この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

破産手続開始決定がされると、破産者の財産(破産財団)の管理処分権は破産管財人に専属し(破産法78条1項)、破産管財人は、直ちに破産財団の管理に着手しなければなりません(破産法79条)。
破産財団に属する財産をどのように管理するかは、それぞれの財産の種類・内容に異なります。破産財団の管理を確実にするため、破産法では、裁判所書記官による帳簿の閉鎖、引渡命令、封印執行、否認権、役員責任査定などの制度が用意されています。
破産財団の管理処分権とは
破産法 第78条
- 第1項 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。
破産法 第79条
- 破産管財人は、就職の後直ちに破産財団に属する財産の管理に着手しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索
破産財団とは、「破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもの」のことをいいます(破産法2条14項)。
破産手続が開始されると、破産者が破産手続開始時に有していた財産は、すべて破産財団に属することになります(破産法34条1項。ただし、個人破産の場合は、破産財団に組み入れられない自由財産が認められています。)。
この破産財団に属する破産者の財産の管理処分権は破産管財人に専属し、破産者自身でも勝手に管理処分することができなくなります(破産法78条1項)。
破産管財人は、破産手続が開始されるとすぐに破産財産に属する財産の管理に着手しなければなりません(破産法79条)。
財産の調査(見つける)
破産手続開始決定直後から調査を開始。破産者からの申告された財産はもちろん、それ以外にも財産がないかを調べる。
財産の管理(守る)
破産手続開始決定直後から着手。不動産の施錠、告示書の貼付など、破産者による勝手な処分や価値の低下を防ぎます。
換価・回収(お金に換える)
財産の売却、債権回収などを実施して、最終的に全ての財産を「現金」に換えて破産管財人口座に集約します。
破産管財人に管理処分権が専属する理由
破産手続は、破産者の財産を破産財団として管理・回収し、それを換価処分して得た金銭を債権者に対して公平に配当または弁済する手続です。
いかに破産財団を回収し、換価処分するまで適切に管理していくかが、破産手続においては非常に重要な問題となります。
破産者自身に管理を任せると、不公平な財産処分をしてしまうおそれがあります。また、厳重な管理を怠り、財産を失ってしまう危険席もあります。
このような財産が減少する可能性のある破産者自身による管理を安易に許してしまっていては、債権者からの納得を得ることもできません。
そのため、破産財団に属する財産の管理処分権は破産管財人に専属するものとして、破産者自身でも自由に管理処分できないようにしているのです。
破産財団として管理される財産
破産財団として破産管財人によって管理される財産は、破産者が破産手続開始時に有する一切の財産です(破産法34条1項)。
法人破産の場合、法人が破産手続開始時に有していたすべての財産が破産管財人の管理下に置かれます。すべての財産が換価処分や清算の対象になるのです。
他方、個人破産の場合には、破産財団に組み入れられない財産(自由財産)が認められているため、自由財産を除く財産だけが破産管財人の管理下に置かれることになります。
個人破産で破産管財人の管理の対象にならない自由財産には、以下のものがあります。
- 破産手続開始後に取得した財産(新得財産)
- 99万円以下の現金(破産法34条3項1号)
- 法律上、差押えが禁止される財産(差押禁止財産。破産法34条3項2号)
- 裁判所によって自由財産として認められた財産(自由財産の拡張。破産法34条4項)
- 破産管財人によって破産財団から放棄された財産(破産法78条2項12号)
破産財団の調査・管理に関連する制度
前記のとおり、破産手続においては、破産財団に属する破産者の財産をいかに適切に管理しておくかは重要な問題です。
また、破産財団を適切に管理するためには、その前提として、破産財団に属する財産を十分に調査しなければなりません。
破産財団に属する財産が常に破産者の手元にあるとは限らないため、破産管財人は、破産財団に属する財産を調査して見つけ出す必要もあります。
