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賃貸人破産で破産管財人が契約解除しなかった場合の賃貸借契約の処理とは?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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賃貸人(貸主)について破産手続が開始された場合であっても、賃借人が賃借権について登記、登録その他の第三者に対抗することができる要件を備えているため、破産管財人が、破産法53条1項に基づく賃貸借契約の解除をすることができないときや(破産法56条1項)、破産管財人が賃貸借契約の履行請求を選択した場合には、賃貸借契約は終了せず破産手続開始後も存続することになります。

この場合、賃借人が有する請求権は財団債権として扱われます(破産法56条2項、148条1項7号)。破産管財人は、賃借人から賃料を回収して破産財団に組み入れるとともに、目的物を賃借権付きの物として売却して賃貸借契約を清算することになります。

賃貸人破産における破産管財人の解除権の制限

破産法 第53条

  • 第1項 双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は、契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
  • 第2項 前項の場合には、相手方は、破産管財人に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか、又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、破産管財人がその期間内に確答をしないときは、契約の解除をしたものとみなす。
  • 第3項 前項の規定は、相手方又は破産管財人が民法第631条前段の規定により解約の申入れをすることができる場合又は同法第642条第1項前段の規定により契約の解除をすることができる場合について準用する。

破産法 第56条

  • 第1項 第53条第1項及び第2項の規定は、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定する契約について破産者の相手方が当該権利につき登記、登録その他の第三者に対抗することができる要件を備えている場合には、適用しない。
  • 第2項 前項に規定する場合には、相手方の有する請求権は、財団債権とする。

引用元:e-Gov法令検索

賃貸人(貸主)について破産手続が開始された場合でも、その賃貸人(破産者)が締結している賃貸借契約は当然には終了しないため、破産管財人は、その賃貸借契約に基づく法律関係を清算しなければなりません。

破産手続において賃貸借契約は「双方未履行双務契約」として扱われるので、破産管財人が、賃貸借契約を解除するか、または、破産者側の債務を履行して賃借人に債務の履行(賃料の支払い)を請求するかを選択できるのが原則です(破産法53条1項)。

ただし、賃貸人破産の場合、賃借人が賃借権について登記・登録・その他第三者に対抗できる要件を備えているときには、破産管財人は、破産法53条1項に基づいて賃貸借契約を解除できません(破産法56条1項)。

そのため、賃借人に債務不履行などが生じていない場合などには、賃貸借契約を解除しないまま、賃貸借契約に基づく法律関係を清算しなければならないこともあります。

また、賃貸借契約を解除せずに収益物件として売却した方が、賃貸借契約を解除して賃貸借目的物を売却するよりも高額で換価できる場合には、あえて賃貸借契約を解除せずに履行請求を選択して、清算処理を進める場合もあります。

賃貸借契約の存続

賃借人が賃借権の対抗要件を備えているため破産法53条1項に基づく解除権が制限される場合や破産管財人が履行請求を選択した場合には、賃貸人について破産手続が開始された後も、賃貸借契約は存続することになります。

この場合、賃借人の有する請求権は財団債権として扱われ(破産法56条2項、148条1項7号)、賃借人は、破産管財人に対して、目的物を使用収益させるよう請求できます。

他方、破産管財人は、賃借人に対して、賃料を支払うよう請求でき、回収した賃料は破産財団に組み入れられます。

賃貸目的物の換価処分

賃貸借の目的物が破産者の所有物である場合、破産管財人は目的物を換価処分して破産財団に組み入れる必要があります。

賃貸借契約が解除されなかった場合、破産管財人は、賃貸人の地位とともに賃貸借目的物を売却して換価処分することになります。

賃料・家賃の回収

前記のとおり、賃貸借契約が解除されない場合、賃貸人の破産管財人が賃借人に対して賃料を請求し、回収した賃料を破産財団に組み入れることになります。

破産管財人が目的物を第三者に売却した場合、賃貸人たる地位もその第三者に移転することになります。

敷金・保証金の取扱い

賃貸借の目的物が不動産である場合、賃貸借契約締結に際して、賃借人から賃貸人に対し、敷金・保証金が差し入れられているのが通常です。

この敷金・保証金は、賃貸借契約が終了し、目的物である不動産が明け渡された時に、未払いの賃料や原状回復費用などを差し引いた上で、賃貸人から賃借人に返還されるべきものです(ただし、保証金については、敷金とは異なる性質のものとして取り扱われることもあります。)。

破産管財人が目的物を第三者に売却する際には、この敷金関係についても清算の措置をとった上で、売却する必要があります。

具体的には、敷金を買主(新たな賃貸人)に引き継ぎ、敷金関係を新たな賃貸人と賃借人に承継したり、または、いったん破産管財人と賃借人との間で敷金について清算をした上で、新たな賃貸人と賃借人との間で新たに敷金について取り決めをしてもらうなどの措置をとることになります。

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