
遅延損害金とは、金銭債務の債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償金のことです。遅延利息と呼ばれることもありますが、遅延損害金はあくまで債務不履行に基づく損害賠償金ですので、元本利用の対価である利息とは別のものです。
遅延損害金(遅延利息)とは
利息に似た性質の金銭債権として、「遅延損害金(ちえんそんがいきん)」があります。
遅延損害金は,利息と同じように一定の期間を区切り,その期間中における元本に対する一定の割合によって算定されます。つまり,元本に対する年〇〇パーセントの割合というような形で金額が決められるということです。
このように利息に似ていることから,遅延損害金のことを「遅延利息」と呼ぶ場合があります。遅延損害金のことを遅延利息と定義している法律もあります。
しかし,厳密にいうと,遅延損害金とは,法的には,金銭債務の債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償金のことです。利息とはまったく別物です。
利息は元本利用の対価として認められるものですが,遅延損害金はあくまで金銭債務の債務不履行に基づく損害賠償金です。
また、利息は原則として利息契約によって発生しますが、遅延損害金は債務不履行の要件を満たせば当然に発生します。
金銭債務の特殊性と遅延損害金の関係
民法 第419条
第1項 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
第2項 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
第3項 第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
債務不履行には、履行遅滞、履行不能、不完全履行という3つの類型があります。
しかし、金銭というものがこの世の中から無くなるということは想定できません。そのため,金銭債務については、他の債務と異なり、履行不能や不完全履行という債務不履行は生じません。
したがって,金銭債務においては,履行遅滞のみ,つまり,金銭債務の支払いが期限を遅れているという債務不履行だけが問題となってくるということです。
そして,金銭債務が履行遅滞となった場合,債務者は,履行遅滞の責任を負います。具体的にどのような責任かというと,損害賠償義務を負うということです。この損害賠償金が遅延損害金です。
また、金銭は、それを運用すれば利益を得られます。金銭債務の支払が遅滞したことによって、債権者は、少なくとも、期限どおりに返済されていれば得られていたであろう運用利益を失ったということです。
そのため、金銭債務の履行遅滞の場合には、少なくとも債権者は法定利率分の損害を被っているものとして、法定利率によって損害賠償額を定めることとし、債権者は損害を立証しなくてもよいものとしているのです(民法419条1項、2項)。
遅延損害金の利率
前記のとおり、遅延損害金の利率は、法定利率によって定められます。法定利率は、現在年3パーセントの割合です(民法404条2項)。
ただし、遅延損害金について当事者間の合意により約定利率が定められている場合には、法定利率ではなく約定利率が適用されます(民法419条1項ただし書き)。
約定利率については、いくらでもよいわけではなく、制限があります。例えば、利息制限法の制限利率を超えることはできません。この利息制限法の制限利率を超える約定利率は,制限利率を超える部分が無効となります。
なお、法定利率が適用される場合、令和2年4月1日より前に発生していた遅延損害金については、民法改正前の利率(民事法定利率は年5パーセント、商事法定利率は年6パーセント)が適用されます(平成29年6月2日法律第44号民法附則15条1項)。