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破産者の財産はどのように調査されるか?調査対象・方法・手続を解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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破産手続では、破産者の財産が破産管財人によって調査されます

破産管財人は、破産手続開始の申立書及びその添付資料を精査して、申立人や債務者から事情を聴取するほか、各種の帳簿類や資料を精査、現地の調査、転送郵便物の閲覧、債権者・利害関係人・第三者等からの情報提供またはこれらに対する照会などさまざまな方法を用いて、破産者の財産を調査します。

破産者の財産を調査する理由

破産手続は、破産した債務者(破産者)の財産を破産財団として管理・回収し、それを換価処分して得た金銭を債権者に対して公平に配当または弁済する手続です。

破産者の財産は債権者に対する配当・弁済の原資になるため、この財産をいかに確実に回収・管理して適正に換価処分するかが破産手続において最も重要な事項です。

もっとも、破産者がどのような財産を持っているのか、その財産はどこにあるのか、どのような状態にあるのかなどがわからなければ、確実に破産財団を回収・管理・換価処分することができません。

そのため、破産者の財産を漏れのないように調査することが必要となってきます。

破産者の財産を調査する機関:破産管財人

破産者の財産を調査・回収・管理・換価処分する業務を実際に行うのは、裁判所によって選任される破産管財人です。

破産管財人とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理および処分をする権利を有する者のことをいいます(破産法2条12項)。

破産手続が開始すると、破産財団に属する破産者の財産の管理処分権は破産者から剥奪され、破産管財人に専属することになります(破産法78条1項)。

破産管財人は、この管理処分権に基づき、破産者の財産を調査します。また、破産財団の調査を行うため、破産管財人にはさまざまな権限が与えられています。

破産管財人によって調査される破産者の財産の範囲

破産管財人が調査しなければならない破産者の財産は、「破産財団」に属する財産です。

破産財団とは、「破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもの」のことをいいます(破産法2条14項)。

破産者が破産手続開始決定時に有していた財産は、すべて破産財団に組み入れられます(破産法34条1項)。そのため、破産管財人の調査対象になるのは、基本的に破産者が有しているすべての財産です。

なお、個人(自然人)の破産の場合、一定の財産(自由財産)は破産財団に組み入れられませんが、何が自由財産に該当するかを判断しなければいけないので、自由財産に含まれる財産も含めて全財産を調査することになるのが通常です(ただし、自由財産は換価処分されません。)。

また、破産手続開始前に破産者が第三者に譲渡した財産など、本来であれば破産財団に属するはずだった財産は、破産管財人による否認権行使によって破産財団に取り戻されることがあります。

そのため、破産手続開始時に破産者が有していないものであっても、否認権行使の対象となるかどうかを判断するため、調査の対象になることがあります。

法人・事業者の破産で調査対象になることが多い財産

法人・事業者の破産でよく調査対象になるものとしては、例えば、以下の財産があります(以下のものに限られるわけではありません。)。

法人破産で調査対象になることが多い財産
  • 現金
  • 預金・貯金
  • 不動産
  • 自動車・車両
  • 在庫品・什器備品
  • 有価証券・金融資産
  • 保険
  • 売掛金・貸付金などの債権

個人(消費者)破産で調査対象になることが多い財産

個人(消費者)の破産でよく調査対象になるものとしては、例えば、以下の財産があります(以下のものに限られるわけではありません。)。

個人破産で調査対象になることが多い財産

否認権に関する調査

前記のとおり、破産手続開始時に破産者が有していないものであっても、否認権行使の対象となるかどうかを判断するため調査することがあります

例えば、破産手続開始申立ての前に、破産者が家族に財産の名義を移していた場合は否認権行使の対象になる可能性があります。

このような場合には、否認権行使の対象になるかどうかを判断するため、家族や第三者名義になっている財産を調査するケースがあります。

破産者の財産に関する調査事項

前記のとおり、破産者が有している財産はすべて破産管財人による調査の対象になります。否認権行使のために、破産者が過去に有していた財産が調査対象になることもあります。

破産管財人は、破産者が有していた財産にはどのようなものがあるのか、どこに保管されているのか、どのような状態なのか、その財産の換価価値はどのくらいになるのかを調査します。

