この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
- Q破産手続においても調査嘱託や文書送付嘱託は認められる?
- A
はい。破産管財人は、裁判所の調査嘱託や文書送付嘱託を利用して各種の調査を行うことができます。
このページでは、破産手続においても調査嘱託や文書送付嘱託が利用できるのかについて詳しく説明します。
- 破産手続における調査嘱託・文書送付嘱託の利用
- 調査嘱託・文書送付嘱託とは
- 任意照会や弁護士会照会による調査との比較

破産管財人による各種の調査
破産手続は、破産者の財産を換価処分して得られた金銭を、各債権者に対して公平・平等に分配する手続です。
そのため、破産者の財産や債務を十分に調査しておかなければなりません。個人破産であれば、免責の調査も必要です。これら各種の調査は、裁判所によって選任される破産管財人が行います。
破産管財人は、破産者や関係者から提出された書類の精査やヒアリングを行って、破産者の財産や債務を調査します。調査を確実にするため、破産管財人には、説明義務者等に対する説明請求権や、帳簿等の検査権、転送郵便物を開披する権限などが付与されています。
また、調査事項によっては、破産者や関係者だけでなく、第三者に対して調査を行わなければならないケースもあります。
第三者に対して調査を行う場合、破産管財人は、民事訴訟法で定められている調査嘱託や文書送付嘱託を利用して調査をすることも可能です。
破産手続における調査嘱託・文書送付嘱託の可否
破産法 第13条
- 特別の定めがある場合を除き、破産手続等に関しては、その性質に反しない限り、民事訴訟法第1編から第4編までの規定(同法第87条の2の規定を除く。)を準用する。
引用元:e-Gov法令検索
破産者の財産や債務を調査するため、官公庁などの団体や文書所持者に対して調査を行わなければならないケースもあります。
このようなケースでは、任意で照会したり、弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会を利用したりすることもありますが、さらに、「調査嘱託」や「文書送付嘱託」制度を利用して調査することもあります。
調査嘱託や文書送付嘱託は民事訴訟法で定められている制度です(各制度の詳細は後述)。
特別の定めがある場合を除き、民事訴訟法の規定は破産手続に準用されるため(破産法13条)、破産手続においても調査嘱託や文書送付嘱託を利用できます。
実際の破産手続においても、調査嘱託や文書送付嘱託制度を利用して、破産者の財産や負債を調査することはよくあります。
調査嘱託による調査
民事訴訟法 第186条
- 裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。
引用元:e-Gov法令検索
民事訴訟法では「調査嘱託」と呼ばれる証拠調べの方法が認められています(民事訴訟法186条)。
調査嘱託とは、裁判所が、官庁・公署、外国の官庁・公署、学校、商工会議所、取引所その他の団体に対して、必要な調査をするよう嘱託することをいいます。
この調査嘱託を用いることにより、当事者でない第三者である官公庁などに対して、その官公庁等が把握している事実関係や証拠資料の有無等を調査することが可能となります。
前記のとおり、破産手続においても、この調査嘱託の利用が可能です。そのため、破産管財人は、裁判所を通じて官公庁等に調査嘱託を行い、破産者の財産や債務に関する情報を調査することができます。
破産手続で調査嘱託が利用されるケース
例えば、破産手続で調査嘱託が利用されるケースとしては、以下のような場合があります。
- 預貯金口座を調査するため、金融機関に調査嘱託する
- 貸金庫の有無を調査するため、金融機関に調査嘱託する
- 保険契約の有無を確認するため、保険会社に調査嘱託する
文書送付嘱託による調査
民事訴訟法 第226条
- 書証の申出は、第219条の規定にかかわらず、文書の所持者にその文書の送付を嘱託することを申し立ててすることができる。ただし、当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合は、この限りでない。
引用元:e-Gov法令検索
民事訴訟において、当事者は、各自の主張を立証するために、保有する文書を証拠(書証)として申し出るのが原則です(民事訴訟法219条)。
ただし、当事者は、証拠となり得る文書の所持者に対してその文書を送付するよう嘱託することを申し立てることができます。これを「文書送付嘱託」といいます(民事訴訟法226条)。
文書送付嘱託の申立てが適法に行われた場合、裁判所は、文書所持者に対してその文書を送付するよう嘱託します。
この文書送付嘱託を利用することにより、当事者でない文書所持者などから文書を提出してもらうことが可能となります。
前記のとおり、この文書送付嘱託も破産手続に準用されます。そのため、破産管財人は、裁判所を通じて文書を所持する第三者に送付を嘱託して、文書の調査を行うことも可能です。
調査嘱託と文書送付嘱託の違い
調査嘱託は、一定の事実の有無などを調査した結果を回答してもらう手続です。例えば、「〇〇の事実はあるか?」と質問し、「ある」「ない」と回答してもらうのが、調査嘱託です。
他方、文書送付嘱託は、特定の文書を送ってもらう手続です。何かを調査してもらうわけではなく、すでに存在している文書を提出してもらうのが、文書送付嘱託です。
その他第三者に対して調査を行う方法との比較
破産管財人が第三者に対して調査を行う場合、調査嘱託や文書送付嘱託以外にも、任意の照会書の送付や弁護士会照会を利用することもあります。
| 調査方法 | 依頼先 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 任意の照会 | 相手方に直接 | 迅速に処理できる 費用がかからない | 強制力がないため拒否されることも多い |
| 弁護士会照会 | 弁護士会 | 相手方には照会に応じる法的義務がある | 費用が高い 審査に時間がかかる |
| 調査嘱託 | 裁判所 | 相手方には調査嘱託に応じる法的義務がある | 裁判所の審査がある |
任意の照会書の送付
破産者や関係者以外の第三者に対して調査を行う場合、いきなり調査嘱託や文書送付嘱託を利用するのではなく、まずは破産管財人であることを明示して、調査への任意協力を求める照会書などを送るのが通常でしょう。
任意の照会書でもある程度は調査に応じてくれる場合はありますが、限界はあります。詳細を調査するには、調査嘱託や文書送付嘱託または弁護士会照会を行う必要があります。
弁護士会照会(23条照会)の利用
破産管財人に選任されるのは弁護士であるため、弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会(23条照会)を利用し、弁護士会を通じて第三者に照会する方法も利用できます。
この弁護士会照会も、相手方はこれに応じるべき公法上の義務があると解されています。そのため、調査嘱託や文書送付嘱託と効果に大きな違いはありません。
ただし、弁護士会照会は費用が高く、審査に時間がかかることも多いです。また、裁判所が関与している調査嘱託の方が調査に応じてくれやすいのも事実です。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
破産法と資格試験
倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。
この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。
ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
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参考書籍
破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。
破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。
条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。
司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。
倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。
倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。