破産管財人は、さまざまな方法を駆使して破産財団の調査・管理を進めることになります。破産法においても、破産管財人による破産財団の調査管理を確実にするため、いくつかの特別な制度が設けられています。
破産管財人の調査権限
破産管財人は、適宜の方法によって財産調査を行いますが、破産法上、破産管財人による調査を確実にするため、破産管財人には以下のような権限が与えられています。
- 破産者・法人役員などに対する説明請求権(破産法83条1項)
破産管財人は、破産者本人や破産法人の理事・取締役その他の役員(過去に役員であった者も含む)など破産法40条に基づく説明義務を負う者に、破産に関して必要な説明をするよう請求する権限があります。 - 破産者・法人役員などに対する検査権(破産法83条1項)
破産管財人は、説明を求めるだけでなく、破産法40条に基づく説明義務を負う者の帳簿・書類・その他の物件を検査する権限があります。 - 子会社に対する説明請求権・検査権(破産法83条2項、3項)
破産管財人は、破産法人の子会社などに対し、業務・財産の状況についての説明を請求し、子会社などが有する帳簿・書類・その他の物件を検査する権限があります。
破産者等が説明請求や検査を拒絶した場合のペナルティ
破産管財人による説明請求権や検査権の実効性を高めるため、説明や検査を拒絶した破産者や法人役員には法的なペナルティが課されます。
具体的には、破産管財人からの説明請求や帳簿等の検査を拒絶した場合、説明義務者や子会社の代表者などは刑罰を科されることがあります(破産法268条)。
また、個人破産の場合であれば、免責不許可事由となり(破産法252条1項8号)、説明を拒絶した破産者には免責が許可されないことがあります。
郵便物の転送嘱託による調査・管理
破産法 第81条
- 第1項 裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号)第2条第3項に規定する信書便物(次条及び第118条第5項において「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。
破産法 第82条
- 第1項 破産管財人は、破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
引用元:e-Gov法令検索
裁判所は、破産管財人による破産財団の調査や管理のために必要がある場合、郵便事業者に対して破産者宛の郵便物を破産管財人に転送するよう嘱託できます(破産法81条1項)。
破産管財人は、転送されてきた郵便物を開いて中を確認できます(破産法82条)。これにより、新たな財産を発見したり、財産の内容を詳しく調査できるケースも多いです。
破産法81条1項では嘱託しなければならないとは規定されていませんが、実際には、全件で郵便物の転送嘱託は行われています。
破産財団に属する財産の封印執行
破産法 第155条
- 第1項 破産管財人は、必要があると認めるときは、裁判所書記官、執行官又は公証人に、破産財団に属する財産に封印をさせ、又はその封印を除去させることができる。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人は、必要があると認めるときは、裁判所書記官・執行官・公証人に、破産財団に属する財産に封印をさせることができます。これを「封印執行」といいます(破産法155条1項前段)。
逆に、破産財団に属する財産がすでに封印されている場合、裁判所書記官・執行官・公証人に、破産財団に属する財産にされている封印を除去させることもできます(破産法155条1項後段)。
この封印を無断で破棄した場合、破棄した者は封印破棄罪(刑法96条)の刑罰(3年以下の拘禁もしくは250万円以下の罰金またはその両方)を科される場合があります。
封印の方法
封印とは、破産財団に属する財産について、その開披、使用、その他現状の変更を禁止する処分として、権限のある公務員によって、その財産の外部に施された封緘(ふうかん)等の物的設備を施すことです。
具体的には、対象物件や見やすい場所に、当該物件の管理処分権・占有が破産管財人に移転したこと、封印を破棄した場合は刑罰を科せられることなどを記載した公示書を貼付する方法で封印執行を行います。
封印執行を行うことができるのは、裁判所書記官・執行官・公証人ですが、仮に封印執行を行う場合は、裁判所書記官が実施するのが一般的です。
