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破産管財人が行う調査とは?調査事項・権限・方法などを詳しく解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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破産管財人は、破産者の財産(破産財団)および債権者について調査を行います。個人(自然人)の破産においては、免責に関しても調査を行います。

破産管財人の職務

破産手続が開始されると、裁判所によって「破産管財人」が選任されます。

破産管財人とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理および処分をする権利を有する者のことをいいます(破産法2条12項)。

破産財団に属する財産を管理・回収して、換価処分し、それによって得た金銭を各債権者に弁済・配当するのが、破産管財人の職務です。ほとんど破産手続全般を遂行するといってよいでしょう。

これらの職務を行うため、破産管財人は、破産者の財産(破産財団)や債権者を調査しなければなりません。この調査も破産管財人の職務です。

また、個人(自然人)の破産の場合には、財産や債権の調査のほか、免責に関する調査も破産管財人が行うことになります。

破産管財人による調査事項

前記のとおり、破産管財人は、以下のものを調査します。

破産管財人による調査事項
  • 破産者の財産(破産財団)
  • 破産者に対する債権・債権者
  • 免責に関する事情

以下、それぞれについて説明します。

破産者の財産(破産財団)の調査

破産手続が開始されると、破産者の財産は「破産財団」として扱われ、破産管財人に管理処分権が専属します(破産法78条1項)。

破産財団に属する財産は、破産管財人の管理下に置かれ、最終的には換価処分されて、債権者への弁済や配当の原資となります。

破産財団に属する財産を適切に管理・回収していくため、その前提として、以下のような事項を調査します

財産の調査事項
  • どのような財産があるのか
  • 財産はどのような状態にあるのか
  • どこにどのように保管されているのか
  • どのような管理方法が必要となるのか
  • どの程度の換価価値があるのか
  • 担保が設定されているか
  • どのようか権利関係にあるのか

これらを調査の上で管理し、換価処分を進めていくことになります。

否認権行使の調査

否認権とは、破産手続開始決定前になされた破産者の行為またはこれと同視される第三者の行為の効力を覆滅する形成権たる破産管財人の権能のことです。

破産者の財産の調査に関連して、否認権行使の対象も調査されます。

例えば、破産手続開始前に破産者が家族や親族などに財産の名義を移してしまった場合、否認権が行使され、その財産は破産財団に戻されます。

法人破産の場合によく問題となるのは、支払停止以降に、代表者や役員にだけ役員報酬を支払っている場合です。この役員報酬の支払いも偏頗行為否認の対象になります。

破産管財人はこれら否認権の行使対象になる行為がないか否かも調査します。

法人破産の場合

会社など法人の破産においては、すべての財産が破産財団に組み入れられます。そのため、破産管財人が調査する財産も、法人が有していたすべての財産です。

法人破産で調査対象になることが多い財産には、以下のものがあります(以下のものに限られるわけではありません。)。

法人破産で調査対象になることが多い財産
  • 現金
  • 預金・貯金
  • 不動産
  • 自動車・車両
  • 在庫品・什器備品
  • 有価証券・金融資産
  • 保険
  • 売掛金・貸付金などの債権

また、事業・営業そのものに資産価値がある場合は、事業・営業も事業譲渡や営業譲渡によって換価処分されるため、それらの調査が行われることもあります。

個人破産の場合

個人破産の場合も、基本的にはすべての財産が破産管財人によって調査されます

ただし、個人破産では、破産財団に組み入れられない処分不要の財産(自由財産)が認められています。

自由財産に該当する財産も、それが本当に自由財産か否かを判断するために調査は行われますが、換価処分はされません。

個人破産の場合も、以下のような財産が調査されることが多いです(以下のものに限られるわけではありません。)。

個人破産で調査対象になることが多い財産

破産者に対する債権の調査

前記のとおり、破産手続は、破産財団に属する財産を換価処分して、それによって得た金銭を各債権者に対して配当または弁済する手続です。

そして、各債権者に対して、公平、平等そして正確に配当や弁済をするためには、まず、どのような債権があるのか、その債権の正確な金額はいくらか、債権について担保権等は設定されていないか、などを把握しておかなければなりません。

そのため、破産管財人は、配当または弁済をすべき債権についても調査をする必要があります。

破産債権の調査

破産債権の調査は、破産手続内における債権調査手続よって行われます。破産債権の調査手続は、以下の流れで進みます。

破産債権の調査手続の流れ
  1. 裁判所から知れている債権者(申立人から提出された債権者一覧表に記載がある債権者)に破産手続開始通知とともに債権の届出を求める書類が送付される
  2. 債権者が、裁判所または破産管財人に自己の債権の内容・金額などを記載した債権届出書を提出して債権を届け出る
  3. 破産管財人が届出られた債権を提出された資料などをもとに調査し、債権の認否(認めるか否かを判断する手続)を行う。認められた債権は確定する
  4. 異議を述べられた(否認された)債権者は、裁判所に破産債権査定を申し立てることができ、査定手続で裁判所が債権の存否や金額などを決める
  5. 破産債権査定決定に異議がある場合、破産債権査定異議の訴えを提起でき、この訴訟で債権の存否や金額などが確定する
  6. 債権調査期日に破産管財人から確定した破産債権が報告される

