し立て可能です。
例えば、相手方Aの住所地は東京都千代田区、相手方Bの住所地は香川県高松市であったとしても、本人・A・Bの全員で管轄を大阪家庭裁判所とすることを合意すれば、大阪家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
選べるのはあくまで場所だけです。共同相続人全員の合意があっても、家庭裁判所以外の裁判所を選ぶことはできません。
合意に基づいて申立てする場合は、合意したことを証明できる書面(管轄合意書)を裁判所に提出しなければいけません。
共同相続人全員で管轄について合意した場合は、管轄合意書を作成し、全員に署名・押印してもらいましょう。
遺産分割調停の手続の流れ
遺産分割調停は、以下の流れで進むのが一般的です。
- ステップ1遺産分割の準備をする
実際に遺産分割を始める前に、誰が共同相続人なのか、遺産には何があるのか、遺言の有無や内容を調査しておきましょう。
- ステップ2遺産分割協議を行う
準備が整ったら、共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人の全員と協議を行い、遺産分割について話しあいます。
- ステップ3協議が調わなかった場合は、調停の必要書類を集める
遺産分割協議が上手くいかなかった場合は、遺産分割調停の準備を開始します。まずは必要な書類を集めましょう
- ステップ4遺産分割調停の申立書を作成する
必要書類を集めつつ、裁判所に提出する遺産分割調停の申立書を作成します。
- ステップ5管轄の裁判所を調べる
遺産分割調停の申立てをする家庭裁判所はどこになるのかを、事前に調べておきましょう。共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人の全員で合意して申し立てる家庭裁判所を決めることも可能です。
- ステップ6管轄の家庭裁判所に申立書と必要書類を提出する
準備が整ったら、管轄の家庭裁判所に申立書と必要書類を提出して、遺産分割調停を申し立てます。
- ステップ7裁判所に費用を支払う
遺産分割調停の申立てをする際、家庭裁判所に裁判費用などを支払います。
- ステップ8遺産分割調停が開始される
申立書や必要書類に不備がなければ、遺産分割調停が開始され、遺産分割の全参加者に手続開始の通知と期日に出頭するよう呼出状が送られます。
- ステップ9第1回目の遺産分割調停期日が行われる
裁判所が指定した期日に、第1回の遺産分割調停期日が行われます。第1回期日では、まずはじめに、裁判官または調停委員によって手続説明や事実確認が行われ、話し合いが開始されます。
- ステップ10第2回目以降の調停期日
第1回で話がつかなければ、第2回、第3回・・・と期日が続いていきます。概ね月に1回ほどのペースです・
- ステップ11話がついた場合は、調停調書が作成される
話がついた場合、裁判所によって話し合いの内容をまとめた書面(調停調書)が作成されます。これで遺産分割調停の手続は終了です。
- ステップ12各自で相続手続を行う
遺産分割調停で決められた内容に基づいて、それぞれの相続人が名義変更や登記、換金などの相続手続を行います。
ステップ1:遺産分割の準備をする
遺産分割を始める前に、いくつか調べておかなければならないことがあります。事前に調査しておいた方が、遺産分割協議での話し合いもスムーズに進められます。
具体的には、以下のようなことを調べておきましょう。
相続人の調査
前記のとおり、遺産分割には、共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人の全員が参加していなければなりません。ひとりでも欠けていると、協議は無効になってしまいます。
遺産分割のやり直しになってしまわないように、事前に誰が共同相続人なのかなどを調べておきましょう。
共同相続人を調べるには、亡くなった人(被相続人)の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を取り寄せて調査する必要があります。
相続財産の調査
遺産共有になっている相続財産は、遺産分割しなければなりません。また、遺産共有財産以外にどのような相続財産があるのかも、話し合いをまとめる上で必要な情報になることがあります。
そのため、すべての相続財産を事前に調べておきましょう。
また、遺産分割では、個々の遺産の価額がどのくらいなのか、遺産の評価も重要な問題です。何があるかだけでなく、可能であれば査定もとっておきましょう。
遺言の調査
