この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
- Q特定財産承継遺言とは何?
- A
特定財産承継遺言とは、「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言」のことをいいます(民法1014条2項参照)。いわゆる「相続させる旨の遺言」のうち特定財産を相続させるものです。
このページでは、特定財産承継遺言について、わかりやすく説明します。
- 相続させる旨の遺言と特定財産承継遺言
- 特定財産承継遺言のメリットや特定遺贈との違い
- 特定財産承継遺言の効力・法的性質
- 特定財産承継遺言の第三者に対する効力
- 特定財産承継遺言を作成する場合の注意点

相続させる旨の遺言とは
相続させる旨の遺言とは、特定の共同相続人に遺産(相続財産)を「相続させる」と定める遺言のことです。
遺言で、すべての遺産を特定の相続人に相続させることも可能です。また、特定の遺産だけ特定の相続人に相続させることもできます。
この特定の遺産を特定の共同相続人に相続させる旨の遺言を「特定財産承継遺言」といいます。
特定財産承継遺言とは
上記のとおり、特定の遺産(相続財産)を特定の共同相続人に相続させる旨の遺言が、特定財産承継遺言です。
具体的に言うと、特定財産承継遺言とは、「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言」のことです(民法1014条2項参照)。
民法改正(2019年7月1日施行)により、特定財産だけ相続させる旨の遺言は「特定財産承継遺言」として規定されるようになりました。
特定の相続財産を特定の相続人に譲りたいと考えている場合には、この特定財産承継遺言を用いるのが一般的でしょう。
特定財産承継遺言のメリット
特定財産承継遺言には、以下のようなメリットがあります。
メリット1:対象財産は遺産分割しなくてよい
特定財産承継遺言がある場合、対象の特定財産は、遺言の効力発生時(遺言者が亡くなった時・相続開始時)に特定の相続人に承継されます。
そのため、対象の財産については、遺産分割をしなくても、相続開始と同時に、対象の相続人が取得することになります。
本来、相続人が複数人いる共同相続の場合、共同相続人全員で遺産分割をしない限り、個々の相続財産が誰に帰属するかを確定できません。
しかし、特定財産承継遺言がある場合は、遺産分割をすることなく、遺言で指定された相続人に特定の相続財産が受け継がれます。
遺言者にとっては確実に特定財産を特定の相続人に受け継がせることができ、相続人にとっては遺産分割をする手間を省けるメリットがあるのです。
メリット2:単独での不動産の登記移転が可能
承継させたい遺産が不動産である場合、受け継いだ相続人は、不動産の登記を変更しなければいけません。
特定財産承継遺言であれば、受け継いだ相続人が単独で不動産の登記手続をすることができます。共同申請する必要がありません。この単独登記ができることは、特定財産承継遺言のメリットです。
なお、令和5年4月1日から、特定財産承継遺言ではなく遺贈の場合であっても、相続不動産を取得したのが相続人であるときには、単独で相続登記の申請ができるようになりました。
メリット3:農業委員会の許可が不要
農地を譲り渡す場合、農地法3条で定める農業委員会の許可が必要です。
農業委員会の許可は、必ず得られるとは限りません。そのため、農地を受け継いだとしても、相続人が農地として利用できなくなる可能性があります。
しかし、特定財産承継遺言により相続人に相続させる場合には、農業委員会の許可を要しません。
確実に農地を特定の相続人に受け継がせたい場合には、特定財産承継遺言をしておくことにメリットがあります。
メリット4:賃貸人の承諾が不要
賃借権を譲り渡す場合、賃貸人の承諾を得る必要があります(民法612条1項)。
そのため、後述する特定遺贈によって賃借権を特定の相続人に遺贈したとしても、賃貸人から承諾を得られなければ、相続人は賃借物を利用できません。
一方、特定財産承継遺言により相続人に賃借権を相続させる場合には、賃貸人の承諾を要しません。
特定財産承継遺言で賃借権を特定の相続人に相続させることにしておけば、確実に賃借権を特定の相続人に受け継がせることができます。
特定財産承継遺言と特定遺贈の違い