債権者一覧表にすべての債権者が記載されているとは限りません。そこで、破産管財人は、債権者一覧表に記載する者以外にも債権者に該当するべき者がいるのかどうかも調査します。

新たに債権者が判明した場合には、その新たな債権者に対しても同じように、破産債権届出書等を送付して、債権を調査します。

財団債権の調査

財団債権には、破産債権のような調査手続はありませんが、財団債権がわからなければ、破産債権に配当できません。

破産管財人は、破産債権の調査だけでなく、財団債権を調査する必要があります。

財団債権も、官報公告や知れている債権者への通知を行い、債権者から請求や交付要求してもらう方法で調査されます。

免責の調査

個人(自然人)の破産においては、免責制度が設けられています。破産管財人は、この免責についても調査をします。具体的には、以下の事項を調査します。

免責の調査事項
  • 免責不許可事由があるか否か
  • 免責不許可事由がある場合は、裁量免責事由があるか否か

これらの調査結果をもとに、破産管財人が裁判所に対して免責に関する意見を述べることになります。

破産管財人に与えられる調査権限

破産管財人による調査は、法令の範囲内である限り、特別な制限はありません。そのため、破産者の財産・債権・免責に関する事項を対象とするものであれば、一切について調査権限があると言えます。

この破産管財人による調査を実現するため、破産管財人には以下のような特別な権限が与えられています

破産管財人に与えられている権限
  • 破産財団に属する財産の管理処分権(破産法78条1項)
    破産管財人に管理処分権があるため自由に財産を調査できるようになるだけでなく、破産者が勝手に処分することができなくなる。
  • 郵便物の転送嘱託・開披権限(破産法81条、82条)
    破産手続中、破産者の破産郵便物が破産管財人に転送され、破産管財人はその郵便物を開けて内容を確認する権限が与えられています。
  • 説明請求権・帳簿類の検査権(破産法83条1項)
    破産管財人には、破産者や法人破産の場合の法人代表者などに破産に関する説明を求め、破産財団に関する帳簿その他の物件を検査する権限が与えられています。
  • 子会社に対する説明請求権・帳簿類の検査権(破産法83条2項)
    破産者や法人役員などに対する場合だけでなく、破産管財人には、破産者の子会社などに業務・財産状況の説明を求め、帳簿・書類その他の物件を検査する権限もあります。
  • 警察上の援助(破産法84条)
    破産管財人は、調査など職務執行について抵抗を受けるときは、裁判所の許可を得て警察上の援助を求めることができます。

破産管財人は、これらの権限も活用して、調査を進めていきます。

破産者・法人役員などの義務

破産管財人による財産・債権・免責の調査の基本は、事情をよく知る破産者・法人代表者や関係者からの申告です。

そこで、破産管財人による調査の実効性を図るため、破産者や法人代表者などには、以下のような法的義務が課されています

破産者・法人代表者の義務
  • 破産者・法人の理事・取締役などの説明義務(破産法40条)
    破産者・法人の役員(過去に役員であった者も含む)などは、破産管財人から請求があった場合、破産に関して説明する義務が課されています。なお、裁判所の許可がある場合は、破産者の従業員にも説明義務が課されます。
  • 破産者の重要財産開示義務(破産法41条)
    破産者は、破産手続開始後遅滞なく、所有する不動産・現金・有価証券・預貯金・その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならない義務を課されています。
  • 破産者の免責調査協力義務(破産法250条2項)
    破産者は、裁判所・破産管財人による免責調査に協力しなければならない義務を課されます。

破産者や法人役員などが説明義務や重要財産開示義務に違反した場合、刑罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金あるいはその両方)を科されることがあります(破産法268条、269条)。

また、個人の破産者が上記各義務に違反した場合は、免責不許可事由となり、免責が許可されなくなるケースもあります(破産法252条1項11号)。

破産管財人による調査の方法

破産管財人による調査方法には、特に限定はありません。さまざまな方法で財産・債権・免責について調査されます。

具体的には、以下のような方法によって行われるのが一般的です。

破産管財人による調査方法の具体例
  • 破産手続開始の申立書その他の提出書類の精査
  • 申立人・破産者・法人代表者などからの聴取
  • 追加資料提出の依頼およびその資料の精査
  • 関係者からの聴取に対する資料提出の依頼または調査嘱託
  • 事業所や倉庫などの現地調査
  • 転送郵便物の開披およびその調査

