この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

2回目の自己破産であっても,免責が許可されることはあり得ます。
ただし,1回目の免責許可決定の確定日から7年を経過していないうちに2回目の自己破産・免責許可を申し立てると,免責不許可事由があるものとして扱われます。
その場合,裁判官の裁量によって免責を許可してよいかどうかを調査するため,破産管財人が選任される管財手続になるのが通常です。
1回目の免責許可決定の確定日から7年を経過している場合でも,2回目であることに違いはないので,管財手続になることが多いでしょう。
いずれにしても,1回目のときよりも厳格な調査や判断がされることになります。1回目から2回目までの期間や再び支払不能に至った原因や経緯によっては免責不許可となる可能性もあります。その場合には,個人再生など他の債務整理手続きを検討する必要があります。
2回目の自己破産・免責許可の可否
自己破産をして免責が許可されると,債務者(破産者)は債務の支払義務を免れます。他方,債権者からすると,債権を回収できなくなり,損失を被ってしまうことになります。
したがって,1度自己破産をして免責が許可された以上は,経済的な更生に努め,再び自己破産しないようにしなければなりません。
とはいえ,何らかの事情で,2回目の自己破産をしなければならない状況に陥ることもあり得ます。
実際、さすがに3回目の人は少ないでしょうが、2回目の自己破産をする人は少なからずいます。
結論から言うと,2回目の自己破産であっても,免責が許可されることはあり得ます。
ただし,上記のとおり,免責が許可されると、債権者に大きな損失をもたらします。したがって,簡単に2回目の自己破産・免責が許可されるはずはありません。
以下では,免責許可を受けてから7年以内に2回目の自己破産を申し立てているか,7年以上経過してから申し立てているかに分けて,2回目の免責許可の可否について説明します。
1回目の免責許可決定の確定から7年が経過していない場合
破産法 第252条
- 第1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
- 第10号 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法 (平成11年法律第225号)第239条第1項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第235条第1項(同法第244条 において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
自己破産を申し立てたからといって,必ず免責が許可されるわけではありません。破産法第252条第1項各号に定められている「免責不許可事由」がある場合には,免責が許可されないこともあります。
その免責不許可事由の1つに「過去に免責可決定を受けてそれが確定した場合において、その免責許可決定の確定日から7年以内に免責許可の申立てをしたこと」があります(破産法252条1項10号イ)。
したがって,2回目の自己破産・免責許可の申立ての時点で、1回目の免責許可決定確定日から7年が経過していない場合には,免責不許可事由があるものとして扱われます。
免責が許可される場合(裁量免責)
ただし、過去7年以内の免責許可決定確定による免責不許可事由があるからといって、常に免責が不許可になるわけではありません。
免責不許可事由がある場合であっても,裁判所は,破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは,免責許可の決定をすることができるものとされています(破産法252条2項)。これを「裁量免責」と呼んでいます。
そのため、1回目の免責許可決定確定日から7年が経過していない場合であっても,裁判官の判断によっては,免責が許可されることがあります。
2回目の自己破産の手続(同時廃止か少額管財か)
ただし,裁量免責を与えてよいかどうかを判断するためには,さまざまな事情を調査しなければなりません。
そのため,手続としては,破産手続開始と同時に手続が終了する簡易迅速な同時廃止手続ではなく,破産管財人が選任されて各種調査を行う管財手続(個人の自己破産の場合には少額管財)になるのが通常でしょう。
もちろん,2回目ですので,1回目のときよりも破産管財人の調査や判断は厳しいものとなるでしょう。裁量免責が認められず,免責不許可となる可能性もあり得ます。
特に,1回目の自己破産のときと同じような理由によって2回目の自己破産となったような場合には,より厳しい調査や判断がなされます。
例えば、1回目の自己破産の原因がギャンブルであったのに、またギャンブルで借金を増やして2回目の自己破産を申し立てたようなケースです。
1回目の免責許可決定の確定から7年を経過している場合
1回目の免責許可決定の確定から7年を経過している場合,2回目の自己破産・免責許可の申立てをしたとしても,そのこと自体が免責不許可事由になることはありません。
とはいえ,2回目の自己破産であることは同じです。経済的な更生に問題がある可能性が高いと言わざるを得ません。何らの調査もせずに免責を許可してしまうわけにはいかないでしょう。
そのため,病気や事故で収入を失ったなどやむを得ない事情のない限り,同時廃止とはならず,やはり免責の調査のために管財手続になることが多いでしょう。
自己破産以外の方法の検討
上記のとおり,2回目の自己破産・免責許可は簡単ではありません。特に,1回目の免責許可決定確定日から7年が経過していない場合にはなおさらです。
1回目から2回目までの期間や,再び支払不能になってしまった原因が1回目のときと同じであるなどの事情によっては,自己破産ではなく,他の債務整理手続(任意整理や個人再生)を検討する必要が生じることもあります。
2回目の自己破産で免責許可の可能性があるのか,他の債務整理手続きを選択した方がよいのかなどを判断するには専門的な知識や経験が必要となってきます。まずは弁護士に相談されることをお勧めします。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
弁護士の探し方
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そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人の自己破産の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
- 相談無料(無料回数制限なし)
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参考書籍
本サイトでも自己破産について解説していますが、より深く知りたい方のために、自己破産の参考書籍を紹介します。
破産実務Q&A220問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
破産実務を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。一般の方でも、本書があれば、破産実務のだいたいの問題や自分の場合どうなるのかを知ることができます。
破産・民事再生の実務(第4版)破産編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、破産事件の実務全般について解説されています。
破産管財の手引(第3版)
編著:中吉徹郎 出版:金融財政事情研究会
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。破産管財人向けの本ですが、申立人側でも役立ちます。東京地裁で自己破産申立てをする場合には、特に必要となります。
はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。
破産申立マニュアル(第3版)
編集:東京弁護士会倒産法部 出版:商事法務
東京弁護士会による破産実務書。申立てをする側からの解説がされています。代理人弁護士向けの本ですが、自己破産申立てをする人の参考にもなります。


