記事内にPR広告が含まれます。

賃貸借契約とは?要件・効力・期間など基本からわかりやすく解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

answer

賃貸借契約(ちんたいしゃくけいやく)とは,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することおよび引渡しを受けた目的物を契約が終了したときに返還することによって効力を生ずる契約のことをいいます(民法601条)。

賃貸借契約とは

民法 第601条

  • 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

賃貸借契約とは,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することおよび引渡しを受けた目的物を契約が終了したときに返還することによって効力を生ずる契約のことをいいます(民法601条)。

賃貸借の目的物(賃借物)を使用収益させる方の当事者を「賃貸人(貸主)」といい,賃借物を使用収益して賃料を支払う方の当事者を「賃借人(借主)」といいます。

特に,不動産賃貸借の場合には,土地の賃借人を「借地人」,建物の賃借人を「借家人」と呼ぶこともあります。

賃貸借契約の法的性質

賃貸借契約は、諾成契約です。諾成契約とは、物の給付などをしないでも成立する契約です。賃借物を引き渡さなくても、使用収益の約束をすれば賃貸借契約は成立します。

不要式契約でもあります。不要式契約とは、書面の作成等何らかの要式を具備しないでも成立する契約のことです。そのため、口頭で賃貸借の約束をしただけでも、契約は成立します。

もっとも、口頭での契約の場合、後で言った言わないの紛争となるおそれがあります。諾成契約であるとはいっても、契約書などの書面はちゃんと作成して契約を締結すべきです。

また,賃貸借契約は双務契約です。双務契約とは,契約の両当事者が互いに何らかの法的義務(債務)を負う契約のことです。賃貸借契約の場合,賃貸人は賃借物を使用収益させる義務などを負い、賃借人は賃料を支払う義務などを負うことになります。

さらに,賃貸借契約は、有償契約です。有償契約とは,当事者に何らかの対価的支出が生ずる契約のことをいいます。賃貸借契約の場合,賃料支払という対価的な支出がありますので、有償契約です。

賃貸借契約には、継続的契約の性質もあります。継続的契約とは、継続的給付を目的とする継続的債務を成立させる契約です。賃貸借契約では、賃借物を継続的な期間貸し出しているため、継続的契約に当たります。

この継続的契約の性質を持っていることから、売買契約のような一回的契約よりも当事者間の信頼関係が強く求められます。それにより、一回的契約と異なる法律解釈が行われることもあります。

賃貸借契約の具体例

賃貸借契約の最も身近な具体例は、住居の賃貸借契約でしょう。多くの人が、住まいを借りるために、賃貸借契約を締結しています。また、事業を営んでいる場合であれば、事業所や店舗などを賃貸借していることもあります。

そのため、賃貸借契約は、われわれにとって非常に身近な契約です。

この賃貸借契約は、不動産に限りません。動産の賃貸借契約もあります。自動車のレンタカーやオフィス機器のレンタルなどは、動産の賃貸借契約です。昔は、レンタルビデオがありましたが、これも動産賃貸借契約です。

不動産の賃貸借:借地借家法による修正

前記のとおり、賃貸借契約のうち、不動産の賃貸借は典型的です。この不動産賃貸借は、日常生活や事業の基盤となる重要な契約です。

そこで、立場的に弱者である賃借人を保護するため、借地および借家の特別法である「借地借家法」が制定されています。

この借地借家法は、不動産の賃貸借のうちでも、建物所有を目的とする土地賃貸借(借地)と建物賃貸借(借家)に適用されます。

借地借家法では、賃借人(借地人、借家人)を保護するため、民法の賃貸借契約の規定を修正する定めが置かれており、借地・借家に関しては、借地借家法の定めが民法に優先して適用されます。

そのため、借地・借家契約の場合には、民法だけでなく、借地借家法の規定も確認しておかなければなりません。

賃貸借契約の成立要件

賃貸借契約の成立要件は、以下のとおりです(民法601条)。

賃貸借契約の成立要件
  • 賃貸人が、賃借人に対し、賃借物を使用収益させることを約束すること
  • 賃借人が、賃貸人に対し、賃料を支払うことを約束すること
  • 賃借人が、賃貸人に対し、引渡しを受けた賃借物を契約が終了したときに返還することを約束すること

