この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

個人再生において住宅資金特別条項を定めた再生計画が認可されるためには、個人再生本体(小規模個人再生または給与所得者等再生)の再生計画認可の要件を充たしているだけでなく、再生計画に住宅資金特別条項を定めることができる場合に該当し、かつ、住宅資金特別条項を定めた再生計画固有の認可要件を満たしていることが必要となります。
住宅資金特別条項を定めた再生計画に固有の認可要件とは、住宅資金特別条項を定めた再生計画に固有の不認可事由がないことです。
住宅資金特別条項を定めた再生計画に固有の不認可事由としては,①再生計画に住宅資金特別条項の定めをしなかったこと、②再生計画が遂行可能であると認めることができないこと、③再生債務者が住宅の所有権または住宅の用に供されている土地を住宅の所有のために使用する権利を失うこととなると見込まれることがあります。
これらのうち1つにでも該当する場合には,住宅資金特別条項を定めた再生計画は認可されません。
住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を定めた再生計画の認可要件
個人再生には、住宅ローンなど住宅資金貸付債権だけは通常どおり(またはリスケして)返済を行い、住宅ローンの残っている自宅を維持したまま、その他の借金など債務について整理できる住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の制度があります。
住宅資金特別条項制度を利用するためには、住宅資金特別条項を定めた再生計画を裁判所によって認可してもらう必要があります。
個人再生手続において再生計画を認可してもらうためには、再生手続開始の要件を充たして再生手続を開始してもらった上で、さらに再生計画認可の要件も充たしていることが必要です。
再生計画認可要件とは、「民事再生法で定める再生計画不認可事由がないこと」です。
また、住宅資金特別条項制度は、個人再生(小規模個人再生・給与所得者等再生)に付随する制度です。
そのため、住宅資金特別条項を定めた再生計画を認可してもらうには、個人再生本体の要件だけではなく、住宅資金特別条項に固有の要件を満たしている必要もあります。
住宅資金特別条項を定めた再生計画に固有の認可要件も「住宅資金特別条項を定めた再生計画に固有の再生計画不認可事由がないこと」です。
小規模個人再生または給与所得者等再生の再生計画不認可事由がないこと
前記のとおり、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)は個人再生(小規模個人再生または給与所得者等再生)に付随する特別な制度です。
したがって、住宅資金特別条項を定めた再生計画を認可してもらうためには、個人再生本体の再生計画認可要件も満たしている必要があります。
再生計画認可の要件は、小規模個人再生と給与所得者等再生では異なる部分があります。
いずれにしても、まずは個人再生本体の再生計画認可要件を満たしていなければ、住宅資金特別条項を定めた再生計画が認可されることもありません。
住宅資金特別条項を定めた再生計画に固有の再生計画不認可事由がないこと
民事再生法 第202条
- 第1項 住宅資金特別条項を定めた再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
- 第2項 裁判所は、住宅資金特別条項を定めた再生計画案が可決された場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、再生計画不認可の決定をする。
- 第1号 第174条第2項第1号又は第4号に規定する事由があるとき。
- 第2号 再生計画が遂行可能であると認めることができないとき。
- 第3号 再生債務者が住宅の所有権又は住宅の用に供されている土地を住宅の所有のために使用する権利を失うこととなると見込まれるとき。
- 第4号 再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
民事再生法 第231条
- 第2項 小規模個人再生においては、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合にも、再生計画不認可の決定をする。
- 第5号 再生債務者が債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載をした場合において、再生計画に住宅資金特別条項の定めがないとき。
民事再生法 第241条
- 第2項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
- 第3号 再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合において、第202条第2項第3号に規定する事由があるとき。
個人再生において住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を定めた再生計画が認可されるためには、そもそも、当該事案が再生計画に住宅資金特別条項を定めることができる場合でなければなりません。
もっとも、再生計画に住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を定めることができる場合だからといって、必ず再生計画が認可されるわけではありません。
