記事内にPR広告が含まれます。

破産管財人が現地調査を行うことはあるか?個人破産のケースも解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

Q
破産管財人が破産者の事業所や自宅などの現地調査をすることはある?
A

はい。破産管財人は、必要に応じて破産者の事業所や倉庫などの現地調査を行います。もっとも、個人消費者の破産の場合は、任意売却する場合以外に自宅などの現地調査を行うことはほとんどないでしょう。

このページでは、破産管財人の現地調査について詳しく説明します。

この記事で説明していること
  • 破産管財人が現地調査を行う理由や代表的なケース
  • 財産の調査・管理保全・換価処分のための現地調査
  • 書類の確認・回収のための現地調査
  • リース物件の引き揚げや賃借不動産の明渡しの立ち合い
  • 裁判所の許可を得て破産者の事業を継続する場合
  • 個人消費者の破産で破産管財人が現地調査するケース

破産管財人による現地の調査

破産手続では、破産者の財産を換価処分して、それによって得られた金銭を、各債権者に対して公平・平等に分配しなければなりません。そのためには、破産者の財産や債務を十分に調査しておく必要があります。

これらの財産や債務・負債の調査は、裁判所によって選任される「破産管財人」が行います。

破産管財人が行う調査の方法に特段の制限はありません。法令に基づく方法である限り、基本的に破産管財人の裁量によって調査が行われます。

調査方法は、破産手続開始の申立書や帳簿類など各種書類の精査や、破産者などからの事情聴取が基本ですが、破産管財人が、関係各所に赴いて現地調査することもあります

個人消費者の破産の場合は、自宅を任意売却するようなケースでない限り、現地調査をすることはあまりないでしょう。一方、会社などの法人破産の場合は、現地調査するのがむしろ一般的です。

例えば、以下のケースでは、現地調査が行われることが多いです。

破産管財人による現地調査が行われるケース
  • 破産者の財産が事業所・営業所・倉庫などに保管されている場合
  • 財産や債務などに関する書類が事業所・営業所・倉庫などに保管されている場合
  • リース物件やレンタル物件が事業所・営業所・倉庫などにある場合
  • 事業所・営業所・倉庫などの不動産が賃借物件である場合
  • 裁判所の許可を得て破産者の事業を継続する場合
  • (個人消費者の破産)破産者の自宅不動産を任意売却する場合

以下では、ケースごとに説明します。

財産の確認・保全・換価処分のための現地調査

破産手続が開始されると、破産者の財産はすべて破産財団として破産管財人が管理処分権を有することになります(破産法78条1項)。

破産管財人は、この破産財団に属する財産を調査・管理・換価処分して破産管財業務遂行の費用に充て、余剰があれば、各債権者に対して弁済または配当することになります。

そこで、破産者の財産を十分に調査して万全に管理または財産を処分)するために、破産管財人が現地調査することがあります

現地で行われる財産の調査

法人や自営業者など事業者の場合、財産は事業所・営業所・工場・倉庫などにあるのが通常でしょう。

書面や写真でどのような財産があるのかを一応確認することは可能ですが、帳簿類などが実際の数量と一致しているとは限りませんし、実物の状態はわかりません。やはり実際に現物を見た方が正確な情報が手に入ります。

そこで、事業者の破産の場合は、破産管財人が実際に事業所等に赴いて、財産の保管状態や数量を調査するのが一般的です。

また、現地に査定業者や買取業者を呼び、財産の査定や評価を行うこともあります。

現地での財産の管理・保全

破産管財人が現地調査をする場合、ただ財産の状況を調査するだけではなく、保管状態を直接確認した上で、財産が散逸しないように保全措置をとります

財産保全のため、破産管財人は、裁判所書記官・執行官・公証人に、破産財団に属する財産に封印をさせることができます(封印執行。破産法155条1項)。

ただし、実際にはほとんど封印執行が使われることはありません。通常は、封印まではせず、内部に他者が立ち入らないよう、入り口などに破産管財人名義で告知書を貼って対応することが多いです。

例えば、事業所や倉庫の入り口各所に、管理者は破産管財人である旨を明示し、勝手に内部に立ち入ったり、内部の物品を持ち出した場合は建造物侵入罪や窃盗罪で処罰されることがある旨を警告する告知書を貼ります。

また、入り口の鍵をすべて交換したり、警備会社と契約して警備を任せたり、別の場所を借りて保管場所を移動したりする方法で財産の保全を図ることもあります。

現地での財産の換価処分

破産管財人は、財産の調査や管理のためだけではなく、実際に換価処分するために現地に赴くこともあります

例えば、事業所にある機械を買取業者に引き渡すため、現地に赴いて引渡しに立ち会うような場合です。

帳簿等の確認・回収のための現地調査

破産管財人は、財産だけでなく、債権の調査も行わなければなりません。また、財産・債権調査に関連して、破産者の契約関係を解消して清算するため、契約関係の調査も行います。