賃貸借契約の要素

賃貸借契約の要件は、上記のとおりです。もっとも、賃貸借契約は,売買契約などと異なり,契約関係をある一定期間継続していくことに特色があります。

そのため,賃貸借契約においては,当事者が誰かということや目的物が何かということだけでなく,賃借物の返還時期(賃貸借の期間)も契約の本質的な要素と解されています。

したがって,裁判等で賃貸借契約の成立を主張する場合には,単に,賃貸人が賃借人に賃借物を使用収益させることを約束したことと賃借人が賃貸人に対しその賃借物の使用収益の対価として賃料を支払うことを主張立証するだけでは足りません。

最低限,以下の具体的な事実も主張立証する必要があります。

賃貸借契約の成立を主張する場合に必要となる要素
  • 賃貸借契約の当事者(賃貸人・賃借人)が誰か
  • 賃貸借の目的物(賃借物)は何か(その物を特定できる事実)
  • 賃料の金額,数量等
  • 賃借物の返還時期(賃貸借の期間)

賃貸借契約書の要否

賃貸借契約の要件は、前記の3要件です。賃貸借契約の要件には、契約書などの書面作成は含まれません(不要式契約)。

もっとも、契約書は契約成立や契約内容を証明するための重要な証拠です。後日の「言った」「言わない」のトラブルを回避するためにも、契約書は作成しておいた方がよいでしょう。

ただし、賃貸借契約のうちでも、定期借地契約や定期借家契約については契約書などの書面作成が必要です(借地借家法22条、38条など)。内容によっては、単なる書面でなく、公正証書が必要となることもあります。

賃貸借契約の期間

前記のとおり、賃貸借契約の期間は、賃貸借契約の要件そのものではありませんが、重要な要素として、主張立証が必要な事実と解されています。

賃貸借契約の期間の原則は民法で定められていますが、借地借家については、借地借家法により修正されています。

民法における賃貸借契約の期間

民法における賃貸借契約の存続期間は、最長50年とされています。これより長い期間を定めても50年に短縮されます(民法604条1項)。この期間は更新できます。ただし、更新のときから50年が限度です(同条2項)。

賃貸借の期間が満了した後に賃借人が賃借物の使用・収益を継続する場合、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定されます(民法619条1項)。

また、民法においては、短期賃貸借が設けられています。短期賃貸借とは、処分権限を有せず管理権限しか有しない者がする賃貸借契約のことです。通常の賃貸借契約よりも短い期間が設定されています。

短期賃貸借契約の期間(民法602条)
  • 樹木の栽植・伐採を目的とする山林の賃貸借:最長10年
  • 上記以外の土地の賃貸借:最長5年
  • 建物の賃貸借:最長3年
  • 動産の賃貸借:最長6か月

なお、短期賃貸借は更新できますが、その期間満了前、土地については1年以内、建物については3か月以内、動産については1か月以内に、その更新をしなければならないとされています(民法603条)。

借地契約の期間

建物所有を目的とする土地賃貸借(借地)契約の期間は、借地借家法によって民法の原則が修正されています。

この借地契約には、通常の借地契約(普通借地権)と定期借地契約(定期借地権)があります。

普通借地権の期間

借地契約の存続期間は原則として30年です。期間を定めなかったとしても、最低30年になります。ただし、契約でこれより長い期間を定めることができます(借地借家法3条)。

契約を更新する場合、更新期間は、最初の更新は最長20年、それ以降の更新は最長10年ですが、当事者間の合意でこれより長い更新期間とすることも可能です(借地借家法4条)。

また、期間が満了する場合でも、土地上に建物があり、借地権者が契約更新を請求したときまたは土地使用を継続しているときは、借地権設定者が遅滞なく異議を述べない限り、従前と同一条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法5条1項、2項)。

この借地権設定者の異議には、正当の事由が必要です(借地借家法6条)。正当事由がない場合には、異議は認められず、契約は更新されたものとみなされます。

定期借地権の期間

借地借家法では定期借地権についても規定されています。定期借地権とは、契約期間の更新ができず、期間満了により終了する借地契約です。この定期借地権には、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付定期借地権があります。

定期借地権の期間
  • 一般定期借地権:50年以上(借地借家法22条1項)
  • 事業用定期借地権:10年以上50年未満(借地借家法23条1項、2項)
  • 建物譲渡特約付定期借地権:30年以上(借地借家法24条1項)

借家契約の期間

建物賃貸借(借家)契約の期間は、借地借家法によって民法の原則が修正されています。この借家契約には、一般借家契約と定期借家契約があります。

一般借家権の存続期間に特別な制限はありません。そのため、当事者間で自由に決めることができます。ただし、1年未満の期間を定めた場合は、期間の定めのない賃貸借契約となります(借地借家法26条1項ただし書き)。