実務での利用の現状
実務では、封印執行を実施することは稀です。管理が必要な場合は、警備会社に警備を依頼したり、持ち出し困難な場所に保管したりするなどして対応するのが通常でしょう。
破産財団に関する帳簿の閉鎖
破産法 第155条
- 第2項 裁判所書記官は、必要があると認めるときは、破産管財人の申出により、破産財団に関する帳簿を閉鎖することができる。
引用元:e-Gov法令検索
裁判所書記官は、必要があると認めるときは、破産管財人の申し出により、破産財団に関する帳簿を閉鎖することができます(破産法155条2項)。
帳簿の閉鎖とは、帳簿の破産手続開始当時の原状を保存するための行為のことです。各帳簿の現物の最後に「この帳簿を閉鎖した」旨を記載する方法で行われます(破産規則53条4項)。
閉鎖できる「破産財団に関する帳簿」とは、積極財産だけでなく、消極財産(負債)に影響を及ぼす事項を記載した帳簿も含むと解されています。
破産者が会社など商人である場合、「破産財団に関する帳簿」とは、商業帳簿(会計帳簿および貸借対照表)を意味します。
もっとも、実務では、必要な帳簿・書類・物件は原本や現物をそのまま破産管財人が回収するため、帳簿を閉鎖する措置をとることは少ないでしょう。
破産財団に属する財産の引渡命令
破産法 第156条
- 第1項 裁判所は、破産管財人の申立てにより、決定で、破産者に対し、破産財団に属する財産を破産管財人に引き渡すべき旨を命ずることができる。
- 第2項 裁判所は、前項の決定をする場合には、破産者を審尋しなければならない。
- 第3項 第1項の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
- 第4項 第1項の申立てについての決定及び前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
- 第5項 第1項の決定は、確定しなければその効力を生じない。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人が破産財団に属する財産を管理するためには、破産者からその財産の引渡しを受けなければなりません。
破産手続開始後、破産者から破産管財人に対して財産が引き継がれるのが通常ですが、債権者破産申立てなどの場合には、破産者が財産の引継ぎを拒絶するような場合もあり得ます。
そこで、破産管財人が迅速に財産の引渡しを受けられるようにするため、裁判所は、破産管財人の申立てにより、破産者に対し、破産財団に属する財産を破産管財人に引渡すべき旨を決定で命じることができます(破産法156条1項)。
裁判所が引渡命令を行う場合、破産者に弁明の機会を与えるため審尋が行われます(破産法156条2項)。また、引渡命令に不服がある場合は、即時抗告することができます(同条3項)。
この引渡命令は確定すると、債務名義となります。したがって、破産者が財産の引渡しをしない場合、破産管財人は、この引渡命令を債務名義として、強制執行をすることができます。
警察上の援助の要請
破産法 第84条
- 破産管財人は、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、裁判所の許可を得て、警察上の援助を求めることができる。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人が、破産財団に属する財産の管理等を行うに当たって、破産者や第三者から、妨害行為を受けることがあります。
この妨害行為から破産管財人の職務を保護するため、破産管財人は、職務執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、裁判所の許可を得て、警察上の援助を求めることができます(破産法84条)。
ここで言う「抵抗」とは、実力による妨害を意味します。有形力の行使による積極的・物理的妨害だけでなく、不退去や座り込みのような消極的人的抵抗や、脅迫などの心理的な抵抗も含むと解されています。
また、警察上の援助とは、警察機関の有する組織的・物理的な執行力の行使を意味します。具体的には、破産財団の管理において警察官等の立ち合いを要請するなどの援助を求めることになります。
破産手続開始前に流出した財産の管理:否認権
破産財団として破産管財人によって管理処分されるのは、破産者が破産手続開始時に有していた財産であるのが原則です。