また、財産があっても、その財産には第三者による担保が設定されていたり、あるいは、そもそも破産者の財産ではなく第三者の財産である場合もあるでしょう。

したがって、破産管財人は、単に財産の有無等を調査するだけでなく、その財産に関する法律関係・権利関係もあわせて調査していくことになります。

破産者の財産の評定

破産法 第153条

  • 第1項 破産管財人は、破産手続開始後遅滞なく、破産財団に属する一切の財産につき、破産手続開始の時における価額を評定しなければならない。この場合においては、破産者をその評定に立ち会わせることができる。
  • 第2項 破産管財人は、前項の規定による評定を完了したときは、直ちに破産手続開始の時における財産目録及び貸借対照表を作成し、これらを裁判所に提出しなければならない。
  • 第3項 破産財団に属する財産の総額が最高裁判所規則で定める額に満たない場合には、前項の規定にかかわらず、破産管財人は、裁判所の許可を得て、同項の貸借対照表の作成及び提出をしないことができる。

引用元:e-Gov法令検索

破産規則 第52条

  • 法第153条第3項の最高裁判所規則で定める額は、1000万円とする。

引用元:裁判所サイト

破産管財人は、破産手続開始後遅滞なく、破産者の財産を調査して破産手続開始時における価額を評定して財産目録・貸借対照表を作成し、裁判所に提出しなければなりません(破産法153条1項、2項)。

ただし、破産財団に属する財産の総額が1000万円未満の場合は、裁判所の許可を得て、この貸借対照表を作成・提出しなくてもよいとされています(破産法153条3項、破産規則52条)。

法人破産では破産手続開始時点で1000万円以上の財産が存在しているケースもありますが、個人の破産や小規模法人の破産などでは、1000万円以上の財産が残っているケースはあまりないでしょう。

そのような場合には、財産目録や貸借対照表の作成・提出は行われずに調査が進められます。ただし、正式な財産目録や貸借対照表を作成しない場合でも、ある程度の裁判所への調査報告は行われるのが通常です。

破産者の財産の調査方法

破産者の財産の調査方法には、法令に違反しない限り、特に「こうしなければならない」と決められているわけではありません。さまざまな方法を使って調査されます。

代表的な調査方法としては、以下のものがあります。

破産者の財産の調査方法の具体例
  • 破産手続開始の申立書や添付書類の精査
  • 帳簿・書類・資料の精査
  • 物件・パソコンやスマートフォン端末のデータなどの確認
  • 申立人・破産者・法人代表者からの事情聴取
  • 利害関係人・債権者からの事情聴取や情報提供
  • 現地調査
  • 郵便物の転送嘱託・内容の開披調査
  • 関係者・第三者への照会・調査嘱託
  • 破産者の財産の封印・帳簿の閉鎖
  • 破産者に対する財産引渡命令

破産管財人による財産調査の6つのルート

1. 書類精査

  • 破産手続開始の申立書や添付書類
  • 破産者からの引継書類
  • 追加書類提出の要請

2. 事情聴取

  • 破産者や法人代表者からのヒアリング
  • 従業員や関係者からの情報提供
  • 説明義務(40条)の履行

3. 郵便物調査

  • 転送嘱託(81条)による閲覧
  • カード明細・保険通知
  • 隠し口座の特定

4. 外部照会

  • 公的機関などへの照会
  • 弁護士会照会(23条の2)の利用
  • 調査嘱託や文書送付嘱託の利用

5. 現地調査

  • 事業所・倉庫の立ち入り
  • PCや端末データの調査
  • 換価可能な動産の確認

6. その他の調査

  • 封印執行・帳簿の閉鎖
  • 破産者に対する財産引渡命令
  • 警察の協力要請

以下、それぞれについて詳しく説明します。

破産手続開始の申立書・添付書類の精査

破産者の財産の調査の端緒となるのは、破産手続開始の申立書およびその添付書類です。裁判所・破産管財人は破産手続開始の申立書や添付書類を精査して、破産者の財産を調査します。

破産手続開始の申立ては、裁判所に以下の書類を提出して行われます。

破産手続開始の申立てに際して提出される書類
  • 破産手続開始の申立書
  • 財産目録(所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面。破産法41条)
  • 財産に関する各種の書類