期間の定めがある場合、期間が満了する1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条1項本文)。

また、期間が満了した後に賃借人が使用を継続する場合に賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条2項)。

この場合、賃貸人の異議には、正当の事由が必要です(借地借家法28条)。正当事由がない場合には、異議は認められず、契約は更新されたものとみなされます。

借地借家法では定期借家権についても規定されています。定期借家権とは、契約期間の更新ができず、期間満了により終了する借家契約です。この定期借家権にも、特別な期間制限はありません。

賃貸借契約の効力

賃貸借契約が成立すると、賃貸人(貸主)と賃借人(借主)には、それぞれ法的な権利と義務が発生します。

賃貸人(貸主)の権利・義務

賃貸借契約が成立すると、賃貸人には、賃料請求権などの権利や賃借物を使用・収益させる義務などの法的義務が発生します。

賃貸人の権利

賃貸借契約が成立すると、賃貸人は、以下の権利を取得します。

賃貸人の権利
  • 賃借人に対して賃料を請求する権利(民法601条)
    賃貸人は、賃借人に対して賃料を請求できます。ただし、賃料請求権が発生するのは、賃借人が賃借物を使用・収益できるようになってから、つまり、賃借物を賃借人に引き渡してからです。賃借物引渡し前には、賃料請求権は発生しません。
  • 賃借物の保存行為をする権利(民法606条2項)
    賃貸人は、賃借物の保存行為をする権利を有します。賃借人は保存行為を拒否できません。ただし、賃借人の意思に反して保存行為をする場合、賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は契約を解除できます(民法607条)。

賃貸人の義務

賃貸借契約の成立により賃料請求権を取得するだけでなく、賃貸人は、以下の法的義務を課されます。

賃貸人の義務
  • 賃借人に賃借物を使用・収益させる義務(民法601条)
    賃貸人は、賃借人に賃借物を使用・収益させなければなりません。
  • 賃借人に賃借物を引き渡す義務
    賃借物を使用・収益させる義務から派生して、賃貸人には、賃借人に賃借物を引き渡す義務があると解されています。
  • 賃借物の修繕義務(民法606条1項)
    賃貸人は、賃貸物の使用・収益に必要な修繕をする義務を負います。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となった場合は、修繕義務は発生しません。
  • 費用(必要費・有益費)償還義務(民法608条)
    賃借人が必要費(賃借物を維持保存し、管理するために必要となる費用)や有益費(目的物の価値を増加させるために支出した費用)を支出した場合、賃貸人は、賃借人対し、その費用を償還する義務を負います。

賃借人(借主)の権利・義務

賃貸借契約が成立すると、賃借人には、賃借物の使用収益権などの権利や賃料支払義務などの法的義務が発生します。

賃借人の権利

賃貸借契約が成立すると、賃借人は、以下の権利を取得します。

賃借人の権利
  • 賃貸人に対して賃借物を使用・収益させるよう請求する権利(民法601条)
    収益とは、賃借物を利用して利益や便益を得ることです。借りた建物を第三者に転貸して家賃収入を得る場合や、農地を借りて農業収入を得る場合などが、収益の典型例です。
  • 賃貸人に対して必要費・有益費の償還を請求する権利(民法608条)
    賃借人が必要費や有益費を支出した場合、賃貸人に対してその費用の償還を請求できます。ただし、請求できる期間は、賃貸人が賃借物の返還を受けた時から1年以内(民法622条、600条1項)

賃借人の義務

賃貸借契約の成立により賃借物の使用収益権を取得するだけでなく、賃借人は、以下の法的義務を課されます。

賃借人の義務
  • 賃料支払義務(民法601条)
    賃借人は、賃貸人に賃料を支払う義務があります。
  • 善管注意義務(民法400条)
    賃借人は、賃借物を善良なる管理者としての注意義務をもって使用・収益しなければいけません。
  • 用法遵守義務(民法616条、594条1項)
    賃借人は、契約または賃借物の性質によって定まった用法に従って使用・収益をしなければならない義務を負います。
  • 通知義務(民法615条)
    賃借人は、賃借物が修繕を要する場合や賃借物について権利を主張する者がある場合、遅滞なくその旨を賃貸人に通知する義務を負います。ただし、それらを賃貸人がすでに知っている場合、通知義務は発生しません。
  • 賃借物返還義務(民法601条)
    賃借人は、賃貸借契約が終了した場合、賃借物を賃貸人に返還する義務を負います。

