
契約を解消する方法の1つに契約解除があります。契約解除には,法定解除・約定解除・手付解除・合意解除の4類型があります。
契約を解除できる場合
契約は,いわば法的な拘束力をもった約束ですから,契約がいったん有効に成立したならば,これを容易に解消することはできないのは当然のことです。そのため,契約を解除することができる場合も限られてきます。
この契約の解除には,「法定解除」「約定解除」「手付解除」「合意解除」の4つの類型があります。契約を解除できるかどうかは,具体的には,上記の3つのうちのどれを利用できるかどうかを検討していくことになるでしょう。
法定解除
契約を解除できるかどうかについては,まず,法定解除が可能かどうかを判断する必要があります。
法定の解除原因としては,債務不履行がある場合または契約不適合責任が発生する場合があります。
相手方に債務不履行があれば,契約を解除することが可能です。例えば,相手方が期限までに約束の金銭を支払ってこないとか,約束の物を引き渡してこないなどの場合です。
ただし,賃貸借契約など,当事者間の信頼関係を基礎とする継続的な契約の場合には,信頼関係破壊の法理が適用され、1回の債務不履行だけでは契約を解除できない場合があるので,注意が必要です。
契約不適合責任は,基本的に売買契約において問題となってくる法的な責任です。例えば,購入した物品が契約内容に適合しない物であった場合には,契約不適合責任に基づいて解除が可能となります。
約定解除
法定の解除原因がないという場合には,約定解除を検討します。
約定解除とは,契約において,当事者間で一定の事由がある場合に解除できると定めていた場合に認められる解除です。したがって,この約定解除は,契約締結の際に,約定解除の事由を定めておいた場合にだけ認められるものです。
そのような約定解除の条項を定めていたなかった場合には,約定解除は認められないということになります。したがって,契約を締結する際に,この約定解除の条項を定めておくことは非常に重要となります。
もっとも,仮に約定解除を定めていたとしても,その約定の内容が当事者間の公平を損なうものであるような場合には,約定解除の効力が認められなくなるという場合もありますので,注意が必要です。
手付解除
民法 第557条
- 第1項 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
- 第2項 第545条第4項の規定は、前項の場合には、適用しない。
民法 第559条
- この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
有償契約の場合、法定解除や約定解除が認められないとしても、手付金を差し入れている場合には,手付解除が認められる場合があります(民法557条1項、559条)。
手付解除をするためには,差し入れた手付金が解約手付でなければなりません。もっとも,特に何らの定めもせずに手付を差し入れた場合には,解約手付の趣旨で差し入れたものと解釈されます(最一小判昭和29年1月21日)。
手付を交付している場合には,売主は手付金+それと同額の金銭(手付倍返し)を相手方に交付し,買主は手付金を放棄して,契約を解除することができます。
ただし,上記のとおり,手付解除は手付の放棄や倍返しなどの負担を伴うものですから,法定解除も約定解除も認められないという場合に,最終的な解除の手段として用いるものであるといえます。
合意解除
合意解除とは、当事者間で契約の解除を合意するというものです。当事者双方ともに契約解除に合意している以上、これを制限する理由はありません。そのため、特に制限なく認められます。
法定解除、約定解除、手付解除ができない場合でも、合意解除は可能です。