もちろん申立書に記載できることや添付できる書類の量は限られるため、すべての財産に関する情報を申立書などだけで把握できるとは限りませんが、調査すべき事項が何かなどを確認することができます。

帳簿・書類・資料の精査

法人や事業者の破産の場合、破産手続開始後における破産管財人と申立人・債務者との打ち合わせが行われ、その際に、決算書・通帳類・各種帳簿類・その他の資料の引継ぎも併せて行うことが多いでしょう。

破産手続開始の申立書に添付された書類や引継書類だけでは不足する場合、破産管財人は、破産者や法人代表者などに、随時、追加の書類を提出するよう求めます

破産管財人は、これらを経て集まった書類や資料を精査して調査を進めます。

また、破産管財人は、破産財団を調査するため、破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査する権限があります(破産法83条1項後段)。破産者が検査を拒絶した場合、刑事罰を科されることがあります(破産法268条3項)。

破産財団に関する帳簿類を、債権者を害する目的で、隠匿・偽造・変造した場合も、刑罰を科されることもあります(破産法270条)。

物件・パソコンやスマートフォン端末のデータなどの確認

破産者の財産調査は、書類の精査だけでなく、物件そのものや、パソコン・スマートフォン端末のデータなどの確認も行われるケースがあります。

個人の破産の場合には、わざわざ自宅まで行ってパソコンやスマホのデータを確認するようなことはほとんどありません(ただし、財産に関わるスマホ決済の利用履歴やメール・SNSの内容をプリントアウトしたもので調査することはあります。)。

他方、法人・事業者の破産の場合は、経理や人事データを確認しなければ調査を進められないため、事業所のパソコンやスマートフォン端末を回収して、内部のデータをチェックすることがあります。

申立人・破産者・法人代表者からの事情聴取

破産者の財産について最もよく知っているのは、破産者本人・法人破産であれば法人の代表者や役員(取締役や理事など)でしょう。破産管財人は、これらの破産者・法人代表者などから事情聴取して財産の調査を進めます

破産管財人には、破産者や法人代表者・役員に対して破産に関する説明を求める権限があり(説明請求権)、破産者や法人代表者・役員には求められた説明をしなければならない法的義務(説明義務)が課されています(破産法40条、83条1項前段)。

また、説明を求めるだけでなく、破産管財人は破産者・破産法人の帳簿・書類・その他の物件を検査する権限もあります(破産法83条1項後段)。

自己破産や準自己破産の場合、実務では、破産手続開始後すぐに(東京地方裁判所の場合は破産申立て後すぐに)、破産管財人と破産者・法人代表者(準自己破産の場合は申立人である取締役や理事など)の打ち合わせが行われ、そこで最初の事情聴取が行われるのが通常です。

特定管財になるような複雑・大規模な事件や債権者破産申立ての場合には、破産手続開始の申立て後破産手続開始前に、裁判所において、裁判官・破産管財人候補者同席の上で、申立人や債務者に対する事情聴取が行われることもあります。

もちろん、事情聴取は、最初の時点だけでなく、破産手続の期間全体を通じて行われます。電話やメール、申立人・債務者に報告書の提出を求めるなどの方法で事情聴取されることもあります。

破産者・法人代表者の義務

調査に協力しない場合の重大なリスク

破産者の義務

  • 説明義務 (40条)
    質問に正直に回答する義務
  • 重要財産開示義務 (41条)
    全財産を漏れなく報告する義務

違反時のペナルティ

免責不許可(個人の場合)

破産をしても「借金・債務がそのまま残る」ことになります。

刑事罰(詐欺破産罪など)

悪質な隠匿や虚偽説明には、懲役や罰金が科される可能性があります。

破産管財人による財産調査の実効性を高めるため、破産者や法人代表者・役員には、破産法において法的義務が課れています。具体的には、以下のような法的義務があります。

破産者・法人役員の法的義務
  • 破産者・法人の理事・取締役などの説明義務(破産法40条)
    破産者・法人の役員(過去に役員であった者も含む)などは、破産管財人から請求があった場合、破産に関して説明する義務が課されています。なお、裁判所の許可がある場合は、破産者の従業員にも説明義務が課されます。
  • 破産者の重要財産開示義務(破産法41条)
    破産者は、破産手続開始後遅滞なく、所有する不動産・現金・有価証券・預貯金・その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならない義務を課されています。