賃料(家賃・地代など)

前記のとおり、賃借人は、賃貸人に対して賃料を支払う義務を負います。賃料とは、賃貸借の目的物(賃借物)を使用・収益させることの代価です。賃借物によっては、家賃や地代などと呼ばれることもあります。

賃料の支払時期は、賃貸借契約で決めておくのが通常です。ただし、(通常は考えられませんが)支払時期の定めがない場合は、以下の支払時期になります(民法614条)。

賃料の支払時期(民法614条)
  • 動産・建物・宅地:毎月末
  • その他の土地:毎年末
  • 収穫の季節があるもの:その季節の後に遅滞なく支払う

また、賃借人の責めに帰することができない事由によって賃借物の一部が滅失その他の事由により使用・収益できなくなった場合、その使用・収益できなくなった部分の割合に応じて、賃料が減額されます(民法611条1項)。

さらに、上記の場合、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は賃貸借契約を解除できます(民法611条2項)。

なお、耕作・牧畜を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益しかなかった場合、その収益の額まで賃料の減額を請求できます(民法609条)。引き続き2年以上賃料より少ない収益だったときは、契約の解除が可能です(民法610条)。

賃借権の譲渡・転貸の制限

賃借権の譲渡とは、賃借権(賃貸人から賃借物を借りて、使用・収益する権利)を第三者に譲渡することです。転貸とは、賃借物を第三者に貸すことです。いわゆる「又貸し」です。

賃貸人の承諾なく、無断で賃借権譲渡や転貸をして、第三者に使用・収益させた場合、賃貸人は賃貸借契約を解除できます(612条2項)。

他方、賃貸人の承諾を得ている場合、賃借権の譲渡や転貸も有効に成立します(612条1項)。

賃貸人の承諾を得て転貸した場合(承諾転貸)であっても、賃貸借契約がなくなるわけではないので、賃借人は賃貸人に賃料を支払う義務があります。

賃貸人は、賃借人に賃料支払を請求できるだけでなく、転貸借の賃借人(転借人)に対しても、賃貸借契約に基づく賃料の範囲を限度として賃料の支払いを請求できます(民法613条1項前段、2項)。

この場合、転借人は転借料を前払いしていたとしても、賃貸人からの請求を拒否できません(民法613条1項後段)。

また、賃貸人が、賃借人の債務不履行を理由として契約を解除した場合、転借人に対して賃借物の返還を求めることができますが、合意解除の場合には、転借人に解除を対抗できないので、転借人に返還を求めることができません(民法613条3項)。

合意解除の場合は、賃借人が転貸借契約を解除するなどして転借人から賃借物の返還を受け、それを賃貸人に返還することになります。転貸借契約の解除後に、賃貸人が転借人に対して所有権に基づいて返還請求を行う場合もあります。

不動産賃借権の対抗要件

賃借権は、賃貸人に対して賃借物の使用・収益を求めることができる債権ですが、不動産の賃借権は、物権である地上権などに近い性質を持っています。また、不動産賃借権は生活や事業の基盤になる権利であるため、賃借人の保護の必要性があります。

そこで、不動産賃借権は、対抗要件を備えることで、第三者に対しても賃借権を対抗できるものとされています。このように、不動産賃借権に物権のような効力を認めることを「賃借権の物権化」といいます。

不動産賃借権の対抗要件としては、以下のものがあります。

不動産賃借権の対抗要件
  • 不動産賃借権の登記(民法605条)
  • 建物所有を目的とする土地賃貸借(借地)の場合:土地上の所有建物の登記(借地借家法10条1項)
  • 建物賃貸借(借家)の場合:建物の引渡し(借地借家法31条)

不動産賃借権の対抗要件を備えた場合、賃借人は、第三者が賃借物の占有を妨害したときまたは第三者が賃借物を占有しているとき、その第三者に対し、妨害の停止または賃借物の返還を請求できます(民法605条の4)。

賃貸人たる地位の移転

契約上の地位は、契約の相手方が承諾した場合に限り、第三者に移転させることができるのが原則です(民法539条の2)。

これに対し、不動産賃貸借における賃貸人の地位は、賃借人が対抗要件を備えている場合、賃借人の承諾がなくても、不動産の譲渡によって、その地位が不動産の譲受人に移転します(民法605条の2第1項)。