遺言にどのようなことが定められているのかによって、遺産分割の内容も変わってきます。遺産分割協議が完了した後に遺言が発見されると、やり直さなければならないケースもあります。
例えば、遺言で相続分や遺産分割方法などが指定されている場合、遺言に従って遺産分割するのが原則です。
また、遺言で遺贈を定めていることもあります。遺贈があると、相続人の取り分は変わります。また、包括遺贈の場合は、その遺贈を受けた包括受贈者も遺産分割に参加する必要があります。
遺産分割をする前に、遺言書の有無や内容を必ず調べておきましょう。
ステップ2:遺産分割協議を行う
準備が整ったら、共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人の全員に連絡をとって、遺産分割協議を始めます。
話し合いの方式や方法は、特に決められていません。直接会って話し合うのが望ましいですが、電話やWEB会議、郵送のやり取りで話し合いを進めても問題ありません。
話がついた場合は、話し合いの結果を取りまとめた書面(遺産分割協議書)は、必ず作成しておきましょう。その上で、参加者全員で取り交わします。
遺産分割協議の詳しい流れについては、下記リンク先ページを参照してください。
ステップ3:協議が調わなかった場合は、調停の必要書類を集める
遺産分割協議が上手くいかなかった場合や、非協力的な共同相続人がいるため協議そのものができなかった場合には、遺産分割調停をしなければなりません。
遺産分割調停をするには、家庭裁判所に必要書類を提出して申立てをしなければいけません。そのため、まずは遺産分割調停の申立てに必要となる書類を集めておく必要があります。
必要書類には、以下のようなものがあります。
共通の必要書類
遺産分割調停の申立てで必須となる書類には、以下のものがあります
| 必要書類 | 入手先・備考 |
|---|---|
| 遺産分割調停の申立書 | 自分で作成 書式は家庭裁判所でもらえる。インターネットからダウンロードも可能 |
| 事情説明書 | 自分で作成 書式は家庭裁判所でもらえる。インターネットからダウンロードも可能 |
| 進行に関する照会回答書 | 自分で作成 書式は家庭裁判所でもらえる。インターネットからダウンロードも可能 |
| 各種目録(当事者目録・相続財産目録) | 自分で作成 書式は家庭裁判所でもらえる。インターネットからダウンロードも可能 |
| 被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本 | 被相続人の本籍地の市区町村役場 過去の戸籍は、当時の本籍地の市区町村役場 |
| 共同相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 |
| 共同相続人全員の住民票(または戸籍の附票) | 各相続人の住所地の市区町村役場 ※戸籍の附票は本籍地の市区町村役場 |
| 包括受遺者や相続分譲受人の住民票(または戸籍の附票) | 包括遺贈や相続分の譲渡がある場合 |
| 遺言書 ※遺言がある場合 | コピーを提出 ※調停当日に原本を持っていく |
| 相続関係を証明する書類 | 下記を参照 |
| 相続財産に関する書類 | 下記を参照 |
| 管轄の合意がある場合 | 管轄合意書 |
相続関係などを証明する書類
被相続人の戸籍や相続人全員の戸籍だけでは相続人であることなどを証明しきれない場合は、以下のような書類の提出も必要となります。
| 具体的なケース | |
|---|---|
| 被相続人の子の子が代襲相続人である場合 | 亡くなった被相続人の子の出生から死亡までの一連の戸籍謄本 |
| 被相続人の「祖父母」が相続人である場合 | 亡くなった被相続人の「父母」の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍) |
| 被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合 | ・被相続人の父母の出生から死亡までの一連の戸籍謄本 ・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍) |
| 被相続人の兄弟姉妹の子が代襲相続人である場合 | ・亡くなった被相続人の兄弟姉妹の出生から死亡までの一連の戸籍謄本 |
| 相続分の譲渡があった場合 | 相続分譲渡の契約書・合意書など |
| 相続放棄をした人がいる場合 | 相続放棄申述受理証明書 |