もっとも、本来であれば破産財団に組み入れられるはずの財産が、不正・不公平な行為によって破産手続開始前に破産者のもとから流出してしまっている場合があります。
このような場合、破産管財人には、流出した財産を破産財団に取り戻す権限が与えられています。この権限を「否認権」といいます。
否認権とは、破産手続開始決定前になされた破産者の行為またはこれと同視される第三者の行為の効力を覆滅する形成権たる破産管財人の権能のことです(破産法160条以下)。
否認権の種類
否認権には、大きく分けると、以下の2類型があります。
否認権の効果
破産管財人によって否認権が行使されると、破産者がした詐害行為や偏頗行為は破産財団に対して効力を失い、破産財団は原状に復します(破産法167条1項)。
具体的に言うと、破産者が詐害行為や偏頗行為によって破産手続開始前に流出させた財産が、破産者のもとに戻り、破産財団に組み入れられて破産管財人の管理下に置かれることになります。
例えば、破産者が破産手続開始前に自分の財産の名義を家族に移していた場合、否認権行使により、家族名義から破産者の名義に戻され、破産財団に組み入れられます。
否認権が問題となるケースの具体例
否認権行使は、法人・事業者の破産と個人消費者の破産のいずれでもよく問題となります。例えば、以下のようなケースで否認権行使が行われます。
- 法人の財産を代表者・役員やその家族の名義に変更した
- 代表者や役員の報酬だけ支払った(なお、従業員の給料であれば、払っても否認の問題にはなることはほとんどないでしょう。)
- 家族・親族や懇意の取引先・仕入れ先にだけ支払った
- 保証人・連帯保証人が付いている債務だけ返済した
- 家族・親族・友人・勤務先にだけ返済した
- 保証人・連帯保証人が付いている債務だけ返済した
- 自動車ローンなど失いたくない財産の物販ローンだけ返済した
破産法人の役員に対する責任追求:役員責任査定手続
破産財団に属する財産は、破産者の財産です。法人破産であれば、法人の財産が破産財団に属し、代表者や役員の財産は破産財団に組み入れられません。
もっとも、法人破産の原因が代表者や役員の行為にある場合、法人は代表者や役員に対して損害賠償責任を追求できます。
この破産法人が有する損害賠償請求権も破産財団に属する財産です。破産管財人は、代表者や役員に対して損害賠償を請求し、回収した金銭を破産財団に組み入れます。
とは言え、損害賠償請求は簡単ではありません。訴訟を提起して回収を図るとなると、かなりの時間や手間がかかります。
そこで、役員に対する損害賠償責任の追求を簡易・迅速に行えるようにするため、破産法では、役員責任査定制度が設けられています(破産法177条以下)。
役員責任査定の手続
通常の訴訟を提起する場合と異なり、役員責任査定の手続は、法人破産事件が係属している裁判所(破産裁判所)で実施されます。
役員責任査定手続は、破産管財人の申立てが必要です(破産法178条1項。ただし、申立てがなくても、裁判所が職権で行うことも可能とされています。)。
申立ての後、破産裁判所において審理が行われます。この審理においては、対象とされた役員を審尋しなければいけません(破産法179条2項)。
損害賠償責任があると判断された場合、破産裁判所は役員責任査定決定を発します。
この決定に対して不服がある当事者は、査定決定書の送達を受けた日から1か月以内であれば、破産裁判所に異議の訴えを提起できます(破産法180条1項、2項)。
役員責任査定手続の実際
法人の負債について代表者や役員が連帯保証人になっている場合が多く、法人が破産する場合、代表者や役員も一緒に破産するケースが多いです。
そのため、代表者や役員にも財産がなく、損害賠償を請求しても意味がないことが多いため、役員責任査定手続はあまり利用されません。
また、仮に代表者や役員が破産しておらず財産があるとしても、役員責任査定決定には異議を出せるため、かえって手続に時間がかかるケースが多いことから、はじめから通常の訴訟を提起してしまうことが多いでしょう。
財産ごとの管理方法
前記のとおり、破産者が破産手続開始時に有していた財産は、(個人破産における自由財産を除いて)すべて破産財団に組み入れられるのが原則です。
そのため、破産手続において管理対象となる財産は多岐にわたります。その管理方法も、財産の種類に応じてさまざまです。
以下では、主要な財産の管理について説明します。