破産者や法人の役員が説明を拒絶した場合や虚偽説明をした場合、刑罰を科されることがあります(破産法268条、269条)。

また、個人破産の場合であれば、免責不許可事由となり、破産者の免責が許可されなくなることもあります(破産法252条1項11号)。

なお、破産手続開始時に法人代表者や役員であった者だけでなく、過去に代表者や役員であった者にも説明義務が課されます。

債権者・利害関係人からの事情聴取・情報提供

前記のとおり、破産財団の調査の中心は、書類の精査と申立人・債務者からの事情聴取ですが、それだけでは、破産財団を完全に調査しきれないこともあります。

そこで、破産管財人は、利害関係人からも事情を聴取して、破産財団を調査することもあります。例えば、法人・事業者の破産の場合、従業員から事情を聴取するケースもあります。

なお、裁判所の許可を得た場合に限り、従業員は説明義務を負います(破産法40条1項ただし書き、5号)。それ以外の場合は任意で事情を聴取します。

また、破産管財人には、破産法人の子会社などに業務・財産状況の説明を求め、帳簿・書類その他の物件を検査する権限もあります(破産法83条2項)。

債権者からの情報提供で隠匿している財産が発覚することもあります。

現地調査

財産の保管場所や保管状態を確認するには、現物を確認するのが最も確実です。そのため、破産管財人は、事業所・工場・倉庫などに赴いて財産調査することもあります。

法人・事業者の破産の場合は、現地調査がよく行われますが、個人消費者の破産の場合に自宅などを訪問して調査をすることはほとんどないでしょう(ただし、住居不動産の任意売却が必要な場合には、住居を調査することはあります。)。

郵便物の転送

破産法 第81条

  • 第1項 裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号)第2条第3項に規定する信書便物(次条及び第118条第5項において「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。

破産法 第82条

  • 第1項 破産管財人は、破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。

引用元:e-Gov法令検索

裁判所は、破産管財人の職務遂行のために必要があると認めるときは、破産者宛ての郵便物や信書を破産管財人に転送するよう、郵便事業者に対して嘱託することができます(破産法81条1項)。

つまり、破産者宛てに送られてくる郵便物が、すべて破産管財人に送られるようになるのです。破産管財人は、転送されてきた郵便物を開披して内容を確認することができます(破産法82条1項)。

この郵便物の転送によって財産に関する情報が見つかることも少なくありません。

なお、破産法81条1項によると郵便物等の転送嘱託は任意とされていますが、実務上は、法人破産か個人破産かにかかわらず、必ず実施されます。

照会・調査嘱託

申立人、債務者、債権者または利害関係人から事情を聴取したり、資料の提出を求めたりするだけではなく、公的機関や第三者に対して照会し、情報の提供を求めることもあります

破産管財人であることを明示して照会するため、財産に関わらない個人情報を除いて、照会に応じるケースが多いでしょう。

破産管財人には弁護士が選任されるので、弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会を利用して照会する場合もあります。

また、破産管財人は、民事訴訟法186条の調査嘱託または同法226条の文書送付嘱託を破産裁判所に申し立てて、破産裁判所から照会先に対して調査嘱託または文書送付嘱託をしてもらうことができると解されています(破産法8条2項、13条)。

相手方が任意の照会に応じない場合には、この調査嘱託や文書送付嘱託の制度を利用して、公的機関や第三者に対して照会をすることもあり得ます。

別除権の目的物の提示請求

破産法 第154条

  • 第1項 破産管財人は、別除権者に対し、当該別除権の目的である財産の提示を求めることができる。
  • 第2項 破産管財人が前項の財産の評価をしようとするときは、別除権者は、これを拒むことができない。

引用元:e-Gov法令検索

別除権とは、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき、特別の先取特権、質権または抵当権を有する者が、これらの権利の目的である財産について、破産手続によらないで行使することができる権利のことをいいます(破産法2条9項、65条1項)。