| 推定相続人の廃除や相続欠格によって相続権を失った人がいる場合 | ・相続廃除の審判書 ・相続欠格の事情を示す書類・欠格者の欠格承認書など |
代襲相続だけでなく、再代襲相続など複雑な事情がある場合は、さらに書類が必要となる場合があります。事前に裁判所や弁護士に相談しておいた方がよいでしょう。
遺産(相続財産)に関する書類
遺産分割調停を申し立てる際には、相続財産目録に記載した相続財産に関連する書類も一緒に提出するのが通常です。
例えば、以下のようなものがあります(以下が、すべてではありません。)
| 相続財産 | 必要書類 | 入手先・備考 |
|---|---|---|
| 銀行預金・郵便貯金 | 相続開始時の残高証明書 必要に応じて通帳の写しや取引明細書 | 銀行や信用金庫 |
| 不動産 | 不動産登記事項証明書 固定資産評価証明書 必要に応じて査定書や鑑定書 | 登記は、各地の法務局 固定資産評価証明書は、不動産所在地の市区町村役場 |
| 自動車 | 自動車検査証 必要に応じて査定書 | 車検証はコピー ※調停当日に原本を持っていく |
| 株式や投資信託など | 株券・証書・証券の写し(ある場合) 残高証明書 | 残高証明書は証券会社 |
ステップ4:遺産分割調停の申立書を作成する
必要書類を集めたら、遺産分割調停の申立書を作成しましょう。
前記のとおり、遺産分割調停の申立書の書式は、家庭裁判所に行けば手に入ります。また、裁判所のサイトからインターネットでダウンロードすることも可能です。
ステップ5:管轄の裁判所を調べる
前記のとおり、遺産分割調停を申し立てる先は「相手方(自分以外の共同相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所」です。
管轄の合意がある場合は、その合意した家庭裁判所に申し立てることができます。管轄合意がある場合は、共同相続人(または受遺者・相続分譲受人)全員で取り交わした管轄合意書を裁判所に提出する必要があります。
あらかじめどこの家庭裁判所に申し立てたらよいかを調べておくと手続がスムーズです。
ステップ6:管轄の家庭裁判所に申立書と必要書類を提出する
準備が整ったら、管轄の家庭裁判所に申立書と必要書類一式を提出して、遺産分割調停を申し立てます。
申立ては、家庭裁判所の窓口で行うことも、郵送で行うこともできます。また、提出後に、裁判所から追加書類の提出を求められることもあります。
ステップ7:裁判所に費用を支払う
申立ての際、裁判所の費用などの支払いも必要です。裁判費用等は、以下のとおりです。
| 費用等の項目 | 金額 |
|---|---|
| 裁判手数料(収入印紙代) | 1200円(被相続人1人につき) ※申立書に収入印紙を貼付して支払います。割り印をしてはいけません。 |
| 予納郵券(郵便切手代) | 概ね3000~4000円分 ※裁判所によって、金額や切手の種類の内訳の違いがあります。事前に確認しておきましょう。 |
ステップ8:遺産分割調停が開始される
遺産分割調停の申立てに不備がなければ、調停手続が始まります。
最初に、家庭裁判所から共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人の全員に遺産分割調停を開始する旨の通知と、指定した期日に裁判所へ出頭するよう呼びかける書面(呼出状)が送られます。
ステップ9:第1回目の遺産分割調停期日が行われる
指定された日時・場所で、第1回の遺産分割調停期日が行われます。基本的には、全員出頭する必要があります。
遠方の人や、病気や怪我で行けない人の場合は、電話で話し合いに参加することも可能です。また、順次WEB会議システムが導入されています。
ただし、病気や怪我で参加できない場合を除いて、遠方であっても、本人確認のために、第1回目の期日だけは裁判所に出頭することを求められるケースも多いです。
第1回の期日では、話し合いの前に、裁判官または調停委員から出席者全員に対して注意事項や進め方などの説明が行われます。
その後、以下のような事実確認や各自の主張の確認などが行われます。
相続人などの確認
遺産分割に参加しなければならない人(共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人)がひとりでも欠けていると、調停が無効になってしまうおそれがあります。
そこで、念のため、戸籍や書類を確認しながら、ほかに共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人がいないかを確認されます。