現金の管理
現金は費消しやすいため、破産管財人は、破産手続開始後直ちに、破産者から、その現金の引継ぎを受けます。
具体的には、破産手続開始後、破産管財人名義の銀行預金口座(破産管財人口座)を開設し、この口座に引継ぎを受けた現金を預け入れて(または、直接振り込んでもらって)管理します。
なお、個人破産の場合、99万円以下の現金は自由財産です。そのため、99万円を超える部分についてのみ、破産管財人口座で管理されます。
預金の管理
銀行や信用金庫などの金融機関に預け入れている預金・貯金も、現金と同様、費消しやすいため、破産管財人は、破産手続開始後直ちに、破産者から、預金通帳・キャッシュカード・銀行印などの引継ぎを受けます。
ネットバンクの場合は、キャッシュカードや通帳がなくても払い戻しが可能であるため、銀行に連絡をして払い戻しができないようにしてもらう必要があります。
そして、預金の解約・払戻しを行い、払い戻した金銭を破産管財人口座に預け入れて管理をします。
なお、個人破産の場合、隠匿のおそれがあるようなケースを除いて、生活に必要な預金口座については、破産管財人が強制的に解約するのではなく、破産者が自ら残高を払い戻して破産管財人に引き渡すのが一般的でしょう。
破産手続開始前の準備のための払戻し
破産手続開始までの間に引き落としされないように、破産手続開始前に破産者(または代理人弁護士)が預金から全額を払い戻して現金として保管しておき、それを、破産管財人に引き継ぐ方法をとるケースがあります。
同じように、破産手続開始前に弁護士から受任通知を送付すると、債権者である銀行等の預金口座が凍結されてしまうため、先に払戻しをしておく必要があります。
不動産の管理
不動産は動かすことはできませんが、第三者によって不当に占拠されるおそれがあります。また、建物内の在庫品や設備などの動産が持ち出され、破産財団が減少してしまうおそれもあります。
そこで、そのような不動産の不法占拠や動産の持ち出しを防止するため、破産管財人は、破産手続開始後直ちに、不動産が破産管財人の管理下に置かれていることを明らかにする措置をとる必要があります。
具体的には、破産者から鍵を預かって建物がしっかりと施錠されているかなどを確認し、入口に破産管財人名義で侵入を禁止する旨の張り紙(告示書)を貼っておくなどの措置をとることになります。
施錠が不十分な箇所があれば新たに鍵を設置し、警備会社のシステムが設置されている場合には、その警備契約を破産管財人名義で破産手続開始後も継続して、不動産を管理することもあります。
施錠や警備システムの設置のみでは管理として不十分であるような場合には、破産管財人名義で警備会社に警備員の配置を依頼するケースもあります。
また、現実の占有管理だけでなく、当該不動産の登記簿や帳簿類等を確認して、当該不動産の権利関係を調査して、法的な管理を行うことも必要です。
動産の管理
動産については、破産管財人が破産者から現物の引継ぎを受けて管理するのが基本です。
とはいえ、法人・事業者の破産の場合、多くの動産があるケースが多いので、すべての動産を引き継ぐのは現実的に難しい場合もあります。
そこで、事業所や倉庫に置いてある在庫品や機材などの動産については、その事業所や倉庫の施錠や警備状況などを確保した上で、その事業所や倉庫で保管するのが通常でしょう。
また、動産の品目・種類や数を正確に把握しておく必要があります。帳簿類と実際の数量が一致しないことも多いため、実際に現場で数量を確認するのが一般的でしょう。
食料品など保管の期間が限られている動産がある場合には、数量の確認だけでなく、保管方法や保管期限も確認し、価値をできる限り低下させないような保管方法を選択して管理していかなければなりません。
なお、個人消費者の破産の場合、生活に必要な家具・家電・家財道具はほとんどは自由財産になるため、動産を破産管財人に引き継ぐケースは、後述の自動車などに限られるでしょう。
リース物件や賃借物件の管理
すべての動産が破産者の所有物とは限りません。リース物件や賃借物件もあります。それらは、所有者に返却する必要があります。
返却する前にそのリース物件や賃借物件等が滅失してしまうと、破産財団や破産管財人が損害賠償等の責任を負担しなければならないおそれもあるため、他の動産と同様に適切に管理されることになります。
自動車・車両の管理
自動車や車両も動産ですが、移動させやすいため、債権者や第三者によって持ち出されるおそれがあります。
また、破産財団に属する自動車で交通事故を起こした場合、損害賠償責任を破産財団で負担しなければならなく危険性もあります。
そこで、破産管財人は、破産手続開始後ただちに、破産者から自動車の鍵を預かって利用できないようにするとともに、換価処分するまで持ち出されないような場所に移動させておくなどして、管理をする必要があります。
個人破産の場合は、自動車を換価処分しなくてもよいケースがあります。ただし、その場合でも、正式に換価処分しないと決まるまで(破産財団から放棄されるまで)、自動車を利用して事故を起こさないよう、破産管財人が鍵を預かるなどの措置がとることもあります。
債権の管理
破産財団に属する財産は、不動産や動産など形のあるものに限りません。売掛金や貸付金、賃貸借契約等を解約して戻ってくる敷金・保証金や、保険の解約返戻金などの債権も破産財団に属する財産です。
破産管財人は、これらの債権についても管理して、不必要に債権が減少しないような措置をとる必要があります。
不必要に債権が減少しないようにするために最も確実な方法は、できる限り早く債権を回収していまうことです。
できる限り早く回収できるように、破産管財人は、破産手続開始後直ちに破産者から帳簿類を引き継いで精査し、債権の存否、内容、金額、証拠資料の有無、回収可能性はあるのかなどを確認することになります。
金融資産・暗号資産の管理
株式、FX、仮装通貨などの暗号資産も、破産管財人による管理下に置かれます。これらも換価が容易であるため、迅速に換価することが求められます。
破産管財人は、取引をしている証券口座に連絡をとり、残高を破産管財人口座に移転させるとともに、株式・FX・仮装通貨などをすみやかに売却して換価処分します。
知的財産権の管理
破産者が著作権・特許権・実用新案権・意匠権・商標権などの知的財産権を有している場合、それらの知的財産権も破産財団に属すべき財産ですから、管理が必要です。
これらの知的財産権は容易に譲渡することができない場合が多く、特別な管理を必要としませんが、やはり、早期に換価するのが望ましいことは間違いありません。
ただし、知的財産権については権利関係が複雑なことが少なくないため、権利関係の確認や調整など法的な意味での管理が重要となってきます。
事業の管理
法人・事業者の破産においては、事業そのものに価値があり、事業譲渡が可能であったり、仕掛中の業務を完了したりした方が破産財団の増殖につながるケースもあります。
これらの場合、破産管財人は、事業譲渡や仕掛中の業務が完了するまでの間、裁判所の許可を得て、事業を継続する場合があります(破産法36条)。
事業継続をする場合、破産管財人が事業の管理責任者になるため、法人の経営者・事業者と同様に、事業継続に関わる一切の事項について管理を行わなければなりません。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
破産法と資格試験
倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。
この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。
ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現
参考書籍
破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。
破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。
条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。
破産管財人の財産換価(第2版)
編集:岡伸浩ほか 出版:商事法務
破産手続における破産管財人の財産換価処分について、財産の種類ごとなどに具体的な手続や方法を解説する実務解説書。実務家向けの本ですが、破産手続における財産処分のイメージをつかめるかもしれません。
司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。
倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。
倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。



