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財団債権・財団債権者とは?種類・具体例・優先順位や弁済手続を解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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財団債権とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権のことです(破産法2条7項)。この財団債権を有する債権者のことを「財団債権者」といいます(同条8項)。

財団債権・財団債権者とは

破産法 第2条

  • 第7項 この法律において「財団債権」とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいう。
  • 第8項 この法律において「財団債権者」とは、財団債権を有する債権者をいう。

引用元:e-Gov法令検索

破産手続は、破産管財人が破産者の財産を換価処分して金銭に換え、その換価された金銭を、債権額に応じて各債権者に公平に分配するのが基本です。

もっとも、破産者に対する債権の中にも、公益性や破産手続における重要度などの理由から、優先されるべきものとそうでないものがあることは確かです。

そこで、破産法においては、公益性や破産手続における重要度その他各種の理由から、債権者の有する債権を「財団債権」と「破産債権」に分け、それぞれ異なる取り扱いをしています。

このうち「財団債権」とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権のことをいいます(破産法2条7項)。財団債権を有する債権者のことを「財団債権者」といいます(同条8項)。

公益性や破産手続において重要性が高いなどの理由から、破産債権よりも優先して支払われるべき債権が財団債権として扱われます。

この財団債権は、破産手続のように配当によって満足を得るのではなく、「破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる」ものとされています。

財団債権の特徴:破産債権の違い

前記のとおり、破産者に対する債権は、破産手続において「財団債権」と「破産債権」に区別されます。

破産債権とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しないもののことです(破産法2条5項)。

この破産債権は、破産手続が開始すると権利行使が制限され、配当を受けることでしか債権回収できません。

しかし、財団債権は、破産債権ほどの権利行使の制限はされず(強制執行や仮差押えなどは禁止されます。破産法42条1項)、配当によらずに随時弁済を受けられます。

また、財団債権への弁済は破産債権への配当に優先されます(破産法151条)。財団債権の方が破産債権よりも優先的に支払いを受けられるのです。

このように、財団債権と破産債権とでは、破産手続における取扱いがまったく異なります

違う点財団債権破産債権
優先順位破産債権よりも先に弁済財団債権への弁済の後
支払いの手続破産手続によらず弁済破産手続における配当
支払いの時期随時弁済(実際はある程度調査や換価処分が終わった後)債権調査や財産の換価処分が終わった後(通常は破産手続の最終段階)
権利行使の制限基本的に制限されない(ただし、強制執行、仮差押えなどは破産手続開始後は禁止される。)。個別の権利行使は制限される。

財団債権に当たる債権

前記のとおり、財団債権は破産債権よりも優先されますが、債権者が自由に財団債権とするか破産債権とするかを決められるわけではありません。

どのような債権が財団債権に当たるのかについては、破産法で定められています。

破産法第5章で定められている財団債権

破産法第5章(148条以下)に定められている財団債権としては、以下のものがあります。

財団債権具体例や注意点
破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権(破産法148条1項1号)例えば、裁判所からの送達や官報公告のための費用や破産管財人が破産財団回収のために提起した訴訟の費用など
破産財団の管理、換価および配当に関する費用の請求権(破産法148条1項2号)例えば、破産管財人の報酬や破産管財人が不動産を任意売却した際の仲介手数料など
破産手続開始時にまだ納期限の到来していない、破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権(破産法148条1項3号)国税徴収法または国税徴収の例によって徴収することができる請求権。例えば、国税・地方税や国民健康保険料など
ただし、破産手続開始時に納期限から1年以上経過しているものや破産手続開始後の原因に基づくものは含まれない(財団債権にはならないものの、優先的破産債権になる)。
破産手続開始時に納期限から1年を経過していない、破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権(破産法148条1項3号)同上。
破産手続開始時に納期限から1年以上経過しているものや破産手続開始後の原因に基づくものは含まれない(財団債権にはならないものの、優先的破産債権になる)。
破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権(破産法148条1項4号)破産財団に含まれる財産の廃棄処分などのために産廃処理の契約を締結した相手方の代金請求権や、破産管財人の不法行為によって損害を被った被害者の損害賠償請求権など
事務管理または不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権(破産法148条1項5号)破産財団に含まれる建物を義務がないのに修繕してくれた第三者の修繕費用の請求権など
委任の終了または代理権の消滅の後、急迫の事情があるためにした行為によって破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権(破産法148条1項6号)破産者と委任契約を締結していた弁護士が、破産手続開始後に緊急に処理する必要がある事務処理を行った場合の委任報酬の請求権など
双方未履行双務契約について破産管財人が履行を選択した場合において相手方が有する請求権(破産法148条1項7号)破産者から物品を購入する売買契約を締結していた第三者に対して、破産管財人が履行を選択して代金を請求した場合の、相手方の破産管財人に対する物品引渡しの請求権など
破産手続の開始によって双務契約の解約の申入れがあった場合において破産手続開始後その契約の終了に至るまでの間に生じた請求権(破産法148条1項8号)破産者が締結していた電気供給契約を破産管財人が解除した場合の破産手続開始から契約解除までの間に発生した電気料金など
破産管財人が負担付遺贈の履行を受けた場合の負担履行請求権のうち遺贈の目的の価額を超えない部分(破産法148条2項)負担付遺贈の受贈者である破産者の破産管財人が遺贈を受けた場合の相手方の負担の履行を求める請求権(ただし、遺贈の目的の価額の範囲内に制限される)
保全管理人が債務者の財産に関し権限に基づいてした行為によって生じた請求権(破産法148条4項)債務者の財産の廃棄処分などのために産廃処理の契約を締結した相手方の代金請求権や、保全管理人の不法行為によって損害を被った被害者の損害賠償請求権など
破産手続開始前3か月間の破産者の使用人(従業員)の給料の請求権(破産法149条1項)未払いの従業員の給料のうち破産手続開始前の3か月分。
ただし、3か月より前の給料などは、財団債権にはならないものの、優先的破産債権になる。
破産手続の終了前に退職した破産者の使用人(従業員)の退職手当の請求権のうち、退職前3か月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前3か月間の給料の総額より少ない場合は破産手続開始前3月間の給料の総額)に相当する部分(破産法149条2項)未払いの従業員の退職金のうち、「退職前3か月分の給料の総額」または「破産手続開始前3か月分の給料の総額」のいずれか大きい金額に相当する部分が財団債権となる。
なお、これを超える部分は財団債権にはならないものの、優先的破産債権になる。
社債管理者・社債管理補助者の費用および報酬の請求権(破産法150条)破産者が社債を発行していた場合に、その社債を管理する銀行や信託銀行などが事務処理を行った際の費用や報酬の請求権。
ただし、財団債権とするためには、裁判所の許可が必要。