別除権者は、目的物を競売にかけて売却するなどして、優先的に自己の債権の弁済に充てることができます。別除権を行使しても不足がある場合は、その不足額について一般の破産債権者として配当に参加できます。

別除権の行使が適正なものかを調査するため、破産管財人は、別除権者に対して目的物の提示を求めることができ、別除権者は、破産管財人が目的物を評価することを拒絶できません(破産法154条1項、2項)。

破産者の財産の封印・帳簿の閉鎖

破産法 第155条

  • 第1項 破産管財人は、必要があると認めるときは、裁判所書記官、執行官又は公証人に、破産財団に属する財産に封印をさせ、又はその封印を除去させることができる。
  • 第2項 裁判所書記官は、必要があると認めるときは、破産管財人の申出により、破産財団に関する帳簿を閉鎖することができる。

引用元:e-Gov法令検索

破産者や関係者などが財産調査のために必要な物件を勝手に持ち出したり、隠したりできないようにするため、破産管財人は、裁判所書記官・執行官・公証人に、破産財団に属する財産に封印をさせることができます(封印執行。破産法155条1項)。

具体的には、対象の財産に破産管財人の管理下にあることを明示した封印票や告示書が貼り付けられます。これを無断で剥がした場合、封印破棄罪(刑法96条)の刑罰(3年以下の拘禁もしくは250万円以下の罰金またはその両方)を科されます。

また、破産管財人の申出によって、裁判所書記官は、破産財団に関する帳簿を閉鎖することもできるとされています(破産法155条2項)。

裁判所書記官によって閉鎖された帳簿を隠滅・偽造・変造した場合は、破産犯罪として3年以下の拘禁もしくは300万円以下の罰金またはその両方の刑罰を科されます(破産法270条後段)。

なお、封印執行や帳簿閉鎖の措置は、実務ではほとんど使われません。警備会社に警備を依頼したり、持ち出せない保管場所を借りるなどの方法で対応するケースが大半です。

破産者に対する財産引渡命令

破産法 第156条

  • 第1項 裁判所は、破産管財人の申立てにより、決定で、破産者に対し、破産財団に属する財産を破産管財人に引き渡すべき旨を命ずることができる。
  • 第2項 裁判所は、前項の決定をする場合には、破産者を審尋しなければならない。
  • 第3項 第1項の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
  • 第4項 第1項の申立てについての決定及び前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
  • 第5項 第1項の決定は、確定しなければその効力を生じない。

引用元:e-Gov法令検索

破産者が財産の引渡しに応じない場合、裁判所は、破産管財人の申立てにより、破産者に対して破産財団に属する財産を破産管財人に引き渡すよう命じる決定をすることができます(財産引渡命令。破産法156条1項)。

この財産引渡命令は裁判です。破産者に弁明の機会を与えるため、引渡命令をする場合は、破産者を審尋しなければならないとされており(破産法156条2項)、破産者は引渡命令に対して不服を申し立てる(即時抗告)ことができます(同条3項)。

なお、破産者が引渡命令にも応じなかった場合、破産管財人は引渡命令を債務名義として強制執行をすることになります。

その他の調査方法

これまで述べてきたとおり、破産財団を調査する方法にはさまざまな方法がありますが、破産財団の調査方法は特に限定されていないため、前記までに挙げてきたものに限られるわけではありません。

場合によっては、調査機関や興信所等(もちろん適法な機関・方法で)を利用して調査することもあり得るでしょう。

また、調査方法そのものではありませんが、破産者や利害関係人等から調査に抵抗された場合、破産管財人は、その抵抗を排除するために、裁判所の許可を得て、警察上の援助を受けることができるとされています(破産法84条)。

破産管財人による調査権の限界

前記のとおり、破産管財人には、説明請求権や検査請求権、封印執行や帳簿閉鎖を求める権限、財産引渡命令を求める権限などさまざまな調査権限が認められています。

とは言え、警察のように強制捜査を行う権限まで認められているわけではありません

そこで、破産管財人の財産調査に実効性を持たせるため、破産者や法人代表者に説明義務や重要財産開示義務などが課され、これらに違反すると刑罰を科されるなどの不利益を生じるものとされています。