遺産(相続財産)の確認
遺産分割調停の申立書に添付する相続財産目録に記載しているもののほかに、相続財産がないかも確認されます。
当事者から話を聞くことによって、相続財産目録に記載されていない遺産が発覚することも意外とあります。その場合には、次回の期日までに調査をして、関連する書類を提出するよう求められます。
また、話し合いでは、相続財産の評価額も重要です。そのため、財産の価値の評価も確認し、評価額や評価方法、評価の基準時のどこに主張の食い違いがあるのかなども確かめられます。
事案によっては、鑑定が必要となるケースもあるでしょう。鑑定が必要となる場合は、裁判所から当事者に鑑定を求める意思があるか否かの確認も行われます。
遺言の確認
遺言がある場合は、調停でも遺言の内容に沿って話し合いが進められていきます。
そのため、遺言書の有無が確認されます。遺言書がある場合には、裁判官・調停委員が遺言書の原本を確認します。第1回の調停期日では、遺言書の原本を持参しましょう。
各共同相続人の主張の確認
各事実を確認した後、それぞれの共同相続人がどのようなことを主張しているのか、どこに争いのポイントがあるのかなどの確認が行われます。
特別受益や寄与分を主張する共同相続人がいる場合は、主張の内容や根拠、証拠の有無などを確認します。
2回目以降に向けての準備
上記の事実・主張の確認をもとに、裁判官や調停委員から各共同相続人などに争いのポイントが示され、次回以降にそれぞれが準備しておくことが提示されます。
この提示に基づいて、各自2回目以降の準備を進めていきます。
最後に次回の期日の日時が決められて、第1回は終了します。なお、第1回でいきなり話がつく場合も、少ないですが、ないわけではありません。
ステップ10:第2回目以降の調停期日
2回目以降の調停期日は、各共同相続人が提出した主張や証拠に基づいて話し合いが進められます。反論や証拠の追加などが随時求められて、話し合いは第2回、3回…と続いていきます。
期日開催のペースは、概ね月に1回です。各期日の時間は、2~3時間ほどでしょう。
話し合いの目処がついたところで、裁判官・調停委員から調停案が示され、以降、調停案に基づいて話が進められます。争点が少なければ、第2回で調停案が提示されることもあります。
ステップ11:話がついた場合は、調停調書が作成される
共同相続人ら全員の話がまとまると、裁判所によって、話し合いの結果をまとめた調停調書が作成されます。作成された調停調書は、調停当事者全員の前で読み上げられて、内容に問題がないかを聞かれます。
この調停調書の作成により遺産分割調停が成立し、手続は終了になります。調停調書は、期日終了後、各自のところに郵送で送られます。
ステップ12:各自で相続手続を行う
調停が成立した後は、各共同相続人が、それぞれ調停で決まった内容に基づいて、個々の財産の名義変更や回収などの相続手続を進めていきます。
これら個々の財産の相続手続では、調停調書が必要になるので、無くさないよう大切に保管しておきましょう。
なお、万が一無くしてしまった場合でも、再発行は可能です。ただし、家庭裁判所の手続が必要な上、費用は1枚150円です。
遺産分割調停が不成立に終わった場合
調停でも話がまとまる見込みがないと裁判所が判断した場合、遺産分割調停は不成立となり、手続は終了します。
そして、そのまま手続が自動的に遺産分割審判に移行します。調停が終了した後に、あらためて審判を申し立てる必要はありません。
遺産分割審判では、調停と違い、共同相続人各自が主張とそれを裏付ける証拠を提出して立証し、それらに基づいて、裁判所が遺産分割の内容を決定します。
遺産分割調停に関するよくある質問
ここでは、遺産分割調停に関するよくある質問をQ&A形式で説明します。
調停委員はどのような人が担当する?
- Q家庭裁判所が選任する調停委員は、どのような人が担当する?
- A
調停委員には、家事事件の紛争解決に専門的知識や社会経験を持つ40歳以上の男女1名ずつが選任されます。弁護士が選任されることが多いでしょう。
遺産分割調停は、家庭裁判所が選任した家事調停委員が、当事者から話を聞いて進めていきます。通常は、男女1名ずつの委員が選任されます。
この調停委員に選任されるのは、以下の条件を満たす人です。
- 年齢40~70歳
- 弁護士、または家事事件の紛争解決に有効な専門的知識や社会経験を有する者
東京家裁や大阪家裁など都市圏では、調停委員には弁護士が選任されることが多いです。
遺産分割調停に欠席するとペナルティがある?
- Q遺産分割調停に欠席するとペナルティを受ける?