税金など租税等の請求権について

上記のとおり、租税等の請求権(国税徴収法または国税徴収の例によって徴収することができる請求権)のうち、破産手続開始時に納期限が未到来または納期限から1年を経過しておらず、破産手続開始前の原因に基づくものは、財団債権になります(破産法148条1項3号)。

例えば、納期限が2025年4月30日の税金を未納のまま、2026年3月1日に破産手続開始決定を受けた場合、この税金は納期限から1年を経過していないので、財団債権になります。

他方、納期限が2025年1月31日の税金を未納のまま、2026年3月1日に破産手続開始決定を受けた場合、この税金は納期限から1年を経過しているので、破産債権になります。

ただし、財団債権にならない租税等の請求権は、優先的破産債権となります。そのため、配当でなければ債権回収できないものの、一般の破産債権よりも優先的に配当されます。

使用人(従業員)の給料について

上記のとおり、破産手続開始前3か月分の使用人(従業員)の給料は、財団債権になります(破産法149条1項)。

あくまで財団債権になるのは、破産手続開始前3か月分だけです。それより前の未払い分は財団債権になりません。

ただし、破産手続開始の3か月より前の未払い給料は、優先的破産債権となります。そのため、配当でなければ債権回収できないものの、一般の破産債権よりも優先的に配当されます。

使用人(従業員)の退職金について

上記のとおり、使用人の退職金の一部も財団債権になります(破産法149条2項)。

財団債権になるのは、未払いの退職金のうち、「退職前3か月分の給料の総額」または「破産手続開始前3か月分の給料の総額」のいずれか大きい金額に相当する部分です。

例えば、退職金の未払い額が1000万円、退職日前3か月分の給料総額が100万円、破産手続開始前3か月分の給料総額が120万円であれば、退職金1000万円のうちの120万円が財団債権になります。

なお、財団債権にならない退職金の請求権は、優先的破産債権となります。そのため、配当でなければ債権回収できないものの、一般の破産債権よりも優先的に配当されます。

上記の例で言うと、退職金1000万円から財団債権120万円を除いた880万円が優先的破産債権になります。

その他の財団債権

財団債権は、破産法第5章に規定されているものだけに限りません。そのほかにも、例えば、以下のような債権も財団債権として扱われます。

破産法第5章以外の財団債権の具体例
  • 破産手続開始時においてすでにされていた強制執行または先取特権の実行を破産管財人が続行した場合の強制執行または先取特権の実行の手続に関する破産者に対する費用請求権(破産法42条4項)
  • 破産手続の開始によって中断した破産者を当事者とする破産財団に関する訴訟手続のうち破産債権に関しないものを破産管財人が受継して敗訴した場合における相手方の破産者に対する訴訟費用請求権(破産法44条3項)
  • 破産手続の開始によって中断した破産債権者または財団債権者の提起した債権者代位訴訟または詐害行為取消訴訟を破産管財人が受継して敗訴した場合における相手方の破産者に対する訴訟費用請求権(破産法45条3項)
  • 双方未履行双務契約について破産管財人が解除を選択した場合において、破産者の受けた反対給付が破産財団に現存しないときに、相手方がする価額償還請求権(破産法54条2項)
  • 継続的給付を目的とする双務契約の義務者が破産手続開始の申立てから破産手続開始までの間にした給付に関する請求権(破産法55条2項)
  • 賃貸人の破産において賃借人が対抗要件を備えている場合の賃借人が有する請求権(破産法56条2項)
  • 異議を主張した破産債権者が、破産債権査定の申立て・確定訴訟で勝訴した場合における訴訟費用の償還請求権(破産法132条)
  • 債権者委員会に破産手続の円滑な進行に貢献する活動があったと認められる場合において、その活動のために必要な費用を支出した破産債権者が、裁判所の許可を得てする費用償還請求権(破産法144条4項)
  • 破産管財人が詐害行為を否認した場合等において、破産者の受けた反対給付が破産財団に現存しないときに、相手方がする価額償還請求権(破産法168条1項2項)
  • 破産管財人が詐害行為を否認した場合等において、悪意の破産者が受けた反対給付によって生じた利益の全部が破産財団に現存しているときに、相手方がする現存利益の返還請求権(破産法168条2項1号)