これらの義務や義務違反に対するペナルティを課すことによって、破産者や法人代表者などが財産調査に協力することを促す仕組みになっているのです。

破産者の財産の調査結果の報告

前記のとおり、破産管財人は、破産財団に属する財産の総額が1000万円以上の場合、破産手続開始後遅滞なく財産評定をして、貸借対照表などを裁判所に提出しなければいけません。

それだけでなく、破産管財人は、破産手続開始後遅滞なく、以下の事項を記載した報告書を裁判所に提出する必要があります(破産法157条1項)。

破産法157条1項の報告事項
  • 破産手続開始に至った事情
  • 破産者および破産財団に関する経過および現状
  • 法人破産における役員財産の保全処分または役員責任査定決定を必要とする事情の有無

この他にも、破産管財人は、随時、破産財団に属する財産の管理・処分の状況や裁判所が報告を求める事項を裁判所に報告しなければなりません(破産法157条2項)。

また、破産管財人は、上記破産法157条1項の報告事項を財産状況報告集会においても報告し(破産法158条)、債権者集会が決議で定めた場合には、債権者集会でも破産財団の状況を報告する必要があります(破産法159条)。

同時廃止の場合

同時廃止とは、「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」場合に、破産手続の開始と同時に破産手続が廃止(打ち切り)になる手続です。

同時廃止の場合、破産管財人が選任されず、破産手続はすぐに終了となるため、財産調査は行われません

財産隠しによって生じる破産者の不利益

これまで述べてきたとおり、破産手続においては、破産者の財産は徹底的に調査されます。

この調査の実効性を高めるため、破産者によって財産隠匿(財産隠し)が行われた場合、かなり重い不利益が課されることになっています。

破産犯罪として刑罰を科される不利益

破産者の財産を隠匿した場合、詐欺破産罪として、10年以下の拘禁または1000万円以下の罰金、またはその両方の刑罰を科されます(破産法265条1項1号)。

また、破産者の財産を譲渡したり、破産管財人の承諾や正当な理由なく破産者の財産を取得または第三者に取得させた場合も、詐欺破産罪として刑罰を科されることがあります(破産法265条1項2号、2項)。

財産隠匿そのものではありませんが、破産管財人の調査に協力せず、以下の行為をした場合も刑罰を科されます

  • 破産管財人からの質問に対して説明義務を果たさなかったり、破産管財人の帳簿などの検査を拒否したしたりした場合(破産法268条)
  • 重要財産開示義務を果たさなかった場合(破産法269条)
  • 破産者の財産に関する帳簿・書類・その他の物件を隠滅・偽造・変造した場合(破産法270条)
  • 偽計・威力を用いて破産管財人の調査を妨害した場合(破産法272条)

特に法人・事業者の破産では、実際に刑罰を科されるケースもあります。

免責不許可事由に該当する不利益

個人破産の場合は、刑罰だけでなく、財産を隠匿する行為は免責不許可事由に該当し、免責が許可されない不利益を生じる可能性もあります(破産法252条1項1号)。

個人破産では、免責が許可されなければ、借金・債務の支払義務はなくならず、破産した後も支払いを続けていかなければならなくなります。

また、財産隠しに関連して免責不許可事由となる行為として、以下のものもあります。

  • 業務・財産に関連する帳簿・書類・その他の物件を隠滅・偽造・変造した場合(破産法252条1項6号)
  • 裁判所が行う調査に対して説明を拒絶し、または虚偽の説明をした場合(破産法252条1項8号)
  • 不正の手段を用いて、破産管財人の調査業務を妨害した場合(破産法252条1項9号)
  • 説明義務や重要財産開示義務を果たさなかった場合(破産法252条1項11号)

免責が不許可になると、自己破産をする意味がなくなります。十分に注意しましょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。

この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。

ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

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参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。

破産管財人の財産換価(第2版)
編集:岡伸浩ほか 出版:商事法務
破産手続における破産管財人の財産換価処分について、財産の種類ごとなどに具体的な手続や方法を解説する実務解説書。実務家向けの本ですが、破産手続における財産処分のイメージをつかめるかもしれません。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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