以下、それぞれについて詳しく説明します。

破産手続開始申立書その他の提出書類の精査

破産管財人による調査の端緒は、破産手続開始の申立書と添付されている資料・書類です。破産管財人は、これらの申立書および申立書の添付資料を精査して大まかな内容を把握します。

破産者・法人代表者からの聴取

破産管財人による調査の基本は、破産者(法人破産の場合は代表者や役員)からの聴き取りです。

自己破産の場合、破産手続開始後すぐに(東京地方裁判所の場合は、破産手続開始前)、破産管財人と申立人(破産者)による打ち合わせ(面談)が行われ、詳細を確認していくことになります。

個人消費者の自己破産であれば1回が原則ですが、法人・事業者の破産や複雑な事情がある事案では、複数回行われるケースもあります。

追加書類の提出依頼・精査

法人破産の場合、破産手続開始の申立て時にすべての書類や原本を提出できないので、破産手続開始後に破産管財人に直接引き継ぐことになります。

前記のとおり、引継がされない場合でも、破産管財人は、破産財団に関する帳簿等を検査する権限(帳簿等の検査権)が認められているため、この検査権に基づいて帳簿等の検査をすることができます。

また、申立書の添付書類や引継書類だけでは不足するものについては、随時、破産管財人から破産者・代表者などに提出が求められます

破産管財人は、これらの追加書類・資料をさらに精査して、調査を進めます。

関係者からの聴取・資料提出依頼

申立人、破産者、代表者・役員だけでなく、債権者や利害関係人等から情報提供を受けることもあります。

前記のとおり、破産管財人には、役員や従業員、破産会社の子会社等に対して説明を求める権限(説明請求権)が認められています。

そのため、法人や事業者の破産では、従業員から事情を聴き取るケースもあります。

また、必要があれば、役員や従業員その他の関係者に書類や資料の提出を求めて調査するケースもあります。

関係者・関係機関への照会

関係者や関係機関に照会して調査する場合もあります。

任意で照会しても回答が得られない場合には、裁判所の調査嘱託手続をとって照会するケースもあります。

現地・現物の確認

書類や聴取だけではわからないことも、現地や現物を見ればすぐに判明するケースはよくあります。また、新たな事実や財産が発覚することも少なくありません。

そのため、個人消費者の破産ではほとんど行われませんが、法人や事業者の破産の場合は、事業所・工場・倉庫などに破産管財人が赴いて調査するのが一般的です。

現地調査をする場合は、破産者や代表者などに同行を求めて、都度説明してもらえるようにしておくのが通常です。

郵便物の転送嘱託・内容の調査

破産手続中は、破産者宛ての郵便物はすべて破産管財人に転送されるのが通常です。破産管財人は、その転送郵便物を開披して内容を確認できます

この郵便物の転送によって新たな財産が発覚することも少なくありません。

例えば、銀行から通知が郵送されて未申告の口座が発覚したり、証券会社から通知が郵送されて株取引していることが発覚したりすることもよくあります。

破産管財人による調査の報告

破産管財人は、破産手続開始後に遅滞なく破産財団の状況を裁判所に報告しなければなりません(破産法157条)。

また、破産財団の状況については、財産状況報告集会で債権者にも報告しなけばなりません(破産法158条)。債権者集会において決議された場合には、債権者集会でも報告する必要があります(破産法159条)。

実務では、財産状況報告集会と債権者集会は一緒に行われることが大半であるため、債権者集会において破産管財人から調査結果(すでに換価処分が終了している場合は換価の結果)が報告されます。

また、免責については、書面で報告しなければなりません(破産法250条1項)。実務では、免責審尋手続において、口頭でも報告・意見陳述がされます。

破産管財人による調査の期間

破産管財人による調査は、破産手続を通じて行われます。そのため、調査期間は、破産手続の開始から終結するまでです(ただし、破産債権の調査手続は期間が決められます。)。

一般的には、破産手続の開始から2〜4か月ほどですが、事案によっては半年以上かかることもあります。大規模事案では、数年にわたるケースもあります。

同時廃止の場合

破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」場合、破産管財人が選任されず、破産手続開始と同時に破産手続が廃止(打ち切り)になるケースがあります。同時廃止事件と呼ばれています。

同時廃止の場合、破産管財人が選任されないので破産管財人による調査は行われません

なお、同時廃止でも免責の調査は多少行われますが、その場合に調査するのは裁判所書記官です。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。

この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。

ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現

参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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