賃貸人たる地位が移転すると、費用償還請求権や敷金(を賃借人に返還する債務)も、新賃貸人である譲受人に移転します(民法605条の2第4項)。

ただし、譲受人は、不動産の対抗要件(所有権移転登記)を備えていなければ、賃借人に新たに賃貸人になったことを対抗(主張)できません(民法605条の2第3項)。

不動産の譲渡があっても、譲渡人と譲受人の間で賃貸人の地位を譲渡人に留保する合意をした場合や譲受人が譲渡人に不動産を賃貸した場合には、賃貸人たる地位を譲渡人のもとに残しておくことができます(民法605条の2第2項)。

また、賃借人が対抗要件を備えていない場合でも、不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、賃借人の承諾がなくても、譲渡人と譲受人との合意により、賃貸人の地位を譲受人に移転させることができます(民法605条の3前段)。

この場合も、譲受人が賃貸人の地位を賃借人に対抗するには、不動産の所有権移転登記が必要です。また、賃貸人たる地位の移転とともに、費用償還請求権や敷金返還債務も譲受人に移転します(民法605条の3後段)。

賃貸借契約の終了

賃貸借契約も契約である以上、簡単には終了させることはできません。賃貸借契約が終了するのは、法律で定められた場合に限られます。

また、賃貸借契約が終了したとしても、賃借人は賃借物を原状回復して賃貸人に返還する必要があります。

賃貸借契約の終了事由

具体的には、以下の場合に終了します。

賃貸借契約が終了する場合
  • 賃貸借契約の期間満了(民法622条、597条1項)
    賃貸借契約の期間が、更新されずに満了した場合は、契約が終了
  • 賃借物全部が使用収益できなくなった場合(民法616条の2)
    賃借物の全部が滅失などにより使用収益できなくなった場合は、契約が終了
  • 当事者が解約の申入れをした場合
    • 期間の定めがない場合:解約申入れから、土地の場合は1年、建物の場合は3か月、動産・貸席の場合は1日で終了(民法617条1項)。ただし、借地借家法による修正がある
    • 期間の定めがある場合:当事者の一方に期間内に解約する権利が留保されている場合は、期間の定めがある場合も解約申入れできる(民法618条)
  • 賃貸借契約の解除(解約)(民法620条)
    • 賃借人の意思に反する保存行為により賃借人が賃借をした目的を達することができなくなる場合の賃借人による解除(民法607条)
    • 耕作・牧畜を目的とする土地賃貸借において、賃借人の収益が不可抗力によって2年以上引き続いて賃料より少ない場合の賃借人による解除(民法610条)
    • 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用・収益をできなくなり、残存部分のみでは賃借をした目的を達することができない場合の賃借人による解除(民法611条2項)
    • 賃借人が賃貸人の承諾なしに賃借権譲渡・転貸した場合の賃貸人による解除(民法612条2項)
    • その他当事者に債務不履行があった場合の解除(民法541条、民法542条)
    • 約定解約・合意解約
  • 混同など契約一般の終了事由

原状回復・付属物の収去

賃貸借契約が終了した場合、賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用・収益によって生じた損耗や経年変化を除く)損傷を原状に回復する義務を負います(民法621条本文)。

ただし、損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものでない場合には、原状回復義務を負いません(民法621条ただし書き)。

また、賃借物を受け取った後に附属させた物がある場合には、賃借人はこの付属物を収去する権利を有するとともに、収去する義務もあります(民法622条、599条1項本文、2項)

ただし、借用物から分離することができない物または分離するのに過分の費用を要する物については、収去義務は生じません(民法622条、599条1項ただし書き)。

敷金・賃貸保証金

民法 第622条の2

  • 第1項 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
  • 第1号 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
  • 第2号 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
  • 第2項 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

賃貸借契約では、契約に際して、賃借人が賃貸人に対して敷金(保証金)を交付する場合があります。この敷金とは、賃貸借契約における賃借人の債務を担保するために、賃借人が賃貸人に差し入れる金銭のことです。

敷金は、賃貸借契約が終了し目的物が返還された際(または、賃貸人の承諾を得て賃借権が譲渡された場合)に、それまで未払いの債務などを差し引いて、残額が賃借人に返還されます(民法622条の2第1項)。

未払いの債務がある場合、賃貸人は資金を未払いの債務の弁済に充てることができますが、賃借人から賃貸人に対して未払いの債務に充てるよう請求することはできません(民法622条の2第2項)。債務に充てるかどうかは賃貸人が選択するということです。

