この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

破産管財人は、破産法40条1項各号および2項に規定する説明義務者(破産者本人や破産法人の役員など)に対し、破産に関し必要な説明をするよう求めることができます(破産法83条1項前段)。この破産管財人の権限のことを「説明請求権」といいます。
また、破産管財人は、職務を行うため必要があるときには、破産者の子会社等に対しても、その業務および財産の状況につき説明を求めることができます(破産法83条2項、3項)。
説明義務者や子会社等の代表者などが破産管財人から説明を拒絶したり虚偽説明をしたりすると、刑罰を科されます(破産法268条)。個人破産者の場合は、さらに免責不許可事由となり免責が許可されないリスクもあります(破産法252条1項8号)。
破産管財人の調査権限
破産手続の目的は、破産者の財産を換価処分して、それによって得られた金銭を、各債権者に対して公平・平等に分配することにあります。
各債権者への公平・平等な分配を実現するには、どのような債権(破産者から見れば負債)があるのか、換価処分できる財産は何かなどを十分に調査しておかなければなりません。
これら破産者の財産や負債の調査は、裁判所によって選任される破産管財人が行います。
そして、破産管財人による各種の調査の実効性を担保するため、破産法では、破産管財人に各種の調査権限が与えられています。そのうちのひとつが「説明請求権」です。
破産管財人の説明請求権とは
前記のとおり、破産管財人には、調査権限のひとつとして説明請求権が認められています。説明請求権とは、破産法で定められた一定の者に対して各種の説明を求めることができる権限です。
調査の方法にはさまざまなものがありますが、破産者の財産や負債の状況を最もよく知り得る立場にあるのは破産者自身、破産者が法人・会社であれば、破産法人の代表者や役員などですから、それらの人から事情を聴取するのが調査の基本です。
そこで、破産管財人は、破産者や、破産法人の代表者・役員など破産法40条1項および2項において説明義務を課されている関係者に対し、破産に関し必要な説明をするよう求める権限が与えられています(破産法83条1項前段)。
また、上記関係者のほか、破産管財人は、破産会社の子会社等に対しても、その業務または財産の状況について説明を求めることができます(破産法83条2項前段、3項)。
破産者や法人の役員などに対する説明請求権(破産法83条1項前段)
破産法 第83条
- 第1項 破産管財人は、第40条第1項各号に掲げる者及び同条第2項に規定する者に対して同条の規定による説明を求め、又は破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
破産法 第40条
- 第1項 次に掲げる者は、破産管財人若しくは第144条第2項に規定する債権者委員会の請求又は債権者集会の決議に基づく請求があったときは、破産に関し必要な説明をしなければならない。ただし、第5号に掲げる者については、裁判所の許可がある場合に限る。
- 第1号 破産者
- 第2号 破産者の代理人
- 第3号 破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人
- 第4号 前号に掲げる者に準ずる者
- 第5号 破産者の従業者(第2号に掲げる者を除く。)
- 第2項 前項の規定は、同項各号(第1号を除く。)に掲げる者であった者について準用する。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人は、破産法40条1項各号および2項に規定する者(説明義務者)に対して、破産に関し必要な説明をするよう請求することができます(破産法83条1項前段)。
説明請求権の相手方
破産法83条1項前段に基づいて説明を請求できるのは、「破産法40条1項各号および2項に規定する者」です。具体的には、破産管財人は以下の者に対して説明請求できます。
- 破産者
- 破産者の代理人(および過去に破産者の代理人であった者)
- 破産者が法人である場合は、その理事・取締役・執行役・監事・監査役・清算人・これらに準ずる者(および過去に理事・取締役・執行役・監事・監査役・清算人・これらに準ずる者であった者)
- 破産者の従業員(および過去に破産者の従業員であった者)
説明を求めることができる「破産者」
破産管財人は、「破産者」に説明を請求できます(破産法83条1項前段、40条1項1号)。この「破産者」とは個人の破産者を指すと解されています。
法人破産の場合、破産者は法人そのものであるため、説明を求めることができないからです。法人破産の場合は、法人の役員などに説明を請求することになります。
説明を求めることができる「破産者の代理人」
破産管財人は、「破産者の代理人」にも説明を求めることができます(破産法83条1項前段、40条1項2号)。代理人には、法定代理人だけでなく、任意代理人も含みます。
例えば、破産者が成年被後見人である場合の成年後見人や、破産者が依頼している代理人弁護士などが「破産者の代理人」です。
また、現時点で破産者の代理人である者だけでなく、過去に代理人であった者に対しても説明を請求できます(破産法40条2項)。
法人破産における「法人の役員」
前記のとおり、法人破産の場合には、破産管財人は、破産した法人の理事・取締役・執行役・監事・監査役・清算人・これらに準ずる者に説明を請求できます(破産法83条1項前段、40条1項3号、4号)。
代表者に限られません。上記の役員であれば、説明請求権の対象になります。
また、現時点で破産した法人の理事・取締役・執行役・監事・監査役・清算人・これらに準ずる者だけでなく、過去に上記役員であった者に対しても説明を請求できます(破産法40条2項)。
そのため、すでに役員を退いている場合でも、破産に関係する事項を知っていると判断する場合には、破産管財人はその退任した過去の役員にも説明を求めることができるのです。
事業者破産における「従業員」
法人や個人事業者(自営業者)のような事業者の破産の場合、破産管財人は、破産した法人や事業者の従業員に対しても説明を求めることができます(破産法83条1項前段、40条1項5号)。
ただし、ただ任意で説明を求めるだけでなく、従業員に対して説明請求権を行使して説明を求める場合には、裁判所の許可が必要です(破産法40条1項ただし書き)。
説明を求めることができる事項
破産管財人が説明を求めることができるのは「破産に関し必要な」事項です。破産者の財産、負債、免責に関する事情など、破産に関する事柄であればすべて説明請求できます。
この説明請求は、単に口頭での説明を求めるだけでなく、必要な書類や資料の提出を求める権限も含まれると解されています。
説明請求権と説明義務
前記のとおり、破産管財人は、破産法40条1項各号および2項に規定する者に対して説明を求めることができます。
この破産法40条1項各号および2項に規定する者は、破産管財人から説明を求められた場合、説明をしなければならない法的義務(説明義務)が課されています。
単に破産管財人に説明請求権を認めるだけでなく、相手方に説明義務を課すことによって、説明請求権の実効性を高めることが目的です。
説明を拒絶した場合のペナルティ
破産法40条1項各号および2項に規定する者(説明義務者)が破産管財人からの説明請求を拒みまたは虚偽の説明をした場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方の刑罰を科されることがあります(破産法268条1項、2項)。
また、個人破産の場合であれば、説明拒絶は免責不許可事由となり、裁判所による免責許可を受けられなくなることもあります(破産法252条1項8号)。
破産会社の子会社等に対する説明請求権(破産法83条2項・3項)
破産法 第83条
- 第2項 破産管財人は、その職務を行うため必要があるときは、破産者の子会社等(次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める法人をいう。次項において同じ。)に対して、その業務及び財産の状況につき説明を求め、又はその帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
- 第1号 破産者が株式会社である場合 破産者の子会社(会社法第2条第3号に規定する子会社をいう。)
- 第2号 破産者が株式会社以外のものである場合 破産者が株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合における当該株式会社
- 第3項 破産者(株式会社以外のものに限る。以下この項において同じ。)の子会社等又は破産者及びその子会社等が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、前項の規定の適用については、当該他の株式会社を当該破産者の子会社等とみなす。
引用元:e-Gov法令検索
法人破産の場合、破産管財人は、前記破産法40条に規定する説明義務者のほか、職務を行うために必要があるときには、破産法人の子会社等に対しても、その業務および財産の状況について説明を求めることができます(破産法83条2項前段、3項)。
説明請求権の相手方
破産法83条1項前段に基づいて説明を請求できるのは、「破産者の子会社等」です。具体的には、破産管財人は以下の者に対して説明請求できます(破産法83条2項前段、3項)。
- 破産者の子会社等
- 破産者が株式会社である場合は、破産者の(会社法2条3号に規定する)子会社
- 破産者が株式会社以外のものである場合には、破産者が株主総会の議決権の過半数を有する株式会社
- 株式会社でない破産者の子会社等(会社法2条3号に規定する子会社または破産者が株主総会の議決権の過半数を有する株式会社)、あるいは、破産者と子会社等が、総株主の議決権の過半数を有する株式会社
実際に説明を求めることになるのは、子会社等の理事や取締役などの役員や従業員です。
説明請求を求めることができる「破産者の子会社等」とは