- A
遺産分割調停に欠席しても、直接的なペナルティはありません。しかし、ひとりでも欠席すると調停を進めることができないため、話し合いで解決できなくなる可能性があります。
遺産分割調停に欠席しても、直接的にペナルティを受けることはありません。ただし、共同相続人(または包括受遺者・相続分譲受人)のひとりでも欠けていると、遺産分割調停は成立しません。
ひとりが欠席を続けると調停が不成立となって、手続は審判に移行します。審判は、話し合いではなく、裁判所が当事者の主張と立証に基づいて遺産分割の内容を決定します。
そのため、欠席することによって、話し合いで遺産分割を解決できなくなります。話し合いで解決できないと、自分の希望や主張を取り入れてもらえなくなるリスクはあります。
遠方である場合や病気で怪我で出席できない場合は、電話(裁判所によってはWEB会議)で参加することも可能です。遺産分割に希望や主張がある場合は、欠席しない方がよいでしょう。
遺産を相続する気がない場合も出席は必要?
- Q遺産を相続する気がない場合でも、遺産分割調停に出席する必要がある?
- A
はい。相続放棄をしていない限りは、遺産分割に参加しなければいけません。
遺産を相続する気がない場合でも、相続人でなくなるわけではありません。そのため、遺産分割に参加する必要があります。
ただし、前記のとおり、調停に欠席したからといって直接的なペナルティを受けることはありません。ペナルティは受けませんが、遺産を相続しなければいけません。
もし遺産を相続する気がない場合は、遺産分割には参加せず、家庭裁判所で相続放棄の手続をしておきましょう。相続放棄をすれば相続人ではなくなるので、遺産を相続する必要はなくなり、調停に参加しなくてもよくなります。
遺産分割調停では他の出席者と顔を合わせて話し合う?
- Q遺産分割調停では、他の出席者と顔を合わせて話し合う必要がある?
- A
いいえ。遺産分割調停では、基本的に他の出席者と顔を合わせて話し合うことはありません。順番に裁判官や調停委員と話し合う方式で手続が進められます。
当事者が直接同じテーブルについて話しあいをすると、口論になったり感情的になったりする可能性があります。
そのため、遺産分割調停では、当事者全員が顔を合わせて話し合うのではなく、順番に裁判官や調停委員と個別に話し合う方式で手続が進められます。自分の順番が来るまで待つ控室も、別々に用意されていることが多いです。
当事者が一堂に会して顔を合わせる機会は、調停の最初の手続説明や最後に調停調書を作成する場面くらいでしょう。
遺産分割調停はどのくらいの期間がかかる?
- Q遺産分割調停が終わるまでには、どのくらいの期間がかかる?
- A
話し合いによりますが、遺産分割調停が終わるまでの期間は、6か月程度はかかることが多いです。事案によっては1年近く続くこともあります。
遺産分割調停は、毎月1回ほどのペースで行われるのが一般的です。1回・2回の期日で終わることは少ないでしょう。
遺産分割調停が終了するまで、概ね6か月ほどかかることが多いです。事案によっては、1年以上続くこともあります。
ただし、明らかに話し合いでは決着がつかないことケースでは、3か月ほどで調停不成立となり、審判に移行することもあります。
弁護士に依頼せずに遺産分割調停することも可能?
- Q弁護士に依頼せずに、自分だけで遺産分割調停できる?
- A
はい。必ずしも弁護士に依頼する必要はありません。ただし、弁護士に依頼した方が、より有利な条件を勝ち取れる可能性が高まることは確かです。
遺産分割調停は、必ずしも弁護士に依頼しなければならないわけではありません。弁護士に依頼せずに自分だけで遺産分割調停を行っている人も多いです。
ただし、弁護士に依頼した方が、法的な根拠に基づいて自分の希望を主張し、相手方からの主張にも正当に反論できるため、より有利な条件を勝ち取れる可能性が高まることはあります。
特に、遺産が多く争いが大きい場合、特別受益や寄与分などの複雑な法的主張をしなければならない場合、相手方が弁護士に依頼している場合は、弁護士に依頼した方がよいでしょう。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
民法と資格試験
民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。
そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。
これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。
とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現
参考書籍
本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。
逐条解説 改正相続法
著者:堂薗幹一郎など 出版:商事法務
民法改正に対応した逐条解説書。相続を扱う実務家向けですが、持っていると何かと便利です。立法担当者や現役裁判官による著書であるため、内容に信頼性があります。
資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。
民法VI 親族・相続 (LEGAL QUEST)第8版
著者:前田陽一ほか 出版:有斐閣
家族法全体の概説書。条文・判例から書かれているので、学習の早い段階から利用できます。情報量もあるので、資格試験の基本書として十分でしょう。
親族・相続(伊藤真試験対策講座12)第4版
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。