特定財産承継遺言と同じように、特定の遺産(相続財産)を特定の共同相続人に受け継がせる手段としては、「特定遺贈」があります。
遺贈とは、遺言で特定の相続人または第三者に財産を贈与することです。そして、特定の財産を遺贈するのが、特定遺贈です。
特定財産承継遺言と特定遺贈には、以下のような違いがあります。
| 比較項目 | 特定財産承継遺言 | 特定遺贈 |
|---|---|---|
| 不動産登記の単独申請 | 可能 | 受遺者が相続人であれば可能 受遺者が第三者であれば共同申請が必要 |
| 第三者への承継 | 不可 | 可能 |
| 農地法の許可の要否 | 不要 | 受遺者が相続人であれば不要 受遺者が第三者であれば許可が必要 |
| 賃貸人の承諾 | 不要 | 必要 |
| 配偶者居住権の設定 | 不可 | 可能 |
| 利益の放棄 | 不可 相続放棄が必要 | 可能 遺贈のみ放棄できる |
| 相続放棄した後の効力 | 特定財産承継遺言による承継も受けられなくなる | 遺贈は受けることができる |
| 登録免許税の税率 | 0.4パーセント | 受遺者が相続人である場合は0.4パーセント 受遺者が第三者である場合は20パーセント |
不動産登記の単独申請できるか否かの違い
特定財産承継遺言の場合、相続人は単独で不動産の登記申請が可能です。特定遺贈であっても、遺産を受け取るのが相続人であれば、その相続人が単独で登記申請できます。
ただし、相続人ではなく、第三者に遺贈する場合は、共同相続人全員での共同申請が必要です。
第三者に承継させられるか否かの違い
特定財産承継遺言は「相続させる」遺言であるため、相続させられる人=相続人しか対象にできません。他方、遺贈は「相続させる」わけではなく、贈与するものであるため、第三者にも遺贈できます。
第三者に特定の財産を受け継がせたい場合は、遺贈を選択する必要があります。
農地法の許可の要否に関する違い
受け継がせたい遺産が農地である場合、特定財産承継遺言であれば、農地法3条の農業委員会による許可が不要です。また、特定遺贈でも、受遺者が相続人であれば、農業委員会の許可は不要になります。
一方、第三者遺贈の場合は、農業委員会の許可が必要です。遺贈により農地を受け継いだ第三者は、あらためて農業委員会の許可を受ける必要があります。
賃貸人の承諾の要否に関する違い
賃借権を特定遺贈した場合、受遺者は、相続人であっても、相続後に賃貸人から承諾してもらわなければ、賃借権を受け継げません。
これに対して、特定財産承継遺言であれば、あらためて賃貸人の承諾を得る必要がありません。
賃借権を受け継がせたい場合は、特定遺贈よりも特定財産承継遺言の方が、相続人の負担が軽くなるでしょう。
配偶者居住権の違い
配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合、終身の間(亡くなるまで)、その居住していた建物の全部について無償で使用・収益できる権利のことを言います(民法1028条1項柱書本文)。
この配偶者居住権は、遺贈で配偶者に取得させることができます(民法1028条1項2号)。一方、特定財産承継遺言では、配偶者居住権を取得させることができません。
配偶者の住居を確保したい場合は、特定財産承継遺言ではなく、特定遺贈を使う必要があります。
利益の放棄が可能か否かの違い
特定遺贈があった場合、受遺者は遺贈を放棄できます(民法986条1項)。遺贈を受けないと言えるのです。
特定遺贈を放棄したのが相続人であった場合、放棄しただけで相続まで放棄するわけではありません。そのため、特定遺贈を放棄しても、相続人として相続することはできます。
一方、特定財産承継遺言の受益相続人は、特定財産の承継だけ受けないとは言えません(東京高判平成21年12月18日など)。
特定財産承継遺言を拒むには、他の共同相続人と話し合うか、相続放棄する必要があります。ただし、相続放棄すると相続人ではなくなり、すべての財産を受け取れなくなります。
対象の相続人が相続放棄した場合の違い
特定財産承継遺言の対象となっている相続人が相続放棄すると、はじめから相続人ではなかったことになります(民法939条)。
相続人ではなくなるので、特定財産承継遺言があっても、相続放棄をした人は財産を相続することはできなくなります。
一方、特定遺贈の場合は、対象の相続人が相続放棄したとしても、効力はなくなりません。相続放棄をした後でも、受遺者として遺贈を受けることができます。