前記のとおり、住宅資金特別条項を定めた再生計画の場合には、小規模個人再生と給与所得者等再生の不認可事由のほかに、住宅資金特別条項を定めた再生計画に固有の不認可事由があります。
したがって、この「住宅資金特別条項を定めた再生計画に固有の不認可事由がないこと」が、住宅資金特別条項に固有の再生計画認可要件となります。
具体的にいうと、住宅資金特別条項に固有の再生計画認可要件として、以下のものが必要となります。
- 再生計画に住宅資金特別条項の定めをすること
- 再生計画が遂行可能であると認められること
- 再生債務者が住宅の所有権または住宅の用に供されている土地を住宅の所有のために使用する権利を失うこととなると見込まれないこと
再生計画に住宅資金特別条項の定めをすること
住宅資金特別条項を利用するためには、個人再生の申立書に添付する債権者一覧表に、住宅資金貸付債権である旨および住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨を記載する必要があります。
債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨を記載をしたにもかかわらず再生計画に住宅資金特別条項を定めなかった場合、不認可事由があるものとして、再生計画は不認可となってしまいます(民事再生法231条2項5号、241条2項5号)。
したがって、申立ての際、債権者一覧表に住宅資金特別条項を利用する旨を記載した場合は、再生計画に住宅資金特別条項を定めることを忘れないようにしなければなりません。
ただし、実際には、住宅資金特別条項を定めないまま再生計画案を裁判所または個人再生委員に提出してしまったとしても、裁判所または個人再生委員から住宅資金特別条項を定めるよう指導されるでしょう。
そのため、再生計画に住宅資金特別条項の定めをし忘れることは実務上あまりないと思われます。
再生計画が遂行可能であると認められること
住宅資金特別条項を定めた再生計画を遂行可能であると認めることができない場合、不認可事由があるものとして、住宅資金特別条項を定めた再生計画は不認可となってしまいます(民事再生法202条2項2号)。
個人再生本体についても、再生計画の遂行可能性が無いことは不認可事由とされています。
さらに、個人再生本体については再生計画の遂行可能性があるとしても、住宅資金特別条項を定めた再生計画として考えた場合には再生計画遂行可能性がない場合には、やはり、住宅資金特別条項を定めた再生計画は不認可となります。
例えば、収支から考えて、個人再生で減額された再生債権を支払いつつ、住宅ローンを支払っていくことが難しいであろうと判断されるような場合が考えられます。
住宅・敷地使用権を失うと見込まれないこと
再生計画に住宅資金特別条項を定め、再生計画の遂行が可能であるとしても、住宅の所有権または住宅の用に供されている土地を住宅の所有のために使用する権利を失うこととなると見込まれる場合には、不認可事由に該当し、住宅資金特別条項を定めた再生計画は不認可となってしまいます(民事再生法202条2項2号)。
住宅資金特別条項を定めた再生計画を認可したとしても、結局、その住宅を失うことになってしまうのでは、再生計画を認可する意味がないからです。
住宅の所有権だけでなく、その住宅の敷地使用権が失われると、住宅を維持することはできなくなりますから、住宅の敷地利用権を失う見込みがある場合も不認可事由に該当します。
典型的なケースは、住宅またはその敷地に抵当権を設定している抵当権者が抵当権を実行することが見込まれる場合です。
住宅資金貸付債権に該当する住宅ローン等以外の債権を担保するための抵当権が設定されている場合や、住宅ローンの連帯保証人等が自己破産した場合などには、住宅またはその敷地に抵当権を設定している抵当権者が抵当権を実行する可能性が生じます。
したがって、個人再生において住宅資金特別条項を利用しようという場合には、住宅またはその敷地について抵当権を実行される可能性があるのかどうかをよく検討する必要があります。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
弁護士の探し方
「個人再生をしたいけど、どの弁護士に頼めばいいのか分からない」
という人は多いのではないでしょうか。
現在では、多くの法律事務所が個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
- 相談無料(無料回数制限なし)
- 全国対応・休日対応・メール相談可
- 所在地:東京都台東区
- 相談無料(無料回数制限なし)
- 全国対応・依頼後の出張可
- 所在地:東京都墨田区
- 相談無料
- 24時間対応・秘密厳守・匿名相談可能・メールフォーム・LINE相談可能
- 所在地:東京都千代田区
参考書籍
本サイトでも個人再生について解説していますが、より深く知りたい方のために、個人再生の参考書籍を紹介します。
個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。
個人再生の手引(第2版)
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。
はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。
書式 個人再生の実務(全訂6版)申立てから手続終了までの書式と理論
編集:個人再生実務研究会 出版:民事法研究会
東京地裁・大阪地裁の運用を中心に、個人再生の手続に必要となる各種書式を掲載しています。書式を通じて個人再生手続をイメージしやすくなります。