これらの調査を行うためには、単に申立人・破産者や関係者から事情聴取をするだけなく、各種の帳簿類や契約書などの書類を精査することも必要です。

そのため、破産管財人には、破産者に説明を求める権限だけでなく、破産者が持っている書類や物件を検査する権限が与えられています(破産法83条1項)。

調査に必要となる帳簿類や書類が破産者の事業所・営業所などに保管されている場合、これら書類を確認し、または散逸を防ぐため保全措置をとるため、破産管財人が現地調査を行うこともあります。

書類だけでなく、パソコンやハードディスクなどにデータが残っている場合には、そのデータについても保全措置をとり、データのコピーやパソコン等それ自体を引き揚げることもあります。

リース物件等の引き揚げ

破産者が事業者である場合、什器・備品や機械などをリースレンタルしていることも多いです。

破産者がリースまたは賃借している物件は破産者自身の財産ではないため、リース会社や賃貸人などの権利者が取戻権を行使した場合は、その権利者に返還する必要があります。

これらリース物件や賃借物件をリース会社や賃貸人が引き揚げる際、引き揚げ作業に立ち合うため、破産管財人が現地に赴くこともあります。

また、所有権留保が設定されている物件を留保所有権者に引渡す場合も、その引き渡しに立ち合うために、破産管財人が現地に赴くこともあります。

事業所等の明渡し

破産者の事業所・営業所・工場・倉庫などの不動産が賃借物件である場合、賃貸人に明け渡さなければなりません。

明渡しをするためには、その不動産の内部にある残置物を撤去し、賃貸借契約の内容によっては、原状回復の措置もとらなければなりません。

そこで、破産管財人は、以下の明渡しに伴う作業を行うために現地調査を行います。

事業所明渡しの作業
  • 残置物撤去や原状回復の費用の見積もりをとるため、明渡し業者の現地査定に立ち会う
  • 明渡し業者による実際の残置物撤去や原状回復工事に立ち会う
  • 賃貸人への不動産明渡しに立ち会う

事業継続を選択する場合

破産管財人は、破産手続開始後であっても、裁判所の許可を得て、破産者の事業を継続することができます(破産法36条)。

例えば、事業を継続して仕掛業務を完成させて報酬を得た方が事業を停止するよりも多くの収益が見込める場合や、事業自体に価値があるため事業譲渡を行う場合などには、破産手続開始後も事業を継続させることがあります。

この場合、事業主体は、破産者の財産管理処分権を有する破産管財人になります。

そのため、破産管財人は、事業の状況を指揮または確認するため、事業所に赴くことがあります。

個人破産(消費者)の場合の現地調査

個人消費者の破産の場合、事業者の破産と違って、現地調査をするケースは限られています。例えば、個人消費者の破産で破産管財人が現地調査するのは、以下のケースです。

個人消費者の破産で破産管財人が現地調査するケース
  • 破産者が所有する不動産を任意売却する場合
  • 破産者が所有する自動車を任意売却する場合
  • 財産隠しが疑われる場合

個人消費者の破産の場合、財産隠しの疑いがある場合など特殊なケースを除いて、自宅不動産や自動車の任意売却以外の理由で現地調査をすることはほとんどないでしょう

不動産を任意売却する場合

個人消費者の破産でも、破産者が不動産を所有している場合、その不動産の任意売却を行うため、破産管財人が現地(不動産)に赴いて調査します

不動産が自宅である場合は、破産管財人が自宅で現地調査することになります。

具体的には、買取業者の査定への立ち合い、残置物が撤去されているかどうかの確認、実際の引き渡しの際の立ち合いなどのために、破産管財人が現地に赴くことになります。

自動車を任意売却する場合

自動車を任意売却する場合も、破産管財人が自動車が置いてある場所(自宅その他の駐車場)に赴いて現地調査することがあります

具体的には、買取業者の査定への立ち合い、実際の引き渡しの際の立ち合いなどのために、破産管財人が現地に赴くことになります。

財産隠しが疑われる場合

個人消費者の破産では、基本的に不動産や自動車を任意売却するケース以外で破産管財人が現地調査することはほとんどありませんが、財産隠しが疑われる場合は別です。

破産者が自宅その他の場所に財産を隠している、または財産に関する書類を保管していることが疑われる場合は、その疑われる場所を現地調査することがあります

財産隠しや財産に関する書類隠しは、免責不許可事由に該当し免責(借金の帳消し)が許可されなくなる可能性があるだけでなく、詐欺破産罪として刑罰を科されるおそれもあります。正直に申告することが重要です。

現地調査における破産者の役割

現地調査をするのは破産管財人ですが、現地の状況を最もよく知っているのは破産者自身や法人の代表者です。

そのため、破産管財人が現地調査する場合は、破産者や法人代表者なども立ち合いを求められるのが一般的でしょう。破産者や法人代表者などに財産や書類の所在を確認しながら調査が進められます。

特に個人破産で自宅を現地調査する場合、破産管財人と言えども勝手に立ち入ることはできないため、破産者の立ち合いが必須となります。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。

この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。

ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現

参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました