記事内にPR広告が含まれます。

賃貸借契約はどのような場合に終了するのか?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

answer

賃貸借契約も契約ですから、当事者間の合意や約定または法律で定められている場合でなければ終了しないのが原則です。

法律で定められている場合としては、賃貸借期間の満了による終了目的物の滅失など賃借物全部を使用収益できなくなったことによる終了解約申入れによる終了賃貸借契約の解除による終了その他契約一般の終了事由による終了があります。

賃貸借契約が終了する場合

契約とは,当事者の一方による申込みの意思表示と他方による承諾の意思表示の合致によって成立する法律行為のことをいいます。契約が成立すれば,両当事者に対して法的な拘束力が発生します。

つまり,契約とは,法的拘束力を伴う当事者間での約束です。したがって,簡単に終了することはありませんし,簡単に終了させることもできなくなるのです。

賃貸借契約も同様です。賃貸借契約が終了するのは,法律で定められている場合に限られるのが原則です。具体的には、以下の場合に賃貸借契約は終了します。

賃貸借契約が終了する場合
  • 賃貸借契約の期間が満了した場合
  • 賃借物の全部滅失などにより使用収益できなくなった場合
  • 解約申入れがされた場合
  • 賃貸借契約が解除(解約)された場合
  • 契約一般に共通する消滅事由(混同など)があった場合

以下では、それぞれの終了事由について説明します。

賃貸借契約の期間満了

民法 第622条

  • 第597条第1項、第599条第1項及び第2項並びに600条の規定は、賃貸借について準用する。

民法 第597条

  • 第1項 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。

賃貸借契約においては,期間を設定することが重要な要素とされています。期間の定めをあえてしないということも可能ですが,期間が設定されているのが通常でしょう。

期間の定めがある賃貸借契約については、この賃貸借契約の期間が満了すると、賃貸借は終了します(民法622条、597条1項)。

民法における賃貸借の期間

賃貸借契約の存続期間は、最長50年です。これより長い期間を定めても、50年に短縮されます(民法604条1項)。更新が可能ですが、更新期間も最長50年です(同条2項)。

短期賃貸借(処分権限を有しない者による賃貸借)の場合は、以下の期間が最長とされています(民法602条)。

短期賃貸借契約の期間(民法602条)
  • 樹木の栽植・伐採を目的とする山林の賃貸借:最長10年
  • 上記以外の土地の賃貸借:最長5年
  • 建物の賃貸借:最長3年
  • 動産の賃貸借:最長6か月

借地借家法による賃貸借の期間の修正

賃貸借のうちでも、建物所有を目的とする土地賃貸借(借地)と建物賃貸借(借家)については、賃借人を保護するため、借地借家法による修正が加えられています。

借地契約の場合、存続期間は原則として30年です。期間を定めなかったとしても、最低30年となります。ただし、契約でこれより長い期間を定めることができます(借地借家法3条)。

また、契約を更新する場合の更新期間は、最初の更新は最長20年、それ以降の更新は最長10年ですが、当事者間の合意でこれより長い更新期間とすることも可能です(借地借家法4条)。

なお、定期借地権の場合の存続期間は、一般定期借地権は50年以上(借地借家法22条1項)、事業用定期借地権は10年以上50年未満(借地借家法23条1項、2項)、建物譲渡特約付定期借地権は30年以上(借地借家法24条1項)とされています。

借家契約の場合、存続期間の制限はありません。ただし、1年未満の期間を定めた場合は、期間の定めのない賃貸借契約となります(借地借家法26条1項ただし書き)。

民法における賃貸借契約の更新

前記のとおり、賃貸借契約の期間は更新できます。更新されなければ、期間が満了し、賃貸借契約は終了します。

ただし、期間満了後に賃借人が使用収益を継続していたにもかかわらず、賃貸人がこれを知りながら異議を唱えなかった場合には、従前の条件で賃貸借契約を更新したものと推定されます(黙示の更新。民法619条1項)。

なお、契約が更新された場合、従前の契約において提供されていた敷金以外の担保は消滅します(民法619条2項)。

借地借家法による賃貸借契約の更新の修正

賃貸借契約の更新についても、借地借家法による修正があります。

借地契約の場合には、期間が満了しても、土地上に建物があり、借地権者が契約更新を請求したときまたは土地使用を継続しているときは、賃貸人が正当の事由のある異議を申し出ない限り、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法5条、6条)。

また,建物賃貸借契約(借家契約)の場合は,以下の場合に、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるとされています。

  • 期間が満了しても、当事者が期間満了の1年前から6か月前の間に更新拒絶をしなかったとき(賃貸人が更新拒絶には正当の事由が必要。借地借家法26条1項、28条)
  • 期間満了後も借家人が使用を継続したにもかかわらず賃貸人が正当事由のある異議を述べなかったとき(借地借家法26条2項)

なお、公正証書で更新をしない旨を定めた賃貸借契約(定期借家契約)を定めることもできます。

1年以上の期間の定めのある定期借家契約の場合、期間満了の1年前から6か月前の間に賃貸人が更新拒絶をしなかった場合には,従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法38条6項)。

目的物の滅失などにより賃借物の全部が使用収益できなくなった場合

民法 第616条の2

  • 賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。

賃貸借契約はその賃借人に賃借物を使用収益させることを目的とする契約です。そのため、賃借物の全部滅失などによって使用収益ができなくなった場合には、契約は目的を失うため終了します(民法616条の2)。

不動産賃貸借契約の場合であれば、目的物たる不動産が倒壊してしまったり焼失してしまったようなときには、契約が終了します。

解約の申入れ

賃貸借契約においては、当事者からの解約申入れが認められてます。適法な解約申入れがあった場合、一定期間を経過すると賃貸借契約は終了します。

ただし、この解約申入れについても、借地契約および借家契約の場合には、借地借家法による修正があります。

民法における解約申入れ

民法 第617条

  • 第1項 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
    • 第1号 土地の賃貸借 1年
    • 第2号 建物の賃貸借 3箇月
    • 第3号 動産及び貸席の賃貸借 1日
  • 第2項 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。

民法 第618条

  • 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

期間の定めのない賃貸借契約の場合、賃貸人および賃借人ともに、いつでも解約申入れをすることができます。解約申入れがされた場合、解約申入れ後以下の期間が経過すると、賃貸借契約は終了します(民法617条1項)。

期間の定めのない賃貸借契約における解約申入れから終了までの期間
  • 土地賃貸借の場合:1年
    なお、収穫の季節がある土地賃貸借の場合は、その季節の後次の耕作に着手する前に解約申入れをする必要があります(民法617条2項)。
  • 建物賃貸借の場合:3か月
  • 動産・貸席の賃貸借の場合:1日

他方、期間の定めのある賃貸借契約の場合は、原則として解約申入れはできません。もっとも、当事者間で賃貸借契約の期間内に解約する権利を留保していた場合には、その解約権を有する当事者は解約申入れができます(民法618条)。

この場合も、民法617条1項各号の期間が経過したときに賃貸借契約が終了します。

借地借家法による解約申入れの修正

前記のとおり、解約申入れによる終了についても、借地借家法による修正があります。

期間の定めのある借地・借家契約も、当事者間で賃貸借契約の期間内に解約する権利を留保していた場合でなければ、解約申入れはできません。

借地契約の場合、期間の定めがない場合であっても、存続期間は最低30年です。この30年の期間内は、解約申入れできません。仮に解約申入れできる旨の特約などがあっても、無効となります(借地借家法9条)。

借家契約の場合、期間の定めがあっても、期間が1年未満のときは期間の定めがない契約になります。そのため、そもそも期間の定めがない場合や1年未満の期間の定めがある借家契約は、解約申入れが可能です。

ただし、賃貸人が解約申入れをする場合には、正当事由が必要です(借地借家法28条)。正当事由がある場合、解約申入れから6か月を経過したときに借家契約が終了します(借地借家法27条1項)。

また、解約申入れによって契約が終了した後に建物の賃借人が使用を継続しているにもかかわらず建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法27条2項、26条1項、2項)。

賃貸借契約の解除(解約)

民法 第620条

  • 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。

賃貸借契約が解除(解約)された場合も、賃貸借契約は終了します。

この場合、将来に向かってのみ解除の効力が生じます(民法620条)。過去の取引まで無効になってしまうわけではないということです。

賃貸借契約を解除できる場合

賃貸借契約には法的拘束力がありますから,当事者の一方の意思のみで終了させることはできないのが原則です。そのため、契約の解約(解除)できる場合も、原則として法律の定めがある場合に限られます。

もちろん,両当事者が解約に合意していれば別です。これを合意解除といいます。または、約定によって解除事由が定められており、その解除事由が発生した場合にも解除が可能です(約定解除)。

この合意解除・約定解除以外の場合は,法律の定めがある場合でなければ解除はできません。

具体的に言うと、賃貸借契約を解除できるのは以下の場合です。

賃貸借契約の解除
  • 賃借人の意思に反する保存行為により賃借人が賃借をした目的を達することができなくなる場合の賃借人による解除(民法607条)
  • 耕作・牧畜を目的とする土地賃貸借において、賃借人の収益が不可抗力によって2年以上引き続いて賃料より少ない場合の賃借人による解除(民法610条)
  • 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用・収益をできなくなり、残存部分のみでは賃借をした目的を達することができない場合の賃借人による解除(民法611条2項)
  • 賃借人が賃貸人の承諾なしに賃借権譲渡・転貸した場合の賃貸人による解除(民法612条2項)
  • その他当事者に債務不履行があった場合の解除(民法541条、民法542条)
  • 合意解約・約定解約

信頼関係破壊の理論(法理)

上記の賃貸借契約解除には、法定の要件を満たしている必要があります。この要件に関し、賃貸借契約には、特殊な要件があります。

賃貸借契約は当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約ですから,他の契約と異なり,債務不履行や約定違反があればすぐに解除できるわけではありません。

信頼関係を破壊するほどの債務不履行や約定違反がある場合にだけ契約を解約(解除)できると考えられています。この考え方のことを「信頼関係破壊の理論(法理)」と呼んでいます。

なお、合意解除の場合には、信頼関係破壊の理論は適用されません。賃貸人・賃借人の双方が契約の終了を望んでいることが明らかだからです。

その他の賃貸借契約終了原因

その他,契約一般の終了事由がある場合にも,賃貸借契約は終了します。例えば,混同があった場合には契約が終了します。

なお,当事者の死亡は賃貸借契約の終了原因とされていません。したがって、賃貸人または賃借人が死亡した場合でも、賃貸借契約は終了しません。賃貸人または賃借人の地位が相続されて、契約は継続します。

賃貸借契約の終了に伴う問題

賃貸借契約が終了したとしても、それで賃貸人と賃借人との間の法律関係もすべて終了というわけではありません。

賃借人は、賃貸借契約が終了した後、賃借物を賃貸人に返還する必要があります。

この賃借物の返還において、賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用収益によって生じた賃借物の損耗・経年変化を除く)を原状に回復して返還しなければいけません(原状回復義務。民法621条)。

また、賃借物を受け取った後に附属させた物がある場合には、賃借人はこの付属物を収去する権利を有するとともに、収去する義務もあります(民法622条、599条1項本文、2項)。

これら原状回復や付属物の収去は、特に不動産賃貸借で問題となります。どの程度まで原状回復・付属物収去をすれば目的物を明け渡したと言えるのかが問題となるケースは、少なくありません。

賃借物の返還・明渡しが完了した場合、敷金返還の問題があります。敷金は、賃貸借に基づいて生じた賃借人の債務を差し引いた上で賃借人に返還されます(民法622条の2)。

この際、敷金から差し引かれる賃借人の債務には何が含まれるのかなどで紛争となるケースがあります。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

民法と資格試験

民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。

そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。

これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。

とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現

参考書籍

本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。

新訂債権各論中巻一(民法講義Ⅴ2)
著者:我妻榮 出版:岩波書店
民法の神様が書いた古典的名著。古い本なので、実務や受験にすぐ使えるわけではありませんが、民法を勉強するのであれば、いつかは必ず読んでおいた方がよい本です。ちなみに、我妻先生の著書として、入門書である「民法案内11(契約各論上)」や「ダットサン民法2 債権法(第4版)」などもありますが、いずれも良著です。

我妻・有泉コンメンタール民法(第8版)
著書:我妻榮ほか 出版:日本評論社
財産法についての逐条解説書。現在も改訂されています。家族法がないのが残念ですが、1冊で財産法全体についてかなりカバーできます。辞書代わりに持っていると便利です。

契約法(新版)
著者:中田裕康 出版:有斐閣
契約法の概説書です。債権法の改正にも対応しています。説明は分かりやすく、情報量も十分ですので、基本書として使えます。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。

基本講義 債権各論Ⅰ(契約法・事務管理・不当利得)第4版補訂版
著者:潮見佳男ほか  出版:新世社
債権各論全般に関する概説書。どちらかと言えば初学者向けなので、読みやすい。情報量が多いわけではないので、他でカバーする必要はあるかもしれません。

債権各論(第4版)伊藤真試験対策講座4
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました