国債は遺産分割の対象となるのか?

国債の画像

国債は、相続開始によって各共同相続人に当然に分割相続されるものではなく、共同相続人全員の準共有となります。そのため、遺産分割が必要です。

国債の相続財産性

国債とは,国が歳入の不足を補うために金銭を借り入れることによって負う一切の債務のことをいいます。国債の購入者の側からみれば,国に対して貸付金債権を有しているということになります。

したがって,国債を有していれば,債務者である国から貸付金の返済及び利息の支払いを受けることができる権利を有することになります。

したがって,財産的価値があることはいうまでもありません。被相続人が国債を購入していたのであれば,その国債も相続財産に含まれます

国債の遺産分割の要否

前記のとおり,国債は国に対する金銭債権です。

この金銭債権をはじめとする可分債権は、遺産分割を経ずに,相続開始によって当然に,各共同相続人にその相続分に応じて承継されます(最一小判昭和29年4月8日最三小判昭和30年5月31日最三小判平成16年4月20日等)。

したがって,国債も、上記の原則論からすれば,相続の開始によって当然に,各共同相続人に対してそれぞれの相続分に応じて分割され,遺産分割の対象とはならないはずです。

しかし,この点について,最高裁判所は,最高裁判所第三小法廷平成26年2月25日判決において以下のとおり判示し,国債は共同相続人の準共有になり,遺産分割の対象となると判断しています。

(3)本件国債は、個人向け国債の発行等に関する省令2条に規定する個人向け国債であるところ、個人向け国債の額面金額の最低額は1万円とされ、その権利の帰属を定めることとなる社債、株式等の振替に関する法律の規定による振替口座簿の記載又は記録は、上記最低額の整数倍の金額によるものとされており(同令3条)、取扱機関の買取りにより行われる個人向け国債の中途換金(同令6条)も、上記金額を基準として行われるものと解される。そうすると、個人向け国債は、法令上、一定額をもって権利の単位が定められ、1単位未満での権利行使が予定されていないものというべきであり、このような個人向け国債の内容及び性質に照らせば、共同相続された個人向け国債は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。

(4)以上のとおり、本件国債等は、亡Aの相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることがないものか、又はそう解する余地があるものである。そして、本件国債等が亡Aの相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるものでなければ、その最終的な帰属は、遺産の分割によって決せられるべきことになるから、本件国債等は、本件遺産分割審判によって上告人ら及び被上告人の各持分4分の1の割合による準共有となったことになり,上告人らの主位的請求に係る訴えは適法なものとなる。

引用元:裁判所サイト(最三小判平成26年2月25日)

したがって,実務上,国債は,各共同相続人に当然に分割相続されるものではなく,共同相続人全員の準共有になるものとして扱われています。

準共有になるということは,これを共同相続人間で分配するのであれば,遺産分割をしなければならないということになります。

つまり,国債も遺産分割の対象財産であるということです。

国債の遺産分割の方法

国債を遺産分割する方法に特段の決まりはありません。

もちろん,そのまま準共有のままにするということもあり得ますが,それでは権利行使のたびに共同相続人全員の同意が必要になるなど,不便なことが少なくありません。

そこで,それぞれの相続分又は話し合いの結果に基づいて,その各取分に応じた価額分の社債を,それぞれが単独で取得し,端数は金銭やその他の相続財産等で調整するという形をとることになるのが一般的であると思われます。

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