税金面での違い
不動産を譲り渡す場合の登録免許税は、特定財産承継遺言の場合、0.4パーセントです。相続人への特定遺贈の場合も同じく0.4パーセントです。
一方、第三者遺贈の場合は、登録免許税が20パーセントになります。
特定財産承継遺言と相続人への特定遺贈の近接化
かつては、不動産登記の単独申請、農業委員会の許可、登録免許税などいろいろな面で、特定遺贈よりも特定財産承継遺言の方が有利な面が多くありました。
もっとも、特定財産承継遺言と相続人への特定遺贈は、同じく相続人への遺産の譲渡であるのに、ただ遺言書への記載の仕方が違うだけで大きな差が生じるのは問題があると言われていました。
そのため、各種の法改正がされ、現在では、特定財産承継遺言と相続人への特定遺贈には、あまり差がなくなってきています。
なお、第三者への遺贈の場合には、特定財産承継遺言に近づける法改正はされていません。
特定財産承継遺言の効力に関する見解
特定財産承継遺言の効力を法的にどのように解釈するのかについては、民法改正前において以下のような議論がありました。
遺産分割方法指定説
遺産分割方法指定説は、特定財産承継遺言を遺産分割方法の指定と考える見解です。
遺産分割方法の指定とは、遺言で遺産分割の方法を指定しておくことです。
遺産分割方法の指定と考えると、指定された遺産分割方法に従って遺産分割され、特定の相続人に特定の財産が受け継がれることになります。
そのため、遺産分割方法指定説であれば、特定財産承継遺言によって不動産の単独登記が可能となる理由を説明しやすいです。
ただし、純粋な遺産分割方法の指定と考えると、遺産分割が成立するまでは確定的な権利を取得できないことになり、遺言の趣旨に反する可能性があり得ます。
特定遺贈説
特定財産承継遺言は特定遺贈の効力を持つと考える見解もあります。
特定遺贈説は、特定財産承継遺言によって、遺産分割を経ないで特定財産が特定の相続人に受け継がれること自体、遺産分割制度を定める法の趣旨に反すると考えます。
また、不動産登記の単独申請ができるとする前記の登記実務についても否定的です。特定遺贈説では、特定財産承継遺言があったとしても、不動産登記には共同申請が必要と考えることになります。
登記実務にそぐわない考え方ではあるものの、学説では有力な見解とされていました。
遺産分割効果説(判例・通説)
現在の判例・通説は、「遺産分割効果説」です。遺産分割効果説は、特定財産承継遺言は、遺贈であるといえるような事情の無い限り、原則として遺産分割方法の指定であるとする見解です。
ただし、遺産分割方法指定説と異なり、特定財産承継遺言には、以下のような効力があると考えます。
- 共同相続人間で遺言と異なる遺産分割をすることは原則としてできない
- 遺言の効力発生時(相続開始時)に、対象となる遺産が特定の相続人に承継される
- 特定財産の承継を受けた相続人は、その財産が不動産であれば、単独で所有権移転登記ができる
代表的な判例は、最高裁判所第二小法廷平成3年4月19日判決です。
現在の民法は、この判例(遺産分割効果説)を受けて、特定財産承継遺言を「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言」と定めています(民法1014条2項参照)。
法定相続分を超える特定財産承継遺言
特定財産承継遺言によって特定の遺産(相続財産)を受け継いだことによって、その相続人の取り分が法定相続分を超えることもあります。
法定相続分を超える特定財産承継遺言の可否
前記の遺産分割効果説では、特定財産承継遺言を原則として遺産分割方法の指定と捉えるため、法定相続分を超える特定財産承継遺言はできないようにも思えます。
しかし、遺言では、遺産分割方法を指定できるだけでなく、法定相続分を超える相続分を特定の相続人に指定することも可能です(相続分の指定。民法902条1項)。
そのため、遺産分割方法を指定するとともに相続分も指定したものと考えることによって、法定相続分を超える特定財産承継遺言も有効となります。
特定財産承継遺言と第三者対抗要件の要否
民法 第899条の2
- 第1項 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
- 第2項 前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
引用元:e-Gov法令検索
上記のとおり、法定相続分を超える特定財産承継遺言も可能です。
ただし、承継した相続人は、法定相続分を超える部分については、対抗要件を備えなければ、特定財産承継遺言によって取得したことを第三者に主張(対抗)できません(民法899条の2第1項)。
他方、法定相続分の範囲内の部分については、対抗要件を備えていなくても、第三者に権利の取得を対抗できます。
例えば、Aには子B・C・Dがおり、甲不動産を所有していたところ、Aは、Bに甲不動産の全部を相続させる旨の特定財産承継遺言をした(相続分の指定はしていない。)。
その後、Aが死亡し、B・C・Dが相続人となり、特定財産承継遺言に従って、Bが甲不動産の全部を相続した。
この事例の場合、民法899条の2の第1項によると、以下のとおりとなる。
- 法定相続分3分の1に相当する部分
Bは、登記を備えなくても、権利取得を第三者に対抗できる - 法定相続分3分の1を超える部分(残り3分の2の部分)
Bは、登記を備えなければ、権利取得を第三者に対抗できない
上記事例で、Cが、自分の持分(法定相続分)を第三者Eに譲渡し、Eがその持分について登記を備えた場合、BはEに、Cの持分も特定財産承継遺言によって自分が取得したことを対抗できない。
民法 第899条の2の趣旨
かつては、特定財産承継遺言により財産を相続した相続人は、法定相続分を超える部分も対抗要件なしで第三者に対抗できると考えられていました(最二小判平成14年6月10日)。
しかし、特定財産承継遺言があるかどうかは、外部からは判別できません。第三者は、対抗要件による公示を確認し、法定相続分を超える部分は取引可能と判断して取引関係に入ります。
それにもかかわらず、対抗要件がなくても権利を主張できるとすると、対抗要件による公示を信頼して取引をした第三者に予測し難い不利益をこうむらせることになり、取引の安全を害します。
そのため、民法改正により899条の2が設けられ、特定財産承継遺言がある場合でも、法定相続分を超える部分については対抗要件がなければ、第三者に対抗できないとされました。
民法 第899条の2が適用される相続
なお、この民法899条の2の規定が適用されるのは、2019年7月1日以降に相続が開始した場合です。
2019年7月1日より前に開始していた相続については、従前どおり、対抗要件を備えなくても承継した相続分の全部を第三者に対抗できることになります(ただし、債権については例外があります。)。
特定財産承継遺言がある場合の遺言執行者の権限
民法 第1014条
- 第1項 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
- 第2項 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
- 第3項 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
- 第4項 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
引用元:e-Gov法令検索
前記のとおり、特定財産承継遺言がある場合、相続開始時に対象の財産が特定の相続人に承継されるので、遺言を執行する必要がないようにも思えます。
しかし、民法899条の2が新設されたことにより、特定財産承継遺言であっても、対抗要件を備えることが必要な場合が生じました。
そのため、特定財産承継遺言がある場合でも、遺言で別段の定めがない限り、遺言執行者は以下の遺言執行を行えることが明記されました。
- 特定財産承継遺言を受けた相続人が、法定相続分を超える部分についての対抗要件を備えるために必要な行為をする権限(民法1014条2項)
例えば、不動産の登記申請手続や債権譲渡の通知など - 特定財産承継遺言の対象財産が預貯金である場合は、預貯金債権の対抗要件を備える行為や預貯金の払戻しをする権限(民法1014条3項本文)
- 特定財産承継遺言の対象財産が特定の預貯金の全部である場合は、その預貯金を解約する権限(民法1014条3項ただし書)
なお、被相続人は、遺言で遺言執行者には上記権限がないと定めることもできます(民法1014条4項)。
特定財産承継遺言を作成する際の注意点
特定財産承継遺言を作成しておけば、特定の相続人に特定の財産を受け継がせることができます。ただし、特定財産承継遺言といえど万能ではありません。
特定財産承継遺言を作成する場合は、いくつかの点に注意しておく必要があります。
遺留分侵害額請求の可能性を考えておく
特定財産承継遺言をした結果、財産を相続した相続人以外の他の共同相続人の遺留分が侵害されるケースがあります。
遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹を除く相続人(子・直系尊属・配偶者)に保障されている最低限度の取り分のことです(民法1042条)。具体的には、以下の割合で遺留分が相続人(兄弟姉妹を除く)に保障されています。
- 直系尊属のみが法定相続人である場合
法定相続分 × 3分の1 - 上記以外の場合には
法定相続分 × 2分の1
特定財産承継遺言により遺留分を侵害された相続人は、特定財産を受け継いだ相続人や受遺者に遺留分を侵害された額に相当する金銭の支払いを請求できます(遺留分侵害額請求。民法1046条1項)。
そのため、特定財産承継遺言をする場合は、遺留分のことも頭に入れておかなければいけません。
解釈の余地がある書き方を避ける
例えば、「甲土地をA(相続人)に相続させる」とだけ記載しても、Aが相続するのは甲土地だけなのか、それとも、他の財産は法定相続分で相続しつつプラスで甲土地を取得するのかがはっきりしません。
このように解釈の余地がある書き方をすると、相続開始後に相続人間でトラブルが発生する可能性があります。できる限り解釈の余地が残らないように、明確に条項を定めておくことが肝心です。
もし特定財産承継遺言の作成に不安がある場合は、弁護士や公証人に依頼するのもひとつの方法です。
特別受益になることを考慮しておく
特別受益とは、共同相続人の一部が、遺贈や婚姻・養子縁組・生計の資本として生前贈与を受けることです(民法903条1項)。
特別受益がある場合、特別受益を考慮した上で共同相続人間で受け取れる遺産を調整することになります。特定財産承継遺言による遺産の取得も、この特別受益に該当するケースがあると考えられています。
そのため、特定財産承継遺言により取得した遺産は、他の相続人から特別受益であると主張されて、受け取れる相続分が減少する可能性があります。
ただし、遺言を遺す人(遺言者)は、遺言で持ち戻し免除を定めておくことができます。持戻しの免除とは、特別受益がある場合でも相続分を調整しなくてよいと遺言で定めておくことです(民法903条3項)。
特定財産承継遺言を作成する場合には、持ち戻しの免除を入れるかどうかもあらかじめ検討しておいた方がよいでしょう。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
民法と資格試験
民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。
そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。
これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。
とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現
参考書籍
本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。
民法3(親族法・相続法)第5版
著者:我妻榮ほか 出版:勁草書房
いわゆる「ダットサン」シリーズの復刻版。読みやすいので、初学者でも利用できます。意外と情報量もあるので、資格試験の基本書として利用することも可能でしょう。
資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。
民法VI 親族・相続 (LEGAL QUEST)第8版
著者:前田陽一ほか 出版:有斐閣
家族法全体の概説書。条文・判例から書かれているので、学習の早い段階から利用できます。情報量もあるので、資格試験の基本書として十分でしょう。
親族・相続(伊藤真試験対策講座12)第4版
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。
関連する資格試験の過去問
特定財産承継遺言については、以下の資格試験でも出題されています。
- 行政書士試験令和6年度問29
論点:相続と第三者