財団債権の調査・請求

破産債権については破産手続内において調査手続が設けられていますが、財団債権については特別な調査手続は設けられていません。とはいえ、調査されないわけではありません

実際には、知れている財団債権者に対しては、破産手続開始の通知が送付され、債権の届出が求められます。

他方、財団債権者は、破産管財人に対して、財団債権の弁済を求める請求や交付要求を送ることになります。

破産債権か財団債権かわからない場合は、破産管財人がどちらかを判別して対処してくれるので、破産債権として届け出たとしても、弁済や配当を受けられなくわけではありません。。

財団債権の弁済

破産法 第151条

  • 財団債権は、破産債権に先立って、弁済する。

破産法 第152条

  • 第1項 破産財団が財団債権の総額を弁済するのに足りないことが明らかになった場合における財団債権は、法令に定める優先権にかかわらず、債権額の割合により弁済する。ただし、財団債権を被担保債権とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権の効力を妨げない。
  • 第2項 前項の規定にかかわらず、同項本文に規定する場合における第148条第1項第1号及び第2号に掲げる財団債権(債務者の財産の管理及び換価に関する費用の請求権であって、同条第4項に規定するものを含む。)は、他の財団債権に先立って、弁済する。

引用元:e-Gov法令検索

財産の換価処分によって破産財団が集まれば、財団債権に弁済されます。

この財団債権は、破産手続における配当によらずに、随時弁済を受けることができ(破産法2条7項)、しかも、破産債権に対する配当に先立って弁済されます(破産法151条1項)。

財団債権の優先順位

上記のとおり、財団債権は、破産手続によらずに随時弁済を受けることができます。この財団債権への弁済は破産債権への配当よりも優先されます。

ただし、すべて財団債権が同順位で弁済を受けられるわけではありません。財団債権同士でも優先順位が決まっています。具体的には、以下の順位があります。

財団債権の優先順位
  1. 破産管財人の報酬最二小判昭和45年10月30日
  2. 債権者破産申立てまたは第三者予納の場合における予納金の還付
  3. 破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権および破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権(破産法152条2項、148条1項1号、2号)
  4. その余の財団債権

最優先されるのは破産管財人の報酬です。次に、債権者破産申立てで債権者が予納金を支払っていた場合や第三者が予納金を支払っていた場合には、その債権者や第三者に納付した予納金が返還されます。

さらに、破産手続を進めるために使われた実費(破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の請求権や破産財団の管理・換価・配当の費用)が支払われ、これらを支払っても余剰があれば、その他の財団債権に弁済されます。

財団債権への弁済の順序

財団債権への弁済は、上記の優先順位に従って弁済されます。第1順位の破産管財人報酬から順次、上位から下位の順で弁済をしていきます。

上位の財団債権を全額弁済した場合、余剰が次の順位の財団債権に弁済されます。

同順位の財団債権が複数あるものの、それらの全額を弁済できるだけの破産財団がない場合には、その順位の財団債権の金額に応じて比例分配されます(破産法152条1項)。

ただし、請求すればすぐに支払われるというわけではありません。「随時弁済」とは言っても、実際には、破産財団の調査や換価がある程度終了してから支払われることになります。

財団債権への弁済の手続・方法

財団債権は、破産管財人から財団債権者に弁済されます。具体的には、破産管財人名義の破産財団管理口座から振り込みの方法によって支払われるのが通常です。

破産管財人が100万円を超える金額の財団債権を弁済する場合、破産裁判所の許可が必要です(破産法78条2項13号、3項1号、破産規則25条)。ただし、実務では、100万円以下でも裁判所の事実上の承認を求めるのが一般的でしょう。

破産財団が不足する場合

財団債権だからといって、必ず弁済してもらえるわけではありません。

当然のことですが、破産財団が形成できない(つまり、換価すべき財産がない)場合には、財団債権であっても弁済はされません

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。

この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。

ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

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参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。

破産管財人の債権調査・配当(第2版)
著者:岡伸浩ほか 出版:商事法務
破産管財人が行う債権調査手続や配当手続に関する実務書。かなり実務的な内容なので専門家向けです。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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