この敷金は、賃貸借契約を締結すれば当然に発生するものではありません。敷金を差し入れるには、賃貸借契約とは別に敷金契約を締結する必要があります。

賃貸借契約と他の契約の比較

賃貸借契約をはじめとして、当事者の一方が他方から目的物を借り受けて使用・収益するタイプの契約を貸借型契約と呼んでいます。

民法では、貸借型契約として、賃貸借のほか、使用貸借契約や消費貸借契約を定めています。また、民法に定めはありませんが、賃貸借契約の一種として、リース契約があります。

以下では、これらの契約と賃貸借契約の違いについて説明します。

賃貸借契約と消費貸借契約の違い

消費貸借契約とは、当事者の一方が種類・品質・数量の同じ物をもって返還をすることを約束して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって効力を生じる契約です(民法587条)。

賃貸借も消費貸借も、ある目的物を貸し借りすることは同じです。

もっとも、賃貸借では、借り受けた目的物そのものを賃貸人に返還しなければなりませんが、消費貸借では、目的物そのものではなく、目的物と種類・品質・数量が同じ物を返還すれば足ります。

借りた物を消費してしまってもよいから「消費」貸借です。賃貸借と消費貸借には、借りた物そのものを返還しなければならないか、そうでないかの違いがあるのです。

賃貸借契約と使用貸借契約の違い

使用貸借契約とは、当事者の一方がある物を引き渡すことを約束し、相手方がその受け取った物について無償で使用・収益をして契約が終了したときに返還をすることを約束することによって効力を生じる契約です(民法593条)。

賃貸借と使用貸借は、いずれも借主が借りた物を使用収益して、その物を返還しなければならない点は同じです。

ただし、決定的な違いがあります。それは、賃貸借は有償ですが、使用貸借は無償であるという点です。賃貸借はお金(賃料)をもらって貸すこと、使用貸借はただで貸すことという違いがあるのです。

賃貸借契約とリース契約の関係

リース契約とは「特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)が、当該物件の借手(レッシー)に対し、合意された期間にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料を貸手に支払う取引」に係る契約のことを言います(リース取引に関する会計基準4条)。

賃貸借とリースは、まったく違うものと思われている人もいるかもしれませんが、基本的には同じです。特殊な賃貸借契約がリース契約です。

もっとも、リース契約は、形式上は物の貸し借りではあるものの、「物を介して金融取引を行う」ことが取引の重点であるため、会計・税務上の処理が賃貸借契約と異なります

具体的な違いとしては、例えば、賃貸借契約は賃貸人と賃借人の2者間での契約ですが、リース契約は、借手が選択した商品を貸手が第三者から取得し、それを貸手が借手にリースする形態であるため、3者が関与する取引であるという違いがあります。

また、賃貸借の場合は、修繕義務を賃貸人が負いますが、リース契約の場合には、借手が自ら修繕する必要があります。

代価も、賃貸借の場合は期間ごとに発生しますが、リースの場合はリース料全額があらかじめ定められており、それを分割で支払う形になっているなど、賃貸借契約とリース契約には多くの違いがあります。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

民法と資格試験

民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。

そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。

これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。

とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現

参考書籍

本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。

新訂債権各論中巻一(民法講義Ⅴ2)
著者:我妻榮 出版:岩波書店
民法の神様が書いた古典的名著。古い本なので、実務や受験にすぐ使えるわけではありませんが、民法を勉強するのであれば、いつかは必ず読んでおいた方がよい本です。ちなみに、我妻先生の著書として、入門書である「民法案内11(契約各論上)」や「ダットサン民法2 債権法(第4版)」などもありますが、いずれも良著です。

我妻・有泉コンメンタール民法(第8版)
著書:我妻榮ほか 出版:日本評論社
財産法についての逐条解説書。現在も改訂されています。家族法がないのが残念ですが、1冊で財産法全体についてかなりカバーできます。辞書代わりに持っていると便利です。

契約法(新版)
著者:中田裕康 出版:有斐閣
契約法の概説書です。債権法の改正にも対応しています。説明は分かりやすく、情報量も十分ですので、基本書として使えます。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。

基本講義 債権各論Ⅰ(契約法・事務管理・不当利得)第4版補訂版
著者:潮見佳男ほか  出版:新世社
債権各論全般に関する概説書。どちらかと言えば初学者向けなので、読みやすい。情報量が多いわけではないので、他でカバーする必要はあるかもしれません。

債権各論(第4版)伊藤真試験対策講座4
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました