この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

破産管財人は破産手続の遂行者として、破産裁判所による監督の下、破産手続における破産財団の調査・管理・換価をはじめ、債権の調査・債権者対応・債権者に対する弁済または配当、裁判所に対する報告・意見の退出、労働債権者に対する情報提供など、破産手続全般において多岐にわたる業務(破産管財業務)を行わなければならない職務を課せられています。
破産管財人とは
破産法 第2条
- 第12項 この法律において「破産管財人」とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者をいう。
引用元:e-Gov法令検索
破産手続の基本類型は管財事件です。この管財事件においては、裁判所によって「破産管財人」が選任されます。
破産管財人とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理および処分をする権利を有する者のことをいいます(破産法2条12項)。
破産管財人には、破産裁判所から選任されて、その監督の下で、破産手続における破産財団の調査・管理・換価処分・各債権者に対する弁済または配当などの手続を行うべき職務を課されます。
破産手続のメインは破産財団の調査・管理・換価処分や債権者への弁済または配当であるため、破産手続の大半の手続きを破産管財人が遂行していくことになります。
そのため、破産管財人が行う業務や仕事(破産管財人が行う業務を「破産管財業務」と呼ぶことがあります。)は多岐にわたります。
破産管財業務を大きく分ければ、以下に分類できます。
- 破産財団の調査、占有・管理、換価処分
- 債権の調査・債権者対応・債権者への弁済または配当
- 破産に至った原因・経緯の調査
- 訴訟などへの対応
- 契約関係の処理
- 経理・税務関係の処理
- 裁判所への報告・意見の提出
- 個人破産の免責手続における調査・意見の提出
破産財団の調査、占有・管理、換価処分
破産管財人に課される職務のうちで中心となるのは、破産財団の調査、占有・管理、換価処分を行うことです。
破産財団とは、「破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもの」のことをいいます(破産法2条14号)。
この破産財団は、債権者に対する弁済または配当の原資となる破産者の財産の総体です。
この破産財団に属する財産は、破産手続開始決定と同時に、その管理処分権がすべて破産管財人に専属することになります(破産法78条1項)。
破産手続は、破産者の財産を換価処分して金銭に換え、その金銭を各債権者に対して弁済または配当する手続であるため、破産財団をいかに適切に確保または増殖していけるかが、破産管財人の業務の重要ポイントになります。
実際、破産管財人が行う仕事は、この破産財団の調査、占有・管理、換価業務に関わるものが中心になってきます。
破産財団の調査
破産財団を適切に管理・占有して確保しておくためには、まず、そもそもどのような財産があるのかを破産管財人において正確に把握しておかなければなりません。
また、本来であれば破産財団に属するはずであった財産が、破産手続開始前に流出している場合には、否認権を行使して流出した財産を取り戻す措置を講じなければならない場合もあります。
他方、一見すると破産財団に属する財産であるかのように見える財産が、実際には第三者の財産である場合には、真正の所有者からの取戻権行使に対応し、当該財産を返還するなどして適正な破産財団を整える措置も必要となってきます。
破産財団に属する財産に担保権が設定されている場合には、担保権者による別除権行使に対応する必要もあります。
そこで、破産管財人は、破産財団に属する財産にどのようなものがあるのか、その財産の権利関係や担保の有無、否認権行使の対象となる財産はないかなどを調査することになります。
調査の方法は特に決められていません。破産者側からの聴取や報告のほか、各種帳簿類や資料の精査、現地での確認、関係者や債権者からの情報提供、各機関に対する照会などによって、破産財団を調査します。
また、破産手続が開始されると、破産者宛ての郵便物はすべて破産管財人に転送されます。その郵便物を開披して内容を調査することで、破産財団に属する財産が判明する場合もあります(破産法81条、82条)。
破産財団の占有・管理
破産法 第79条
- 破産管財人は、就職の後直ちに破産財団に属する財産の管理に着手しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索
破産手続が開始されると、破産財団に属する財産の管理処分権はすべて破産管財人に専属し、破産者自身であっても財産を処分することはできなくなります。
破産管財人は、この破産財団に属する財産を収集するとともに、これが無用に減少しないように、就任したらすぐに破産財団に属する財産の管理に着手し(破産法79条)、適切に管理していかなければなりません。
破産財団に属する財産や破産者が当事者となっている契約関係のうちに、それを存続することによって、かえって破産財団を減少させてしまうおそれのあるものが存在する場合があります。
そのような場合は、財産の減少を最小限にとどめるため、早期に当該財産を処分したり、契約関係を解消したりするなどの措置を講じることになります。
また、ただ単に収集・管理するだけではなく、破産財団を増殖させることができる場合には、それを増殖できるように、否認権を行使するなどの措置をとる必要があります。
破産財団の換価処分
破産管財人は、収集し管理している財産を適正価格で換価処分して、債権者に対する弁済または配当の原資を形成させなければなりません。
どのように換価処分するかについて決まりはありませんが、通常は当該財産を第三者に売却して換価処分します。どのような方法であっても、最も高額で換価できる方法によって換価処分する必要があります。
換価すべき財産は、物だけとは限りません。知的財産権や営業権なども換価可能であれば換価の対象になりますし、債権も換価の対象になります。債権の場合は、当該債権を回収して換価します。
債権の調査・債権者対応・債権者への弁済または配当
破産財団に属する財産を換価処分して得た金銭を、財団債権者に対して弁済し、破産債権者に対して配当する業務も、裁判所の許可を得た上で、破産管財人が実施します。
破産手続の目的は、破産財団を確保して債権者に分配することにありますから、債権者の利益を実現する弁済・配当業務は、破産管財にとって重要な仕事です。
債権の調査
各債権者に対して適正に弁済または配当をするためには、まずは各債権の金額・内容を把握しておかなければなりません。そこで、破産手続においては、債権調査手続が設けられています。
具体的には、裁判所または破産管財人から各債権者に対して破産債権等の届出や交付要求をするよう求め、提出された債権届出書をもとに各債権を調査し、債権の認否・債権確定の手続を経て、債権の内容およびその金額を確定していくことになります。
破産管財人は、提出された破産債権届出書や交付要求をとりまとめ、内容を精査して債権の内容・金額を調査し、債権認否を行い、債権の確定手続を遂行していきます。
債権の調査や確定についても、破産管財人が手続を主導的に遂行していくのです。
債権者対応
破産管財人は債権の調査や確定を行うだけでなく、各債権者からの問い合わせに対応しなければならない職務もあります。
破産手続において最大の利害関係を有するのは債権者ですから、債権者を疎外して手続を進めることはできません。しかも、破産管財人は総債権者の利益を図るべき地位にあると解されています。
そのため、破産手続においては、現実の金銭配当だけでなく、債権者に対する「情報の配当」も重要であると考えられています。
情報の配当を実現するため、破産管財人には、債権者に誠実に対応することが求められます。
特に、労働債権者は債権者のうちでも最も利害関係があるといってよい立場にある債権者です。後述のとおり、単に対応するだけでなく、破産管財人の側から積極的に情報を提供しなければならないとされています。
労働債権者に対する情報提供
事業者、特に法人・会社が破産すると、労働者に対する賃金や退職金などは通常どおりには支払えなくなります。
賃金や退職金は労働者の生活の糧になるものですから、これが支払われないことになれば、労働者にとって非常に切実な問題が生じます。
そこで、破産管財人は、債権者の内でも労働債権者に対しては、ただ単に問い合わせに対応するだけでなく、積極的に情報を提供しなければならないとされています(破産法86条)。
具体的にいえば、破産手続の進行状況や弁済または配当の見込みを回答するだけでなく、未払いの賃金等について労働者健康安全機構による未払賃金立替払制度が利用できることの説明などを行い、労働債権者からの求めに応じて証明書を交付する必要があります。
実務上、未払賃金立替払制度が利用できる場合には、破産管財人が積極的に同制度を利用して、労働債権者に対して未払い賃金が少しでも多く支払われるように取り計らうの通常でしょう。
各債権者に対する弁済または配当
破産管財人は、弁済または配当に充てる破産財団を収集できた場合、確定した債権に対して弁済または配当していきます。
破産法で定められた算定方法に従って各債権者に対する弁済または配当の金額を正確に算出し、それに基づいて、公租公課などの財団債権者に対して優先的に弁済を行い、余剰があれば、破産債権者に対して配当を行います。
破産に至った経緯・原因の調査
前記のとおり、債権者に対し情報提供を行い、債権者の理解を得ていくことも、破産管財人の仕事のひとつです。
その情報提供の一環として、当該破産者がなぜ破産するに至ったのかを調査し、それを債権者に報告することが必要となってきます。
また、破産に至った経緯や原因を詳細に調査することによって、新たな財産、否認権行使の対象、新たな債権者等が発覚することもありますから、破産に至った経緯や原因の調査は、破産財団や債権の調査の一環であるともいえます。
これら破産に至った経緯や原因も、破産手続開始後に破産管財人が調査します。
個人破産の場合には、後述するように、免責不許可事由の有無や裁量免責事由の調査も破産管財人が行います。破産に至った原因や経緯の調査は、これら免責不許可事由や裁量免責事由にも関わってきます。
なお、事案によっては、破産手続開始申立て後・破産手続開始前に破産管財人候補者が内定され、その破産管財人候補者が、法律上の破産手続開始原因の有無の調査の一環として、破産に至った経緯や原因を破産手続開始前に調査することもあります。
訴訟等の対応
破産法 第44条
- 第1項 破産手続開始の決定があったときは、破産者を当事者とする破産財団に関する訴訟手続は、中断する。
- 第2項 破産管財人は、前項の規定により中断した訴訟手続のうち破産債権に関しないものを受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
- 第3項 前項の場合においては、相手方の破産者に対する訴訟費用請求権は、財団債権とする。
- 第4項 破産手続が終了したときは、破産管財人を当事者とする破産財団に関する訴訟手続は、中断する。
- 第5項 破産者は、前項の規定により中断した訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
- 第6項 第1項の規定により中断した訴訟手続について第2項の規定による受継があるまでに破産手続が終了したときは、破産者は、当然訴訟手続を受継する。
破産法 第80条
- 破産財団に関する訴えについては、破産管財人を原告又は被告とする。
引用元:e-Gov法令検索
破産手続開始時においてすでに提起されている破産財団に関する訴訟は、破産手続開始決定によって中断されます。破産管財人はこの中断した破産財団に関する訴訟を受継して、当事者として訴訟を追行することができます(破産法44条1項、2項)。
この「破産財団に関する訴訟」には、破産債権に関する訴えや財団債権に関する訴えも含まれると解されています。
「破産財団に関する訴訟」としては、破産財団に関する債権の支払いを求める訴訟や財産の引渡しを求める訴訟、逆に、破産財団に関する財産を引き渡すよう請求されている訴訟などが典型的です。
他方、破産手続開始後に提起された破産財団に関する訴えについては、破産管財人が当事者(原告または被告)になります(破産法80条)。
本来当事者でない訴訟を引き継ぐのではなく、破産管財人が、訴訟の最初から当事者として訴訟を追行することになります。
この「破産財団に関する訴え」には、財団債権に関する訴えも含まれると解されています。
したがって、破産管財人が破産財団の回収のために提起した訴訟や否認権行使のための訴訟などについても、破産管財人が破産者に代わって訴訟を追行していくことになります。
契約関係の処理
破産者も、生活や事業活動のためにいろいろな契約を締結しています。
破産手続が開始されたからといって、当然に契約関係が終了するとは限りません。法人破産の場合、法人は破産すると消滅するので、その法人が締結している終了していない契約関係を清算する必要があります。
破産手続開始後に契約が存続すると、新たな債権が発生してしまい、破産財団が減少する可能性があります。
そこで、破産管財人は、破産財団の増殖を図りまたは減少を防ぐために、当該法人・会社の契約関係を迅速に清算しておくことが求められます。従業員との労働契約も同様です。
具体的に言うと、破産管財人はすみやかに契約を解除するなどの措置をとる必要があります。
もっとも、契約を存続させることによって破産財団増殖の可能性がある場合には、仕事を完成させるまで契約関係を存続させることもあります。
これら契約関係の処理のため、破産管財人には、契約の効力や条件にかかわらず、双方未履行双務契約を解除するか存続するかを選択する権限が付与されています(破産法53条1項)。
経理・税務関係の処理
法人破産の場合、破産管財人は、清算に向けて、破産者の経理や税務関係も処理しておく必要があります。
特に、税金の還付金が見込まれる場合には、破産管財人も、積極的に税務申告を行わなければならないと解されています。
もっとも、破産管財人自ら行うとは限りません。破産管財人が税理士に依頼して、税務申告を行うこともあります。
裁判所に対する報告・意見の提出
前記の破産財産の管理・換価や債権者に対する弁済または配当のほか、破産管財人は、裁判所に対して手続の進行状況を報告し、手続に関する意見を提出することも仕事のひとつです。
また、債権者集会に出席し、破産管財業務の進行状況などを報告しなければなりません。
後述するとおり、個人破産の場合には、破産者の免責を許可すべきか否かについての意見を述べることも破産管財人の職務となります。
個人破産の免責手続における調査・意見の提出
個人破産の場合には、破産者に免責を許可してよいかを判断するため、破産手続とは別に免責手続が行われます。別とは言っても、実際は、破産手続と同時並行的に行われます。
この免責手続においては、破産者に免責不許可事由があるか、免責不許可事由があるとして裁量免責してよい事情はあるかが調査されます。そして、これら免責不許可事由・裁量免責の調査を行うのも、破産管財人の職務です。
破産管財人は、免責不許可事由や裁量免責事由を調査した上で、裁判所に対して免責を許可すべきか否かについての意見書を提出します。裁判所は、この意見を踏まえて免責の決定をすることになります。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
破産法と資格試験
倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。
この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。
ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現
参考書籍
破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。
破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。
条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。
司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。
倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。
倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。



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