破産管財人が破産法83条2項に基づいて説明請求できる相手方は、「破産者の子会社等」です。
前記のとおり、この破産者の子会社等とは、破産者が株式会社である場合は「会社法2条3号に規定する子会社」、破産者が株式会社以外のものである場合は「破産者が株主総会の議決権の過半数を有する株式会社」です。
このうち会社法2条3号の子会社とは、総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として、財務および事業の方針の決定を支配している株式会社のことです(会社法2条3号、会社法施行規則3条1項)。
破産者が支配権を有している子会社等に命じて財産や業務の隠匿などを行うおそれがあるため、これらの子会社等に対しても説明を求める権限が認められているのです。
孫会社等に対する説明請求
破産管財人は、子会社等だけでなく、「子会社等が総株主の議決権の過半数を有する株式会社」または「破産者と子会社等が総株主の議決権の過半数を有する株式会社」にも、業務および財産の状況について説明を求めることができます(破産法83条3項)。
いわゆる孫会社等に対しても、説明を求めることができるのです。この孫会社等も「破産者の子会社等」に含まれるものとして扱われます。
子会社等に対する説明請求権の要件
破産者や破産法人の役員に対する説明請求と違って、子会社等への説明請求権を行使できるのは、「破産管財人が職務を行うために必要があるとき」に限られます。
ただし、職務を行うために必要があるかどうかは破産管財人が判断します。裁判所の許可までは必要とされていません。
説明を求めることができる事項
子会社等に説明を求められる事項は「業務及び財産の状況」です。
子会社等とは言え破産者そのものではないため、破産に関する一切の事項の説明を求められるわけではありません。
説明を拒絶した場合のペナルティ
子会社等の代表者等が、破産管財人からの説明請求を拒みまたは虚偽の説明をした場合、当該子会社等の代表者等は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方の刑罰を科されることがあります(破産法268条4項)。
ただし、子会社等において正当な理由がある場合には、説明を拒むことができると解されています。その場合には、説明を拒んだとしても、上記の刑罰を科されることはありません。
説明義務者・子会社等以外の者への説明請求
破産管財人は、上記の説明義務者や子会社等以外に対しては、説明請求権という法定の権限をもって説明を求めることができます。
とは言え、これら以外の関係者等に対して説明を求めることができないわけではありません。調査のために、破産管財人が、説明義務者や子会社等以外の関係者に説明を求めることはあります。
それらの関係者が説明を拒んでも、破産法上の説明拒絶による不利益を被らないだけです(ただし、他の法律による不利益を被る可能性はあり得ます。)。
説明義務者・子会社等への物権検査権
破産管財人は、破産者本人・破産会社の役員などや子会社等に説明を求めることができるだけでなく、破産財団や業務・財産に関する「帳簿、書類その他の物件」を検査する権限も認められています(破産法83条1項後段、2項、3項)。
説明を求めるだけでなく、関連する帳簿・書類その他の物件を検査できる権限を与えることによって、より確実な調査を行うことが可能になります。
仮に破産者や役員などが口頭または書面で虚偽回答をしたとしても、破産管財人は実際に帳簿・書類・物件を調査できるので、それらの調査により虚偽回答が発覚することもあります。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
破産法と資格試験
倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。
この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。
ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
STUDYing(スタディング)
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参考書籍
破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。
破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。
条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。
司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。
倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。
倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。


